『桜がもたらす再会と出会い〜第28話〜』





                               投稿者 フォーゲル





  満月が雲に隠れて少し光が翳ります。
 それと同時に周りの空気が一瞬変わったように感じました。
 そんな中を私と冬貴君は目的地に向かって進んでいました。
 「だけどさ〜最後だと怖さも一段と際立つよな〜」
 明かりがわりの蝋燭を掲げながら、冬貴君が言います。
 「そうだね〜しかも、杉並先輩の提案した企画だから・・・」
 「何か仕込みがあるんじゃないかと不安だよな」
 そんなことを話しながら、私達は更に山奥に入っていきます。
 さすがに夜も遅いし、杉並先輩が提案したコースも登山道を利用したコースでした。
 そうは言ってもさすがに雰囲気があるコースで、今にも何かが出てきそうです。

 【ホウ・・・ホウ・・・】

 遠くから鳥の声(フクロウかな?)の声が聞こえて来ます。
 「・・・・!!」
 さすがに今回は悲鳴は出なかったですけど、私は思いっきり冬貴君の腕に抱きつきます。
 「み、美春・・・だ、大丈夫、大丈夫だから」
 冬貴君は私を宥めるようにして歩いています。
 私はさっきから、冬貴君の腕に抱きつくようにして歩いているので、ペースはゆっくりになってしまいます。
 何故、そんなことをしているのかと言うと・・・
 もちろん、怖いというのもありますが・・・
 (これで本当に私の気持ちが一体何なのか分かるんですか?芳乃先輩・・・)
 私は、そんなことを考えながらさっきの芳乃先輩との会話を思い出していました。





  
「これでOKですね・・・」
 私は小皿に救ったカレーを舐めながら味を確かめます。
 今日は自然の中で作ったということもあってか、いつもよりも美味しく感じられました。
 「美春ちゃ〜ん!そっちはどう?」
 向こうで焼き魚の準備をしていた芳乃先輩が私を呼びます。
 「こっちはほとんど終わりましたよ〜芳乃先輩はどうですか?」
 「ボクも大体OKだよ」
 こっちに近づいて来た芳乃先輩がこちらに近づいて来ます。
 「うわぁ・・・おいしそうだね」
 私の作ったカレーのお鍋を見つめて呟きます。
 「女の子が多いので、リンゴとかバナナとかフルーツを多く入れてみたんですけど・・・どうですか?」
 「どれどれ・・・ちょっといいかな」
 芳乃先輩は小皿に救ったカレーを指につけると舐めました。
 「うん!甘くておいしいよ!!」
 「そうですか!良かったです〜」
 思わずホッとした声を上げる私。
 「だけど、美春ちゃん本当に料理上手いよね〜ボクも教えてもらいたいよ」
 「そんなことないですよ〜むしろ私が芳乃先輩に教えてもらいたいですよ」
 「じゃあ、今度お互いに教えあいっこしようか?ボクは和食が得意だし」
 「美春は洋食が得意ですからね」
 そんなことを言いながら私は、芳乃先輩と笑いあいます。
 すると、不意に芳乃先輩は真面目な顔になって言いました。
 「ねえ、美春ちゃん・・・ひょっとして何か悩みごとでもあるの?」
 「えっ・・・どうしてですか?」
 「昼間、電車の中で柊くんの質問に答えた時から、妙に神妙な顔することが多かったから気になっちゃって・・・」
 電車の中での質問―――私には好きな人がいないのか―――
 「まあ、そういう質問を柊くんが美春ちゃんにすること自体が、ボクとしてはね〜」
 『しょうがないなぁ・・・全く』というような表情をする芳乃先輩。
 「で、どうしたの?柊くんと何かあったの?」
 「い、いえ・・・そういう訳じゃないんですけど・・・」
 私は言葉を濁します。
 でも、確かに私は冬貴君のあの言葉を聞いてから、複雑な気持ちになってるのは事実でした。
 それは、冬貴君は私に彼氏が出来たとしても気にしてくれないってことで・・・
 もちろん、それは冬貴君が私と美春さんをちゃんと別の人間―――
 私を一人の女の子として見てくれているということなので、嬉しいんですが、
 それと同時によく分からないモヤモヤがあるというのも事実でした。
 「美春ちゃん・・・これはボクが客観的に美春ちゃんを見て思ってることなんだけど・・・」
 芳乃先輩の声に私は耳を傾けます。
 「美春ちゃんは、『誰かに遠慮してる』んじゃないの?」
 「どういう意味ですか?」
 「う〜ん・・・例えば、柊くんを美春ちゃんの親友が好きになっちゃって、どうすればいいのか分からないとか」
 「・・・」
 芳乃先輩の言葉に私は思わず黙り込んでしまいます。
 私の脳裏によぎったのは、美春さんのことでした。
 美春さんが冬貴君のことを好きだと言うのは、他ならない私がよく知っています。
 あの事故に合う前の日、花火大会に来て行く浴衣がおかしくないか熱心に私に聞いてきました。
 (そのころの私は人間でいうところの視覚も出来ていました)
 私はからかいながら『美春さんは、冬貴さんのことが大好きなんですね』と言いました。
 美春さんは、顔を真っ赤にしながらも、小さくコクンと頷きました。
 私はその光景を見て、『2人には幸せになってほしい―――』心からそう思いました。
 「まあね〜人間誰でもそういう関係で悩むことはあるけどね・・・だけど、美春ちゃん」
 芳乃先輩は、私の目を見ながら言います。
 「ボクは思うんだ、今のままだと美春ちゃんは絶対後悔すると思う」
 「後悔・・・ですか?」
 「そう。『あの時、ああしておけば・・・』とかね」
 芳乃先輩はそう言ってため息を付きます。
 「もちろん、全然後悔の無い人生なんてありえないことだけど、それでも『やらないでする後悔』よりも
  『やってする後悔』の方がいいよね?」
 「・・・」
 私はまた無言になってしまいます。
 「まあ、どうするか決めるのは美春ちゃんだけどね、一先輩の助言だと思って聞いてほしいな」
 「い、いえ・・・ありがとうございます」
 芳乃先輩にお礼を言う私。
 「いえいえ、どういたしまして。さて、じゃあみんなお腹空かせてるだろうし、呼んでこようか?」
 「そうですね!」
 気を取り直して笑顔で言う芳乃先輩に私も笑顔で答えました。




