It’s a Sword of Starlights

 

 

 

 

 真期1065年、緑の月17日。

 『機国』ガナンタイト・副都心レィスウェッダ。

 ベリスティン通り7番ブロック、高層マンション「セクレイッド・マンション」。及び、その付近。

 

 その日。

 まだ朝も早い10時に、リディアのPC宛に一通の文書メールが届いた。

「ん、メールだ……えーっと?」

 8時に起きて通りを数周走り、朝の日課を済ませたリディアは、耳に着けて音楽を流していたPCを取り外し、サイドボタンだけを操作して

メールの閲覧画面を呼び出す。

 先の作戦でフォームを使用後、疲れ果てて眠ってしまったことは記憶に新しい。無尽蔵に近い持久力といわれていたリディアにはそれが

いささかショックだったらしく、あの日以来毎日朝から2時間は走りこんでいるのだ。

「アーク・トゥエラ、ガナンタイト支部より通達……武勲授与? 何これ」

 首をかしげ、画面を消す。良く分からないことは自分で考えても仕方がないので、とりあえず分かる人に聞くのが一番だ。

 リディアはそう思い、マンションの1Fエントランスをくぐり。

 高速エレベータの脇にある階段を使って、部屋までの帰り道を走り出した。

 ……ちなみに。

 最近、朝、階段で飛び跳ねる女の子の幻が見えるという噂が広まっていることを、リディアは知らない。

 

 

 

Extra Story  Event on a Certain Day

 

 

 

