『桜がもたらす再会と出会い〜第24話〜』


                           投稿者 フォーゲル



  『本日は○○水族館にお越し頂きありがとうございました。間もなく閉館の・・・』
 そんな館内放送が流れる中、俺達は、水族館の出口に向かっていた。
 ホタルイカの、ライトアップイベントを見た後も、俺達はいろいろなところを見て回った。
 いろんな動物達の、いろんな姿・・・
 それらの全てを、美春は真剣な姿で見つめ、関心したような様子で見つめていた。
 (これだけ、喜んでくれるんだから連れて来て良かったよな・・・)
 俺はそんなことを思いながら、美春の後をついて回った。
 「だけど、残念・・・まだ、見てないところがあったのに〜」
 美春が悔しそうな声で言う。
 「まあな・・・昔、来た時より、大分敷地も建物も広くなってるしな〜」
 ざっと見た限り、本物の美春と来た時よりも、倍くらい大きくなっているような気がした。
 「『美春さん』と来た時と比べると、今日はどれくらい見れたの?」
 「・・・全体の3分の2くらいかな?それでも今日の方が数は多く見れたぞ?」
 「そうなの?」
 「だって、美春の奴、俺が目を離すとすぐにいなくなっちゃうんだぞ?」
 子供の時、ここへ来た時には興奮した美春が、あっちへフラフラ、こっちへフラフラしていたせいで、
 迷子に近い状態になっていた。
 「へ〜そうなんだ〜」
 美春を探して、右往左往しているだろう俺の姿を想像でもしたのか、美春の顔に笑みが浮かぶ。
 「笑い事じゃないよ・・・こっちは大変だったんだから・・・」
 俺はその時のことを思い出して、思わず肩を落とす。
 「ちなみに、美春さんはどんな状況で迷子になったの?」
 「どんな状況って・・・」
 俺はその時のことを思い出しながら歩く。
 しばらくして、俺の目に見覚えのある風景が飛び込んで来た。
 それは、この水族館名物のキャンペーンガールの人達だった。
 「思い出した!その時は、俺がキャンペーンガールの人達と話してる間にいなくなったんだ」
 確か、俺が次にどこに行けばいいのか教えてもらおうと思ったんだっけ・・・
 「で、聞き終わって後ろを振り返ったら、美春の奴がいなくなってて・・・って美春?」
 俺が美春の方を見ると、美春は何故か呆れたような表情をしていた。
 「あの・・・冬貴君?美春さんは興奮したからいなくなったんじゃないと思うんだけど?」
 「へっ?何でそんなこと分かるんだよ」
 「・・・美春さんは冬貴君にイジワルしたかったんだと思うな」
 「イジワル?どうしてまた?」
 「冬貴君・・・本当に分からないの?」
 美春は俺の目を見つめる。
 「はぁ〜・・・美春さんも大変だよね〜」
 「『美春が大変』って・・・どういう意味だよ?」
 「そのままの意味だよ〜」
 水族館の出口の前に、バスが止まる。
 帰りは初音島への直通のバスで帰ることになっていた。
 「あっ!バスが来たよ〜急ごう!冬貴君?」
 「あ、ああ・・・」
 俺は美春の言葉の意味を考えながら、バスに向かって走る美春の後を追った。





