『桜がもたらす再会と出会い』〜第39話〜
投稿者 フォーゲル
俺は朝からまどろんでいた。
いや、せっかくの冬休みだというのに朝から早起きするというのも何だかなという気がするし。
本来だったら俺みたいな中学三年は受験勉強で悠長に寝ている場合じゃないのだが、
風見学園は中高一貫高なのでほとんどストレートに進学することが出来る。
(こういう時には風見学園の生徒で良かった〜)
こういう時だけ、自分の境遇に感謝しながら俺のまどろんだ意識は再び眠りにつこうとしていた。
その時―――
“ガチャッ・・・”
俺の部屋のドアが空く音がした。
(?)
意識がまた引き戻されるの感じた俺はそちらに意識を向ける。
「あ〜まだ寝てる・・・」
「本当にしょうがないよね〜」
聞きなれた声が2つ聞こえて来た。
その2つの声は俺が寝ているベットの近くまで来るとその動きを止めた。
「さて、どうやって起こそうか?」
気配の一つが呆れたように言う。
「あ、じゃあ・・・こんなのはどうですか?」
もう一つの気配が思いついたようにもう一つの気配に耳打ちする。
「え・・・ええっ?」
何故か驚いたようなリアクションをする。
「いいじゃないですか〜どうせいつかは・・・」
「・・・」
押し黙る気配。
「いいですよ〜やらないなら私が一人で・・・」
「ち、ちょっと待って下さい!」
そう言って慌てて反論するもう一人。
「じゃあ、反対側に回って下さい♪」
言われるままに俺の寝ているベットの反対側に回る。
「じゃあ、行きますよ。せ〜の・・・」
『冬貴君、だ〜い好き♪』
“ガバッ”
俺は思わずベットからハネ起きる。
『キャッ!!』
2人の女の子の悲鳴がハモッて聞こえて来た。
「2人共・・・朝から何やってるんだよ」
俺は呆れながらベットの左右に陣取っていた『2人の美春』にツッコミを入れていた。
『冬貴君、明けましておめでとうございます』
まるで、双子のようにハモッて新年の挨拶をする『美春』と『ミハル』。
「あ、明けましておめでとう。今年もよろしくな」
それに合わせて挨拶する俺。
「いや〜それにしても・・・」
俺は思わず並んだ2人を見て唸る。
美春が目を覚ましたあのクリスマスの夜から一週間が立っていた。
その間、美春は後遺症が残ってないかなどの精密検査を受けていたので俺は2人が同時に存在しているところを見るのは、
始めてなのだが・・・
「お前達・・・本当にソックリだな〜」
改めて見ると本当に双子というかパッと見では見分けが付かないだろう。
(ちなみにヘアバンドが白いのが美春で、緑がミハルらしい)
まあ、それ以外にも見分けが付かない理由はあるのだが・・・
「で、どうですか?冬貴君?」
そう言ったのはミハルだった。
「どうって・・・何が?」
「私達の格好ですよ〜せっかくお正月だからおめかしして来たのに・・・」
2人はお正月恒例の晴れ着を着ていた。
普段の制服姿とかなら、ゼンマイを付けてる方と付けてない方とか見分け方が出来るのだが・・・
今日はどこかに閉まっているのか、身に付けていなかった。
「あ、ああそういうことか・・・」
(そんな感想一つに決まってるじゃないか・・・)
もちろん2人とも似合ってる。
だが、それを言うとこの2人の性格から考えると―――
「それで、冬貴君・・・どっちが似合ってる?」
今度は美春が俺の予想通りの問いをして来る。
(ああ〜やっぱり・・・)
俺は心の中でそう呟いていた。
だけど、どっちが似合ってると言ったら・・・いろいろと問題が・・・
『どっち?』
何故か2人して真剣な顔をして―――でも笑いをこらえながらのような感じも―――
