『解かれた魔法 運命の一日』〜第14話〜





                                      投稿者 フォーゲル





  「ふぅ・・・」
 俺はため息を付きながら、観客席から試合会場を眺めていた。
 ついに始まった『魔法科実技トーナメント』。
、師匠の教え方が良かったのか、俺は危なげなく勝ち進み、準々決勝までコマを進めて来た。
 男子も女子も概ね波乱も無くここまで試合を消化して来ている。
 (俺が勝ち残っているのが一番の波乱かも知れんが・・・)
 俺はそんなことを考えながら、ついさっきクジ引きで決まった準々決勝以降の対戦カードが、
 印刷されたプリントを見る。
 女子の部は、神坂さんと柊さんが決勝まで当たらない組み合わせになったので、ほぼこの2人で決まりだろう。
 問題は・・・
 俺は男子の部の組み合わせを見て、またため息を付く。
 ここまで俺が勝ちあがって来れたのは、クジ運の良さもあっただろう。
 だけど・・・
 (ついにクジに関しては運を使い果たしたような気もするな)
 目標はベスト4に残ることだから、この準々決勝以降なら誰と当たっても良かったのだが・・・
 (何で、目標の一歩手前で強敵と当たるんだよ)
 俺が再びため息を付いたその時だった。
 「和志くん?ここにいたんですね」
 後ろの方からすももの声がした。
 ということは師匠も一緒だな。
 2人の出てた種目はもう終わったのか?
 俺はそんなことを考えながら、振り向いた。
 その瞬間、俺は師匠が何故あんなに競技に出るのを嫌がっていたのか分かった。
 「2人共・・・テニスに出てたのか?」
 すももと師匠はテニスウェアを着ていた。
 2人共、ウェア姿がバッチリと似合っている。
 「はい!2人で頑張りました!最初の試合で負けちゃいましたけど」
 「・・・私は出たく無かったのだがな。それに、すもも・・・」
 師匠が微妙に不機嫌そうな声で答える。
 「何ですか?伊吹ちゃん?」
 「私が見る限り、別にこれに着替える必要無かったのではないか?」
 師匠が自分の格好を見ながら言う。
 「何言ってるんですか〜〜〜やっぱり形から入らないと。それに・・・」
 すももはそこで一旦言葉を切ってから、続けた。
 「伊吹ちゃんのウェア姿は可愛いですし、永久保存物です!」
 気が付くとすももは携帯を取り出し、師匠のウェア姿を激写している。
 「な、何を言っておる!それに写真を取るでない!」
 だが、すももはそんなことはお構いなしにシャッター切りながら、俺に話を振る。
 「和志くんもそう思いますよね!」
 「ああ、そうだな」
 だが、俺には正直師匠のウェア姿よりも・・・
 (すもものウェア姿の方が可愛いな・・・)
 気が付くとそんなことを考えていた。
 それにすももは気が付いていないようだが・・・
 師匠を激写しようと動き回るため、短いスカートが舞って―――
 チラリとスコートが見えそうに―――
 (って何考えてるんだ、俺!)
 俺は視線を無理矢理そちらから引き剥がした。




