Memories Base Combination Production

Back Grounds Memories

 

「ただいま〜」

 

 俺は疲れた体を引きずりながら家に帰って来た。

 

 今日は学校は休日だったのだが、剣道部の練習はあったので、新主将に任命された俺は学校に顔を出したのだ。

 

 新主将としては、これからの剣道部のどうしていけばいいのかを考えながら、後輩達の指導をしなければならないので

 

 精神的にも、肉体的にも大変なのだ。

 

 「先生、ありがとうございました〜」

 

 それに合わせるように道場の方から、挨拶する声が聞こえて来る。

 

 (今日も来てるな・・・)

 

 俺はその声を聞きながら、道場の方に向かった。

 

 

The 4th anniversary Special Project

                      presented by フォーゲル

 

 

Two stars to which it draws close each other』〜エピソード0〜

 

  「今日はもう終わりなのか?親父?」

 

 「ああ、陸(りく)君ももうすぐ帰らないといけないだろうしな」

 

 白い道着に身を包んだ俺の親父―――白瀬 雪家(ゆきいえ)はそう呟く。

 

 親父は今でも国体に県代表で出るほどの剣道の腕前を誇っている。

 

 その実力を聞きつけたのか、家の道場には入門生が集まって来る。

 

 「大丈夫。もうすぐおねえちゃんがむかえに来るし」

 

 「しかし、陸(りく)君は才能があるな」

 

 感心したように親父が呟く。

 

 確かに、ウチの道場は入門生はまずは武道に関係なく、礼儀作法の指導から入るのでなかなか道着を着ることは少ない。

 

 だけど、陸は入門して一か月くらいだが、もう道着を来て親父の指導を受けていた。

 

 まあ、礼儀作法に関しては『あいつ』の躾がいいんだろうが。

 

 基礎の基礎とはいえ、親父が直々に稽古を付けるというのは陸の小学校1年生という年齢を考えると凄いことだろう。

 

 「本当ですか?先生」

 

 「ああ、現に勝人は道場に出て来たのは小学校3年の時だったんだぞ」

 

 「そうなの?勝人にーちゃん」

 

 「ああ、まあな・・・」

 

 最も、俺が剣道始めたのは、理由があったからだが・・・

 

 俺がそんなことを考えたその時、俺は『あること』に気が付いた。

 

 「陸、どうしたんだ。その顔の絆創膏」

 

 「こ、これは何でも無いよ」

 

 何故か顔を背ける陸。

 

 だけど、そのリアクションで俺はある程度分かってしまった。

 

 そして、俺がその理由を陸に告げようとしたその時。

 

 「麻那ちゃんを守るためよね〜陸」

 

 聞き覚えのある声が割り込んで来た。

 

 声の方を見ると、そこには黒髪をポニーテールに纏めた一人の女の子が立っていた。

 

 俺と同じく学校帰りなのか、制服で両手には買い物袋を下げている。

 

 「お、お姉ちゃん!それはないしょだって言ったのに!」

 

 「これは、紗雪ちゃん。久しぶりだね」

 

 「おじさん、ご無沙汰してます」

 

 彼女―――「東野 紗雪」は俺の幼馴染だ。そして陸は紗雪の弟だ。

 

 「紗雪、『麻那ちゃん』ってひょっとして、謙悟の妹のか?」

 

 俺のライバル、新崎謙悟には年の離れた妹がいる。それが新崎麻那ちゃん。

 

 ・・・正直、謙悟の妹とは思えないくらいに素直で可愛い女の子だ。

 

 「そうよ。陸とは学校でクラスメートなんだけど可愛いわよね〜陸」

 

 「・・・そうなんじゃないの?」

 

 俯いて視線を逸らす陸。

 

 (なるほどな・・・)

 

 俺は思わず考え込む。

 

 「・・・勝人にーちゃん、どうしたの?」

 

 ボーッとしていた俺を陸が心配そうに見上げる。

 

 「あ、いいや、何でも無い。じゃあ麻那ちゃんが男の子にからかわれてそれを陸が助けようとして、逆に負けちゃったとか、そういう理由か、その絆創膏は?」

 

 「な、何で分かるの?勝人にーちゃん」

 

 驚いた声を上げる陸。

 

 「それは、アンタも似たような経験があるからよね。勝人」

 

 「なっ、何でお前がそれを!?」

 

 「何でって・・・幼馴染のあたしがそれに気がつかないとでも思ったの?」

 

 笑いながら言う紗雪。

 

 「確かにあの娘・・・『美咲』は守ってあげたい感じの娘だったけどね〜」

 

 

 「そうなんだ・・・僕だけじゃないんだね」

 

