『桜がもたらす再会と出会い〜第26話〜』
投稿者 フォーゲル
【ガタン・ガタン・・・】
電車の振動に身を任せながら、俺は自分の手札を見る。
ちょうど役が一つ出来た。
(よしっ!!)
俺は心の中でガッツポーズをする。
「・・・」
純一先輩が難しい顔をしながら、山札からカードを引く。
そして、『勝った!』と確信めいた表情をしながら、手札を見せる。
「ファイブカードだ」
「俺は・・・フルハウスです」
俺は諦めて、手札を見せる。
「で、お前は何だ?」
俺達の手札を見ても余裕しゃくしゃくの杉並先輩に純一先輩が振る。
「・・・ロイヤルストレートフラッシュだが?」
そう言って、手札を見せる。
見事にジャック・クイーン・キング・エース・ジョーカーが揃っていた。
「また、負けですか〜」
「杉並〜!!、お前絶対何かイカサマしてるだろ?」
「朝倉よ、失礼なことを言うな。ヒキが強いだけだ」
「いくら強くても、5回やって3回もストレート・フラッシュ以上の役が出るなんて有り得るか〜!!」
「ま、まあまあ純一先輩・・・落ち着いて下さい」
興奮する純一先輩を俺は何とか宥める。
(そもそも、杉並先輩相手にポーカー勝負しようってのが間違いだったのかも)
俺は、そう思いながらため息を付く。
目的地のキャンプ場に着くまでの間、ヒマだし、女性陣は内輪で盛り上がってるから、
こっちもヒマつぶし兼、着いてからの雑用係も兼ねて勝負することになったのだが・・・
結果はご覧の通りだった。
「では、2人ともよろしく頼むぞ・・・俺はいろいろとやることがあるのでな」
「その『やること』とやらがスゲェ不安なんだが・・・分かったよ・・・男に二言はねぇよ・・・なあ冬貴」
「そうですね」
俺と純一先輩はそう言ってため息を付いたのだった。
「冬貴君・・・どうしたの?」
俺と純一先輩が着いたらどういう手順で作業するか打ち合わせをしていると、美春が声を掛けて来た。
「美春か・・・今、世の中の無常を噛み締めているところだ」
「?・・・どういうこと?」
俺はさっきのポーカー勝負のことを美春に話す。
「そんなことで決めるから、そんな目に合うんだよ」
「肝に銘じておくよ」
美春の言葉に素直に返事する俺。
「ところで、そっちは決まったのか?」
「あ、ハイ!今日の夜は美春と・・・」
「ボクだよ。お兄ちゃん♪」
純一先輩の言葉に、美春とその後ろからひょっこりと顔を出したさくら先生が答える。
雑用を俺達男性陣がやる代わりに、女性陣が料理担当という分担になっている。
ちなみに女性陣は、美春と芳乃先生・音夢さん以外のメンツは白河先輩と水越先輩達だ。
「そうか・・・美春とさくらならとりあえず大丈夫だな」
「明日の朝が音夢ちゃんと白河さんだよ」
一瞬、喜びかけた俺と純一先輩を不安が襲ったのは言うまでもない。
「だけど・・・変わった名物ですよね」
話題を変えて俺が、目的地のキャンプ場のパンフレットを見る。
そのパンフレットにはデカデカとこう書かれていた。
『一年中咲き誇る向日葵があなたを出迎えます―――』
「そうかな〜美春達にはそうでもないような気もするけど・・・」
美春にしてみればそうだろう。何せ初音島には一年中枯れない桜があるんだから。
「そうだよね〜確かに・・・でもここの向日葵には『ご利益』があるみたいだから・・・
そういう意味では初音島の桜よりもスゴイのかも・・・」
「『ご利益』って例えばどんなのですか?」
俺は疑問に思ってさくら先生に聞く。
「いろいろあるみたいだよ〜家内安全、学業祈願、恋愛成就・・・」
さくら先生は指折り数えながら言う。
「ボクとしては、やっぱり『恋愛成就』が気になるかな〜」
「何だ、さくら?誰か好きな奴でもいるのか?」
「ひどいよ〜お兄ちゃん。ボクは今でもお兄ちゃん諦めた訳じゃないんだよ」
純一先輩の言葉にさくら先生はプーッと頬を膨らませる。
だが、しかしその表情は冗談っぽい表情をしていた。
(あ〜、これは純一先輩に甘えるモードに入ってないか?)