「ねぇリシェルぅー、武勲って知ってる?」

 がらっ、とリディアはバスルームの手動ドアを開け、今まさに風呂上がりのリシェルに問い掛ける。

 一糸纏わぬその姿はとても15歳とは思えぬ見事なスタイルを誇っており、濡れた銀髪からぽたぽたと垂れる水滴は、まるで銀河に浮かぶ星々のように

美しい。だが当の本人はわずかに赤面しながら、伏目のままリディアと視線を合わせることなく。

「いくら同性だからって……そこまで遠慮が無いのは、どうかと思うわ」

「だって、一緒にお風呂入った仲じゃん。あたしは覚えてないけど」

 思い出すだけで臭いそうな惨劇の夜。リディアをバスルームに突っ込んでシャワーを浴びせたのは、もちろんリシェルだ。

「まったく……そこにあるバスローブ、取ってくれない?」

「うん」

 壁面のパネルを操作し、収納スペースに仕舞われていたバスローブを取り出し、リシェルに手渡す。彼女は簡単にお湯と汗をふき取ると、

長い銀髪をタオルでまとめ、素肌にバスローブを羽織った。

「もう少し気遣いを覚えなさい。友達でも、節度くらいあるでしょう?」

 スリッパを引っ掛けてリビングに向かう。その後ろ姿に付き従うようにリディアは後ろを歩きながら、小型のアイスボックスからミネラルウォーターを

2本取り出し、1本はソファーに腰を下ろすリシェルに手渡した。

「ありがと……それで、何だったかしら?」

「さっきメールが来たの。武勲授与って」

 PCを操作し、メール画面を呼び出してリシェルに見せる。リシェルはその画面を見ながら、ミネラルウォーターのボトルに口をつけて飲み始めた。

「…………先のスペースプレーン強奪未遂テロ事件において、貴君の健闘を称え第五勲を授ける。本日1600分に、ガナンタイト支部まで来られたし……

どうやら勲章の授与と、査定みたいね」

「査定って……なんだっけ?」

「私達の、騎士としての働きを評価する審査のことよ。通常はオンラインで済ませるのだけれど、武勲授与の際には各国支部に出頭するのが原則。

査定の結果次第では、給与の昇給や一部特権が与えられるわ。ちなみにこれ、常識よ」

「あうっ!?」

 『常識』の2文字がリディアの胸に突き刺さる。だがリシェルはそんな事など気にもせずにミネラルウォーターを飲み干し、空になったボトルを

ダストボックスに投げ入れた。

「新人の貴女が、アーミーロボットを1人で4機も倒したんだから、当然といえば当然ね。まだ時間はあるけれど……どうするの?」

「どうするって言われても……行かなかったら、やっぱりまずいよね?」

「そうね。先々の査定の時に、過去に武勲授与の機会を逃したなんて記録が残ったら、下手をすれば減俸処置や、騎士特権がランクダウンするかも知れないわ」

 アーク・トゥエラの給料は破格であり、また彼らの特権は、一般人が立ち入りを禁じられている特別区への出入りを可能とするものもある。

それは国家の要地であったり、高額な入場料を必要とする施設であったりと様々で、やはりこういった特権も、騎士という職業の魅力の一つだろう。

だがろくな成果も上げずに、いつまでもその場に居座られては組織としても面子が立たないし、他の騎士からの不満もある。権力を持つのならばそれに相応しい

人格・実績を示すのは、いつの時代も社会も変わらない。

「じゃあ、行ったほうがいいんだね……堅苦しいの嫌いなんだけどなぁ」

「いい機会じゃない。これからもこういう事はあるかも知れないのだから、早いうちに慣れておいた方が良いわよ」

 ソファーを立ち、タオルを解くリシェル。彼女はそのまま自分が選んだ部屋の方へと向かう。

「着替えてくるわ。朝食は……今日はロウの当番だったわね」

 食事はあらかじめローテーションを組んで自炊を心がけるようにする事を決めたのは、本日の当番であるロウ。彼の料理は4人の中で最も見た目は簡素だが、

栄養面と味においては他の追随を許さないほどに素晴らしい出来を誇っている。

「ロウのご飯って、いつも美味しいよね」

「……私としては、あなたの料理の下手さ加減に驚いたわ。お母様のサンドイッチは絶品だったのに……はぁ」

「うぅ……ゴメンなさい」

 これ見よがしに溜め息を吐かれると、リディアとしてもそれなりにショックを受ける。

リディアの作る料理は、見た目は若干悪いが味はとてつもなく悪い。辛いか、甘いか、酸っぱいか、味がしないか。どれを作ってもこの4パターンしか

評価のしようがないという、ある意味凄まじい物が生み出されるのである。

 だからと言って、彼女の味覚が狂っているのではない。単に、味見を一切しないのだ。これは料理をする人間として致命的に駄目過ぎる欠点であり、

リディアが味付けをする際は、必ず誰かしらが立ち会うというのが、既に暗黙のルールとして完成してしまっている。

「謝ることないわ。足りないものは補えばいい。私達はそのために居るんだから、もっと利用してもいいのよ?」

「利用……かぁ」

 首をひねるリディア。リシェルはそんな彼女を見て笑いながら、部屋へと入っていった。

 

 

 

