D.C.U SS
「Dream World」
Written
by diary
〜中編〜
渉たちと別れた後,寝坊して朝食が取れなかった二人はとりあえず園内のレストランに入った。由夢は「寝坊さえしなかったらお弁当作ってあげたのに・・・」と拗ねていた。
(さて,どうしたものか。)
食事を終え,義之は由夢と2人きりになったものの,非常に困っていた。というのも,義之が”消えた”あの日以来,一緒に買い物をしたことはあったのものの,デートらしいデートはしたことがなかった。
というわけで,デートを楽しませる方法なんてわかるわけもなく,昨夜遅くまで色々考えていたものの,想像だけではとても補える物ではなかった。
「・・・なぁ,由夢。どこか行きたいところとかあるか?」
「せっかくだし・・・兄さんが連れてってくれるところならどこでも・・・///」
(くっ・・・嬉しい,嬉しいけどこのままじゃ・・・っと,あれは・・・)
「由夢,アレ乗るか?」
「アレって・・・急流すべりですか?でも兄さんって確かああいうの苦手なんじゃ・・・」
「だ,大丈夫だろ。この園内最大のアトラクションって言っても所詮小さな島のものだし・・・」
「兄さんがそういうならいいですけど・・・ホントに大丈夫ですか?顔色が悪いですけど・・・」
「よ,よし!行くぞ,由夢!!」
威勢良く入り口に向かったものの,顔色は悪いままだった。
「━━━バカですね,兄さん・・・」
「ああ・・・俺も今,実感してるところだ・・・」
見栄を張っての乗ったまでは良かったが,落下する際に怖さのあまり,隣の席にいた由夢にしがみついてしまったり,さらには足が震えて立てなくなったりと,とんでもない失態を晒してしまったのだ。
そして今現在,由夢の肩を借りながらなんとか歩いている状態であった。
「とりあえず,そこのベンチで休みますか?」
「そうだな,そうしてもらえるとありがたい・・・」
「とりあえず,私はお茶でも買ってきますね。兄さんはそこで休んでてください。」
由夢は義之を座らせると,そういって走っていった。
「・・・たく,これじゃどっちが年上かわからないな・・・」
義之は苦笑いするしかなかった。
「・・・遅いな・・・」
由夢がお茶を買いに行ってからすでに5分経過している。いくら視界内に自動販売機がないとはいえ,少々遅すぎる。
「ん・・・とりあえず歩けるな。こっちだったかな。」
義之は由夢が走っていった方向へ行ってみた。
(あ,いたいた・・・と,あれは・・・)
『もう,放してください!!』
『だから,一回だけお願いだって。一回だけ一緒にお化け屋敷に入ってくれればいいんだからさ。』
『そうそう,一回だけでいいからさ。』
『2人で行ってください!!』
『だからさぁ,俺たち二人でこの遊園地のアトラクション制覇しようと思ったんだけどさ,二人ともお化け屋敷が苦手なわけ。だから一緒に入ってくれる人探してたんだってば。』
『別にいいじゃん,10分ぐらいなんだし。』
(真昼間からナンパ野郎に絡まれたか・・・まぁ,義妹・彼女びいきを抜いてもかなり可愛い部類だしな・・・と,惚気てる場合じゃないか・・・)
「由夢!!」
「あ,兄さん・・・って,もう大丈夫なんですか?」
「ああ,とりあえず・・・で,こいつらは?」
義之は連中を睨みながら,わざとらしく尋ねてやった。
「ああ,お兄さん?悪いけど今からその娘とお化け屋敷に行く約束になってるから,ちょっと借りるな?」
「・・・由夢は嫌がってるように見えたんだが?それに・・・俺は由夢の兄じゃない。由夢の・・・恋人だ。」
「ふぅん。どうでもいいからさ,早くその娘渡してくれない?あんたには用ないからさ。」
