『桜がもたらす再会と出会い〜第27話〜』
投稿者 フォーゲル
【パチ・パチ・・・】
焼けた木がはぜ割れる音がする。
焚き火の周りで魚が焼けるいい匂いがしていた。
「う〜ん、ウマいな〜」
俺は焼けた魚にかぶり付きながら、そう口走っていた。
「みんな、たくさん食べてね〜ボクと美春ちゃんが腕によりを掛けて作ったんだから」
『は〜い!!』
さくら先生の言葉にみんな子供のように答える。
ちなみに今夜のメニューはキャンプの定番カレーライスと俺と美春が釣ってきた川魚。
それに塩を振りかけただけというシンプルなメニューだ。
余談だが、純一先輩が『それだけの作業なら音夢にも出来るだろ』って言って、
何とか明日の朝の料理当番をさくら先生か美春と交換してもらおうとして、
音夢さんの怒りを買っていたというのはまた別の話だったりする。
(まあ、確かに気持ちは分かりますけどね・・・)
何とか、明日の朝は白河先輩に頑張って頂こうと願う俺だった。
「だけど・・・今日一番頑張ったのは、美春ちゃんだよね〜」
「えっ・・・何がですか?」
さくら先生の問いに疑問の声を上げる美春。
「だって、お魚たくさん釣ってきたのは美春ちゃんだし。ボクも腕の奮いがいがあったよ」
確かに美春の釣果はスゴイものがあり、とても一食では食べきれないほどだった。
「そ、そんなことないですよ〜」
照れたように言う美春。
「それに比べて・・・」
さくら先生は俺の方を見て言う。
「全然釣れなかったみたいだね〜柊くんは」
「だってしょうがないじゃないですか〜美春のサポートをするので必死だったんですから」
何しろ、美春が釣竿を投げるそばから魚が釣れるのだ。
正確には美春にかかりきりで、自分の釣りをしているヒマが無かったと言った方がいいだろう。
「そうですよ〜冬貴君が手伝ってくれたから、美春はたくさんお魚釣れたんですから」
俺のことを庇ってくれる美春。
その横顔を見ながら、俺はさっきのことを思い出していた。
(どうやら、落ち込んではいないみたいだな・・・)
「ダメ!!私は・・・私は冬貴君と2人で摘みたいの!!」
そのあまりに真剣な声の響きに思わずたじろいでしまう俺。
「・・・美春?」
「えっ・・・あ、ゴメンね・・大声出しちゃって・・・」
思わずゆっくりと問い掛けてしまう俺のリアクションに美春も我に返ったようだった。
「よし、分かった!!じゃあ行くか?」
「・・・いいの?」
俺の言葉に思わず聞き返して来る美春。
「だって、行きたいんだろ?いいぞ、遠慮しないで」
「う、うん!!」
満面の笑みを浮かべる美春。
俺達がその向日葵畑の方へ足を向けようとしたその時・・・
【♪〜♪〜♪】
俺の携帯が鳴った。
(杉並先輩?)
俺は携帯の通話ボタンを押す。
「おお、柊か?今どこにいる」
「例の向日葵畑の近くですけど・・・」
「そうか、いやなかなか帰ってこないものだからどうしたのかと思ってな」
「・・・ひょっとしてみんな、集まってるんですか?」
「後は、お前とわんこ嬢だけだぞ」
「あ〜そうなんですか・・・」
俺はチラリと美春の方を見る。
(残念だけど・・・とりあえず戻るしかないか)
「・・・大丈夫だ。わんこ嬢と2人きりになるチャンスなら後で作ってやる」
俺の考えを微妙に間違って解釈しているようなことを言う杉並先輩。
「な、何言ってるんですか・・・俺も美春もそんなんじゃ・・・」
(それにここに居るのは・・・)
俺の心の中の声を遮るように杉並先輩は言葉を続ける。
「そうか?少なくともわんこ嬢はお前と2人きりになりたがっているようだが?」
思わず、俺は美春の方を見る。
美春はその顔に?マークを浮かべながら俺の方を見ている。
「・・・とてもそんな風には見えませんが」
「・・・」
電話の向こうの杉並先輩は何も答えず・・・いや正確には少しため息を付いたようにも感じられた。
「まあいい、とりあえずみんな心配してるから一回戻って来い」
「・・・分かりました」
俺はそう言って携帯を切る。
「誰からだったの?」
「杉並先輩。みんな集まってるからすぐに帰ってこいって」
「そうなんだ・・・それじゃあ仕方ないよね・・・」
そう言う美春の姿は少し悲しそうに見えた―――
(さっきはそういう風に見えたんだけど・・・今は大丈夫みたいだな)
懸命に俺の弁護をしてくれている美春を見ながら俺はそんなことを考えていた。