俺はそんなことを考えながら、2人を見つめる。
さくら先生は純一先輩に抱きつきながら幸せそうな表情をしている。
「それにね・・・女の子ってのは可能性が1%でもあったら諦めたくないものなんだよ。
はっきり言われるまではね」
一瞬、真面目な顔になっていうさくら先生。
その言葉は何故か、周りに言って聞かせているような口調に俺には感じられた。
「そういうものなのか?美春?」
俺は思わず美春に話を振る。
「ヘッ・・・!?な、何で美春に話を振るの!?」
何故か美春は動揺しながら俺に聞く。
「いや、だって・・・美春だって好きな奴の一人くらい居るだろ?」
俺は心の底からそう思っていた。正確には『好きな人がいて欲しかった』・・・
美春が『美春』の代わりとして存在しているとはいえ、その人格はまぎれもなく美春とは別人なのだから。
オシャレしたり、恋をしたり普通の女の子のような生活を送っていてほしかった。
(最も、それがロクでもない男だったら全力で阻止しなければならないけど・・・
本物の美春が怒りそうだし)
俺はそんな光景を想像し、思わず苦笑が漏れる。
「い、イヤだな〜美春に好きな人なんている訳ないよ〜」
笑いながら答える美春。
だが、俺は、その表情に何ともいえないものを感じた。
例えるなら―――
自分でも感情をどう表現していいのか分からない―――そんな感じだった。
「うわ〜キレイだね〜」
私はそう言いながら後ろを歩く冬貴君を呼びます。
目的地のキャンプ場に着いた後、みんなそれぞれ自分の分担の仕事を始めました。
仕事の内容は公平にくじ引きで決めて、(くじを作ったのが杉並先輩だというのが不安でしたが)
私と冬貴君は夕飯のおかずを手に入れるために近くの川に魚釣りに来ました。
「美春〜そんなにはしゃぐなよ〜」
「分かってる〜」
私は、そう冬貴君の声に答えると、キラキラと輝く水面を見つめます。
「だけど・・・美春。お前はゆっくりしてても良かったんじゃないのか?料理当番なんだし」
ようやく私に追いついた冬貴君は、そう私に問い掛けます。
「ダメだよ〜みんな仕事があるのに、美春だけ休んでられないよ〜」
私はそう言って気合を入れます。
「そういうところも美春にそっくりだな〜お前は」
「・・・そうかな?」
「そうだよ。もうちょっと肩の力を抜いてもいいんじゃないかと思うんだけどな」
冬貴君はそう言って釣りの準備を始めます。
「よし・・・これでOKだな」
準備が出来た釣竿を冬貴君が私に渡します。
そして私達は夕ご飯のおかずGETを目指して釣りを始めました。
「冬貴君〜スゴイよまた釣れた〜」
私は喜びながら、釣竿を上げます。
大きな魚がピチピチと動いていました。
「スゲェな・・・ビギナーズラックって本当にあるんだな」
冬貴君は驚きながら私の方に近づいて来ます。
「エヘヘ〜スゴイでしょ〜〜」
「美春にこんなに釣られたら、俺の立場ってものがないんだけど・・・」
ちなみに冬貴君は今まで一匹も釣れていませんでした。
「まだまだ、たくさん釣るからね〜・・・イタッ!!」
私は思わず声を上げます。
見ると、魚を外そうとした時に釣り針が刺さったのか、私の指からは血が滲んでいました。
「美春!?大丈夫か?」
冬貴君は私に素早く近寄ると私の手を掴みます。
そして心配そうに私の顔を見ます。
【ドキン・ドキン・・・】
私は胸の鼓動が早くなるのを感じました。
「全く・・・もうちょっと気を付けろよ」
冬貴君はそう言いながらバンソーコーを私の指に巻きます。
その口調は『兄が妹のオテンバを注意する』っていうような感じでした。
(もし、『美春さん』だったら・・・どういう風に注意するのかな・・・)
そう考えると・・・私の心がまたざわつきます。
「・・・?」
私がそんなことを考えてると冬貴君が不意に訝しげな表情をします。
「美春・・・ちょっと静かにしろ」
「えっ・・・う、うん」
私と冬貴君は静かに息を潜めます。
シーンと静まり返った河原には何も声は・・・
ううん、近くの茂みから変な声が聞こえてきます。
私と冬貴君はゆっくりとその茂みの方へ近づきました―――
「ち、ちょっと朝倉君・・・押さないでくださいよ」
「静かにしてろよ。ことり〜今2人がいいところなんだから」
