『解かれた魔法 運命の一日』〜第13話〜








                                      投稿者 フォーゲル



  「・・・」
 俺は意識を集中させる。
 周りの喧騒が聞こえなくなる。
 身体を青い光―――俺の魔力の光が包んでいく。
 その光は俺の身体を完全に包んだ。
 「ほう・・・」
 その光景を見て師匠が感心したような声を上げる。
 「もう良いぞ」
 師匠の声に俺は自分の身体を包んでいる魔力を消した。
 俺と師匠は試合会場になる体育館に来て最後の調整をしていた。
 本来は魔法科校舎にある実技用の部屋を使う予定だったのだが、エントリー人数が多くなったことと、
 多くの人に見てもらえるようにとのことで体育館に魔法科の教師がフィールドを張った特設の試合会場を作ることになったのだ。
 4面ほどの試合会場が出来て、俺と師匠はその近くにいた。
 「どうですか?師匠」
 「正直、ここまでの魔力を練り込めるようになるとは思わなかったぞ。吾妻和志」
 「そうですか?ありがとうございます」
 「後は、実戦経験が無いことだけだが・・・」
 師匠が俺にトーナメントのアドバイスを続けようとした時・・・
 「和志くん!伊吹ちゃん!」
 俺達2人の姿を見つけたすももが近寄って来る。
 「どうしたんだ?すもも」
 「あのですね。伊吹ちゃんに用事が・・・」
 そのすももの言葉に、師匠は何故か浮かない顔をしていた。
 「すもも・・・やっぱり出ねばならぬのか?」
 「そうですよ。わたしと一緒に出てくれるって言ったじゃないですか!」
 「い、いや、しかしだな『あの服』を着るというのはやっぱり抵抗が・・・」
 そう言えば師匠はすももと一緒にペアの球技に出るってことになったらしい。
 ・・・俺はその時、修行で疲れ果てて寝てたんで聞いてないが。
 「大丈夫ですよ。わたしだって着ますから、2人で着れば恥ずかしくないです!」
 「すももはそれでいいかも知れぬが、私は恥ずかしいのだ!」
 (つーかそんなに嫌がるって何に出るつもりなんだ?)
 俺は不思議に思ったのだが・・・
 「和志くんはわたしと伊吹ちゃんの勇姿を見に来てくれるんですか?」
 俺の疑問より先にすももがそんな質問をして来る。
 「う〜ん・・・見に行きたいけど、時間的には試合と被りそうなんだよな」
 「・・・来なくても良い。見に来たら分かっておるな」
 マジックワンドを構えながら俺を威嚇する師匠。
 「わ、分かった。行かない」
 思わず、コクコクと頷く。
 (というか、そういうことを言うってことは出るつもりなんだな・・・師匠)
 すももの頼み事は断れない師匠らしいというか・・・
 (俺も師匠のことは言えないけどな・・・)
 こう何というか・・・すももに笑顔で頼まれると断れないんだよな。
 「じゃあ、和志くん。わたし達行きますね」
 「あ、ああ。そうだ。師匠、試合に関するアドバイスは?」
 すももと一緒に行こうとする師匠に聞きそびれたことを俺は聞いた。
 「・・・先制攻撃だ」
 「はい?」
 「試合が始まると同時に攻撃呪文を撃てばよい」
 それだけ言い残すと師匠はすももと一緒に立ち去った。






  2人が立ち去った後、俺は引き続き最後の調整をしていた。
 (だけど、あれだけのアドバイスで一体どうしろって言うんだ?)
 俺はそう言いながら自分の胸の前に生み出した魔力をコントロールする。
 これも師匠の修行の一環で常に魔力をコントロールしておくことで安定した力を引き出せるようになる―――ということらしい。
 「あら、吾妻くん。大分魔力をコントロール出来るようになったのね」
 「御薙先生。おはようございます」
 俺は御薙先生に挨拶する。
 「おはよう。吾妻くん。・・・先生には式守さんを選んだのね」
 さっきの様子をどこかで見ていたのか、御薙先生は俺に尋ねてくる。
 「はい。御薙先生のアドバイスもありましたから」
 「私としては、式守さんにとってもいいことだと思うから、良かったわ。
  いつか、式守家を継ぐことになる式守さんにとって『人を教え、導く』っていう経験は絶対必要なことだから」
 微笑を浮かべる御薙先生。
 「だけど、あの式守さんが弟子を取るとはね〜一体どんな手を使ったの?吾妻くん?」
 「別に何も・・・しいて言えばすもももお願いしてくれたってことくらいしか・・・」
 あのテストの夜、師匠にお願いをしていたすももの姿を思い出す。
 だが、俺の言葉を聞いた御薙先生は笑みを浮かべながら言う。
 「なるほど・・・すももちゃんも『恋人』の吾妻くんのために一肌脱いだってことね」
 「えっ!?」
 御薙先生の言葉に俺は驚きの声を上げる。
 「『誰が』、『誰の』恋人ですって・・・」
 「『すももちゃん』が『吾妻くん』の。・・・違うの?」
 「ち、違うって言うか・・・何ていうか・・・」
 動揺して言葉が出ない俺。
 「昨日、音羽の家に泊まって2時間も2人きりでイチャイチャしてたって聞いたから、
  もう、『そういう関係』なんだと思ったんだけど?」
 「そ、『そういう関係』って・・・」
 自分の顔が赤くなるのを感じる。
 「そ、それより!誰からそれを聞いたんですか!?」
 俺はある程度予想は出来ていたが、御薙先生にその話を聞いた人物の名を聞いた。






