『桜がもたらす再会と出会い〜第14話〜』
投稿者 フォーゲル
「う〜ん、この時間になるとさすがにみんな、帰ってるよね」
美春はそれを確認すると、一人教室の中に入ります。
期末テストが終わったばかりで、部活や遊びなんかに精を出している人が多いのは、どこのクラスも一緒みたいで、
美春達のクラスも例外ではなく、HRが終わってあまり時間はたってないですが、教室には誰も居ませんでした。
もちろん、普段は美春も積極的に遊びに行くタイプですが、今日は例外です。
風紀委員のお仕事があった訳でも、期末テストで赤点を取って補習という訳でもありません。
では、何故、美春が放課後に、誰も居ない自分の教室に一人でいるのかというと―――
(何なんだろう・・・冬貴君、美春に話って・・・)
美春は一人、考えます。
今日の朝、登校する時に冬貴君にこんなお願いをされました。
『今日の放課後、話があるから、教室で待っててくれないか』
そう話す冬貴君の目は真剣そのもので、美春は思わず訳も聞かずに『分かったよ』と答えていました。
(あんな真剣な顔をするってことは、かなり大事なことなんだと思うけど・・・)
美春はそんなことを考えながら、冬貴君が来るのを待ちます。
真夏が近づいて来て、太陽が傾いて来ていると言っても西日の差し込む教室は、まだ暑いままでした。
(ジュースでも買ってこようかな)
美春は、制服のポケットに手を入れました。
【コツン】
手が何かに当たりました。
(そっか・・・ここに入れてたんだっけ)
ポケットからそっと取り出します。
そこにあったのは、一個の小さな指輪でした。
この間、冬貴君と・・・デ、デートした時に冬貴君が指に嵌めてた指輪・・・
あの時、冬貴君は美春と別れた後、一時、行方不明になった時間がありました。
『心配させないでよ!!』って美春が怒ると、
冬貴君は、『心配かけたお詫びに何でも言うことを聞くから』って言うので美春はお願いをしました。
『冬貴君が指に嵌めてる指輪を美春にちょうだい♪』って・・・
冬貴君はしばらく、渋っていましたが結局その指輪を美春にくれました。
『これ、貴重なものなんだけどな〜』みたいな表情を冬貴君はしていたけど。
(でも、冬貴君は何で美春がこれを欲しがったのか・・・分からないよね)
そんなことを思いながら、その指輪を見つめます。
(あっ・・・そうだ)
美春は不意に思いついたことを試してみます。
(指輪なんだし、やっぱり指に嵌めてみないとね)
もちろん、冬貴君が美春の指のサイズを知っている訳がないので『ものは試しに・・・』くらいの軽い気持ちでした。
そして―――
「ウソ・・・」
思わずビックリしてしまいました。
指輪は美春の指に―――左手の薬指にピッタリ嵌りました。
(これって・・・偶然?それとも・・・)
そして、この指輪は冬貴君から貰った物だと思った時、
美春の胸は急激にドキドキし始めました。
(やっぱり美春は・・・)
自分の気持ちを改めて、確認した時、聞き覚えのある声がしました。
「柊〜いる〜?」
教室内に響いた声に、美春は驚いて自分の指をとっさに隠します。
「何だ・・・眞子先輩ですか〜脅かさないで下さいよ〜」
「別に脅かしたつもりはないんだけど・・・美春、柊は?」
「冬貴君に用事ですか?」
「うん・・・ちょっと聞きたい事があってね」
眞子先輩の話によると、今度大会に出る野球部の応援曲について聞きに来たとのことでした。
「特に、レギュラーは一人一人曲が違うからね。聞いておかないと」
そういえば、この間ついにレギュラー取ったって喜んでたっけ・・・
「美春は何してるのよ」
「えっと、冬貴君に呼び出されて・・・」
美春が事情を説明すると、眞子先輩は意味深な表情をしていました。
「じゃあ・・・私は明日にでもまた来るか」
「えっ?でもしばらく待ってれば来ると思いますよ」
「後輩の恋をジャマする気はないからね」
「?」
「男が女を一人だけ呼び出すなんて、することは一つしかないでしょ?」
眞子先輩の言葉に美春は考えます。
(・・・!!)
