『らき☆すたSS〜つかさside』〜第6話〜







                    
                                     投稿者 フォーゲル





  明けて、次の日・・・
 私達は、朝からお喋りをしていました。
 テレビなんかの話題から、自然と劇の話になっていきます。
 「いや〜だけど案外何とかなるもんだよね」
 こなちゃんがホッとしたように言います。
 「何が?こなちゃん?」
 「かがみが怪我した時には、正直ダメかと思ったけど・・・祐一くんのおかげでなんとかなったし」
 「まあ、正直、あの短期間で台詞を完璧に入れてくるとは思わなかったわよ」
 「そうですね。私も驚きました」
 お姉ちゃんとゆきちゃんも感心したように言います。
 「問題は、今日のシーンだけどね〜」
 こなちゃんは顎に手を当てて言います。
 もちろん、キスシーンのことです。
 「あそこだけは、祐一君、抵抗あるみたいだし」
 「そうよね〜・・・みゆき、何とかならないの?」
 「峰岸さんと話し合ったんですが、やはりなるべくだったらして頂いた方が・・・」
 「あやのは、経験あるだろうからね〜抵抗も無いのかも知れないけど」
 「絶対にして下さいとは言いません。あくまでも泉さんと祐一さんの打ち合わせで決めて下さいね」
 「オッケ〜じゃあその場の流れで!」
 「・・・」
 こなちゃん達の会話を聞きながら、私は考えていました。
 (その場の流れってことは・・・じゃあもし、祐一君がキスすることをOKしたら、その時は・・・)
 私がそこまで考えた時です。
 「おはよ〜・・・」
 祐一君が教室に入って来ました。
 「どうしたの?目の下にクマ出来てるわよ?」
 「あ・・・うん・・・昨日寝不足で・・・」
 お姉ちゃんの言葉に目をショボショボさせながら答える祐一君。
 「ひょっとして、昨日のテレビ?『季節外れの心霊特集!』アレ、凄く怖かったよね〜」
 「いや、昨日は深夜アニメでしょ!アレは萌えた燃えた」
 「どっちも、違う・・・あ」
 そう言った祐一君の視線が私のところで止まりました。
 そして―――
 “フッ・・・”
 (えっ?)
 祐一君は何故か、私から視線を逸らしました。
 (ど、どうして?私、何か祐一君にしたのかな?)
 「どうしたの?『あ』の次は何なのよ?」
 「い、いや、何でも無い!!」
 慌てて首を振る祐一君。
 そうしながらも、祐一君は眠そうにしてました。
 “キーンコーンカーンコーン・・・”
 始業のベルが鳴ります。
 「じゃあ、私は教室に戻るけど・・・祐一君。授業中に寝ちゃダメよ」
 「うん、分かってる」
 「まあ、寝るなら止めないけど、黒井先生にバレないようにね〜」
 私も自分の机に戻りました。




  そして、放課後―――
 今日も劇の練習が始まりました。
 「はい、祐一君。今日もよろしく!!」
 「う、うん・・・ふぁあ〜〜〜」
 「スッゴイあくび・・・何時に寝たの?」
 こなちゃんが呆れながら祐一君に聞いています。
 「というか・・・寝てない。多分徹夜・・・」
 「なにそれ?本当に大丈夫なの?」
 「だ、大丈夫・・・」
 そう言って祐一君は立ち上がります。
 「みゆきさん、始めよう」
 「そ、そうですか?」
 不安そうな表情をしながら、それでもゆきちゃんはみんなに指示を出します。
 「それでは、シーン37・・・スタート!」