 ロウは彼女たちの会話をドア1枚隔てた、自分の部屋で聞いていた。若い男女が同じ家で寝食を共にするのは多少なりとも倫理的に

問題はあるが、彼女たちとは仲間であり、友人である。そんな邪な感情を抱くなどあってはならない。

 ……ならない、のだが。

「…………」

「何を聞き耳立ててる」

 男同士ということで同室をあてがわれたレオンが、キーロックを掛けた上でドアにへばり付いているロウに問い掛ける。いや、問い掛けと

いうよりもそれは既に詰問に近い口調であり、ヒシヒシと冷たい視線がロウの背中を突き刺していた。

 だがロウはそんなレオンの視線など気にした様子もなく、柔和な笑みを浮かべて。

「だって、リシェルもリディアも、年頃の女の子なんだよ? まぁ、リディアはちょっと子供っぽいけどさ」

「それがどうした。お前のやってることは軽犯罪だぞ」

 効率的ではないが、確かにロウの行為は盗聴のそれに近い。法の守護者たるアーク・トゥエラにあるまじきその姿。師匠たるカナンが見たら

問答無用で――――

「でも、うちの師匠もこういうことはよくやってたし。ホラ、何事にも息抜きしないと」

 ……弟子は師匠の背中を見て育つという。かつては剣帝と謳われたカナン・アジバラも、師匠としては優秀と言いがたいのかもしれない。

「……剣帝も堕ちたもんだな。とにかく、止めておけ」

 PCを操作しつつ、レオンはメールの着信をチェックする。すると新着メールが一件、いつの間にか入っていた。

 それは、リディアに来たものと同様の報せ。第五勲武勲授与についての通告メール。

「へぇ……キミも武勲授与か。けど当然かな?」

 テロリストに決定打を打ったのはレオンの一撃であり、逮捕を行ったのも彼自身。当然のように武勲の対象に入っている。

 しかし当の本人はさして喜ぶような様子もなく、すぐにメール画面を消去、PCを充電モードに戻してしまった。

「あれ、嬉しくないの?」

「今更第五勲なんか取っても仕方ない。去年荒稼ぎしてるからな」

 昨年、独りで活動していた時に、レオンは任務の度に何度となく武勲授与を受けている。彼の1ヵ月の給料は既に8桁に達しており、武勲の回数も

とっくに2ケタ台に突入している。

「そんなに稼いで……老後の足しにでもするの? それとも、家でも買う?」

「そんなつもりはサラサラない。大体、その月に使い切っていたからな。手元に残すのは、いつも最低限だ」

 どんな使い方をすれば1千万単位の給料を使い切るのだろうか、とロウは思ったが……あえてそこは、口にしない。いくら女の子同士のかしましい? 会話を

盗み聞きしようとも、節度を弁えるのが彼の美点である。真に無節操ならばもっと凄い事も出来るのだから。

「さぁて。2人が僕のご飯を待ちわびてるみたいだし、そろそろ行こうかな。レオンはどうする?」

 パネルを操作し、キーロックを解除。あとはドアに触れるだけで、いつでも自動ドアが作動する。

「どうするも何も……食事は取る。後のことは、食べ終わってから決めるだけだ」

 ぶっきらぼうな物言いだが、実のところレオンもロウの料理を楽しみにしている1人である。勿論彼が自分でそんな事を言うはずはないのだが、ロウが当番の時の

おかわりの回数は、実はリディアよりも多い。これだけで証拠としては十分だ。

 ちなみに、レオンの作る料理はリディアよりはマシだが、これもはっきり言って美味いとは言えない。彼の作る料理は見た目も簡素で味も無味に等しく、

しかし栄養バランスだけはしっかり整っているという、まさに戦士と言うか、戦場兵士の食事と言うに相応しい。

 それぞれの感想は「おいしくない(リディア)」「素っ気ない(リシェル)」「悪くないけど味がない(ロウ)」の評価。

「じゃ、ひとつ美味しいものを作りますかね」

 触れると同時に、横滑りしてドアが開く。

 リビングルームまでの短い廊下を、ロウはのんびりと歩き、その後ろにレオンも付き従うように部屋を出た。

 

 

 