   学園は大きなイベントということで盛り上がっていた。
 その中で、特に一際盛り上がっている場所『Oasis』に辿り付く。
 俺はドアを開けると、真っ直ぐカウンターに向って歩いていく。
 そして―――
 「音羽さん!!」
 俺はカウンターにいる人物に声を掛ける。
 「あら〜和志くん?どうしたの?そんなに血相変えて」
 「どうしたも、こうしたも無いですって!」
 俺は“バンッ!!”とテーブルを叩く。
 周りの人間の視線が一斉に俺の方を向く。
 そのことに気がついた俺は声を潜めて音羽さんに囁く。
 「何で、御薙先生に喋ってるんですか?」
 「え〜?何のこと?♪」
 悪びれもせずに、シレッと言ってくれる音羽さん。
 「俺が昨日、泊まったってことですよ!しかも、何か知りませんけど俺とすももが・・・その・・・」
 「その・・・何なの♪」
 心底嬉しそうに俺の言葉の続きを待つ音羽さん。
 「いいんじゃない?もうこの際『恋人同士』ってことで」
 俺と、音羽さんの会話を聞いていた準さんも笑いながら言う。
 「お、音羽さん?まさか準さんにも喋っちゃったなんて―――」
 「大丈夫よ。和志くん。雄真には黙っておいてあげるから♪」
 「お、遅かったか・・・だけど、音羽さん、何でそんなこと喋ってるんですか!?」
 少し怒りながら音羽さんに抗議する俺。
 「・・・2人のため?」
 小首を傾げながら言う音羽さん。
 「何で、そんなことを吹聴することが俺とすもものためになるんですか?」
 「だって、今の内に既成事実にしておけばいいかな〜なんて思って。それに雄真くんが春姫ちゃんをお嫁さんに貰って、
  すももちゃんを和志くんが貰ってくれれば、私の老後も安泰だし」
 (音羽さんの老後のために俺達をくっ付けようとしないで下さい・・・)
 俺は心の中でツッコミを入れる。
 「でも・・・和志くん?本当のところ、すももちゃんのことはどう思ってるの?」
 「えっ?」
 準さんの質問に俺は一瞬言いよどむ。
 確かに、好きか嫌いかで聞かれれば、それは好きだろう。でもそれは・・・
 「そうやってすぐに答えられない時点で、分かってることなのよ。和志くんが気付いてないだけで」
 「何がですか?」
 「教えてあ〜げない。・・・自分で気が付かなきゃ意味ないしね〜」
 準さんはそう言って笑う。
 「?」
 「だけど、一晩中一緒に居て・・・本当に何もしてないの?和志くん?」
 俺の疑問を置いてけぼりにして、準さんはまた泊まった話に話題を戻す。
 「何もしてないですって!確かに『すももと同じ部屋に2人きりでいた』ってのは認めますけど・・・」
 その時だった。
 “トン、トン”
 俺の背中を誰かが叩く。
 だが、その時俺は興奮していてそれに気が付かなかった。
 「第一、すももに手を出したりしたら、それこそ雄真さんに・・・」
 「あ、あの〜和志くん?」
 準さんが俺に声を掛ける。
 「何ですか?」
 「私が言うのも何だけど、後ろを見たほうがいいわよ・・・」
 「後ろ?」
 俺は言われるままに後ろを振り向く。
 そこには・・・
 困ったような顔をして立っている神坂さんと―――
 「和志・・・『すももに手を出したら・・・』ってーのは一体どういうことだ?」
 「ゆ、雄真さん!?」
 鬼みたいな顔して立っている雄真さんがそこにはいた。
 「あ、あのですね。それには深い訳が・・・」
 「ほう?それに『すももと同じ部屋に2人きり』ってのも俺としてはじっっっくり話を聞きたい訳だが」
 雄真さんのプレッシャーに思わず後ずさる俺。
 「ま、待って下さい!冷静になりましょう?」
 「大丈夫だぞ、和志。俺は冷静だから」
 (と、言いながら目が全然笑ってないーーー!!)
 さらににじり寄る雄真さんに押されながら、
 (終わったな、俺―――)
 俺の心にはそんなあきらめムードが漂っていた。






