『桜がもたらす再会と出会い』〜第40話〜








                                     投稿者 フォーゲル







「ふわぁ〜・・・」
 私は布団の中で大きな欠伸をします。
 ふと、ベットの側に置いてある時計を見ます。
 時計は、もう学園に行く時間を指していました。
 それでも、私はベットの中から出ようとはしません。
 いや、正確には『出る必要が無い』と言った方が正しいです。
 (美春さんが居ますからね)
 隣りの部屋―――美春さんの部屋からは、物音が聞こえて来ます。
 きっと学園に行く準備をしているんでしょう。
 美春さんが目覚めた以上、私の役目はもう終わりです。
 (もうみんなに会えないのは悲しいですけど・・・これでいいんです)
 私がそんなことを考えてると―――
 美春さんの部屋のドアが空く音が聞こえました。
 そして、その足音が私の部屋の前で止まります。
 (挨拶に来てくれたのかな?)
 ドアがゆっくりと空いて、美春さんが私の部屋に入って来ます。
 そして―――
 「春菜ちゃん?まだ寝てるの?」
 「えっ?」
 ちなみに余談ですが、美春さんと冬貴くんはあの日、3人で初詣に行った日以来、
 私のことを『春菜ちゃん』と呼んでいます(冬貴君は呼び捨てです)
 それはともかく、美春さんはまだベットの中にいる私を見て呆れたような声を上げました。
 「ほら、今日から学園なんだから、準備して下さい」
 「えっ、でも・・・」
 戸惑う私に美春さんは笑いながら言います。
 「つまりはこういうことです!」
 そう言って美春さんは、私に向って『ある物』を手渡します。
 それは綺麗にクリーニングされた風見学園中等部の制服でした。






  「で、どうだったんだ?春菜。改めて来て見た風見学園は?」
 笑いながら、私に話し掛ける冬貴君。
 「やっぱり緊張したよ〜『美春さん』としては来てない訳だし・・・」
 「まあまあ、その辺はこれからゆっくりと慣れていけばいいよ」
 コーヒーを飲みながら言う暦先生。
 「そうだな。これからは『天枷春菜』として過ごして行く訳だし」
 冬貴君も暦先生に同感のようでした。
 始業式が終わった後、私達は暦先生の根城でもある生物準備室に来ていました。
 「だけどいろいろあって疲れました〜」
 私はそんなことを言いながら、朝のことを思い出していました。



 あの後、私は制服に身を包むと急いで美春さんと家を出て暦先生のところに行きました。
 そこには、朝早いのに冬貴君も居ました。
 事情を飲み込めない私に暦先生は説明をしてくれました。
 
 「いいかい?これからアンタは『天枷美春』の妹『天枷春菜』として生きて行くんだ」

 「それはどういう意味ですか?」
 そう問い掛けた私に答えたのは、冬貴君でした。
 「特に意味なんか無いよ。これからは春菜には『美春の代わり』じゃなく『一人の女の子』として過ごして欲しいんだ。
  それにこれは俺達3人としての願いだ」
 「そうだよ。わたしとしても妹が出来るのは嬉しいし」
 「冬貴君・・・美春さん」
 私の心にいろんな感情がこみ上げて来て―――
  
 “ポロッ・・・”

 私の頬には涙が伝っていました。
 「ありがとう・・・」
 「あ〜ほら、泣くのは後だよ。ほれ、3人共急がないと遅刻だよ」
 「そうだな。行くぞ、美春、春菜!」
 『うん!!』
 2人で声をハモらせると、私達は冬貴君の後を追いました。





  その後は『美春さんの双子の妹で3学期から風見学園に転校して来た天枷春菜』としてクラスのみんなに紹介されて、
 質問攻めに会ったりしました。
 私はもちろん『美春さん』として過ごしていた時期があったのでみんなのことは知っていましたが、
 当然クラスのみんなはそれを知らないので、私に興味深々で質問してきました。
 いろんな質問に答えながら、私は嬉しさで一杯になっていました。
 『私を私として見てくれる―――』
 そのことがこんなに嬉しいことだとは思いませんでした。





