『桜がもたらす再会と出会い〜第13話〜』
投稿者 フォーゲル
「ふにゅ〜・・・今日はいろいろありすぎて大変だったよ〜」
ボクはそんな声を出して、用意した緑茶をひと飲みする。
(だけど、タイムスリップか・・・本当にそんな現象が起こりうるんだ・・・)
過去から来たという柊くんが帰った後、ボクは深く考え込む。
「まあ、あの指輪を持ってるのなら、当然かもね・・・」
柊くんの指に光っていた指輪―――フェアリーストーンを思い出して、ボクは思わず溜息を付く。
過去から来た柊くんの手前、知らないふりをしたけど、
あの指輪は、今では魔法世界でもレア扱いされている魔法道具だ。
持っていく所に、持っていけばそれなりの値段で売れるはず。
過去の柊くんの時代の時点では、フェアリーストーンは、
『魔力はあるけど、その発動条件が分からない』ってことで、あまり価値は無かった。
その発動条件が分かったのは今から2・3年ほど前のこと。
判明した時には、その特性から即、レアアイテム扱いされることになった。
その特性とは・・・
『魔力は関係なく、その指輪を持ってる人間の感情が引き金になる』
ってことだった。
これは、魔法使いの間ではちょっとした話題になった。
魔力が関係無いのなら、ボクやお兄ちゃんのような魔法使いの血を引いている人間でなくても、
フェアリーストーンだったら、その中に込められている魔力を使えるかも知れないってことだから・・・
実際に今回の騒動で、普通の人間でしかない柊くんがこの未来の世界に来たってことは、
柊くんの想いがフェアリーストーンの魔力を引きずり出して、それが桜の魔法の波長とたまたま合ってたことで、
魔力が増幅された可能性が高い。
最も、今回の騒動で過去の柊くんの持ってるフェアリーストーンの魔力は消えたみたいだから、
もう、魔法道具としての効果はほとんど無いと思うけど・・・
それでも、『人の想いに反応する』って点に関してはひょっとしたらまだ、反応があるかも知れない。
(それでも、柊くんの想いが美春ちゃんに伝わりやすくなるくらいの効果だろうけどね)
ボクはお互いの想いが伝わらず、見てるこっちがじれったかった学生時代の2人を思い出して苦笑する。
【ピンポ〜ン】
インターホンが鳴ったのは、ちょうどそんな時だった。
(お客さんかな?)
ボクはそんなことを考えながら、玄関へ向かった。
「ハイハ〜イ。今開けるから」
ボクはインターホンの音にせかされるように引き戸を開けた。
「さくらお姉ちゃん〜お兄ちゃんは?」
ついさっき家に帰ったはずの春菜ちゃんがいた。そしてもう一人・・・
「芳乃先輩〜こんばんわ〜」
すっかり母親が板について来た美春ちゃんも一緒だった。
「こんばんわ、美春ちゃん。どうしたの2人揃って?」
「え〜とですね、春菜が美春に会わせたい人がいるって言うので来たんですよ。美春も芳乃先輩に用事があったんで・・・」
「用事?何なの?」
「え〜と、実はですね・・・」
美春ちゃんが用件をボクに伝えようとした時、春菜ちゃんがボクに聞いてきた。
「さくらお姉ちゃん!さっきのお兄ちゃんは?」
春菜ちゃんの質問にボクはしばらく考えた後、こう答えた。
「春菜ちゃん・・・お兄ちゃんね、急に急用が出来ちゃって外国に帰らなきゃならなくなったんだ。
それで、ついさっき帰っちゃったんだ。春菜ちゃんによろしくって言ってたよ」
本当のことを言うわけにもいかないから、適当なウソをつくボク。
「そんな〜ママにもお兄ちゃんに会ってもらいたかったのに〜」
「ママに?」
ボクは思わず美春ちゃんを見る。
「春菜が言うには、その人学生時代のパパにそっくりだったって言うんですよ。ママも会ったらビックリするからって」
(そりゃ、ビックリするよ・・・15年前の本人だもん)
ボクは口には出さず、心の中で呟く。
「ママ、本当にそのお兄ちゃんパパにそっくりだったんだよ」
「へ〜・・・春菜がそこまで言うのなら、ママも会って見たかったな。学生時代のパパはカッコ良かったから」
本人が聞いたら落ち込みそうな言葉を美春ちゃんが言ったその時・・・
「おい、美春・・・それじゃ今の俺はカッコ良くないと?」
ボクは思わず、声のした方を見る。