  
  その後、食事しながら芳乃先輩に『ひょっとしたら肝試しで何か分かるかもよ』と耳打ちされたりもしましたが・・・
 肝試しの怖さでそれどころではありませんでした。
 私がそんなことを考えてると・・・
 「・・・春!!美春!!」
 「えっ!?な、何?冬貴君?」
 「何ボーッとしてんだよ。別れ道だからどっちに行くのか地図見せてくれ」
 「あ、う、うん」
 私は冬貴君に地図を見せます。
 杉並先輩の地図だから、正直会ってるのか不安でしたが、さすがに杉並先輩でも遭難するような事態には追い込まないでしょう。
 「こっちみたいだな・・・行くぞ」
 私も冬貴君の声に従ってそっちに行こうとしました。
 「・・・!?」
 思わず私はその場に立ち尽くします。
 行こうとした道の前に白い影が見えました。
 その人影の周りには、人魂のようなものが・・・
 さっきの萌先輩の『いろんな人達』という言葉を思い出します。
 そして―――
 『ア・ソ・ボ。ア・ソ・ボ』
 小さな女の子の囁くような声が聞こえて来ました。
 「キャアアアアーーー!!」
 気が付くと私は思わず逆方向の道へと走り出していました。
 



  「お、おい、美春!待てって!!」
 柊くんが美春ちゃんの後を追っていきます。
 その様子を見届けた後、ボク達は茂みから出ます。
 「う〜ん、ちょっと驚かせすぎちゃったかな」
 「だいたい、さくら・・・お前の演技が怖すぎるんだよ」
 人魂に見える火の玉を持ったお兄ちゃんがボクに注意する。
 「それはボクが子供っぽいって言いたい訳?お兄ちゃん」
 確かに自分でもハマり過ぎかなって思ったけど・・・
 「それにハマりすぎなのはボクだけじゃないでしょう?幽霊役の人とか」
 「どうでした?私、そんなに怖かったですか?」
 その声に合わせて、幽霊役の白河さんが出てきます。
 「ああ、確かにこれ以上無いってくらい怖いというか・・・幽霊役が似合う奴もいないだろ」
 「そうだよね・・・白河さん、色白だから幽霊コスが似合ってるよ」
 「それは・・・褒められてるんでしょうか?」
 少し汗をたらしながら答える白河さん。
 「だけど・・・大丈夫かな?2人とも」
 白河さんが2人の消えていったルートを見ながら呟く。
 「まあ、大丈夫だろ?俺達がここで脅かすのも杉並の計画の一部らしいし」
 「杉並くんもいいとこあるよね〜柊くんと美春ちゃんが結ばれるように状況を作ってあげようなんて」
 「あいつは、むしろその状況を作って楽しんでいるようなフシがあるけどな」
 苦笑いするお兄ちゃん。
 「でも『朝倉兄妹以上に見ててヤキモキする奴らがいるとは思わなかった』とも言ってましたよ」
 「そうだね〜そういえば音夢ちゃんとはどうだったの?お兄ちゃん?」
 「べ、別にいいだろ?何があったかなんて・・・」
 「隠すのは無しですよ〜朝倉君」
 白河さんとお兄ちゃんを質問攻めにしながらボクは―――
 (頑張ってね、美春ちゃん―――)
 心の中でエールを送っていた。




