『桜がもたらす再会と出会い〜第15話〜』
投稿者 フォーゲル
風に吹かれて落ちてきた短冊をキャッチした美春は、そこに書かれた願い事を見つめます。
7年の年月が経っていて、もう短冊はボロボロでしたが、そこには、叶うことの無かった美春の想いが書かれていました。
(でも・・・今はそれで良かったかも。そのおかげで・・・)
美春がそんなことを考えてると―――
「どうしたんだ?美春?うん〜と・・・」
「キャッ!?・・・冬貴君、何やってるの?」
いつの間にか、美春の背後に来ていた冬貴君が覗き込むようにして、美春の後ろに立っていました。
「いや、美春はどんな願い事をしてたのかが気になってな」
そう言いながら、冬貴君は成長した笹を見上げました。
「俺の短冊は無くなってるし、子供の頃の思い出として知りたいだろ?」
確かに笹に結んであったのは、美春の短冊だけで、冬貴君の短冊は無くなってました。
「だからって後ろから、覗き見ていいってことにはならないよ?」
「じゃあ、素直に『見せてくれ』って言ったら、見せてくれたのか?」
「そ、それは・・・」
思わず、言葉に詰まります。
『だろ?』とでも言いたいような表情をする冬貴君。
「と、とにかく!女の子の秘密を覗き見るようなことをしちゃダメだよ?」
「お、『女の子の秘密』って・・・そんなたいしたことでも」
「とにかく、ダメなの!」
「わ、分かった!諦めるから」
美春の剣幕に、冬貴君は仕方なく諦めてくれたようでした。
【ヒュウ―――】
突然、強い風が吹き抜けていきます。
美春は、短冊が風で飛ばないようにしっかりと握りました。
「そろそろ戻った方がいいかもな・・・」
冬貴君がポツリと呟きます。
「どういうこと?」
「美春、ニュース見てないのか?超大型の台風が近づいてるんだぞ?」
ここ数年でも、最大規模の台風が初音島に直撃コースで近づいてきていると冬貴君は教えてくれました。
美春が空を見上げると、確かに雲が凄いスピードで流れていくのが分かりました。
「確かに、もう戻った方がいいかもね」
冬貴君の意見に賛成した美春は短冊をポケットにしまうと、冬貴君の後についてその場を離れました。
(台風来てるんだ・・・そういえば『あのとき』も台風が来た日の夜だったっけ・・・)
美春はそんなことを考えます。
(冬貴君は覚えてくれてる?・・・あのときのこと)
前を歩く冬貴君の背中を見ながら、美春は心の中でそう問いかけていました。
「全く・・・冬貴君もしょうがないなぁ」
美春は呆れながら、ウィンドーショッピングをしていました。
秘密基地から戻って来た後、冬貴君は「スポーツ用品を買いたいから、ちょっと待ってて」と言って、
お店の中に入っていきました。
でも、美春が呆れていたのはそのことではありません。
(冬貴君、本当に自覚無いんだ・・・自分がモテるってことに)
2人で歩いていると、何だか視線が美春達に集まってるのを感じました。
それは、冬貴君も感じていたみたいで、そっと美春に話し掛けます。
「なぁ・・・美春。何かスゴイ見られてるような気がするんだけど、気のせいか?」
「うん・・・ねぇ、冬貴君、『また』何かした?」
「『また』ってのは、どーいう意味だよ。人聞きの悪いことを言うな」
そんな会話をしながら、美春はその視線の正体に気付いていました。
何人かの本校の女子の先輩達が冬貴君の方を見ながら、何か喋っています。
そのことと、学園で眞子先輩から聞いたことを考えると、出てくる答えは一つでした。
最も、冬貴君はそのことには全く気付いてないみたいだったけど。
(冬貴君・・・人気あるんだ・・・)
【ズキン】
さっき、教室で感じたのとは違うドキドキが美春の心を打ちます。
今のドキドキは、ちょっと痛い感じがしました。
(冬貴君のあの鈍さを考えると、他の女の子の視線の意味は分からないんだろうけど)
でも、それは裏を返せば・・・
美春がそんなことを考えてると・・・
「どうしたの?天枷さん?元気ない顔して?」
「あ、工藤先輩・・・」