 「そうよ。だから陸も恥ずかしがる必要なんか無いのよ」

 

 「確かに、男の子が女の子を守ってやるのは当然のことだからな」

 

 紗雪の言葉に同意する親父。

 

 「え〜でも、おじさん、勝人は美咲のことは守ってくれても、あたしのことは守ってくれませんでしたよ」

 

 「・・・そりゃ、お前は自分で自分のことは守れるだろう?腕力はあるし」

 

 「どういう意味かしら・・・勝人」

 

 「そのままの意味だよ」

 

 俺と紗雪の間に火花が散る。

 

 「あ〜こらこら勝人も紗雪ちゃんもいい加減にしなさい」

 

 親父が呆れたような声を出す。

 

 その後、夕食の準備をしなければならないということで紗雪と陸は自宅に帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

  「しかし・・・結構片付けてなかったんだな」

 

 紗雪と陸が帰った後、俺は部屋の片付けをしていた。

 

 剣道部の活動や、受験勉強やらでマトモに片付けをしていなかった。

 

 押し入れの奥から、段ボール箱を引っぱり出す。

 

 埃を被った箱の中から、まだ取っておくものなどを仕分けする。

 

 その作業を進める内に、俺はあるものを見つけた。

 

 (これは・・・)

 

 それは、昔流行ったミサンガだった。

 

 そうだ。これは昔・・・霧島・・・美咲に貰ったものだった。

 

 小学校4年の終業式の日、霧島が俺に渡して来たのだ。

 

 あの、気弱な霧島がその時だけは、強引に俺に押しつけるようにして渡して、そのまま走り去ってしまったのだ。

 

 霧島が転校したと知ったのは、その後の5年生の始業式の日だった。

 

 その時の霧島の顔が印象に残ってて捨てずに取っていたんだろう・・・

 

 (霧島か・・・今どうしてるんだろうな。もう一度)

 

 その時だった。

 

 “プチッ”

 

 軽い音と共に、そのミサンガが切れた。

 

 ミサンガには『切れると願いが叶う』という言い伝えがある。

 

 (・・・まさかな)

 

 俺はそういう迷信は信じないタチだが、この時は何故だか、心に浮かんだ願いを否定しなかった。

 

 ――――霧島にもう一度会いたいという願いを―――― 

 

 

 

〜END〜 

 

 

〜後書き〜   

 

こんばんは〜皆さん。フォーゲルです。

 

今回は、私の作品から本編始まる前の物語を書いて見ました。

 

まずは、勝人編です。

 

今回出て来た紗雪とヒロイン美咲との関係も楽しみにして頂けると嬉しいです。

 

       

次回は、書けたら美咲編も書きたいと思います。

 

それでは、失礼します〜

 

 

                 

                     キャラクター紹介

 

 

東野 紗雪 (とうの さゆき)

 

 

身長165cm 体重52kg  B83・W・60・H82

 

県立陽ヶ崎高校2年5組。 料理研究会所属。

家族構成は父と弟の3人暮らし。

 

髪型は長い黒髪をポニーテールに纏めている。

可愛らしい名前とは裏腹に、性格は一言で言うと『じゃじゃ馬』。

自分の意見はハッキリと主張するタイプで、その言動は上級生や先生が相手でも変わることは無い。

母親を小学校6年の時に亡くしていて、今や東野家のある意味大黒柱である。

しかし、その影響からか人に弱い面を見せたがらない傾向がある。

家事はほぼ完壁にこなせる。中でも料理の腕には自信を持っており、特に『安い食材でどうおいしく作るか』にこだわりを持っている。

そのせいか、実家が名門料亭で料理研究会副部長の『少年』とは対立することが多い。

(料理に対する考え方の違いで)

趣味と実益を兼ねてクラスメートの要の家、欧風喫茶レストラン『ひいらぎ』に助っ人に来ることもある。

継と要を見て、『羨ましい』と思うこともあるが、自分には当分縁のないことだと思っている。

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東野 陸(とうの りく) 11月18日 O型

 

市立陽ヶ崎小学校 1年2組

 

身長115cm 体重17kg

 

紗雪の弟。母親を赤ちゃんの頃に亡くしているせいか記憶はほとんどない。

そのせいか、紗雪に甘えることもある。

その一方では、家のことを一人で取り仕切っている紗雪を見て『僕もしっかりしないと』と思う心も持っている。

勝人を『勝人にーちゃん』と呼び慕っている。

その勝人の影響を受けて、弱い者を助けることは当然のことだと思っている。

麻那を助けたのもその辺の環境が要因か?

 

 




2009.10.8