『桜がもたらす再会と出会い』〜第31話〜






                                  投稿者 フォーゲル






  「本当に〜すみませんでした!!」
 俺はそう平謝りに謝る。
 朝、いつものように俺と美春、音夢さんと純一先輩と学園へ急ぎながら
 学園の不審者騒動から一夜明け、俺は音夢さんや純一さんに頭を下げていた。
 「気にしないでいいですよ。別に不審者じゃなかったんですから」
 「まあな〜。いい暇つぶしにはなったし」
 2人とも幸いあまり怒ってはいないようだったので、俺はほっと胸を撫で下ろしていた。
 「オフクロも反省してました。今度からは許可を取ってから入るって」
 「・・・出来れば入らないで欲しいんですけどね」
 苦笑いを浮かべながら音夢さんが言う。
 「でも、笑美流さんは何で夜の学園に入ってたの?」
 俺の隣を並んで歩く美春が当然の如く、疑問を浮かべる。
 「オフクロが言うには、一週間くらい前に風見学園の近くで変な生き物を見たとか何とかって・・・」
 「変な生き物?」
 純一先輩が訝しげに眉を潜める。
 「何でも、ピンク色のクマっぽい生き物だったらしいんですけど・・・」
 「ピンク色のクマですか?さすがにそんなのは居ないと思うんですけど・・・」
 音夢さんも首を傾げる。
 「俺も『そんなのいないだろ』って言ったんですけどね」
 オフクロは『居るってことを証明できない以上、居ないって断言することもまた出来ないはずよ』って主張した。
 「まあ、オフクロもそんなことをするために初音島に帰って来たんじゃないんだろうからとりあえず大丈夫でしょう」
 俺は音夢さん達を安心させるためにそんなことを言った。
 「あれ?じゃあ笑美流さんは何のために初音島に帰って来たの?」
 美春の疑問に答えたのは俺では無かった。
 「多分、このためだと思うぞ。わんこ嬢」
 「あ、杉並先輩」
 俺達の目の前には、一枚のチラシをヒラヒラさせながら杉並先輩が立っていた。
「杉並先輩、何か知ってるんですか?」
 俺はそう問い掛ける。
 杉並先輩は黙って俺にそのチラシを見せる。
 そこにはこう書かれていた。
 
   『世界的ミステリーハンター・柊笑美流氏講演会』


 「講演会?」
 覗きこむようにチラシを見た美春が不思議そうな声をあげる。
 俺に送られてきた手紙にもそんなことが書いてあったような・・・
 「しかし・・・柊よ。笑美流女史がお前の母親だったとはな。教えてくれても良かったのではないか?」
 不服そうな調子で言う杉並先輩。
 「杉並先輩、俺のオフクロのこと知ってたんですか?」
 「知ってるも何も、こっちの世界ではかなりの有名人だ。ぜひ機会があればお近づきになりたいと思っていたのだ」
 (杉並先輩の愛読書である『ヌー』にも論文書いてたっけ・・・そういえば)
 「俺はぜひ今度の講演会を見に行きたいのだが・・・混雑しそうだから早めに会場入りしなければ」
 「そんなに混むとも思えないですが・・・」
 「何を言う。こっちの世界の有名人やら、非公式新聞部の連中はこぞって行くと思うぞ」
 その言葉に美春と音夢さんの表情が変わった。
 「ふっ・・・心配するな朝倉妹よ。今回は話を聞くだけだ。何かしようという気はない」
 「本当ですか?」
 思いっきり疑わしげな目で杉並先輩を見る音夢さん。
 (というか俺は非公式新聞部の人達がそんなにいるとは思ってなかったんだが・・・)
 「では、俺はもう行くぞ。さらばだ」
 そう言って俺達の前から立ち去る杉並先輩。
 「・・・どうします?音夢先輩?」
 杉並先輩が立ち去ってしばらくした後、口を開いたのは美春だった。
 「一応マークしておいた方がいいかもね。それに・・・」
 「それに?」
 「杉並くんのいうことが本当だったら非公式新聞部の全容が解明されるかも知れないしね」
 「そうですね・・・」
 確かに美春達風紀委員の連中にしてみれば、天敵(?)の非公式新聞部の全容が分かるまたとないチャンスだろう。
 「あ・・・でも」
 不意に不思議そうな声を上げたのは美春だった。
 「笑美流さん、一週間くらい前から初音島に戻ってたってことは・・・その間、どこに泊まってたの?」
 「一応、心当たりはあるんだが・・・あとでお礼を言いに行かないとな」
 俺はそう言ってため息を付いた。