その状況で思いつくことを考えて、美春の顔は赤くなります。
(え〜〜〜〜〜っ!!み、美春は確かに冬貴君のこと・・・だ、だけどまだ心の準備が〜)
内心で焦りまくる美春をよそに、眞子先輩は笑いをこらえながら言います。
「だけど、柊もああ見えて結構女の子に人気あるみたいだからね」
「そうなんですか?」
思わず聞き返します。
「野球部が強くなってきたのと、そのレギュラーともなればね〜」
眞子先輩によると、本校の女子の先輩達に結構人気があるみたいです。
「だからね、美春・・・捕まえられる時はちゃんと捕まえておきなさいよ」
眞子先輩はそう言うと、教室を出て行きました。
そして、また一人になると今度は急に緊張してきました。
今朝の冬貴君の顔を思い出してドキドキしているのが自分でもハッキリと分かりました。
(やっぱり、大事な話って・・・そういうことなの?)
美春がそんなことを考えてると・・・
「悪い〜遅くなった。待たせちゃったか?」
冬貴君が教室に入ってきました。
「う、ううん。美春も今来たところだから」
美春は思わず、冬貴君から顔を逸らします。
(ど、どうしよう〜マトモに顔も見れないよ〜)
「そ、それで冬貴君、美春に話って?」
「ああ、実は―――」
【トクン】
冬貴君の言葉を聞くだけで、美春の心はドキドキしていました。
「美春、俺、お前に―――」
【トクン・トクン―――】
心臓の鼓動がさらに早くなるのを美春は感じました。
「頼み事があるんだ!何も言わずに黙って付いてきてくれないか?」
「えっ、ち、ちょっと?冬貴君?」
ちょっと強引な冬貴君に、さらにドキドキしながら美春は冬貴君の後を追いました。
「美春〜ありがとう!お前のおかげで何とかゲットすることが出来たよ」
「別にいいよ〜美春は何かした訳じゃないし」
冬貴君は、限定品だというシルバーのブレスレットを持ってご機嫌でした。
そういえば、そのブレスレットを買う時に、店員さんが美春の方も見ていたのが気になりました。
「だけど、冬貴君・・・そんなお願い事なら普通にお願いしてくれれば良かったのに」
「普通に・・・って俺は普通に頼んだと思うんだけど」
(だったら、あんな真剣な顔しないでよ・・・美春はてっきり・・・)
(もちろん、冬貴君にとっては、よっぽど大事なことだったのかも知れないけど)
そう心の中で美春は呟きます。
「そういえば、何か勘違いしてたみたいだけど、美春・・・一体何だと思ったんだ?」
「えっ?う、ううん。何でもないよ」
美春の答えに冬貴君は首を傾げます。
(言えるわけないよ〜『告白されるかもしれない』なんて思ったとは・・・)
そんな自分の考えに、また顔が赤くなるのを感じます。
「そ、それより!何でそのブレスレット手に入れるのに美春が協力する必要があったの?」
「ヘッ?そ、それは・・・」
立場が変わり、今度は冬貴君が答えに詰まります。
「え、え〜とな。どうしても言わなきゃダメか?」
「協力してあげたんだから、教えてくれてもいいと思うんだけど」
「分かったよ・・・実はな」
冬貴君の話をまとめると、冬貴君の持ってるブレスレットを買うためには『ある条件』が必要だったみたい。
「その条件って?」
「・・・このブレスレットは、ペアリングなんだよ」
「え・・・」
その言葉に、美春は鋭く反応してしまいます。
「それで、このブレスレット・・・カップルで行かなきゃ売ってくれないって言うから」
「・・・それで美春に?」
「だって、音夢さんだと万が一、純一先輩に目撃された後が怖いし、白河先輩だと引き受けてはくれるだろうけど、
次の日に男子連中の視線が痛いし、水越先輩達は部活で忙しそうだし、さくら先生はそもそもカップルに見えなさそうだし・・・
頼めるのは美春しか居なかったというか・・・」
そんな冬貴君の言葉を聞きながら、美春は嬉しくなっていました。
(それって・・・冬貴君は美春をそういう対象の一人として見てくれてるんだ)
そんな美春の反応を見ながら、冬貴君は聞いてきます。
「ひょっとして、イヤだったのか?」
「え?」
「黙っちゃったからさ・・・そうだったなら謝るけど」
「う、ううん。そうじゃないよ」
(逆だよ・・・凄く嬉しいんだよ)
そんなことを考えながら、美春達は商店街の中を歩いていきます。
商店街は、もうすぐ七夕なので、いろいろな飾りつけが目立っていました。
「そうか・・・もうそんな季節なんだな」
美春の隣で冬貴君が呟きます。
その時、美春はあることを思い出しました。