そこには、朝倉先輩のお友達の工藤先輩がいました。
朝倉先輩や杉並先輩のお目付け役でもあり、そのハンサムな外見から美春達のクラスでも人気があります。
「いえ、ちょっと・・・工藤先輩は何してるんですか?」
「ギターの弦が切れちゃってね。ショップに修理に出しに来たんだ」
工藤先輩は白河先輩達とバンド活動をしています。
白河先輩の美声とルックスなども相まって、学園祭ともなると毎回大入り満員です。
「そういう天枷さんは何してたの?・・・ああ、なるほど?」
工藤先輩はスポーツショップの中の冬貴君を見て、納得したように頷きます。
「柊の奴とデートだったんだね。じゃあ俺はジャマしないうちに・・・」
「待って下さい」
美春は思わず、工藤先輩を呼び止めていました。
「うん?どうしたの?」
「冬貴君、まだ時間掛かるみたいなので、ちょっとご相談したいことが・・・」
「相談?俺に?俺もまだ修理に時間掛かるみたいだから良いけど」
OKしてくれた工藤先輩を連れて、美春はすぐ近くの喫茶店に入りました。
「それで?俺に相談っていうのは?」
適当な物を注文した工藤先輩は美春に話を促がします。
(う〜ん、どう切り出そうかな・・・)
美春は悩んだ末に話始めました。
「実はですね・・・美春、恋愛相談を持ち掛けられちゃいまして・・・」
「恋愛相談?」
「美春の友達なんですけどね・・・その娘は好きな男の子がいて・・・
その娘は、その男の子とは幼なじみで小さい頃からその男の子のことが大好きだったんです。
だけど、その男の子はその娘の気持ちに全く気付いてくれなくて、
今もその娘のことを只の幼なじみとしてしか見てくれてないみたいなんです。
その娘はいろいろとアプローチしてるのに・・・
だから、そういう男の子にはどういう風にアピールすればいいのか、男の子の立場からアドバイスが欲しいんですよ」
そこまで話して、美春は水を飲みます。
(これで、大丈夫だよね)
美春の話を黙って聞いてくれた工藤先輩はしばらく考えた後、口を開きました。
「なるほど・・・それは大変な話だね」
「はい〜、見てて可哀想です」
「俺は大したアドバイスは出来ないけど・・・」
「どんなことでもいいんです!お願いします!」
「『その娘』は一度でも、その男の子に『好きです』って言ったの?」
「え・・・そ、それは・・・」
美春は思わず動揺してしまいます。
「俺の考えだけど、そういう奴には何が一番確実かって言ったら、
結局は『自分の気持ちを素直に伝える』しかないと思うんだ」
「自分の気持ちを素直に・・・」
その言葉を美春は呟きます。
「それが、結局は『その娘』とその男の子の関係を変えるんじゃないかと俺は思うよ」
「そっか・・・そうですよね」
美春は少し自分の心が軽くなったのを感じました。
「さて、じゃあそろそろ俺は行くよ、ギターの修理も終わる時間だろうし」
伝票を持って工藤先輩が立ち上がります。
「あ、ここは美春が・・・」
「いいよ、ここは俺が払うから。それに・・・」
「それに?」
「いつまでも、天枷さんを独占してると柊に何言われるか分からないしね」
「な、何言ってるんですか〜」
工藤先輩の言葉に思わず美春は照れてしまいます。
「じゃあ、俺はこれで。天枷さん、頑張ってね」
そう言って、工藤先輩は商店街に消えていきました。
「自分の気持ちを素直に・・・」
工藤先輩の言葉を思い出しながら、美春は歩いていました。
(恥ずかしいけど・・・でも冬貴君はハッキリ言わないと分からないよね)
この前デートした時も、ちゃんと『デートしよう』って言ってれば、冬貴君は意識してくれたのかな―――
美春はそんなことを考えながら、冬貴君のいるスポーツショップの前まで戻って来ました。
冬貴君はまだ、中にいるみたいでした。
(まだ、買い物終わってないのかな?)
美春はお店の中を覗き込みます。そこには―――
「!!」
可愛い女の子と話している冬貴君がいました。
【ズキン】
また、美春の心にさっきの苦しい痛みが走ります。
(全部―――手遅れだったの?)