  「そういえば、吾妻和志よ・・・さっきから紙を見てため息を付いていたようだが、どうしたのだ?」
 師匠がそう俺に聞いて来たのは、師匠のテニスウェア姿に萌えた(?)すももが落ち着いてからのことだった。
 「ああ、これですよ」
 俺はそう言ってもう一度視線をプリントに戻す。
 「・・・ほう」
 師匠は男子の部の組み合わせを見て、面白そうな声を上げる。
 「次の吾妻和志の相手は・・・信哉か」
 そう、クジの結果俺の準々決勝の対戦相手は信哉さんに決定したのだ。
 間違いなく、このトーナメント男子の部の優勝候補筆頭だろう。
 現に試合を見ていたのだが、はっきり言ってスキがない。
 「勝つにはどうすればいいのかと思いましてね。信哉さんの性格を考えると・・・」
 「まあ、吾妻和志が相手でも油断はせぬだろうな」
 「ですよね・・・」
 「勝てるとすれば・・・信哉の不意を付くくらいしか無いであろうな」
 その不意を付けるかどうかも怪しいんだけど・・・
 「・・・兄さんも勝ち残ってるんですね〜」
 いつの間にか、俺と師匠の反対側に回っていたすももが少し驚いたような声を上げる。
 「雄真さんもかなり実力があるぞ。正直当たらなくて良かったと思ってるし」
 組み合わせの結果、俺と雄真さんは決勝まで当たらないことになった。
 「そうなんですか?・・・じゃあ良かったです」
 「えっ?」
 「やっぱり、兄さんと和志くんが戦うのは見たくないですし、仲良くして貰いたいっていうか・・・」
 微妙な感じで言うすもも。
 (すもも絡みでちょっとアレだけどな・・・)
 俺はそんなことを考えながら、あることに気が付いていた。
 「で、あの〜2人共?」
 「何だ?」
 「何ですか?」
 「その・・・もうちょっと離れてくれると嬉しいんだけど」
 よく考えるとすももが俺と師匠の反対側に回った時点で、状況としては、
 俺を挟むようにして師匠とすももが座っているという状態だ。
 傍目には『1年の魔法科と普通科の美少女をはべらせている男』というように見える訳で・・・
 現にさっきから男子生徒(特に1年)の視線の痛さを感じていた。
 『?』
 だが、2人共何のことだか分からないという感じでキョトンとしている。
 (ああ〜すももも師匠も『自分がモテる』っていう自覚がまるで無いんだからな・・・)
 俺は半ば呆れながら首を竦めた。
 『只今から、お昼休憩に入ります。トーナメント準々決勝以降は午後から開始いたします』
 午前のプログラム終了を告げる放送が流れたのはその時だった。
 「よし、じゃあお昼でも食べに行くか」
 俺はそう言って立ち上がる。
 「じゃあみんなで食べませんか?お弁当作って来たので」
 もはやすっかり俺達3人の間のお弁当担当(?)になったすももが言う。
 「あ、私は今回は遠慮しておく。沙耶や信哉と一緒に食するのでな」
 師匠はそう言って立ち上がった。
 「そうですか・・・」
 残念そうな声で言うすもも。
 「たくさん作って来たのに・・・じゃあ」
 すももはそう言って俺を見る。
 「和志くんに頑張って食べてもらおうかな♪」
 「試合前にあんまり食べるのも良くないんだけどな」
 俺は苦笑いを浮べていた。




 
 
  わたしは和志くんの寝顔を見ていました。
 お昼休憩に入った後、制服に着替えたわたしは和志くんと一緒にお昼を屋上で食べました。
 屋上に来たのは和志くんのたってのお願いでした。
 最初は『Oasis』で食べようかと思ったんですが・・・
 和志くんが「そ、それはやめてくれ」と言ったので屋上に来ました。
 わたしの作ったお弁当を和志くんは『美味しい』と食べてくれた後、
 試合で疲れていたのか、芝生の上に横になるとそのまま眠ってしまいました。
 「ふふっ・・・可愛いです」
 わたしの口からそんな言葉が漏れるほど、和志くんは子供のような可愛らしい顔で眠っています。
 (和志くんは・・・どう思ってるのかな?)
 和志くんが『Oasis』に行くのはやめようと行った時、わたしは『どうして?』と聞きました。
 その問いに和志くんは言葉を濁していましたが、本当はわたしはその理由を知ってました。
 (お母さんの撒いた噂・・・のせいですよね)
 わたしも今朝から友達に『すももと吾妻くんって付き合ってるの?』と散々聞かれました。
 もちろん、その噂は否定しましたが・・・
 (わたしは・・・悪い気はしなかったんですけど・・・)
 和志くんはどう思ったのか―――
 わたしはそれが気になっていました。
 「ここまで、出来過ぎだな。本当に」
 「そうかな?私は頑張ってると思うよ、雄真くんは」
 わたしの聞き覚えのある声が聞こえて来たのはその時でした。
 (兄さんと・・・姫ちゃん?)
 お昼を食べ終わって散歩にでも来たのでしょうか?
 2人はわたしには気が付いていないようです。
 「でも、ここまで来るとさすがに優勝したくなってきたぞ」
 「じゃあ、目指すは私と雄真くんでダブル優勝だね」
 「簡単に言うけどな・・・春姫は強敵は柊くらいだからいいだろうけど・・・」
 兄さんはため息を付きます。
 「こっちはまだ、信哉もいるし・・・和志も居るんだぞ」
 「雄真くん、何だかんだ言って和志くんのことも認めてるんだね。すももちゃんのことで怒ってたのに」
 笑いながら言う姫ちゃん。
 「・・・まあ、アイツも伊吹の修行で強くなってるみたいだしな。もちろんすももとのことは別だけどな」
 (兄さん・・・)
 わたしは兄さんが和志くんのことを認めてくれているのを知って嬉しくなりました。
 「でも、緊張するな〜確実に信哉か和志のどっちかと当たることは確実だし」
 「じゃあ、私が雄真くんの緊張を取ってあげようか?」
 「へっ!?」
 姫ちゃんはそう言うと兄さんに近づいて行きました。