 朝食を終え、憩いのひと時。

時刻はまだ12時を回ったばかりで、リディアとレオンが支部に行くにしても、まだまだ時間は余っている。

ガナンタイト支部はこの副都心・レィスウェッダの行政区に位置しており、吊り下げ式モノレールやエアカー、エアバスなどのアクセスを利用するのが

主な交通手段となっている。しかも1番時間の掛かるモノレールであっても、せいぜい30分程度で着けてしまうという近距離であるため、急いで出掛ける

必要はどこにもない。

だが――――それらはあくまで、リディアとレオンの事情である。

「じゃあ、私たちは買い物に行って来るわ」

「それにせっかくのオフだし。ちょっと観光にも行って来るよ」

 普段着姿のリシェルとロウはそう言い残して、つい今しがた2人連れ添って外出してしまった。

テロも未遂に終わり、本来の任務を達成し、後は僅かな任務の引継ぎと雑務がリディア等4人には便宜的に与えられていたのだが、その雑務も一通り

片付き、当面仕事らしい仕事はない。

 しかし、有事に備えて騎士の数を減らすことも出来ない。元より先の事件で7人もの殉職者が出てしまったのだ。新人でも使える者は使うというのは、

どんな組織でも同じであり、それが法の守護者たる騎士となれば、1人でさえ貴重な人材である。

 結果――――1ヵ月という短期間。

 リディア達4人は後任の騎士が揃うまでの間、暫定の駐留騎士としてガナンタイトに留まる事になっていた。

 とはいえ、仕事がない間は基本的に暇なのがアーク・トゥエラという職業。普段は民間人の間に溶け込み、諜報活動を行っているといえば聞こえは良いが、

ぶっちゃけ暇なときはとことん暇。こういった要因も、やはり腐敗の一因になっている不良騎士が集まりやすい温床になっていることは否定できない。

「…………で、どうしよっか?」

「どうと言われてもな……まだ時間はあるし」

 ソファーで退屈そうに髪の毛を弄りながら、ルゥを膝に乗せているリディアと、こちらもPCの操作を切り上げ、炭酸飲料のボトルを傾けるレオン。

どちらも正直暇を持て余しており、かといって何かしら共通の話題があるわけでもない。

 一応、この2人はそれなりに仲も良い。だがそれはあくまで『友達』としての仲良し関係であり、決して恋愛がらみではない。

 レオンからしてみれば、リディアは自分の過去の一部を知る相手。それなりに心を開ける数少ない相手だが、異性として意識しているかと言われれば

正直ノーに近い。

 だが、そういう考えに至る時点で、レオンの心の中にも少なからずリディアのスペースが在り、彼女のことを快く思っていることは間違いない。

 真っ直ぐで純粋なところは危うくもあるが、それゆえに好感が持てる所でもあるし、彼女の寝顔は――――本音を言うと、可愛らしいとも思った。

 