  俺はある部屋の前に来ていた。
 そしてドアをノックする。
 「開いてるよ〜」
 その声を確認して、俺はドアを開ける。
 そこには・・・
 「どうしたんだい。柊」
 今日の仕事は大方終らせたのかリラックスしてタバコをふかせている暦先生。
 「こんにちは、暦先生」
 俺は近くにあった椅子に座る。
 「すいません。うちのオフクロが世話になったみたいで」
 「ああ、いいんだよ。笑美流さんは私にとってもお世話になった人だし」
 そう言って笑いながら更にタバコを吸う暦先生。
 「そもそもうちのオフクロと暦先生ってどういう関係なんですか?」
 「あの人は私の家庭教師だったんだよ」
 詳しいことを聞くと暦先生は、自分の夢を叶えるために本土の学校へ進学することを決めた。
 だが、そのためには成績が足りなかったらしい。
 「その時に家庭教師を買って出てくれたのが・・・」
 「うちのオフクロだったって訳ですか」
 「そういうことだね」
 「でもうちのオフクロ、そんな頭良いようには見えないんですけど」
 「アンタ、何も知らないんだね。笑美流さん、国公立大学をトップ合格出来るほどの頭の持ち主なんだぞ」
 「そうなんですか?」
 「息子のアンタを見てるととてもそうは思えないんだけどね〜〜」
 「放っといてください・・・」
 俺は思わずため息を付く。
 話題を変えようと俺は口を開く。
 「暦先生の夢って何だったんですか?」
 「人工知能や多足歩行機械の研究者」
 「!!」
 俺はその言葉に絶句した―――それってつまり・・・
 「だから本当に感謝してるんだよ。笑美流さんには。私は自分の夢を叶えることが出来たし」
 「あの『美春』も生まれて来なかったってことですね」
 (ある意味オフクロも美春の母親みたいなものか・・・)
 「ところで柊、その天枷はどこに行ったんだい?」
 「ああ、今日はですね・・・」
 俺が言葉を続けようとした瞬間―――
 【コン、コン】とドアを叩く音がした。
 「お姉ちゃん、居るの?」
 「ことり?開いてるから勝手に入りな」
 「それじゃ、失礼します」
 入って来たのは白河先輩と美春だった。
 「あれ、随分珍しいコンビだな」
 「冬貴君、美春と白河先輩が一緒にいちゃおかしいの?」
 「いや、そういう訳じゃないけど・・・」
 俺はそう言いながら白河先輩に話題を振る。
 「どうしたんですか?美春と一緒にここに来るなんて・・・」
 「えっと・・・笑美流さんがですね、今日家でホームパーティ開くから、お姉ちゃんにもぜひ来てほしいって」
 「オフクロが?」
 俺は驚いた声を挙げた。
 (つーか、何で白河先輩が俺のおフクロのことを?)
 「私もお姉ちゃん共々笑美流さんにはお世話になってたんですよ〜」
 俺の心の中の疑問に答えるかのように白河先輩が笑いながら言う。
 「お姉ちゃんの勉強が終った後、私の遊び相手になってくれたりしたんですよ」
 昔の思い出を振り返りながら言う白河先輩。
 「そういえば、その時の笑美流さんよく言ってましたよ」
 白河先輩は俺と美春を見ながら言う。
 「『うちの息子も連れてきて、ことりちゃんの遊び相手にしてあげたいんだけど・・・
  最近、『彼女』が出来てその娘と遊んでばっかりなのよ〜』って」
 そ、そういえば確か美春と仲良くなったのもその時期だったような・・・
 「柊君ってひょっとしてもうその頃から・・・」
 ものすごーく期待しているような口調で言葉を続ける白河先輩。
 「べ、別にいいじゃないですか、そんな昔のことは」
 俺から期待通りの答えを聞き出そうとする白河先輩の質問を強引に打ち切る俺。
 (素直にハイそうですなんて言えるか・・・)
 俺自身が気付くのが遅すぎただけで多分、俺は子供の頃から美春のことが好きだったのだろう。
 (いつか俺も告白する日が来るのか?いつのことになるかは分からないけど)
 ふと、そんな想いに捕らわれていると・・・
 「ああ〜もうこんな時間です。白河先輩!行きましょう」
 美春の大きな声が響いたのはそんな時だった。
 「何か用事でもあったのか?」
 「せっかくなんで、笑美流さんの他に私と天枷さんも料理作ろうってことになったんです」
 「それで今から白河先輩と一緒にお買い物してこようかと思って・・・そのついでに寄ったんです」
 ここに来た理由を手短に話す2人。
 「それで、お姉ちゃん。今日の夜は空いてる?」
 「ああ、大丈夫だよ。ちゃんと行くからって伝えておいてくれるか?」
 「それじゃあ、オフクロには俺から伝えておきますよ。白河先輩と美春はそのまま買い物してきちゃっていいですよ」
 「そうですか?それじゃあ、お願いします。天枷さん行こうか?」
 「そうですね・・・冬貴君、期待しててね♪」
 それだけ言うと白河先輩と美春は研究室を出て行った。
 



