『桜がもたらす出会いと再会〜第3話〜』
                               投稿者 フォーゲル

 「冬貴君・・・」
 えらく熱っぽい顔と潤んだ瞳で美春が俺を見上げる。
 俺はその表情に思わず戸惑っていた。
 (な、何だこれ。美春がこんな表情をするなんて・・・)
 だが、美春の次の言葉に俺の思考回路は完全に停止した。
 「美春ね・・・冬貴君のことが好き。世界で1番大好き」
 (えーーーーーーーー!!な、何言ってんだ)
 俺は、いきなり告白されるとは思わず焦りまくる。
 そんな、俺の内心の動揺など気にもせず美春は俺に近づく。
 「冬貴君は・・・美春のこと、嫌い?」
 「そ、そんな訳ないだろ・・・」
 「じゃあ・・・美春のこと抱きしめて」
 美春は俺に体を預ける。
 美春の体温が俺の体に流れ込んで来るような気がした。
 「本当に俺なんかでいいのか?」
 美春はコクンと小さく頷く。
 俺の気持ちは決まっていた。
 両腕をゆっくりと美春の背中に持って行く。
 美春はますます、俺に体を密着させて来た。
 と同時に俺の体に美春の体重が掛かる。
 (しかし・・・美春ってこんなに体重あったのか?)
 俺の腹の辺りが段々と重くなっていく。
 「お、おい美春ちょっと・・・重い」
 しかし、美春には俺の声は聞こえていないようだった。
 その間にも、俺の体に掛かる負担はどんどん大きくなっていく。
 (く、苦しい、死ぬ・・・)
 俺がそんなことを思った瞬間、視界が突然白くなった。



 チュン、チュン・・・
 「う〜、なかなか起きないなぁ・・・じゃあ次はこれを」
 どっかで聞き覚えがあると思った声が誰であるかを認識した俺はゆっくりと目を開けた。
 「何やってんだ、美春」
 「あ、おはよ〜冬貴君、やっと起きたね。」
 見ると、寝てる俺の腹の上には週刊誌やら、マンガ本やらが何故か大量に載っている。
 そして美春がさらにもう一冊雑誌を載せようとしていた。
 「今日から学校だし冬貴君を迎えに来たんだよ」
 「いや、それは分かったんだけど何でお前は俺の部屋に普通に入ってるんだ」
 「本当はね。外で待ってようと思ったんだけど、冬英(とうえい)さんに会っちゃって」
 「親父に?」
 「『うちのバカ息子は、まだ寝てるから美春ちゃん部屋に行って起こしてくれないか』って頼まれちゃって」
 「あの親父は・・・余計なことして」
 「引っ越す前と部屋の位置は変わってないからって言われて、部屋の鍵を貰って・・・
 「ちょっと待て、親父部屋の鍵までお前に渡したのか?」
 「うん、『冬貴の部屋の鍵だから持ってていいよ』って」
 ふっ・・・これで俺の安眠出来る朝の時間は完全に無しか。
 俺はガックリしながら、ため息をつく。
 「あの・・・やっぱり返そうか?」
 美春の申し出に何となくあきらめを感じながら首を振る。
 (何となくだが・・・美春は鍵があろうとなかろうと俺の部屋に入りそうな気がする)
 俺はゆっくり体を起こして次の質問をする。
 「で、何で俺の腹の上に雑誌が載ってるんだ」
 「う〜んとね。美春いろいろなことして起こそうと思ったんだけど、冬貴君全然起きてくれなくて・・・」
 何でも、揺すってみたり布団を引き剥がそうとしたらしい。
 「それでね。思い出したの。音夢先輩が朝倉先輩を起こす時には広辞苑や百科事典を上から落としてるって」
 「広辞苑・・・」
 俺は思わず広辞苑や百貨事典に潰されている純一先輩を想像して、思った。
 (それ・・・間違ったら死んでるぞ)
 「でも、さすがに広辞苑は可哀想かなと思ったから、雑誌を載せていって」
 (なるほど、それであの夢の中で急に重さが)
 