「それでも、夕ご飯を調達出来なかったのは柊くんの怠慢でもあるよね〜」
腕組みをしながら、考えるように言うさくら先生。
最もその口調は本気で怒っている訳じゃないし、口元には笑みが浮かんでいるので本気で怒っている訳じゃないというのは分かるが・・・
「で、でも・・・それを言うなら純一先輩達はどうなんですか?」
俺は、純一先輩達がターゲットになるように話を持っていく。
「ち、ちょっと待て、何でそこで俺達の名前が出るんだ?」
「昼間、仕事もせずに俺達のこと除いてたじゃないですか・・・」
「あ、あれは・・・俺達はたまたまあそこを通りかかって、気になったからで・・・」
「茂みに隠れてコソコソしてるのがですか?」
「うっ・・・だ、第一思わず覗きたくなるほどラブラブなことをしているお前と美春もどうかと思うぞ?」
「だ、誰がラブラブですか!!」
開き直った純一先輩に思わず真っ赤になりながら反論する俺。
「2人してしばらく見つめあってるのをラブラブじゃないっていうのか?お前は?」
「だから・・・」
「あ〜はいはい、分かった、分かった!!」
さらに反論しようとする俺を押しとどめたのはさくら先生の声だった。
「つまり、2人とも仕事をロクにしていなかったってことだね」
『何でそうなる!?(んですか!)』
反論する俺達のことなど気にもせずにさくら先生はしばらく考えた後、口を開いた。
「ねえ、眞子ちゃん、後片付けのメインは眞子ちゃん達だったよね」
「うん、そうだけど・・・」
話を振られた眞子先輩が答える。
「じゃあ、後片付けはお兄ちゃんと柊くんにやってもらうから、眞子ちゃん達はゆっくりしてていいよ」
「あら、そう?悪いわね〜朝倉、柊」
「お2人とも〜すいません〜」
何気に萌先輩までサラッと話に乗ってるし・・・
「さくら〜ちょっと待てそれはヒドくないか〜」
純一先輩の抗議の声がキャンプ場に響き渡った―――
「くそ〜何で俺までこんなことを」
純一先輩がグチりながら、最後の皿を洗い終える。
「まあ、しょうがないですよ。結果的に仕事をしてないんですから」
俺はその皿を受け取りながら、水滴を拭き取る。
「・・・だいたい、俺は関係ないだろ。それにそもそもこの旅行は・・・」
「何か言いました?」
「いや、何でも」
純一先輩の独り言を聞きながら、皿を片付けると俺達は集合場所へ向かう。
罰ゲーム(?)を終えた後、その場所へ向かうように杉並先輩から言われていたのだ。
(杉並先輩の考えてることだからな・・・スゴイ不安なんだが)
そんな心配をしながら、俺達は歩き始めた。
しばらく歩き、俺と純一先輩は指定の登山道に辿り着いた。
もちろん他のメンバーもすでに集合済みだ。
「これで全員揃ったな」
「で、杉並・・・一体何やろうって言うんだ?」
まだ不機嫌そうな声で言う純一先輩。
「ふっ・・・朝倉よ。この状況でやることと言えば一つに決まっているだろう?」
「何だよ」
「ズバリ『肝試し』だ」
杉並先輩によると、この登山道から山の中に入り、例の向日葵畑から光る向日葵を2本以上取ってくるというルールらしい。
「ついさっきチーム分けのクジ引きが終わってな。後は朝倉と柊だけだ」
「はいはい、2人とも早く引いてくださいね」
白河先輩の言葉に、俺達は首をすくめながらクジを引く。
・・・もうお約束というか、俺は美春で、朝倉先輩は音夢さんというペアで決定した。
ちなみにメンバー構成は、スタートする順番に杉並先輩と眞子先輩、純一先輩と音夢さん、
白河先輩と萌先輩とさくら先生(ここだけトリオ)最後に俺と美春だ。
「だけど・・・何か不気味よね」
真っ暗な山の登山道の入り口を見ながら、眞子先輩が不安気な言葉を洩らす。
「何だ、水越よ。怖いのか?」
「なっ・・・だ、誰が!!ほら!行くわよ!杉並!」
明らかに虚勢を張りながら、先に歩き始める眞子先輩。
苦笑しながら、それを追う杉並先輩。
こうして、肝試し大会はスタートした。
「あ、戻って来たみたいだよ」
美春の声に俺は登山道の入り口を見つめる。
3組目の白河先輩達が戻って来た。
「はい〜只今〜戻りました」
萌先輩のいつもと変わらぬスローテンポな声に俺は出発前の緊張感が少し緩んだのを感じた。
「萌先輩〜大丈夫でしたか?怖くありませんでしたか?」
必死に状況を萌先輩に確認する美春。
(まあ、気持ちは分かるけどな・・・)
何しろ、最初に出て行った眞子先輩は顔面蒼白だったわ、2番目の音夢さんは完全に泣いてるわと