(こ、この2人・・・俺が困ってるのを見てからかってるな・・・)
俺はどうしたもんかと考えながら―――
「あ、そ、そうだ!年賀状来てるかも知れないから見てこないと」
そう言って部屋を出ていく俺。
「あ、待って冬貴君!」
俺の後を付いてくる美春。
その後ろからミハルの「うまくはぐらかされちゃいました〜」とかいう声が聞こえて来た。
“パン、パン”
お賽銭を入れた後、俺は手を合わせてお願いをする。
あの後、美春お手製のお雑煮を食べた後、俺達は初詣のために胡ノ宮神社に来ていた。
ちなみにミハルはお雑煮とかのお正月料理は作れないらしい。
まあ、普段作ってる料理はともかく、お雑煮みたいに年に一回しか作らない料理の場合はしょうがないよな。
俺の隣に立つ美春とミハルもそれぞれにお願いごとをしていた。
「2人共、どんなお願い事をしたんだ?」
俺はそう2人に聞く。
「え〜内緒だよ〜ねぇ、美春さん」
「そうだよ。『乙女の秘密』だし」
2人して笑いながら言う。
(お、乙女の秘密って・・・そんな大したことでもないような)
「で、冬貴君は何をお願いしたの?」
美春が興味深々に聞いてくる。
「な、何で教えなきゃいけないんだよ」
2人は教えてくれなかったのに・・・
「私も教えて欲しいです〜」
ミハルまでその質問にノッてくるし・・・
「・・・」
俺が黙秘権を発動して、黙っていると。
「ううっ・・・冬貴君は美春達に隠し事をするんですね」
泣きまねをする美春。
(うっ・・・)
嘘泣きだと分かっていてもこういう表情をされると辛い。
「分かった、分かったよ・・・言えばいいんだろ。言えば・・・」
(はぁ・・・子供のころから美春に泣かれると抵抗できないんだよな・・・)
今にして思えば、その頃から俺は美春のことが好きだったんだな。
そんなことを考えながら俺は口を開く。
「別に対したことはお願いしてないぞ。今年一年健康に過ごせるようにとか、
今年から高校生だから、甲子園出場とか・・・」
俺は指折り数えながら言う。
「冬貴君・・・そのお願いはお賽銭10円じゃ贅沢じゃ・・・」
思わずツッコミを入れてくるミハル。
「だけど、一番のお願いは―――」
俺はそう言って美春とミハル、左右に立っている2人の肩を掴む。
『あっ・・・』
思わず声をハモらせる2人。
「『俺達3人が仲良く過ごせるように―――』かな」
思わず黙り込む2人。
(ぐぉっっっ・・・恥ずい、恥ずいぞ)
自分で言ってしまった後、思わずその場にへたりこみたくなる俺。
「と、冬貴君・・・真面目なお願いしてるんだね」
感心したように言うミハル。
「お前な・・・一体俺をどういう目で見てるんだよ」
「う〜ん、もうちょっと即物的なお願いかな?『一度でいいから学園のある日に家で爆睡したい』とか・・・」
「お前は・・・こうしてやる!」
俺はそう言ってミハルの頭をワシャワシャする。
「ち、ちょっと〜やめてよ・・・美春さんが見てますよ」
「えっ?」
見ると美春が俺とミハルがジャれている様子を美春がジッと見ていた。
その表情に一瞬、変な感じが浮んだのを俺は感じた。
最も、俺と目が会うと美春の表情からは一瞬浮んでいた変な感じは消えていたが・・・
(何なんだ?)
俺がそんなことを考えていたその時―――
『美春〜〜〜!!』
遠くから美春を呼ぶ声が聞こえて来た。
見ると、晴れ着を着た音夢さんとかったるそうに付いて来る純一先輩の姿が見えた。
「明けましておめ・・・」
俺達に近づいて来て、そこまで言った時、音夢さんは固まった。
(?)
俺はしばらく考えて―――
(あああっ!!)