  
  どこをどう走っていたのか、あまりよく覚えていません。
 気が付くと―――
 「美春!」
 肩で息をした冬貴君が美春の肩を掴んでいました。
 「え・・・と、冬貴君」
 「落ち着けって・・・もう大丈夫だから」
 気が付くと、私達は大分本来のルートから外れた所にいるようでした。
 「あ、ご、ゴメンね・・・冬貴君。すぐに戻らないと」
 私はそう言って元来た道を引き返そうとします。
 「いや、大丈夫だ」
 冬貴君はそう言って指を差します。その先には―――
 「うわぁ・・・」
 昼間とは違う場所ですがそこにも向日葵がキレイに咲いていました。
 思わず、そこに向かって駆け出します。
 「あ、美春!ちょっと待てって!!」
 「早く来ないと置いてくよ〜」
 大きな向日葵の花が咲いているその場所はとても夜とは思えないほど光輝いていました。
 「スゴイよ〜冬貴君」
 「・・・泣いたカラスがもう笑ったよ」
 「どういう意味かな〜冬貴君」
 そんなことを言いながら、私達は向日葵を摘みます。
 「これくらいでいいかな〜冬貴君〜」
 「・・・美春。それはさすがに多くないか?」
 両手一杯に向日葵の花を抱えた私の姿を見ながら、冬貴君は呆れたような声を上げます。
 「だって〜たくさん持っていって美春さんの病室を向日葵の花で一杯にして上げたいんです」
 美春さんもきっと喜んでくれる。
 私はそう思いました。
 「よ〜し、じゃあそんな姉想いな美春にプレゼントだ」
 「何くれるの〜楽しみだな」
 冬貴君は真面目な顔をして言いました。
 「美春・・・目を閉じてくれ」
 「えっ!?」
 私は驚きました。そして―――
 【ドキン】
 自分の感情が強く揺れ動いたような気がしました。
 目を閉じた私に冬貴君がゆっくり近づいてきます。
 【ドキン・ドキン・・・】
 私の感情が更に強く揺れ動きます。
 冬貴君の腕が私の髪に触れるのが分かりました。
 「よし、目を開けていいぞ」
 私はゆっくり目を開けます。
 「そこの池で見てみろ」
 私はキレイな水がある池で自分の顔を見つめます。
 「あ・・・」
 そこには私の顔が写っていました。
 いつもと違うのは―――
 私のヘアバンドについている小さな向日葵。
 それは、一点のアクセサリーのようになっていました。
 「とっさに思いついたんだけど・・・気にいってくれたか?」
 「う、うん!ありがとう!冬貴君!!大事にするね!」
 思わず冬貴君に抱きつく私。
 「お、おい・・・美春」
 冬貴君の顔が少し赤くなったような気がしました。
 



  その後私達はしばらく向日葵を見ていました。
 そして、もう戻ろうとした時―――
 「あ、ねぇ冬貴君」
 「どうした」
 「あの向日葵、スゴイよね〜」
 少し切り立った崖の上に一際大きな向日葵の花が咲いていました。
 「あれ、持っていったら、美春さん喜ぶんじゃないかな?」
 「そうだな、よし、待ってろ」
 冬貴君は慎重に近づいて行きます。
 「う〜ん、もうちょっと・・・」
 向日葵まであと、数センチまで近づいた時―――
 
 【グラッ】

 脆くなっていたのか、冬貴君の立っている足場が崩れ―――
 「冬貴君!!」
 私は思わず冬貴君に走りより、腕を掴みます。
 何とか崖下に落ちるのだけは避けました。だけど―――
 「美春!!手離せ!!お前まで一緒に落ちちゃうぞ!!」
 「何、言ってるの!!そんなこと出来る訳ないよ!!」
 だけど、私の体が冬貴君の体重を支えきれる訳も無く―――

 【グラグラグラッ!!!】


 「うわああああっ!!」
 「キャアアアアーーー!!」
 私と冬貴君は崖下に落下して行きました―――






                        〜第29話に続く〜



                 こんばんわ〜フォーゲルです。第28話になります〜

           今回はいろいろと試行錯誤しながら書いていました〜(ミハル&さくら視点という点など)

        それでも、ゲーム内でほとんど絡みが無いミハルとさくらのシーンは結構上手く書けたかなと。

                ミハルの相談相手がさくらだという点ですが・・・

          『美春』だったら相談相手は音夢なんだろうけどなとか思いながら書きました。

         向日葵のアクセサリーはミハルにとっての大事な一番の思い出になる予定です。

      次回、突然訪れた命の危機を2人は回避出来るのかなど楽しみにして頂けると嬉しいです。それでは


管理人の感想

今週はお忙しかったようで・・・お疲れ様です^^;

さて、内容は肝試しの続きから。

ミハルがいい感じに怖がってますねぇ。あれだけ怖がってくれたら、主催者側としても本望か。

おそらく、向日葵畑に到着するまでは杉並の計画でしょう。ちゃんと逃げる方向も計算にいれてのことかと。

しかし、それ以上に予想外のハプニングが発生。っていうか、これはマジで洒落にならないのでは?

崖から転落した二人。普通なら命すら消えかねないのですが・・・そこは次回に期待と言うことで^^



2007.7.1