美春の不安を煽りまくるには申し分ない状況だったしな・・・
「はい〜大丈夫ですよ〜いろんな人達がいましたから、寂しくは無かったですよ」
「いろんな人・・・ですか?」
「ええ〜全体的に白っぽい顔をしてて・・・足が無か―――」
「・・・美春。大丈夫か?足がガクガクしてるぞ」
「へっ!?そそそそ、そんなことないよ?」
明らかに『本物』を見たとしか思えない萌先輩の言葉に明らかに動揺する美春。
(いや、俺も今の話聞いて正直ビビッてるんだが・・・)
しかし、俺まで怯えてたんではいつまで経ってもスタート出来ないし・・・
(しょうがないな・・・)
「美春、行くぞ」
「えっ・・・あっ!待ってよ〜」
慌てて俺に追いつく美春。
その体は小さく震えていた。
そして、俺は美春の耳元で小さく囁いた。
「大丈夫!俺も怖いから・・・それに2人でいれば多少は怖さも減るだろ」
「・・・そ、そうだね。だけど・・・」
「だけど・・・何だよ」
「冬貴君・・・そういう時は、『俺が美春を守るから』とか言った方がカッコイイのに・・・」
「そ、そんな歯の浮くような台詞言えるか・・・それに」
「それに・・・何?」
「そういうことは男は口に出して言わないもんだ」
「・・・美春は言って欲しかったけどな」
「何か言ったか?」
「う、ううん!何にも?」
ふと、見ると何時の間にか、美春の体の震えが消えていた。
(とりあえず、落ち着いたみたいだな・・・)
俺はそれを確認すると、美春の先に立って歩き始めた。
とはいえ、やっぱり怖いことには変わりない訳で・・・
美春はずっと俺の腕にしがみついたままだった。
「大丈夫だって、何も出やしないから」
「で、でも〜」
その時だった。
【バサバサッ!!】
夜行性の鳥が飛び立ったのか、木々が派手な音を立てた。
「キャッ!!」
美春が俺の腕にしがみつく力がますます強くなる。
「と、冬貴君・・・本当に何もいないよね?気になっちゃうよ〜」
「だ、大丈夫だって」
・・・俺としては、腕に当たってる柔らかいモノの感触の方が気になってしょうがないんだが・・・
「・・・どうしたの?冬貴君」
そのことに全く気が付いてない美春が俺に聞いてくる。
「い、いや何でも!?」
悟られないように何とか誤魔化す俺。
「そ、そういえばさ、美春」
「何?」
「お前、例の向日葵畑に何であんなに行きたがってたんだ?」
結果的にはこうして美春の希望通り2人だけで行くことになった訳だから結果オーライだが・・・
「えっ?え〜と、それはね・・・」
俺の問いに複雑な顔をする美春。
「・・・ひょっとして『美春』のためか?」
子供の頃『美春の好きなお花はね〜ひまわり!!』って言ってたことがあるのを俺は思い出していた。
本物の『美春』のデータを持っている美春なら、そのことを知っていても不思議ではない。
「そ、そうなんだよ〜美春さんの病室にたくさん持っていってあげようと思って・・・」
「そうか・・・ならたくさん摘んでいくか?」
「そうですね!!喜んでくれるかな〜美春さん」
そう呟く美春の表情は嬉しいような寂しいような複雑な表情をしているように俺には見えた。
〜第28話に続く〜
こんにちは〜フォーゲルです。第27話になります。
キャンプ編第2話になります。
何か物凄く王道な展開になりました。まあ、たまにはこんなお約束な展開もアリではないかと。
少なくともさくらは冬貴と美春をくっつけようとして動いてるように見える(笑)
肝試しのメンバー分けからして・・・
ちなみにメンバー分けですが、トリオ組んでる女性陣は幽霊大丈夫そうという感じで分けました(ことりは微妙だけど)
とりあえず『本物』を見ても動じてない萌先輩は凄いと(笑)
次回は話が少し動くとだけ予告しておきます。
それでは、失礼します〜
管理人の感想
というわけで27話をお送りしました〜^^
あぁ、相変わらず冬貴くんの鈍感ぶりは冴え渡っていますね。
恋愛成就の謂れがある向日葵を、二人で摘みに行きたいと言っているのですから、大概分かりそうな気もしますが^^;
そしてそれに笑顔で返すミハルがすんごい健気です。・・・可愛いなぁ、もう(爆)
肝試しのメンバー分けは・・・まあ妥当なところですよね。クジの必要なかったのでは?(笑)
萌が見たという幽霊以外にも、杉並なら何か仕掛けていそうですが・・・。
それでは、また次回をお楽しみに!