『らき☆すたSS』〜つかさside〜第5話〜








                                      投稿者 フォーゲル





  空には大きな満月が見えます。
 その月の光に照らされながら、教室から忘れ物を取ってきた私はお姉ちゃんとの、合流地点に向っていました。
 「早く、行かなきゃ・・・」
 私が少し早歩きで体育館と校舎を繋ぐ渡り廊下の部分まで来ました。
 その時です。
 私は、自動販売機の前で困ったような表情をしている人を見つけました。
 (あ、あれって・・・)
 私はその人に近づいていきました。
 


  「ダメだよ。そこ出ないよ」
 「えっ?」
 私の声に驚いた表情を見せる祐一君。
 ジュースじゃなくて、冷水器から水を飲もうとしていたので、私は止めました。
 「何でも、衛生的な問題があるからって、去年から出なくなったの」
 「じゃあ、後、水飲めそうなところは・・・」
 「食堂くらいかな?でも、今は閉まってるよ」
 「そ、そんな〜」
 ガッカリして、膝に手を当てる祐一君。
 「祐一君。お財布を持ってないの?」
 「それが、忘れて来たみたいなんだよね」
 「あ、じゃあこれ飲まない?」
 私は自分の持ってる缶ジュースを祐一君に見せます。
 「大好きなんだけど、でも全部飲みきれなくて・・・」
 「・・・いいの?」
 「あ、やっぱり飲みかけじゃ嫌だよね」
 「いや、ぶっちゃけ咽喉が渇いてて死にそうなんだ。じゃあ・・・貰うね」
 「どうぞ♪」
 私はジュースを祐一君に手渡します。
 グイッとジュースを一飲みして、祐一君は息を付きます。
 「だけど、祐一君、頑張ってるよね」
 「えっ?そ、そうかな?」
 「そうだよ。お姉ちゃんも『あそこまでやるとは思って無かった』って言ってたもん」
 祐一君の演技は、演技のこと何も分からない私が見ても凄いと思いました。
 いつの間にか、祐一君の演技しか目に入らなくなっていました。
 「・・・まあ、代役を引き受けた以上は、ちゃんとやらなきゃいけないし。それに・・・」
 「それに?」
 「つかささん達といい思い出一杯作りたいし」
 祐一君はそう言って、更にジュースを一口飲みます。
 「俺、本当は陵桜には転校したくなかったんだよ」
 「どうして?学校に来たくなかったの?」
 「いや、陵桜がって言うよりも、今から転校したところで高3の2学期じゃ、転校先の人とは思い出出来ないと思ったし」
 そう言って、祐一君は外を眺めます。
 確かに、みんな受験勉強なんかでこれから忙しくなるのは、確実です。
 「それなのに、こなたさんもみゆきさんも、転校して来たばかりの俺を信頼してくれるし、かがみさんも熱心に演技指導してくれるし・・・
  そこまでやられたら、信頼に答えないといけないと思うし」
 祐一君は私を見て言います。
 「つかささんにもお願いされたしね。頑張らないと」
 「祐一君・・・」
 私は、自分の心が暖かくなっていくのを感じていました。
 それと同時に、自分の胸がドキドキしていることにも。
 「あ、そうだった。私。お姉ちゃんを待たせてるんだった。ゴメン、祐一君」
 「ああ、また明日。つかささん」
 「うん!!また明日!!」
 私はそう言って祐一君と分かれました。




  私は急いでお姉ちゃんのところに向っていました。
 その間にも私の心臓はドキドキしていました。
 『つかささんにもお願いされたしね。頑張らないと』
 祐一君のその言葉を思い出します。
 (祐一君・・・)
 もし、私が祐一君のやる気の一端になっているんだとしたら、それは私にとっても・・・
 “ドキッ”
 私の心臓のドキドキが更に激しくなります。
 (な、何か暑くなって来ちゃった・・・)
 思わず、自分の手の中を見て―――
 (そっか、さっき祐一君にあげたんだっけ)
 自分の飲みかけのジュースを・・・
 (あ・・・)
 その時に、気が付きました。
 祐一君は私が口を付けたところからジュースを飲んでいました。
 (祐一君・・・気が付いてるのかな)
 か、間接キスしているってことに。
 “ドキン・ドキン・・・”
 意識したとたん、私の心臓の鼓動が更に早くなったような気がしました。
 「つかさ!」
 「きゃっ!!、お、お姉ちゃん・・・」
 いつまでも、私が来ないことを心配したのかお姉ちゃんが私の目の前に立っていました。
 「全く、忘れ物取りに行くのに何分かかってるのよ」
 「ゴ、ゴメンね・・・」
 「・・・?つかさ。アンタ熱でもあるの?」
 「えっ?どうして?」
 「アンタ、顔真っ赤よ」
 「え、えっ?」
 お姉ちゃんに言われて、私は近くの窓を見ます。
 窓に映った私の顔は―――首筋まで真っ赤になっていました。