「み、美春が2人・・・?」
音夢さんは呆然と呟いていた。
(し、しまった。そういえば音夢さん達には何にも事情説明してなかったんだ)
俺が必死に言い訳を考えていると―――
「ね、音夢先輩。実は彼女は美春の双子の妹なんですよ〜」
そう口を開いたのは、美春だった。
「双子の妹?でもそんな話、美春の口から一言も・・・」
「そ、そうなんですよ〜音夢さん達と美春が知り合う前に美春の親戚の家に養子として貰われていったんです。
俺は生まれた時からの幼なじみなんで知ってるんですけどね。そうだよな!」
俺はミハルに振る。
「そ、そうなんですよ〜初めまして」
何とか美春の話に合わせる俺とミハル。
「ふ〜ん・・・ねぇ、あなた、名前は?」
ミハルの方を見ながら、質問をする音夢さん。
「へっ!?」
その質問に思わず動揺するミハル。
だが、その質問に答えたのは俺でもミハルでも無かった。
「・・・春菜ちゃん」
(えっ?)
音夢さんの問いに答えたのは美春だった。
「そうだよね〜春菜ちゃん」
「そ、そうです。天枷春菜って言います」
「そうですか、初めまして!朝倉音夢と言います。でこっちが・・・」
納得したのか、ミハルに自己紹介する音夢さん。
俺はとりあえずホッと胸を撫で下ろしていた―――
『う〜ん・・・美味しいです』
美春とミハルは2人してハモりながらバナナパフェを食べていた。
8人前はあろうかという特大バナナパフェを2人はあっさりと片付けていく。
そもそもは初詣を終えた後、3人で歩きながら通りかかった喫茶店の張り紙が原因だった。
『超特大バナナパフェ、30分以内に食べきったら賞金進呈!!』
俺としては2人共晴れ着なんだし止めといた方が・・・と思ったのだが。
「これは美春達2人に対する挑戦状ですね。ミハさん」
「私達の力を見せてあげましょう。美春さん」
一致団結した2人の力は凄く、残り10分くらいで後一人前くらいになっていた。
あ、店長さんが涙目だし・・・
(2人共出入り禁止にならなけりゃいいが・・・)
俺はそんなことを考えながら2人の様子を見ていた。
「あ、私、ちょっとトイレに・・・」
そう言って席を立つミハル。
その間に俺は美春に話し掛けた。
「なあ、美春・・・何で『あの名前』なんだ?」
「あの名前って?」
「音夢さんにミハルのことを紹介した時の名前だよ」
「ああ・・・とっさに出てきたの。あの時のことを思い出して・・・」
「だけど、お前、あの時怒ってたじゃないか?」
あの時―――
俺が未来から帰って来て、『春菜』という名前について散々美春に問い詰められた時のことを思い出す。
「まあ、そうだけど・・・とっさに浮んだんだよね〜それに・・・」
「それに?」
「何かその名前・・・美春に凄く関係あるような気がして・・・何故かは分からないんだけど」
「・・・」
もちろん、俺は未来に行って来たなんてことは美春に言っていない。
(言っても信じないだろうし)
ましてや、その名前で呼ばれてた娘が美春の娘かも知れないなんてこともだ。
(やっぱり微妙に因果関係があったりするのか?)
俺はそんなことを考えていた―――
〜第40話に続く〜
こんばんわ〜フォーゲルです。第39話になります〜
今回はリアルの世界よりはちょっと遅れてお正月編です。
美春とミハル。2人の美少女に囲まれて『両手に花』な冬貴を羨ましいと
思って頂ければ幸いです。
後は、音夢に紹介した時のミハルの名前ですね。
『ここでその名前?』とか思って意表を付けたのならいいのですが・・・
次回も楽しみにして下さい。それでは!!
管理人の感想
いよいよ今話から、二人の美春編ですね。
・・・っていうか、朝っぱらから羨ましすぎるぞ、冬貴!コレ、なんてハーレムEND?(笑)
そして三人で初詣へ。真剣に祈る二人の願いは、たぶん根本は同じもの・・・。
それは、先のある者として彼との幸せを願う美春と、先の無い者として彼と彼女の幸せを願うミハル。
でも冬貴の願いは、ある意味とても優しくて、そしてとても残酷で。
きっとだれもが、心の奥ではそんな未来を望んでいるというのに・・・。
そして音夢から尋ねられて、咄嗟に美春が言い繕った名前。
春菜。それは冬貴が未来に行った時に知った、娘の名前。それをなぜ彼女が・・・?
ってことで40話もお楽しみに!^^