  「戻りました〜」
 その声に私の意識は現実に引き戻されました。
 「美春〜お疲れ〜」
 風紀委員のお仕事を終えた美春さんが戻って来ました。
 「いや〜疲れました」
 そんなことを言いながら、私の隣りに美春さんが座ります。
 「大丈夫か?結構疲れた顔してるけど・・・」
 心配そうに冬貴君が美春さんの顔を覗き込みます。
 「う、ううん大丈夫だよ!」
 顔を赤くしながら答える美春さん。
 その様子に思わず私は笑ってしまいます。
 (2人も大変ですね〜)
 この分だと、まだもう少し掛かりそうですね・・・
 「?、どうしたんだ?春菜?」
 「えっ?何でも無いよ」
 冬貴君の質問に答える私。
 「そういえば、春菜ちゃんのこともう噂になってたよ?」
 「えっ?」
 美春さんの話だと結構私に関して他のクラスからも私に関して質問されることが多かったそうです。
 「やっぱり・・・春菜ちゃん可愛いから」
 ため息を付きながら言う美春さん。
 「か、可愛いからって・・・美春さんだって同じ顔じゃないですか?」
 「そうは言うけど・・・春菜ちゃんはどことなくわたしと違って大人っぽいし」
 「そ、そんなことないですよ」
 2人してお互いを褒めあう私達。
 「まあ、むしろこれから大変なのは、柊じゃないのかい?」
 笑いながら言う暦先生。
 「俺ですか?」
 「そうだよ〜天枷は何だかんだで結構男子に人気あるからね〜しかも『妹』の方も柊にベッタリとなると・・・」
 『そ、そんなことないですよ〜』
 思わず揃って反論する私と美春さん。
 「・・・俺、ひょっとして男子連中に白い目で見られます?」
 「覚悟はしておいた方がいいかもね〜」
 「そ、そんな〜」
 冬貴君の複雑な想いが思った声が生物準備室に響きました。







  「あ〜良かったな〜・・・」
 俺は心の底から喜んでいた。
 もちろん、春菜がすんなりとこの学園に馴染めたことだ。
 美春の代わりとして来ていたのだから当たり前といえば当たり前なのだが・・・
 それでも、俺は春菜が『春菜自身』として生活しているのが何よりも嬉しかった。
 (美春も妹が出来て嬉しそうだしな・・・)
 数歩前を歩く2人の姿を見ながら、俺はそんなことを考えていた。
 それにいい報告もあった。
 暦先生によると、春菜の人工知能に掛かる負担が大分減っているらしい。
 どういう理由かは分からないけど、この分ならしばらくは機能停止の心配は無いということだ。
 (本当・・・全てがいい方向に転がり始めているな・・・)
 俺がそんなことを考えてると・・・
 『冬貴君〜どうしたの〜早く〜』
 2人が俺を呼ぶ。
 「ああ、分かった、今行く!!」
 春菜が俺に抱いている想いや俺が美春に抱いている想い・・・
 いずれはハッキリさせなきゃいけないことだけど、今は・・・
 (今は、この生活を楽しんでもバチは当たらないよな?)
 俺はそんなことを考えながら、2人の元へ走っていった―――





                         〜第41話に続く〜

   

                こんばんわ〜フォーゲルです。第40話になります〜 

         まずはほぼ一年近く更新が止まってしまったことをお詫びいたします。すいませんでした。

             これからは、月1ペースでもいいから更新していきたいと思います。

        さて、今回の話ですが・・・ミハル(春菜)に対するサプライズをテーマに書いて見ました。

                 個人的にはFSでやって欲しかったネタ・第1弾ですね。

              これからの『天枷姉妹』の活躍(?)に注目して頂けると嬉しいです。

                         それでは、失礼します〜




管理人の感想

雌伏のときを経て一年・・・フォーゲルさんの「桜がもたらす再会と出会い」が華麗に復活を遂げました!!^^

その一話目は、いきなりのサプライズ。春奈・・・もといミハルの風見学園への編入。

確かにこれは、斬新で新鮮ですね。同じ学園に通う、二人の美春。そしてその美春たちを両手に華状態で侍らす冬貴。

・・・うん、殺意を持たれてもおかしくないぞ、冬貴よ(笑)


それでは!



2009.1.16