  「うっ・・・」
 俺はゆっくりと目を開ける。
 どうやら、よっぽど疲れていたのか眠っていたみたいだ。
 「お、起きたんですね。和志くん」
 「ああ・・・おはよう。すもも」
 俺はそう言ってすももの顔を見る。
 「・・・どうしたんだ?すもも?」
 「へっ!?な、何がですか?」
 俺を見つめるすももの顔は何故か赤くなっていた。
 「い、いやだな〜何でも無いですよ。気のせいじゃないですか?」
 だが、その言葉は明らかに上ずっていて動揺しているのは明らかだった。
 (まあ、俺が気にすることでも無いか・・・)
 その時だった。
 『お待たせしました。これより午後の部、魔法実技トーナメント・準々決勝を開始します。出場予定選手は・・・』
 「よし!じゃあ行くか!!」
 気合の言葉と共に俺は立ち上がった。




  
 
  試合会場の体育館は人が大分集まって来ていた。
 おそらく普通科の球技大会と魔法科・普通科のペア種目も終わったからだろう。
 トーナメントもいよいよクライマックスだけあって注目度も上がって来ている。
 始まった準々決勝はここまでは予想通りの展開だった。
 女子の部は神坂さんと柊さんが順当に準決勝へ。
 男子の部も雄真さんが強さを見せ付けて勝ち上がった。
 (確実に決勝まで上がってくるな・・・こりゃ)
 同時に行われた準々決勝のもう一試合と比較した限り、雄真さんの実力は抜けている。
 「兄さん、あんなに強くなってたんですね」
 俺の隣にいるすももが感心したように言う。
 「神坂さんの教え方もいいんだろうな」
 「ほう・・・それは私の教え方は不服だというのか?吾妻和志よ」
 「い、いえ。そんなことは」
 睨む師匠に慌ててフォローする俺。
 「・・・吾妻和志よ。信哉は本気で来るぞ。勝てとは言わぬが。自分のやれることをやって来るのだ」
 真剣に俺の目を見て言う師匠。
 「は、はい!!」
 俺も真剣に答える。
 「和志くん・・・」
 ふと見るとすももが不安そうな表情をして俺を見ていた。
 「大丈夫だ。俺は・・・負けないから。応援してくれると・・・嬉しいな」
 正直、勝てるという保障は無い。だけど・・・すもものその表情を見ていると弱気なことは言えなかった。
 「う、うん!だけど無理はしないで下さいね」
 その表情が明るくなったのを確認してから俺は試合場へ向った。






  試合場に上がった俺は、師匠が言った『信哉さんが本気で来る』という言葉の意味を実感していた。
 今まで学ランで試合に出ていた信哉さんは―――
 宮本武蔵が着ているような着流しを着ていた。
 おそらくそれが信哉さんの魔法服なんだろう。
 「吾妻殿・・・お主の試合は今まで見せて貰った」
 低い声で言う信哉さん。
 「お主は強い。それ故に俺も本気を出させてもらう」
 その言葉からは自分自身の強さに対する信念が滲み出ていた。
 だが、俺もここで引く訳には行かない。
 ここで負けたら―――また姉ちゃんへの手ががりが無くなるかも知れないのだから。
 「2人共、準備はいいかしら?」
 この試合の審判を勤める御薙先生が声を掛ける。
 同時に頷く俺と信哉さん。
 「それでは、準々決勝第4試合―――始め!!」
 その声と同時に、俺は自分の魔力と―――信哉さんの魔力が高まっていくのを感じていた―――





                      〜第15話に続く〜


               こんばんわ〜フォーゲルです。第14話になります〜

               すももと伊吹の出場した競技はテニス(ダブルス)でした。

            いや、作者的にテニスウェアが萌えるというのが第1の理由ですが(爆)

           一応和志とすももがお互いを意識する展開にするつもりだったんですが

              どちらかというとすもも→和志な描写の方が多くなりましたね。

       それとすももが春姫の行動を見て動揺しているが、それは何故かというのも注目してほしいですね。

            雄真が和志の実力は認めてもすももとの仲に関しては別なのが(笑)
 
           次回は和志vs信哉のガチンコバトルです。どういう展開になるか・・・

                   楽しみにして頂けると嬉しいです!それでは!


管理人の感想

ということで14話でした〜^^

・・・和志、強い(笑)

これも伊吹のスパルタ訓練の賜物か。しかし準々決勝の相手は信哉。

師匠の護衛を務める彼を相手に、果たしてどこまで実力を出し切れるか・・・。


んで、今回の話は幕間とも言うべき昼休憩(?)

・・・なるほど、二人が出たのはテニスでしたか。

私はフィギュアスケートかなと予想していたのですが、よく考えたら学校にそんな馬鹿でかいリンクはないか(汗)

すももに無理矢理付き合わされた伊吹が目に浮かぶようだ(笑)

そして二人きりのお弁当タイム。すももの独白。

・・・確かに、どちらかというと「すもも→和志」的な感じですね。あの大人しいすももが・・・。


次回はガチ勝負。和志の魔法は未だ謎に満ちた部分が多いので、その辺にも注目していきたいですねv



2007.11.9