 「ダ、ダメです!今のは全く違うシーンです」
 ゆきちゃんが首をかしげながら祐一君を見ます。
 さっきから祐一君は間違いばかりしていました。
 「あの・・・こんな言い方はしたくないんですが、台詞覚えてますか?」
 「どうしちゃったのよ?というかやる気ある?」
 お姉ちゃんの口調が自然に咎めるような感じになります。
 「あ、あれ・・・おかしいな。頭には入ってるのに」
 「そうだよね。完璧だったよ」
 しばらく考え込んだこなちゃんは、思いついたように顔を上げます。
 「ひょっとして・・・キスシーン?」
 こなちゃんの言葉を聞いた祐一君はキョトンとしたような顔をしていました。
 「やっぱり・・・だから今日はこんななんだ」
 「い、いや・・・それは違う」
 否定する祐一君。
 「じゃあ、理由を教えて。キスシーンの何が嫌なの?」
 「そ、それは・・・」
 「・・・私だけならともかく、みんなにも迷惑掛けてるんだよ!」
 「ちょっと、こなた、落ち着けって」
 「だって、みんなで今まで頑張って来たんだよ!それが『キスシーンが嫌』なんて理由で劇を台無しにしたくないよ!」
 「気持ちは分かるわよ。けど・・・」
 「祐一君。本当にキスシーンのせいなの?」
 私はいつも通りを心がけながら優しく祐一君に聞きます。
 「いや、そうじゃない。そうじゃないけど・・・」
 「じゃあ訳を聞かせて!私とのキスシーンがそんなに嫌なの!?」
 「・・・」
 だけど、そんなこなちゃんの問いにも、祐一君は答えません。
 重い沈黙が落ちます。
 「・・・もういい。勝手にすれば」
 こなちゃんは、かつらを取ると祐一君に背を向けます。
 「ちょっとこなちゃん!?どこ行くの?」
 「・・・帰る。何かもうどうでもいい」
 「そ、そんな・・・お姉ちゃん!ゆきちゃん!こなちゃんを止めて!」
 私はお姉ちゃん達にお願いします。
 「いかせてやんなさい。どうせ言っても聞かないだろうしさ」
 「それに今回の問題は泉さんの責任ではありませんし・・・」
 2人はそう言ってガックリと落ち込んでいる祐一君を見ます。
 「どうするの?高良さん」
 「・・・今日は解散にしましょう。それから祐一さん」
 ゆきちゃんは祐一くんに向って、どことなく優しい口調で言います。
 「何でこんなことになったのかは聞きません。だけどこうなった以上、責任は取って頂きますよ」
 「ああ、分かってる。責任は取るよ」
 「その言葉を聞いて安心しました。それでは皆さん、後片付けをして今日は解散ということで」
 ゆきちゃんの言葉でみんな、それぞれの持ち場に散って行きました。




  (私、何で怒っちゃったんだろう・・・)
 そんなことを考えながら、私は先に帰った祐一君の後を追いかけていました。
 後片付けをしていると、日下部さんと峰岸さんの会話が聞こえて来ました。
 「だから、私はあいつに柊の代役をまかせるのは嫌だったんだよ」
 「でも、あの状況じゃ他に選択肢は無かったじゃない」
 「どうせ、『代役だから適当にやればいい』とか思ってるんじゃねーのか?」
 「ちょっと、みさちゃん。そんな言い方は無いと思うわよ」
 私は昨日の夜の祐一君の言葉を思い出していました。
 『それなのに、こなたさんもみゆきさんも、転校して来たばかりの俺をを信頼してくれるし、かがみさんも熱心に演技指導してくれるし・・・
  そこまでやられたら、信頼に答えないといけないと思うし』
 少なくとも、祐一君は適当にやればいいなんていい加減な考えじゃないことは私には分かってました。
 だから―――
 「・・・で」
 「うん?どーした柊の妹」
 私の声に気が付いた日下部さんが私に近づきます。
 「そんなこと言わないで!!祐一君はちゃんとやってるよ!!」
 気が付くと私は大声で日下部さんに反論していました。
 「あ、あ〜その、わ、悪い・・・」
 「ち、ちょっと!?つかさ!?どうしたのよ?大声出して!?」
 私の声に気が付いたお姉ちゃんが近づいて来ます。
 「あ、お姉ちゃん・・・」
 「ふん・・・ふん・・・なるほどね」
 お姉ちゃんは私と日下部さんの言い分を聞いて、ため息を付きます。
 「それは、日下部が悪いわね」
 「どうしてだよ〜柊」
 「今日のことに関しては私も『やる気あるの!?』なんてトゲのある言い方になっちゃったけど・・・
  それまでのことは、祐一君は真剣にやってたと思うわよ」
 「それに、祐一君の努力をみさちゃんも認めてあげなくちゃ」
 「う・・分かったよ。柊とあやのがそう言うなら・・・」
 日下部さんは渋々と引き下がります。
 「ほら、つかさも謝んな」
 「あ、ご、ゴメンなさい。日下部さん」
 「いいぜ〜確かに私も言い過ぎた」
 「それより、当面の問題はこなたと祐一君を仲直りさせないと・・・」
 お姉ちゃんは考え込みます。
 「こなたは、私とみゆきで何とかするとして・・・つかさ」
 「えっ?何?」
 「アンタ、今から祐一君と話して来てしてくれない?」
 「えっ・・・でも」
 「何となくだけど、祐一君、つかさになら本当の理由を話してくれるような気がするのよね。それに・・・」
 「それに?」
 私の疑問にお姉ちゃんは近寄って耳元で囁きました。
 (つかさ・・・祐一君を励ましてあげたいんでしょ?)
 お姉ちゃんの問いに私は、思わず頷いていました。