  「・・・どうやらあの娘は学園生活を満喫出来ているようだね」
 2人が出て行った後、暦先生は少し安心したような口調で言った。
 「何か心配なことでもあるんですか?」
 「ああ、実はね・・・」
 暦先生から聞かされたことは、最近美春の人工頭脳に掛かる負荷が大きくなってきているということだった。
 今はまだそうでもないが、このままだとちょっとマズイことになるかも知れないということだった。
 「マズイこと?」
 「・・・いつかは機能停止してしまうかも知れないってことだ」
 「そんな!!」
 『美春』はまだ生まれたばっかりでやりたいことだってたくさんあるんだろうに・・・
 それに何よりまだ『姉ちゃん』と対面を果たして無いじゃないか。
 「原因は分からないんですか!?」
 「落ち着け。柊。私も必死で調べてるんだ」
 「あ・・・す、すいません」
 俺は必死に自分を落ち着かせる。
 「じゃあ、最近美春のゼンマイを巻かなきゃならないことが多いのもそれが原因なんですか?」
 「?どういうことだい?」
 俺は昨日の夜、美春が突然ゼンマイ切れになったことを明かした。
 「確かにそれも調べてみる必要がありそうだね」
 腕を組んで考え込む暦先生。
 「いつごろから負荷が掛かるようになったんですか?」
 「お前達、この間みんなでキャンプに行ったじゃないか?あの直後くらいからだよ」
 キャンプ直後?
 俺はその時のことを必死に思い出す。
 確かにあのキャンプではいろいろあり過ぎて美春に負担を掛けるような事態も多かったけど・・・
 「アンタは怪我してたみたいだから、天枷にも何かあったんじゃないかと思って調べてみたんだ」
 「どうだったんですか?」
 「・・・外傷性の傷とかが原因じゃないみたいなんだ」
 「ということは・・・」
 「精神的なものが原因ってことになるね」
 (精神的なもの?つまり・・・)
 「天枷の奴、何か悩みごとでもあるんじゃないかと思ってるんだ。私は」
 「・・・」
 俺は沈黙した。
 (全く、あのバカ・・・悩みごとがあるんだったら、俺に相談しろっての)
 「だからさ、柊・・・」
 黙っていた俺に暦先生が俺に話しかけてくる。
 「分かってます。それとなく今夜のパーティの時にでも聞いてみますよ」
 「お願いできるかい?私じゃ言い出しにくいことかも知れないし」
 「任せておいて下さい」
 俺はそれだけ言うと、暦先生の研究室を出た。




  俺は家路を急いでいた。
 だが、俺の心の中は情けなさで一杯だった。
 美春が俺に悩み事を打ち明けてくれなかったこと、そしてそのことに全く気が付かなかった自分が悔しかった。
 (こんな時、お前だったらどうする?なぁ・・・『美春』)
 俺は今も病院のベットで寝ているであろう『本物の美春』に問い掛けていた――――




                       〜第32話に続く〜



                こんにちは〜フォーゲルです。第31話になります〜

         今回は笑美流と各キャラクターの関係性も入れた話になりましたね。(特に白河姉妹)

              杉並に尊敬されてるって時点でもうキャラ立ってる気がする。

                 冬貴もそこで笑美流に付いていけば良かったのに〜

                 ことりとも幼馴染ってことになってフラグが(爆)

             ミハルの悩みごととは何なのか?にも注目していただけると嬉しいです。

               (キャンプ直後からなら『アレ』しかないと思うが・・・)

                    次回はパーティ編になるかと思います。それでは!!


管理人の感想

笑美流さんが中心となった今回の話。・・・しかし本人は出番なし(汗)

杉並に尊敬されているとのことで、そういえばミステリーハンターだったなぁなんて思い出したり・・・^^;

後は白河姉妹との関係も意外でしたね。でも確かに年齢的に考えると、家庭教師というのはかなり当てはまってるかなぁ。

暦先生が現在20台半ばとして・・・笑美流は冬貴の母であることから40前後くらいか。

大学受験の時に家庭教師をしていたとして、その時暦先生は18。笑美流は30ちょっとくらい?

もう既に冬貴と美春が遊んでいる時期なので、だいたいそんなものかなぁ。(小学校低学年くらい)


そして明かされる、ミハルの体のこと。

負荷が掛っていて、もしかすると機能が停止する虞も・・・。

これは確か、ゲーム本編にもあったところですよね。相手は純一ですが。

さて、次回はホームパーティー。冬貴はミハルからちゃんと聞き出すことができるのか?



2007.8.11