そこには、ついさっきまでボクが会っていた15年前の少年の面影を残した人が立っていた。
「学生時代のパパはカッコ良かったから」
俺は思わずズッコケそうになりながらも、声を掛ける。
「おい、美春・・・それじゃ今の俺はカッコ良くないと?」
「あっ!パパだ!お帰りなさ〜い!!」
春菜が俺の胸に飛び込んでくる。
「ただいま、春菜。パパのいない間、ママの言うこと聞いていい子にしてたか?」
「うん!!」
「お帰りなさい!冬貴君」
美春も俺に声を掛ける。結婚しても俺達の互いの呼び方は学生時代のままだ。
「ああ、ただいま。・・・だけど、さっきの発言はひどくないか?」
「・・・聞いてた?」
「残念なことにバッチリとな」
「まあまあ、褒められてると思ってよ。今でも充分カッコいいよ」
「何か、とってつけたようにしか聞こえないんだが」
俺は深く息を付く。
ふと、俺をじっと見ているさくら先生の姿が目に入る。
さくら先生は俺に向かってウインクした。
それを見た俺は、美春に春菜を預けてさくら先生の方へ近づく。
俺は小声でさくら先生と会話する。
「こんにちは。さくら先生。・・・来ました?・・・『俺』?」
「うん。柊くんの伝言通りに・・・」
未来が変わってないのなら、今日は15年前の『俺』がこの時代に来て春菜を救っているはずだった。
「そっか・・・良かった」
「柊くん、大活躍だったよ!・・・自分の娘を救うためにね」
俺はうっすらと記憶に残っているその時のことを思い出す。
(今にして思えば俺が、あの時春菜をあんなに守りたかったのは、本能的に自分の娘だって分かってたからかな・・・)
そんなことを考えてる俺に、さくら先生が声を掛ける。
「それで、柊くん。あの指輪は今、どこにあるの?」
さくら先生の問いかけに俺は考え込む。
「・・・いろいろあって今は無くなっちゃったんですよ」
「そっか〜残念だなぁ、まだ持ってるのならいろいろ研究しようかと思ったんだけど」
「ねぇねぇ〜パパもさくらお姉ちゃんも何お話してるの?春菜も知りたいな〜」
俺達の会話が気になったのか、春菜が近くに寄って来ていた。
「あ、美春も知りたいです〜2人だけで秘密のお話なんてズルいよね〜春菜」
母娘に詰め寄られ、俺はさてどうしたものかと考えていたが・・・
「知りたい?」
そう言ったのは、さくら先生だった。
2人が頷くのを確認したさくら先生が春菜の方を見つめながら口を開く。
「『春菜ちゃんのパパがね、ママをどんなに好きだったか』って話だよ」
「ちょ!ちょっと何言ってんですか!」
思いっきり抗議の声を上げる俺に、さくら先生が小声で俺の耳元で囁く。
「実際、そんな感じだと思うけど・・・」
「確かに、ある意味ではそうですけど」
そんな俺とさくら先生を見ながら、
「パパとママのお話?聞きた〜い!!」
「イ、イヤだな〜冬貴君、そんな話してたの?は、恥ずかしいよ・・・」
目を輝かせる春菜と、恥ずかしがる美春。
さくら先生は2人のリアクションを面白がり、話を続ける。
「じゃあ、春菜ちゃんにはパパとママがいない時にじっくり話してあげようかな〜」
「うん!」
「さくら先生!」
「芳乃先輩!」
悪ノリして話を進めるさくら先生にさすがに、俺も美春もツッコミを入れる。
「にゃはは、冗談だよ、冗談。それよりも美春ちゃん、ボクに何か用事だったんじゃないの?」
さくら先生は、美春に話を振る。
「あ、そうでした。・・・冬貴君もいるし、ここで発表しちゃおうか?」
「ママ〜春菜が言いたい〜」
「そう?じゃあ、春菜にお願いしようかな」
春菜は俺とさくら先生の前に出ると、口を開いた。
「春菜は、もうすぐ・・・お姉ちゃんになるんだよ!」
その言葉に俺は、思わず美春を見る。
「えっとね・・・もしかしてと思って病院に行ってみたら・・・3ヶ月だって」
「やったーーー!!」
俺は思わず美春の体を抱きしめていた―――
風が吹き抜けていく。
優しく吹いているように感じられるのは、俺が暖かい気持ちだからだろうか。
その中を俺と美春は肩を並べながら歩いている。
俺達2人の少し前を、春菜が飛び跳ねるように歩いていた。
弟か妹が出来るのが嬉しいのか、ウキウキとしているように見えた。
「春菜〜転んでも知らないよ〜」
「は〜い、分かってる〜・・・キャッ!」