 「あ、もうこんな時間なんだ・・」
 家に帰って、お風呂に入ったりテレビを見てたりしている内に夜も遅くなっていました。
 (祐一君・・・頑張っているのかな)
 さっきから、ずっとこんな感じです。
 気が付くと、祐一君のことを考えている自分が居ました。
 「つかさ、何ボケッとしてるの?」
 「あ、ゴメンね。お姉ちゃん」
 宿題をやってないことを思い出した私は、お姉ちゃんに見せて貰っていました。
 「全く・・・黒井先生の授業で同じところだったからいいようなものの・・・自分でやらなきゃ身につかないわよ」 
 「う、うん・・・そうだよね」
 「さてと・・・」
 お姉ちゃんはそう言って、劇の台本を開きました。
 「お姉ちゃん、まだ台本読んでるんだ・・・」
 「まあね。一応凛役の子に演技指導もしなきゃならないし。祐一君にも演技見てくれって言われてるしね」
 「祐一君、自分に自信持ててないのかな・・・」
 「そういう訳じゃないと思うけど、私達と違って短期間で完璧にしないといけないからね、不安もあるんじゃない?」
 「そうだよね・・・」
 (後で、励ましのメールでも送ってあげよっと)
 「それに、明日は祐一君が不安がってたシーンだしね」
 「何だっけ?」
 「ほら、こなたとのキスシーンよ」
 「!!」
 (こなちゃんとのキスシーン・・・)
 “チクン”
 何故か私の心が針で刺されたように痛くなりました。
 「祐一君、何であんなに断ろうとしてたのかな?」
 「う〜ん・・・やっぱり人前だしね。もしかしたら・・・」
 「もしかしたら?」
 「好きな娘の前ではキスしたくないとか?」
 「・・・」
 確かにそれはあるかも知れないと思いました。
 祐一君だって、好きな娘がいてもおかしくないかも知れないし。
 「つかさ?どうしたの?」
 いつの間にかうつむいていた私はお姉ちゃんの言葉に顔を上げます。
 私の顔を見たお姉ちゃんは、しばらく私の顔を見て黙っていました。
 「つかさ、アンタ、ひょっとして・・・」
 「えっ?何?」
 「・・・いや、何でも無いわ。それより早く宿題うつしちゃいな」
 「あ、忘れてた!」
 「・・・自分で気が付かなきゃ意味ないわよね」
 お姉ちゃんのそんな呟きが聞こえてきました。



 その後、宿題を写し終わった私は自分の部屋に戻って、祐一君にメールを送りました。
 だけど、正直どういうメールを送ったのか・・・
 私は覚えていませんでした。
 『明日、祐一君とこなちゃんがキスシーンをする』ということが、私の頭の中でグルグルと回っていました。
 私はベットに潜って、布団を頭から被ります。
 どうしようもない不安が私の心を覆っていました―――





                         〜第6話に続く〜


                こんばんわ〜フォーゲルです。第5話になります〜

            間接キスもキキースシンもかなりオリジナル要素が強くなったような気がします。

               間接キスのシーンは主人公なりに頑張る理由を入れて見て、

           キキースシンは『どうしてあんなメールになったのか?』って言う感じになりました。

                   かがみに頑張ってもらったような気がする。

               次回は、こなたとのキスシーン、そしてつかさの涙かな?

       あのシーンが作者的にはつかさルートでは一番好きなのに、あんまり他の人の意見は聞かないな・・・

                       次回も楽しみにして下さい。


管理人の感想

つかさストーリー、第5話をお送りして頂きました〜〜^^

やはりつかさ視点だと、また新鮮ですね。祐一への想いの移行が非常に分かりやすくて、良かったと思います。

かがみは、つかさの様子に何か勘づいたようですが・・・まあ本人すら気づいていないので、もう少し時間が掛かりそう?

祐一は祐一で鈍そうだしなぁ(汗)



2008.7.18