  私は、気持ちいい感覚に包まれていました。
 雲の上に寝ているような気持ちいい感じでした。
 小刻みに私の体が揺れています。
 その間隔に会わせるように私は少しづつ意識が戻っていくのを感じました。
 「・・・?」
 私の目に最初に見えたのは、大きな背中でした。
 「お〜美春・・・起きたか?」
 「えっ・・・」
 起きたかって・・・
 冬貴君の声が聞こえます。
 よく見ると私の両手が冬貴君の首の回りに掛かっています。
 私は冬貴君におんぶされていました。
 「全く・・・バスの中で急に動かなくなるから、またゼンマイ切れかと焦ったぞ」
 冬貴君は私をもう一度担ぎ直します。
 「あ・・・い、いいよ。もう大丈夫だから・・・」
 おんぶされてることが急に恥ずかしくなって来た私はそう冬貴君に言います。
 「ダメだよ・・・今日は疲れたんだろ?家までおぶってってやるよ」
 「だ、大丈夫だよ〜」
 私は何とか、下ろしてもらおうと冬貴君に言います。
 「いいって!遠慮するなよ」
 「だ、だけど・・・」
 なおも抵抗する私に、冬貴君は言葉を続けます。
 「・・・美春は遠慮なんかしなかったんだけどな」
 「え?」
 「本物の美春も帰りにバスの中で寝ちゃってな。その時も俺が最後こうやっておんぶして来たんだよ」
 「そうなんだ・・・」
 「お前は少しでも本物の美春に近づきたいんだろ?だったら本物の美春みたいに遠慮なんかするなって」
 「冬貴君・・・ズルイよ」
 「何が?」
 「そんな時だけ、美春さんの名前出すなんて」
 「しょうがないだろ?こうでも言わなきゃお前は大人しくおんぶされてなさそうだしな」
 冬貴君の苦笑が聞こえて来ます。
 私はそのまま、しばらく冬貴君の背中に頭を預けました。
 海に沈んでいく夕陽が私の目にはとてもキレイに見えました。
 「そういえば、美春」
 「何、冬貴君?」
 「お前のこのバックの中身・・・結局何が入ってるんだ?」
 冬貴君は両手が塞がってるせいで、首から掛けているバックを目で差します。
 「ああ〜それはね・・・」
 (そういえば、水族館では結局開けてるヒマ無かったっけ・・・)
 「お弁当」
 「お弁当?」
 「美春さん、料理上手だったんでしょう?だったら私も料理出来なきゃと思って練習してたの。
  で、大分自信がついたから披露する機会が欲しいと思ってたら・・・」
 「俺が水族館に誘ったと」
 「そういうこと!冬貴君に認めてもらえれば、美春さんに近づけたって自信にもなるし」
 (でも、もう今日は遅いし・・・またの機会かな・・・)
 私が心の中でそんなことを考えていると・・・
 「・・・今から食べるか?」
 「えっ?」
 「腹減ってるし・・・せっかく美春が頑張って作ったものをムダにするのもなんだしな」
 「冬貴君・・・」
 「じゃあ、あそこ行って食べるか?」
 冬貴君はお弁当食べる場所に心当たりがあるらしく、美春をおんぶしたまま歩き始めました。




 
  「ふう・・・やっぱり何回来てもここは迫力があるな〜」
 俺は、そう言って一息つくと、背中におんぶしていた美春を下ろす。
 お弁当食べる場所として俺が選んだ場所・・・
 そこは『枯れずの桜』だった。
 お昼時からは時間が外れているせいか、『枯れずの桜』の廻りはもちろんのこと桜公園にも、ほとんど人は居なかった。
 「冬貴君〜ほらほら手伝って!」
 その声の方を見ると、美春がビニールシートを広げているところだった。
 「分かったよ」
 美春の指示通りにビニールシートを広げて、俺達はその上に座る。
 「一応、冬貴君の好みに合うように作ったつもりだけど・・・」
 色とりどりのお弁当がビニールシートの上に広げられていく。
 「洋風なんだな」
 バスケットの中にサンドイッチやサラダなどが入っていた。
 「あんまり場所を取らないものの方がいいかなって思って・・・和風の方が良かった?」
 「いや、そんなことないよ・・・頂きます〜」
 俺はサンドイッチを一口。
 「どうかな・・・冬貴君」
 俺は口の中のサンドイッチを咀嚼する。
 「う〜ん・・・ちょっとマスタードを塗りすぎかな・・・辛い」
 「えっ・・・ち、ちょっとゴメンね」
 美春もサンドイッチを食べる。
 「あっ・・・から〜い!!ゴ、ゴメンね・・・冬貴君」
 「だ、大丈夫だよ。食べられないことは無いし・・・それに」
 「それに?」
 「美春の奴も最初は失敗だったしな」
 「そうなの?」
 「ああ、実は思い出したんだけど、実は美春の初めてのお弁当もここで食べたんだよな」
 そこまで言った時だった―――
 「あ・・・そういえばその時に」
 俺は、ようやく今朝見ていた夢がその時のことだと思い出した。
 「その時に・・・どうしたの?」
 美春が不思議そうに聞いてくる。
 「いや、その時に俺・・・美春にプロポーズしてるんだよな・・・そういえば」
 「!!」
 俺の言葉に美春が一瞬震えたような気がした。
 「き・・・聞かせてくれない?」
 「え〜恥ずかしいんだけど・・・」
 「いいから!!」
 「わ、分かったよ・・・」
 美春の迫力に押されて俺はその時のことを話し始めた。