  (死ぬかと思った・・・)
『Oasis』を出て試合会場で出番を待っていた俺は、さっきまでの光景を思い出して、寒気がした。
 結局、雄真さんの追求は幸いにも軽い説教だけで済んだ。
 というか正確には『吹っ飛ばされる前に、音羽さんのおかげで助かった』と言った方が正しいが。
 「だいたい、かーさんもかーさんだ!何で和志を、泊めてんだよ!」
 そう抗議する雄真さんに、音羽さんの返しはこうだった。
 「だって〜雄真くんってば、春姫ちゃんと付き合い初めてから家に居ても、春姫ちゃんのことばっかりで、
  私とすももちゃんのことは全然構ってくれないんだもん。だから寂しかったっていうか♪」
 「なっ・・・」
 「ゆ、雄真くん・・」
 頬を染める2人にさらに―――
 「まあ、そういうことなら雄真も悪いわよね〜」
 準さんもそれにノッてくる。
 「それで、家での雄真はどんな感じなんですか?」
 「それがね〜もう聞いてるこっちが・・・」
 「かーさん!」
 そのまま俺とすもものことはひとまず忘れられたのだが・・・
 助けてくれたのが音羽さんだったので、俺としては噂を巻いたことに対する文句も言えなかった訳だが。
 そのまま、俺と雄真さん達はトーナメントに出るために、体育館に戻った。
 最も、「和志・・・試合で当たったら、覚悟しとけよ」と雄真さんに警告されたが。
 その一方で、俺は自分の心に浮んだ戸惑いも感じていた。
 すももとそういう関係だと言う噂をすぐには否定できなかった自分に。
 『和志くん♪』
 それと同時にすももの可愛らしい笑顔が俺の脳裏に蘇る。
 (ドクン・ドクン・ドクン・・・)
 俺の心臓がバクバクと音を立てる。
 (な、何だ・・・これは)
 前にすももとデート?した時もこんなことが・・・
 俺がそんなことを考えた時―――
 『吾妻君、吾妻和志君、試合時間なので、D会場に来て下さい』
 (よしっ!!行くか!)
 放送の声が聞こえた俺は、気持ちを切り替えて試合会場に向った。





  「ねぇ・・・伊吹ちゃん?」
 試合までもうすぐだった私とすももは指定された場所で待機していた。
 私達の姿を見ておる連中の視線が気になっていた私にすももが不安そうな声で語りかけたのはそんな時だった。
 「どうしたのだ?すもも?」
 「和志くんは・・・大丈夫ですよね?」
 「心配しておるのか?」
 「だって、和志くん魔法の勉強始めたのつい最近だし。周りの人達は何年も魔法を勉強している人達ですし」
 「大丈夫だ・・・私が教えたのだぞ」
 「そ、そうですよね。伊吹ちゃんが教えたんですし、大丈夫ですよね」
 (私の教えを忠実に守っていれば、今の吾妻和志の実力は―――)




  目の前には信じられない光景が広がっていた。
 俺の初戦の対戦相手は『ClassC』の3年生の先輩だった。
 師匠の教え通りに俺は、最初に先制攻撃を仕掛けた。
 『ウェル・シンティア・レイ・フェニス・ラル・フェステル!!』
 俺の前に3、4発の魔力弾が生まれた。
 その瞬間―――
 “ヴンッ!!”
 今までより段違いの手ごたえがレイアを通して俺の中で感じられた。
 『和志!そのまま解き放ちなさい!』
 レイアの声に従い、俺は魔力弾を解き放つ。
 その魔力弾は相手の攻撃魔法をあっさり蹴散らし、相手を場外に吹き飛ばしていた。
 「・・・そ、そこまで!!」
 審判の先生が慌てて試合を止める。
 “オオオオッ!!”
 試合会場の周りが盛り上がる。
 「・・・」
 俺は呆然と自分の拳を握り締める。
 (これは・・・マジで上位までいけるか?)
 かすかな手ごたえを俺は感じていた―――





                       〜第14話に続く〜


               こんばんわ〜フォーゲルです。第13話になります。

        ついに始まったトーナメント。果たして和志は上位進出なるか?という段階の話ですが・・・

          どっちかというと和志とすももの関係がどうなんだ?というのがメインの話に(笑)

            着々と外堀を埋めて、2人の関係を『既成事実』にしてしまおうという音羽と、

     和志が自分の家に泊まった上に、すももとイチャイチャしていた(?)という事実にブチギレの

                   雄真の方が目立っているという(笑)

    後はすももと伊吹は何の競技に出ようとしてるのかにも注目してほしいですね。(次回で明かされるので)

                        それでは、失礼します〜


ということで、13話をお送りしました〜^^

・・・さすが音羽さんだ(爆)音羽さんのキラキラした顔が目に浮かぶようですね。

そして勝手に噂を広められたことに、激昂する和志だったが。

音羽と準のコンビネーションにあえなくはぐらかされ、しかも自分から死亡フラグを立ててしまうとは(笑)

雄真が・・・さすがは自称シスコンw

そしてとうとう始まりました、魔法実技トーナメント。

伊吹の言う先制攻撃。それを忠実に実行した和志の魔法は・・・本人も驚くような結果に。

相手もCクラスということは、それほど弱くはないはず。それをいとも簡単に場外に吹き飛ばしたとは・・・^^;

伊吹は、やはりスパルタだったようですね(笑)


それでは、次回もお楽しみに!



2007.10.27