冬貴君と話している女の子は、本校の制服を着ていて、長い黒髪のいかにも冬貴君が好きそうな人でした。
2人の会話は盛り上がっていて、美春はその場から動けません。
(これ以上、見ていたくないよ―――)
美春がそんなことを思った時、冬貴君達に変化がありました。
同じ店の中にいた男の子が、2人に近づいて来ます。
そして、親しげに冬貴君と話をした後に、その先輩の手を繋ぎます。
(えっ・・・)
そして、冬貴君に2人揃って手を振りながら、挨拶をして離れていきました。
(な、な〜〜んだ!あの先輩、彼氏いるんだ)
そして、2人の姿を見送った冬貴君は店の出口に―――こっちに向かって歩いてきます。
美春は自分の心を落ち着けます。
「ゴメン!!美春!また待たせたか?」
「ううん、大丈夫だよ」
その時の美春の顔を自分は見れないけど、きっと満面の笑みだったんじゃないかと思います。
「ねぇ、冬貴君。さっきの男の子と女の子って何だったの?」
家へ帰る道を2人で歩きながら、美春はそう聞きます。
「何だ、見てたのか」
冬貴君によると、あの女の子にあの男の子との仲を取り持ってほしいと頼まれたとのことでした。
「え〜?冬貴君に頼んだらうまく行くものも行かなくなるんじゃ・・・」
「美春に頼むよりはマシだと思うんだが・・・それに大したことは俺、してないし」
冬貴君は、ただあの男の子の好みなんかを教えただけだと言いました。
「後は、あの先輩が頑張っただけだ」
(そっか、やっぱりみんな、自分の気持ちを伝えるために頑張ってるんだね)
美春も頑張って―――
そう思った時、冬貴君が口を開きます。
「だけど、そんなに焦るようなことでも無いと思うんだけどな」
「どういうこと?」
「あいつ、そんなにモテるタイプじゃないんだよ。俺が言うのもなんだけどな」
やっぱり、自覚が無い冬貴君が言います。
「他の誰かに告白されたのを見たならともかく、そうじゃないのに熱意が凄くてな、
まあ、だからこそ俺も協力する気になったんだけど」
(それはそうだよ。だって―――)
美春は口には出さずに考えます。
「まあ、あいつも『彼女欲しいな〜』とか言ってたからな、そういう意味では良かったよ」
冬貴君は満足気な表情を浮かべます。
「冬貴君は?」
「へっ!?」
「冬貴君は彼女欲しいな〜とは思わないの?」
気がつくと美春はそんなことを聞いていました。
「そ、そうだな〜俺は・・・モテないし、今は野球部の大会の方が重要だからな」
「そうなんだ・・・」
嬉しいような、悲しいような・・・そんな感情が美春の心を覆いました。
「でも・・・」
「でも?」
「しいて言うなら、俺が好きな人が俺を好きになってくれたら、それが一番いいかな〜なんて」
(!!)
「・・・冬貴君、好きな人いるの?」
「あのな、美春。俺だって年頃の男なんだし、一応な」
「そ、そうだよね」
最後の美春の声が少し動揺していたのに、冬貴君は気付いていないようでした。
「あ、もうこんな時間・・・寝ようっと」
美春はベッドに潜り込みます。
いつもなら、すぐに眠れるのに、今日はなかなか寝付けません。
昼間の冬貴君の言葉を美春は思い出していました。
『他の誰かに告白されたのを見たならともかく、そうじゃないのに熱意が凄くてな―――』
(当たり前だよ。他の人から見ればどんなにモテなくても、その先輩にしてみれば―――)
(『自分は好きになってる』んだから・・・美春だって)
昼間、冬貴君がその先輩と仲良く話してるのを見て、美春は不安になりました。
美春以外の女の子が、冬貴君の隣にいる―――
そのことがハッキリ言って、イヤでした。
それを強く意識した原因も分かっています。
(やっぱり、この短冊のせいかな―――)
秘密基地から持って来た短冊、それにはこう書かれてありました。
『いつまでも、冬貴君のとなりにいられますように』
(美春の気持ちはあの頃と全然変わってないんだよ。冬貴君―――)
(自分の想いを伝えようとするなら、それなりのことをしないとダメだよね)
【ヒュー、ガタン、ガタン!!】
窓の外から激しい音がします。
台風は、初音島にどんどん近づいて来ているようでした―――
〜第16話に続く〜
こんばんわ〜フォーゲルです。第15話になります〜
今回も美春視点です。美春の切ない想いを感じてもらえたら嬉しいです。
美春と工藤という意外(?)なペアに今回は挑戦してみました。(ゲームでも一回絡んでるけど)
美春の恋愛相談・・・何かどっかで聞いたような(笑)
次回は冬貴視点に戻ります。
美春の可愛らしい、でもデート編よりは大胆なアタックに注目して貰えると嬉しいです。それでは!!
管理人の感想
二連続の美春視点で、だいぶ私達読者側にも彼女の気持ちが確立してきましたね。
短冊に書いた幼い頃の願い・・・それは今も色あせることなく、むしろ濃くなっている。
途中の、美春×工藤、冬貴×謎の先輩女性というところで、修羅場に発展するのかと思ったのですが・・・何事もなく終了。美春はやきもきしていましたが(笑)
そして冬貴の口から明かされる事実。「好きな人がいる」
この言葉を受けて、これから美春はどのようにアプローチしていくのか?
やはり続きが楽しみですね^^