 また、リディアにして見ても、レオンにはお姫様抱っこされたり、ゲロ吐いてる音を聞かれたり、バイクで抱きついたり、手を握ったりと、それなりに

男女関係が進展しても良さそうな事を幾度かしてはいるが、だからと言って恋愛感情が有るかと言われれば、かなり微妙なところというのが本音。

「…………」

 ちらっ、とリディアの視線がレオンの横顔に行く。

 やや長い金髪と、淡い碧眼。顔立ちからしてもかなり端正で、おそらく美青年と言って差し支えないだろう。顔で異性を判断するのはどうかとリディア自身

思っているが、一概に顔だけで言うなら。

 レオンは正直、リディアの好みのタイプと言えなくもない。

それに、不器用ながらも優しいところもある。一昨日の夕食、何も言わずにリディアのサポートに自分から立ち、味の改善に尽くしてくれたことは記憶に

新しいし、先のテロのときも『彼なりの優しさ』というものは何度も見せられた。

 レオンは人を遠ざけていると言っていたが、リディアはそうは感じなかった。むしろ、他人との距離を測りかねているような……そんな感じを受け、何故か

そこを可愛いと思ってしまったのだ。

「……」

「さっきからなんだ? 俺の顔に、何かついてるか」

 視線を向けることなく、レオンがつぶやく。リディアはとっさに視線をあさっての方に向けるが、今度はレオンの視線を感じる。

「……いや、その……なんて言いますかぁ……」

「?」

 視線を合わせるも、なんとなく言葉は濁り気味。確かに、まさか横顔見ながらあれこれ妄想し、可愛いかもなんて思ってましたなど、言えるはずがない。

 だがその相手であるレオンはボトルをテーブルの上に置くと、リディアが座っているソファーに歩み寄り……彼女の隣りに座り込んだ。

「っ、な、なに?」

「何がだ?」

「何で、その……隣に座るの?」

「……どこに座ろうが、俺の勝手だろ」

 2人の距離はそれほど近くはないが、だからと言って遠すぎるわけでもない。4人掛けのソファーで、手を伸ばせば肩に触れるくらいは出来る。

その程度の微妙な距離。そんな距離で、唯一動けるのは。

「きゅうっ」

 とてとてとレオンの傍に近寄り、彼の足にじゃれつくルゥ。この数日、何度かレオンに餌を貰ったこともあり、ルゥはレオンにそこそこ懐くようになった。

レオンもまた、無言でルゥの顎下を撫でてやる。それをルゥは気持ち良さそうに受け入れ、ぐりぐりと頭を押し付けたりする。

 だがリディアは、そんな彼らのやり取りを、複雑な感情で見ていた。それは――――困ったことに、嫉妬に近い感情。

 仮にも、ルゥはメスである。種族その他の絶対的かつ圧倒的な違いはあるが、やはり『彼女』も女の子。優しくしてくれる男性には当然甘えるし、

その愛らしい容姿ゆえに、他人を惹きつける魅力がある。しかし何より強大なのは、種族が違う故に遠慮が無いのだ。

 甘えるときはとことん甘え、好きなように行動できる。人間同士ならばこうは行かない。人は何かしらの精神的作用により、どうしても一歩

踏み込めない事が多々ある。それが、少なからず好意を持つ相手であれば。

 遠慮無しに甘える『同性』の相手に嫉妬を抱くのは、親友であっても無理もない事かも知れない。

「ねぇ、レオン……?」

 身体ごと、彼の方に近づく。さっきまで肩が触れられるくらいの距離は、今は頬に触れられるくらいに近くなる。

「何だ?」

 ソファーに預けていたレオンの左腕に、ほんの少し髪の毛が触れる。滑らかで、指通りの良さそうな細い髪。

「その……今から、出掛けない? そしたら、時間も潰せるし」

「構わないが……その前に」

 すっ、とレオンの手がリディアの頬に伸びる。その一挙一動だけで、リディアの鼓動が僅かに高まる。

 レオンは指の腹で彼女の下目蓋をやさしくぬぐい――――付着していた、飴色の髪の毛を指で摘み上げた。

「あ、ありがと……か、顔、洗ってくるねっ」

「ああ」

 それとなく急ぎ足でソファーを立ち、バスルームに向かうリディア。そんな彼女の後ろ姿を見送ってから、レオンは……その、僅かに指先に残る

柔らかい頬の感触を、感じていた。

 

 

 

 補修工事が開始されている高層ビルを見上げて、リシェルは溜め息をついた。先日のテロの爪跡はそうやすやすと消えるものではなく、それなりに

長い時間という代価を支払って癒していくべき傷。だが、それを食い止められなかった己が非力さは、彼女の心を揺らすには十分だった。

「観光に行くのに、わざわざ事件現場に戻るだなんて……楽しくないなぁ」

「観光に行きたいのは貴方の方でしょう? 私はただ買い物に来ただけだったのに」

 半ば無理矢理手を引かれ、マンションを出ると同時にロウが掛けた一言。「どこか行きたい所ある?」はリシェルを呆れさせ、しかしそれをあえて利用して、

彼女はこの現場へと来たのだ。

「それで? 何でまたココに?」

 紅玉よりも尚鮮やかな赤い瞳が問い掛ける。その質問に紫水晶の瞳は僅かに伏せ――――ふっと、再びビルを見上げた。

「別に……ただ、自分の力の無さを思い知りたかったのよ。私はまだまだなんだって。これからもっと、上を目指すために」

 その『上』とは、果たして何処にあるのだろうか。

 アーク・トゥエラで『上』といえば、騎士の位で言うならばカナンと同じ八席円卓になる。だが騎士を使う側になれば、それは全く別方向。

即ち、政治に身をおき、国の官僚クラスの権力を手に入れる事。それもある意味では『力』であり、過去にも現代にも、元騎士の政治家は少なくない。

「上、ねぇ……。僕には想像もつかないけど」

「そうね……。でも、私の時間はそう多くないわ。あと7年以内に、必ず八席に辿り着いてみせる」

 強い意志を秘めた、その言葉に。

 ロウは、少し――――本当に少しだけ、悲しげに笑った。

「彼女の事、だね」

「っ……!」

 射殺すように鋭い視線。それだけで、子供ならば問答無用で泣き出すであろうその視線を受けてしかし、ロウの笑みは崩れない。

「……ストライクと、リヴェレイト。どっちも普通のアーク・トゥエラが手配できるような代物じゃない。そんな特権を有する騎士は限られてる。キミだって

それがすぐに分かったから、あんな態度を取ったんだろ? でも――――」

「分かってるわ! 良くない事も、自分が子供だってことも、分かってる……! でも!」

 喧騒の最中、人目をはばからずに大声を上げるリシェル。それは普段の彼女とはかけ離れて荒く、剥き出しの感情の発露はおよそ彼女らしくない。

「でも、あの人は……レティシアはっ、私の……私を……」

「――――リシェル」

「あっ――――?」

 ぐいっと手を引くロウに連れられて、その場から引き剥がされる。それで少しだけ、リシェルは冷静さを取り戻せた。

 ――――……どうして、こんな風に私の心は乱れてしまうのだろう。

 ――――……レティシアのせい? それもあるけれど……違う、気がする。

 ――――……リディアと一緒の時は、こんな事は無いのに。

 ――――……でも、ロウ。この人がいると、何故か言いたいことを言えているような、気がする。

 ――――……貴方は、いつも笑っているけれど。

 ――――……本当は、何を、考えて……?