美春が言ってるそばから、春菜は思いっきりコケていた。
「春菜!大丈夫!」
「エヘへ・・・大丈夫!」
転んだのに春菜は泣きもしなかった。
「やっぱり、お姉ちゃんになるっていう自覚が知らないうちに出てきてるのかな?」
「それか、嬉しくて痛さも忘れてるんじゃないか?」
俺達はそんなことを思いながら、春菜を見ていた。
「でも、美春達はなんでさくら先生の家に居たんだ?」
「うん、実はね・・・」
美春達がさくら先生の家に来ていたのは音夢さん達が美春の妊娠祝いで、
パーティをしてくれるってことで、それの招待に来ていたらしい。
「せっかくやるんなら、楽しくやりたいと思って」
「なるほどね・・・」
確かに今日の夜は楽しい夜になりそうだ。
(あ、そうだ・・・)
俺は思いついたことを口にする。
「なあ、美春・・・何か欲しい物はないか?」
「え?どうしたの急に?」
「いや、俺が今こうやって幸せに生活出来てるのも、美春のおかげかなって・・・」
俺は『プロ野球選手』という職業上、どうしても家を開けることが多い。
そんな時でも、美春がちゃんと家のことをやってくれてるから、俺は安心してプレイ出来ると思ってる。
「そんなことないよ〜美春は冬貴君のお嫁さんとして、自分に出来ることを精一杯やってるだけで・・・あ、でも」
「でも、何だ?」
「欲しい物はないけど、『してもらいたいこと』だったらあるかな〜」
「何だ?言ってみろよ」
「う〜ん、じゃあね〜」
美春は俺の耳元で『してもらいたいこと』を告げた。
「なあ、美春・・・本当にこんなことでいいのか?」
「いいの、いいの!これが美春はよかったんだから」
美春はそう言って満面の笑みを浮かべる。
『付き合い始めたころみたいに、手を繋いで欲しい』
それが美春の『してもらいたいこと』だった。
「だって、春菜が生まれてから、冬貴君そういうこと全然してくれないんだもん」
「しょうがないだろ・・・恥ずかしいし、手を繋ぐって年でもないし」
「冬貴君、女の子はいつだって好きな人にはそういうことをしてほしいって思うんだよ」
「・・・分かりました」
そんな話をしながら、俺は美春の手を引いて歩いていく。
不意に美春が口を開いた。
「冬貴君・・・ありがとう」
「へっ?」
俺は思わず聞き返す。何か美春に感謝されるようなことをしたか?
「さっきの言葉。美春のおかげで幸せだって。美春も同じだよ」
「・・・」
「美春も冬貴君と結婚して、春菜が生まれて・・・」
繋いでいないもう片方の手で、自分のお腹を―――新しい命が宿っているお腹を優しく撫でながら、美春が言葉を続ける。
「可愛い子供達に恵まれて、美春もすごく幸せだよ」
美春の真剣な言葉に俺は、思わず美春の目を見つめる。
「ねえ、冬貴君・・・これからも辛いことや、悲しいこともあるかも知れないけど、2人で乗り越えていこうね」
「ああ。2人で・・・これからもよろしくな」
俺は短く返事すると、美春の手を強く握り締めた。
美春もそれに答えるように、俺の手を強く握り返す。
言葉は短くても、それで互いの心は充分に伝わった気がした。
「あ〜〜〜〜!!」
声が響き渡る。見ると春菜が俺と美春を見ていた。
「ママばっかりず〜る〜い!!春菜もパパと手つなぐの〜〜!」
「う〜ん、じゃあ春菜はパパの反対の手を繋いでくれない?」
「うん!」
春菜は俺の空いてるもう片方の手を掴む。
「パパ、贅沢だよ〜こんなに可愛い両手に花はなかなか無いよね〜春菜」
「そうだよ〜たっぷり味わってね」
「じゃあ、堪能させてもらいますか?」
俺は2人に挟まれながら、家路を急ぎつつ、幸せを噛み締めていた―――
最初に感じたのは、桜の香りだった。
「・・・君!!・・・君!!」
何か叫び声が聞こえる。
「起きてってば!!」
【ガスッ!!】
最後の叫びとともに『俺』の意識は覚醒した。
ボヤッとした視界の焦点がだんだんと合ってくる。
「・・・美春?」
俺の目の前には、俺の肩を掴んでいる美春と、呆れ顔のさくら先生と純一先輩が立っていた。
「まったく、どこに行ってたの?みんなに心配かけて!」
美春が心配していたのか、怒っているのかよく分からない表情を浮かべる。
俺は『枯れずの桜』の下に腰を下ろしていた。
(これって・・・飛ばされた時と同じ場所?)