(こいつら・・・許せないな・・・)
義之は二人を睨みつつ,指を鳴らした。
「兄さん・・・ダメだよ,こんなところでケンカしたら・・・」
「スマンな,由夢・・・ちょっと抑えれそうにない。3分でケリつけるから。」
『ふむ桜内よ。そこまでキレるとは,らしくないな。』
・・・いつの間にか背後に杉並が立っていた。
「まったく,そのザマでは非公式新聞部の部員は務まらんぞ,桜内!!」
「そんな部に入った覚えはない!第一お前がなんでここにいるんだ!!」
「あの・・・杉並先輩,今ちょっと取り込んでて・・・」
「それくらい見ればわかる。どうせ寺川と山口の二人が朝倉妹に手を出して,桜内がそれにキレたってあたりか。」
「・・・お前,なんで俺らの名前を・・・」
「な,なぁ・・・さっき”杉並先輩”って言ってたよな・・・もしかして,学校に爆弾を設置してるとか言う妙な付属のヤツって・・・」
「・・・じゃあ桜内ってその弟子とか言われてるあいつか・・・だとしたらヤバくないか・・・?逃げるか・・・?」
「そうだな・・・」
そういうと,寺川と山口というらしい二人は逃げていった。ちなみに,会話が丸聞こえだったことと,”誰が杉並の弟子だ”と義之が突っ込んだことは流れ上無視しよう。
「つまらんな,桜内よ。」
「・・・お前なんであいつらの名前知ってたんだ?」
「世の中にはいざという時に周りをしっかり把握しておく必要があることが多いのだ。」
「で,お前はここで何をして・・・」
「おっとぉ,もうこんな時間だ。俺は急ぐんでな。さらばだ!!」
杉並が自動販売機の影に入った後を義之が追いかけたが,もうそこには杉並の姿はなかった。
「一体なんだったんだろうな・・・ったく。」
「あの・・・兄さん,すみません・・・こんなところまで来てこんなことになっちゃって・・・」
「いや,由夢のせいじゃないって。それに由夢を一人にしたのは俺だし・・・あれ?」
義之は視界が歪んだと感じたと同時に,膝が崩れて倒れそうになった。あまり寝てない上に,走ったり怒ったりと,無駄なところでもエネルギーを消費したわけだから無理もない。
「兄さん,大丈夫ですか・・・?」
「大丈夫,ちょっと疲れただけだから・・・10分も休めば治るって。」
「でもさすがにしんどそうですけど・・・・少し寝たほうが・・・」
「だから大丈夫だって。少しさっきのベンチで休ましてもらえればいけるぞ。」
とりあえず,元のベンチに戻って休むことにした。由夢はその間,ずっと義之を心配そうに見つめていた。
「さて,10分休んだらすぐにまた・・・って,何やってるんだ?」
由夢はベンチに座ることなく,スカートを埃を払うように叩いている。そして,ようやくベンチに座ったかと思うとなぜか義之とは反対向きに座っていた。
「あの・・・兄さん・・・寝てください・・・///」
「・・・ぇ?」
「だから・・・その・・・膝枕してあげますから,ゆっくり休んでください・・・///」
「え,いや,だから・・・せっかくデートなんだし,休憩は10分だけにしようと思って・・・」
「━━━っ,もう,早く寝てください!!」
由夢は義之の襟首を掴んだかと思うと,強引に膝枕の体勢に持っていった。しかも,由夢は義之とは逆向きに座っていたため,由夢の身体の方に顔が向いてしまうわけで・・・
(やばい・・・かなりいい香りがするし,気持ちいいし・・・渉じゃないけど,このままじゃ理性が・・・)
だが,理性の決壊の前に強烈な疲労と眠気が義之を襲って来た。だんだん意識が失われていき・・・
『━━助けてくれてありがとう。”義之”・・・』
由夢のその言葉を聞く前に,義之は深い眠りについた。
後編へ続く
2007.4.15