「兄さんも、白河さんもこんなことやめましょうよ〜」
「やめましょうって言うわりには音夢も思いっきり興味津々じゃねーか」
「わ、私はただ2人の間に間違いが起きないように心配で・・・」
そんな会話の声が聞こえてくる。
俺は呆れながら、近くにあった丸い石を掴むとその茂みに向かって投げる。
「・・・イテッ!!」
俺が投げた石は朝倉先輩に当たったらしく、思わず茂みから出てくる。
「一体何すんだ!」
「それを聞きたいのはこっちなんですけど・・・純一先輩・・・」
目の前にいる俺と美春に気がついたのか、一瞬固まる純一先輩。
「いや〜奇遇だな〜たまたま俺達もこっちの方に用事があってな〜」
「そうですか〜茂みに3人して固まってる『奇遇』をぜひ教えてもらいたいですね〜」
怒りが篭ってる俺の言葉に純一先輩はさすがにちょっと引きながら・・・
「・・・逃げるぞ、ことり!音夢!」
「待ってくださいよ、朝倉君!」
「兄さん、置いてかないで下さい!・・・2人ともゴメンね!」
3人はそう言って走っていった。
「全く、しょうがないな・・・」
俺は思わずため息を付く。
「でも、冬貴君・・・大丈夫かな?」
心配そうな声で美春が言う。
「もし、最初から私達の様子見られてたとしたら・・・私が『美春さん』じゃないってバレちゃったんじゃ・・・」
「う〜ん、それは大丈夫じゃないか?そうだったら『どういうことだ?』って聞いてくると思うし・・・」
俺はそう言いながら空を見上げる。
太陽が西に傾き始め、暗くなってきていた。
「そろそろ帰るか〜みんな心配するかも知れないし」
「そうだね〜」
俺達はそう言いながら、集合ポイントに戻ることにした。
私は冬貴君の横に並びながら、歩いていました。
朝倉先輩達に私のことがバレなかったのは良かったけど・・・
私はあることが気になっていました。それは・・・
『冬貴君は、あの状況をどう思ってたのか』ということでした。
(もし、本物の美春さんが相手だったら、やっぱり少しは照れたりするのかな・・・)
もちろん、私に対して普通のリアクションをしてくれてるってことは、私と美春さんを分けて―――
私のことも一人の女の子として見てくれてるってことだけど・・・
(やっぱり美春さんとは違うんだよね・・・)
私はそう思いながらため息をつきます。
すると、そんな私の目に光るものが見えて来ました。
「・・・?」
脇道の方、少し山側に入ったところに光の塊のような物が見えました。
(何だろう・・・アレ?)
私がそんなことを考えてると・・・
「あれが、名物の『一年中咲いてる向日葵』じゃないのか?」
いつのまにか、隣に来ていた冬貴君がそっちの方を見ながら呟いていました。
「そうなの?」
「夜になると発光して綺麗らしいぞ」
「ちょっと、摘んでいかない?」
私はそんなことを冬貴君に提案していました。
「でも、もう遅いし、後でみんなで取りにきても・・・」
「ダメ!!私は・・・私は冬貴君と2人で摘みたいの!!」
気が付くと私はそんなことを口走っていました―――
〜第27話に続く〜
こんばんわ〜フォーゲルです。第26話になります〜
キャンプ編になります〜。
少しづつ募っていくミハルの想いを感じてもらえると嬉しいです。
最後のセリフなんか半分告白したも同然だし。
でもどっちかと言うと今回は、コメディタッチだったような・・・イカサマくさい杉並とか(笑)
2人の情事(?)を覗き見している純一達とか・・・
次回も楽しみにして頂けると嬉しいです。
それでは失礼します〜
管理人の感想
さて、今回から舞台は変わって夏のキャンプへ。
意外と大所帯でのメンバーですね。朝倉兄妹に美春、冬貴、杉並、さくら、ことり、水越姉妹。計9人。
とりあえず、まだまったく出てきていない水越姉妹のことが気になりますが(笑)
フォーゲルさんの言うとおり、今話はほのぼのタッチですね。っていうか杉並すげぇ^^;
二人のラブラブっぷりを茂みから観察する三人。特に口では止めつつもちゃっかり参加している音夢がいい味出してます。
そして最後の台詞。・・・まあこれでも冬貴は気付かないんでしょうね。「ん、そっか。じゃ行くか」くらいのノリで(汗)
ミハル、ファイトだ!^^
それでは、今回もありがとうございました〜。