「ねぇ、冬貴君。七夕で思い出したんだけど」・・・『あそこ』に行ってみない?」
「『あそこ』って?』
「ほらほら、冬貴君が転校しちゃうまでは、毎年七夕になると行ってたじゃない?」
美春の言葉に、ようやく冬貴君も思い出したらしく、頷きます。
「あ〜『あそこ』か?・・・でも今の時間だと危なくないか?」
「夏でまだ日も高いし、大丈夫じゃない?それに・・・」
「それに?」
「危ないことがあっても、冬貴君が助けてくれるよね?」
「俺に出来る範囲内でならな・・・」
「じゃあ、決まりだね?行こう!!」
今度はさっきとは逆に美春が冬貴君の腕を掴みながら、歩き始めました。
胡ノ宮先輩が巫女さんをしている神社の裏側の森の中、ちょっと入った所に美春達の目指している場所はありました。
「うわ〜本当に全然変わってないな」
冬貴君が思わず、感心したような声を上げます。
そこには、小さな小屋みたいな建物が一つと、その隣には大きな笹が生えていました。
「懐かしいよね〜美春も実は久しぶりに来たんだけど・・・」
その場所は、子供の頃に美春と冬貴君とで見つけた遊び場所というか秘密基地みたいなところでした。
昔は、ここで冬貴君と一緒にいろいろなことをして遊んだことがあります。
「さすがに中はボロボロすぎてもうダメだな〜」
中を見てきたらしい冬貴君が、頭の上に積もった埃を払いながら、出てきました。
「どうしたの?」
「せっかくだから何か懐かしいものでも無いかなと思って見てきたんだ」
「どうだった?」
「いや〜かなり懐かしい戦隊モノのおもちゃとか出てきたぞ」
そう言って冬貴君は、じっくりとそのおもちゃとかを眺めた後、口を開きました。
「だけど・・・意外だな」
「何が?」
「美春のことだから、てっきり俺が転校した後も、純一先輩や音夢さんとかも連れてきてるんじゃないかと思ったけどな」
「う〜ん、ここには何か冬貴君以外の人と来る気にはなれなかったんだよね」
「そういうもんか?」
そんなことを言いながら、冬貴君はまた思い出の品を眺めます。
その横顔を見ながら、美春は思います。
(本当は違うんだ・・・冬貴君は覚えてないかも知れないけど、ここであった『あのこと』がきっかけで、美春は冬貴君のこと・・・)
(だから、ここは美春にとっては本当に大切な思い出の場所なんだよ)
美春がそんなことを考えてるとは思ってない冬貴君は、まだ物思いにふけっているようでした。
(あ・・・そうだ)
冬貴君がそんな状態の間に、美春は小屋の隣に生えている笹の方に行ってみました。
7年前、美春と同じくらいの大きさだった笹は、7年たった今、美春の身長よりも大きくなっていました。
(願い事を書いた短冊、まだ有るかな〜)
さすがに、7年経ってるから千切れたりして無くなってるかと思いました。だけど・・・
(あ、あった・・・)
美春が願い事を書いた短冊はまだ、風に揺れていました。
そして、美春が来ることを分かっていたかのように、プチンと結んでいた紐が切れて美春の手元に落ちて来ました。
美春はそれをキャッチします。そして、その短冊には―――
今も昔も、変わらない美春の純粋な願いが書かれてありました。
〜第15話に続く〜
<後書きコメント>
こんにちは〜フォーゲルです。第14話をお送りします。
今回の話は全て美春視点で書いてみました。
序盤は読んでる読者が一瞬「オッ?」と思う展開にしてみました。(本当に一瞬だが)
フェアリーストーンが冬貴から美春にプレゼント(?)されてるのは、のちのち重要になってきます。
実は、冬貴が年上の女性にモテるという事実が美春にどういう影響を与えるのか・・・
眞子の発言のせいで、スイッチ入っちゃってる気もするが(笑)
『告白されるかも』とドキドキしている美春には書いてて萌えました(爆)
美春の『願い事』とは一体何なのかとかも楽しみにしてくれると嬉しいです。それでは!
管理人の感想
はい、今回もありがとうございました〜。
いやぁ、序盤はまさかの展開に思わず「おぉっ?」となりました。
まあ蓋を開けてみれば、いつもと変わらずに鈍感な冬貴が待っていただけですけど(笑)
でも美春視点だと、彼女の気持ちがはっきりと伝わってきていいですね。しかも思っていた以上に心は傾いているご様子。
二人だけの秘密基地・・・という設定も良かったです。
そして短冊に書かれた願い事。大方予想はつきますが、内容は確かに気になりますね・・・。
それでは皆様、次話もお楽しみくださいませ^^