 『美春ね・・・冬貴君のことが好き。世界で1番大好き』

 『じゃあ・・・美春のこと抱きしめて』
 
 あの夢の中の美春の火照った顔、潤んだ瞳を思い出して思わず顔が赤くなる。
 (しっかし・・・妙にリアルな夢だったな)
 「ねえ、冬貴君?一体どうしたの?」
 「うわっ!!」
 すぐ近くまで寄ってきていた美春に俺は思わずたじろいだ。
 「な、何でもない!そ、それよりも学校だ、転入早々遅刻なんてシャレにならん」
 俺はそう誤魔化すと急いで学園に行く準備を始めた。
 「?・・・変な冬貴君」
 後ろで美春がそんな言葉を呟いていた。



  「♪〜♪〜♪」
  美春が鼻歌交じりに機嫌良く俺の前を歩いている。
  理由は、さっき見たクラス替えの掲示板だろう。
  俺と美春は同じ3年1組ということだった。
  「美春、何がそんなに嬉しいんだ」
  俺は朝メシ代わりに美春からもらったバナナを食べながら聞いた。
  余談だが、美春は常にバナナを常備している。
  俺は昔っから変わってないなと思いながら、今日ばかりはそれを感謝していた。
  「そうだね〜冬貴君と一緒ってのも原因としてもあるけど・・・」
  その言葉に俺の心臓の鼓動が何故か早くなる。
  「でも、3年1組ってのが一番かな」
  「何でだ」
  「3年1組ってことは音夢先輩が勉強してたクラスで勉強出来るってことだから」
  「ああ、なるほどね」
  あの日、純一先輩達と知り合ってから俺も2人とは結構顔を会わせることが多かったのだが、
  美春がどれだけ音夢さんを慕っているかは端から見ててもよく分かった。
  (美春に彼氏が出来たら最大のライバルは音夢さんかも知れないな)
  俺はそんなことを思いながら苦笑を浮かべていた。
  
  「よっ!天枷」
  前から歩いてきた人物が美春に声を掛ける。
  「あっ、暦先生、おはようございます〜」
  「おはようございます」
  今度のクラス替えで、俺達3年1組の担任になった白河暦先生だ。
  俺も転入手続きなどでお世話になったので覚えている。
  「はい、おはようさん」
  「暦先生、今年は美春達がお世話になります」
  美春が頭を下げる。
  「ああ、こちらこそよろしくね。だけど、朝倉兄妹や杉並・水越達個性派集団から開放されたと思ったら
  今度は天枷達か・・・あたしの気苦労もまだ続きそうだね」
  「あ〜ひどいですよ〜美春達は音夢先輩たちほどじゃないですよ」
  「はいはい、そういうことにしておいてあげる。だけど・・・」
  暦先生は、美春とそして俺を交互に見ながら言った。
  「色気より食い気だと思ってた天枷も男と一緒に登校するようになったか〜」
  何故だかしみじみと頷く。
  『なっ・・・』
  俺達2人の声は同時に発せられ、俺が抗議の声を上げようとするがそれよりも先に美春が反論する。
  「暦先生!、美春と冬貴君は只の幼なじみで、そんな関係になる可能性は美春がバナナを嫌いになるくらい
   ありえませんよ!絶対に!」
  「ムキになって反論するところが怪しいぞ。天枷」
  「で〜す〜か〜ら〜!!」
  「それに、否定された方はなんか落ち込んでるみたいだぞ」
  「えっ?」
  俺は思わず座り込みイジけていた。
  「美春〜そんなにムキになって否定されると男としては何か悲しいものが・・・」
  「ゴ、ゴメンね。冬貴君」
  美春が思わず俺に謝ってくる。
  「でさ、ちょっと聞きたいんだけど」
  空気を替えるように暦先生は俺達に質問する。
  「2人は幼なじみってことだけど、いつからの付き合いなんだ?」
  「いつからって、いつからだっけ?美春」
  「う〜ん、いつからって言われても・・・物心ついた時にはもう一緒に遊んでましたからね」
  「そうか・・・分かった」
  暦先生はそれだけ聞くと、入学式の準備があると言って立ち去っていった。
  