「今って・・・西暦何年?」
俺はそんな質問をしていた。
「2006年だけど・・・柊くん、大丈夫?」
美春に変わってさくら先生が俺の質問に答える。
さくら先生はついさっきまで俺が見ていたさくら先生とは精神的に幼いように見えた。
(ということは・・・帰ってきた?)
俺は、思わず安堵のため息を漏らす。
と、同時にさくら先生に伝えなければならないことを思い出した。俺はさくら先生を見る。
それで何かを悟ったのか、さくら先生は美春と純一先輩に少し離れててもらうようにしてから、俺のそばに来た
「柊くん、何があったの」
俺は自分の身に起きたことを話した。
さくら先生は半身半疑ながらも、最終的には俺の言葉を信じてくれた。
「美春ちゃんから柊くんがまだ帰ってないって連絡もらったから、もしかしてと思ったんだけど・・・」
「俺もまだ、信じられないんですけどね」
「分かった。15年後の今日だね」
これでひとまず、大丈夫か・・・
「あの〜芳乃先生、話、終わりましたか?」
美春が声を掛ける。
「う、うん!大丈夫だよ」
何故か、引き気味にさくら先生が答える。
入れ替わるように美春が俺のそばに来る。
「ねぇ、冬貴君・・・」
俺は何故か背中にゾクっとしたものを感じながら、美春を見る。
「『春菜ちゃん』って誰?」
「ヘッ!?」
「何か、寝言で言ってたんだけど・・・知り合い?」
「あ、あの〜美春さん?ひょっとして、怒ってます?」
「ううん、ただどういう知り合いなのか、出来れば美春が納得するように説明してほしいな〜」
その時、俺はやっと気がついた。
美春の顔は笑ってるのに、目がちっとも笑ってないってことに。
さくら先生と純一先輩の会話が聞こえてくる。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん。最近美春ちゃんの柊くんに対する扱いが音夢ちゃんがお兄ちゃんにする扱いに似てきた気がするんだけど」
「飼い主と飼い犬だからな・・・似てくるんじゃないのか?」
「2人とも、そんなこと話してないで助けてくださいよ!」
俺は2人に助けを求める。
2人の答えは同じだった。
『・・・自業自得?』
(そ、そんな〜)
「さあ、冬貴君〜喋ってくれるよね〜」
ニコニコ笑顔で聞いてくる美春の顔を見ながら、俺はどう言い訳しようかと考えていた―――
〜第14話へ続く〜
<後書きコメント>
こんばんわ〜フォーゲルです。第13話をお送りします〜
今回の話は、読んでくれた人達があったかい気持ちになってくれればいいなと思います。
フェアリーストーンは今回の話だけのアイテムの予定だったんですが、ストーリーに深く関わってくることになります。
今回の萌えポイントは、手を繋ぐのをおねだりする美春ですね。
書いててほのぼのしつつ、萌えました(爆)
次回は今のところ、美春視点の話になると思います。それでは!!
管理人の感想
はい、今回もありがとうございました〜^^
今回の話は、未来編のエピローグみたいな形でしたね。
最初は突然未来へ行って驚いていましたが、最終的に見てみるととても綺麗にまとまっていたと思います。
中盤の夫婦となった二人のほのぼのとしたシーンには、思わず顔がにやけてしまいました^^;
幸せそうな雰囲気が、読んでいる側にも伝わってきましたね。
次回は美春視点とのことなので、これも楽しみです♪
では、皆様も次回をお楽しみに〜^^