  「祐一く〜ん!!待って〜!!」
 目の前に肩を落としてトボトボと歩く祐一君の姿が見えました。
 「・・・つかささん!?どうしたの?走って来て?」
 「ハァ・・・ハァ・・・祐一君。歩くの早いよ〜心臓が爆発しそうだよ〜」
 息を整えながら、私は一息付きました。
 祐一君はそれをちゃんと待ってくれました。
 「どうしたの?つかささん?何か用?」
 「う、うん、さっきのこと聞こうかと思って・・・」
 「やっぱり、そのことか・・・」
 「それもあるけど、励ましてあげたいなと思って」
 そう言った私の顔を祐一君はジッと見つめます。
 「ねえ、祐一君。理由を話してくれるかな?」
 「う〜んでも、つかささんには・・・」
 「私じゃダメなら、お姉ちゃん呼ぶよ?」
 「い、いやそれはダメだって・・・ああでもつかささんにも知られるのはなぁ・・・」
 「どういうこと?」
 「いや、でもちゃんと話さないとな・・・でも一つだけお願いがあるんだ?」
 「何?」
 「俺のこと、嫌わないでくれる?」
 「どうしてそんなこと聞くの?少なくとも、私が祐一君を嫌う理由は何も無いよ?」
 「うん、分かった。じゃあ話すよ・・・昨日の夜のことなんだけど・・・」




 「えええええっ!そんな理由だったの!?」
 「ち、ちょっとつかささん!?声大きいって!?」
 祐一君が寝不足だった理由は、こなちゃんとのキスシーンのせいで興奮したことと、そして―――
 「でも、何で私が出てきたの?それに悲しそうだったんだよね?」
 それを見ている悲しそうな私の姿が気になっていたからって理由でした。
 「ゴ、ゴメン。やっぱり変だよな」
 「ううん、そんなことないよ。それに・・・」
 「それに?」
 「う〜んと、ちょっと待っててね」
 「?」
 不思議そうな顔をしながら見ている祐一君の前で私は目を閉じました。


 ―――舞台の中央で見つめ合う祐一君とこなちゃん―――

 ―――こなちゃんがゆっくりと目を閉じて―――

 ―――こなちゃんの肩をそっと抱く祐一君―――

 ―――2人の唇が近づいて―――



  「嫌だ・・・そんなの嫌だよ・・・」
 私の口から漏れたのはそんな言葉でした。
 祐一君がこなちゃんとキスするシーンを想像した時に、最初に感じたのは、不安で悲しい気持ちでした。
 私の心がそれに押し潰されそうになります。
 「つ、つかささん!?どうしたの!?」
 祐一君の声に、私は我に返ります。
 「あ・・・」
 気が付くと私は泣いていました。
 「ゴ、ゴメンね・・・急に泣いちゃったりして・・・祐一君がこなちゃんとキスするところ想像したら・・・
  私、悲しくなっちゃって・・・祐一くんの想像、当たってるね」
 「つかささん・・・」
 それに、今泣いたことで私にも分かったことがあります。
 私は―――祐一くんのことが―――
 でも、今はそれを考えている場合じゃありません。
 「でも、原因が分かったから、これで大丈夫だね」
 「だけど・・・こなたさん、許してくれるかな?」
 「ちゃんと訳を話せば、大丈夫だよ。それにこなちゃんだって仲直りしたいと思ってるし」
 「そうなの?」
 「私達、親友だもん♪それくらい分かるよ」
 それに、私にはもう一つ分かったことがありました。推測だけど―――
 『私とのキスシーンがそんなに嫌なの!?』
 こなちゃんの言葉には、劇のパートナー以上の想いが篭っていたように感じられました。
 (こなちゃん・・・ひょっとして・・・)
 その考えを消して、私は祐一君に喋ります。
 「こなちゃんは、お姉ちゃん達が説得してくれてるから・・・大丈夫!ちゃんと仲直りさせてあげるから!」
 私は不安そうな祐一君に笑顔で答えていました。



                       〜第7話に続く〜


               こんにちは〜フォーゲルです。第6話になります〜
 
           今回はせっかくなので『主人公の居ないところでの話』を入れて見ました。

                    つかさとみさおのシーンなどですね。

             後はこなたにもフラグが立っているような演出にしてみました。

             こなたはルートに入らなくてもフラグが立っているように見えますよねw

                    次回は仲直りと、前日夜かな?

                    楽しみにして頂けると嬉しいです。

                       それでは、失礼します〜
 


管理人の感想

第6話をお送りしていただきました〜^^

今回は、課題であったこなたとのキスシーン。しかしやはりというか、祐一はミスを連発してしまい・・・。

っていうか、普通に考えて学生の劇で本当にキスするなんてあり得ないと思うのですが・・・しかも、思春期の男女が。

まあ合意の下でなら別ですけど。今回は祐一も乗り気ではないはずですし、こなたがあそこまで怒るのは筋違いなのではないかなぁと、ゲーム本編の時も思いました。

ま、それも一つの見方ということで。

とりあえず、こなたに嫉妬する・・・といいますか。そんなつかさが可愛いですねぇ。

まだ自覚にはほど遠そうですが^^;でも祐一の方は、今回のつかさの涙で何となく分かってしまったのかも?



2008.7.26