  
  「あ〜疲れた」
  俺は新学期最初のHRが終わると一番最後に教室を出た。
  入学式などのイベントの関係で疲れたのでは無く、転入生特有の質問攻めに合っていたのだ。
  いろいろな質問を浴びせかけられすっかり疲れ果てた俺は、人が誰もいなくなった教室でしばらく
  休んでから、教室を出たのだった。
  「さ〜てこれからどうするかな」
  俺がそんなことを考えてると、後ろから声がした。
  「冬貴君!」
  「美春か、風紀委員の仕事は?」
  美春は音夢さんと一緒に風紀委員で今日の入学式もいろいろ仕事をしていたはずだった。
  「今日に関する仕事はもう終わりだよ」
  「そっか、お疲れ」
  「ありがとう。今日は冬貴君のことでも疲れたしね」
  「へっ?俺の?」
  「そうだよ〜友達から『冬貴くんってどんな人なの』って質問攻めで・・・」
  どうやら俺と同じ目に合っていたらしい。
  「そうか・・・モテる男は辛いな〜」
  「あ、冬貴君が想像しているようなことは質問されてないからね」
  「・・・そうですか」
  俺が少しがっかりしてると、美春が話を振ってくる。
  「そういえば冬貴君、部活か委員会はどこに入るか決めたの?」
  「え?まだだけど?」
  疲れ果てて正直そんなところまで考えてる余裕が無かったな、そういえば。
  「うちの学園は部活か委員会どちらかに入らなくちゃダメなの」
  「そっか・・・どうするかな?」
  この学園は確かにいろんな部活や委員会があって面白そうだが・・・
  「じゃあ、これから一緒に見て回ろうか?」
  「えっ?でも美春今日は疲れてるんだろ、大丈夫か?」
  「大丈夫、大丈夫!それに暦先生に頼まれてるから」
  「頼まれてる?」
  「うん、『柊が学園に慣れるまで、天枷が面倒見てやってくれ』ってね」
  「そっか・・・じゃあお願いしようかな」
  「美春にどーんと任せなさい!」
  そして俺達は最初の見学場所に向かおうとした、その時。
   
  『おい!いたぞ』
  俺がその声に振り向いた時、俺はあっという間に取り囲まれた。
  『柊君!ぜひうちの部に!』
  『いや、ウチの委員会に』
  どうやら、部活や委員会の勧誘らしい・・・
  (って何で俺1人にこんな熱くなってんだ!?)
  俺は訳が分からなくなりながらも、とりあえずその輪から何とか抜け出した。
  「美春!来い!」
  「う、うん!」
  そして、勧誘の輪から何とか逃げてた美春の手を握るとダッシュで逃げた。

                第4話へ続く



                 後書きコメント

        お待たせしました〜。第3話を投稿させて頂きます。

 今回の話は、まあ、幼馴染み系のヒロインではほとんどお約束なイベントですね〜

 冬貴が深層心理ではかなり美春を意識しているのが分かる(笑)

 最初は美春が窓から入ってくるってのも考えたんですが、さくらと被るので却下に。

 時系列ですがゲーム中の4月から始まり、純一や音夢は本校の1年、冬貴と美春は付属の3年です。

 だけど、ゲームでのイベントは起きていないって設定です。

 暦先生が冬貴達の担任になってるのはゲームと変わってるけど気にしないで下さい(笑)

 起こし方が音夢直伝なわりに荒っぽくないのは美春なりのやさしさってことで・・・

 次回も楽しみにして頂けると嬉しいです。感想待ってます〜


 


管理人の感想

う〜ん、今回はまさにこの業界(?)の王道って感じの展開でしたね。

朝に起こしに来る幼馴染・・・やっぱりいいっすねぇ(笑)

そして、美春がやけに可愛く見えるのは私の気のせいでしょうか?

ゲーム本編では「後輩キャラ」として敬語で喋っていた美春ですが、私はこっち(このSSでの美春)の方が好きです。

冬貴が美春を意識しているのは夢の内容からしてそうなのでしょうが、美春の方はどうなんでしょうね。

暦先生との会話の時は必死に否定してましたが・・・単なる照れ隠しかな?

まあまだ二人とも恋愛感情までは行っていないようですが・・・。


それでは、次回の投稿をお楽しみに^^