  「・・・どうかな?トウ君」
 ミハちゃんが不安気に僕に尋ねる。
 「あんまり、おいしくないよ〜」
 僕の言葉を聞いたミハちゃんの表情が曇る。
 「そっか・・・何がダメなんだろ」
 ミハちゃんは座っている自分の斜め下の方を見ながら呟く。
 そこには、ミハちゃん手作りのお弁当があった。
 「まあ、また次頑張ればいいよ。僕は何回でも食べてあげるから」
 「ありがとう。トウ君。でも・・・」
 ミハちゃんは俯いてしまう。
 どうやら、すっかり自信を無くしてしまっているらしい。
 僕は、何とかミハちゃんを元気付けて上げたいと思って口を開く。
 「じゃあ、ミハちゃんが美味しい料理を作れるようになったら僕がミハちゃんのお願い何でも聞いてあげるから」
 「本当に?じゃあね・・・」
 ミハちゃんはしばらく考えた後、何故か僕から視線を逸らし、モジモジしながら言った。
 「・・・お嫁さん」
 小さく消えてしまいそうな声だった。
 「え?」
 僕は思わず聞き返す。
 「・・・もしお料理うまく作れるようになったら・・・美春をトウ君のお嫁さんにしてくれる?」
 ミハちゃんは真っ直ぐに僕のことを見ていた。
 「分かった。じゃあミハちゃんが料理出来るようになったら、僕がミハちゃんをお嫁さんにして、一生守って上げるから」
 ミハちゃんの顔が弾けるような笑顔になった。
 「約束だよ!絶対だからね!」
 桜の花びらが僕とミハちゃんの上に優しく降ってきていた―――





 
 「っていう約束をしたって訳」
 冬貴君は話を終えるとため息を付きました。
 (美春さん・・・そんな小さい時から冬貴君のこと・・・)
 私は美春さんの強い想いを改めて知ったような気がしました。
 「だけど・・・情けないよな」
 私は冬貴君のことを見ます。
 「『お嫁さんにしてあげる』だの『一生守ってやる』だの言っときながら実際には危険な目に合わせてるんだし」
 「そんなこと・・・」
 私はそう言いかけて、冬貴君の異変に気付きました。
 冬貴君の瞳から涙が流れてました。
 「だって、そうだろ!?事故だって俺が『試合見に来てくれ』なんて言わなければ美春は事故に会うことも―――」
 その時、私の体はとっさに動いていました。
 それが私の気持ちなのか、それとも私の中の『美春さん』の気持ちなのかは分かりません。
 気が付くと、私は泣いている冬貴君の頭をそっと抱き締めていました。
 「冬貴君・・・そんなこと言わないで。そんなこと言ったら・・・美春さんが悲しむから」
 泣き続ける冬貴君を抱きしめながら私は―――
 (私は、他の誰でもないこの人の―――冬貴君のために美春さんでありたい―――)
 そう強く願っていました―――


                 

                   〜第25話に続く〜


           こんばんわ〜フォーゲルです。第24話になります〜

                水族館デート編はこれで終了です。

       今回は萌えとギャグとシリアスをうまく配分出来たかなと思います。

キャンペーンガールのお姉さん達と仲良く喋ってる冬貴とその後ろで頬を膨らませてるだろう美春は、

                   すごく微笑ましいですね〜

          引っ張って来た『桜の木の下での約束』はこういうことでした。

            美春の深い想いを感じとって貰えると嬉しいです。

             次回は今回とは一変、萌えが中心の話になるかもです。

                   それでは、失礼します〜


管理人の感想

今回は水族館デートの続き。・・・というか、帰りかな?

やはりというか何と言うか・・・ミハルの行動は、かなり過去の美春と似ているようですね。

バスの中で居眠りをしてしまい、そのまま冬貴の背中の上へ・・・それを躊躇無くやってしまう冬貴も「らしい」ですが。

やっぱり冬貴はまだミハルに対しては恋愛感情は無いのかなぁ。本物の美春が相手なら、躊躇どころかおそらく起こしてしまうでしょうし(汗)

対して、ミハルの想いは着々と育まれているようですねぇ。とりあえず冬貴は鈍感すぎますが(笑)

それでは、次回もお楽しみに〜^^



2007.4.21