 

 

「さあ、着いたよ」

 手を引かれるままエアバスに乗せられて、どこをどう来たのかも分からない。ただ分かるのは――――。

「ペティーネイト・ランド……?」

 それなりに大きな規模の遊園地、ペティーネイト・ランド。一部の国には同名の遊園地があり、その本店とも言えるのがこの遊園地。

アトラクションの数も多く、平日だというのに子供の数も多い。入場料は平均的なレベルだが、既に最初の週給を受け取っている2人にその額は

大した出費にもならない。

「どうして、こんな……?」

 顔を上げ、ロウを見上げる。

だが彼は、ただ微笑んで。

「せっかくのオフなんだ。嫌なこと、考えたくないこと、今は忘れてさ。遊ぼう?」

「遊ぶって、でも……私――――今までこんなところ、来たことないわ」

 言ってから、それが失言だったと気付くリシェル。だが時既に遅く、ロウは芝居がかった身振りで彼女の前に跪き、手を放すことなく。

「では、お嬢様? こんな頼りない騎士ですが、お付き合い頂けますでしょうか?」

 視線が合い、数秒を置いてから、リシェルは僅かに微笑む。

「ええ――――喜んでお受けしますわ、頼りない騎士様」

 ――――そう。何を考えているか、分からないけれど。

 ――――貴方は、いつも……周りがこじれるのを避ける道へ導いてくれる。

 ――――でも、口に出すのは……恥ずかしいから、まだ言わないわ。

 だからせめて、ありがとうの言葉を。

 リシェルは胸の奥で、そっと呟いた。

「じゃあ、まずはどこに行こうか?」

 手を引くロウ。リシェルはそれを抵抗なく受け入れ、逆に彼の手をそっと包み込む。

「言ったでしょう? 私は、こういう所は初めてなの。……だから貴方が、しっかりエスコートしてね」

 いつもの丁寧な口調は、その一瞬だけ影を潜める。

 またそれと同時に、リシェルの笑顔の質が僅かに変わるのを、ロウは感じた。

「……そっか。今のキミが、リシェルなんだね」

「ええ。でもそんな事を言うのは野暮よ? 私の騎士を務めるんだから、そこも弁えないと」

 華のように咲きほころぶ笑顔と、水のように舞うリシェル。

 その姿は、ロウだけではなく、周りの客の多くを魅了する。

 この日、この時、この場所でだけ。

 戦乙女は鎧を脱ぎ、ただの少女へ戻ることを、自らに許した。

 

 

 

 

 部屋を出たリディアとレオンは、とりあえずの暇つぶしに散歩に出ることにした。副都心とは言っても、マンション付近のベリスティン通りは

基本的に住宅街で、そこから少し離れたところにモノレールの乗り場がある。

 住宅街である以上、住人達の憩いの場はそれなりに設けられており、2人がまず立ち寄ったのは比較的大きな公園――――リスティネイド公園。

 遊具の類は少なく、各国で行われている緑地推進計画の効果もあり、整備された天然の芝生と立ち並ぶ木々は壮観で、小さいながら人工湖などもある。

 その景色はある種の『都会のオアシス』的なものがあり、付近住民以外にも、仕事に疲れた一般会社員や、若者たちの安らぎの場にもなっていた。

「なんだか、懐かしい景色。レオンの故郷には、こんなトコはないの?」

「あったのかも知れないが……俺が住んでた街には、見かけなかったな」

 ぶらぶらと遊歩道を散歩しながら会話する2人。傍から見れば中の良い兄妹か、友人か――――あるいは恋人同士に見えなくもない。

 しかし、当の本人たちにその意識があるのかと言われれば、現状はほぼ無いと言った方が打倒だろう。

 無論、先程の心内からも分かる通り、決して嫌っているわけではない。むしろお互いに好意らしき物の芽生えはあるのだが、明確に意識していない為に

曖昧なままなのだ。

 そして。

 その曖昧な気持ちから、一歩先んじて進んでいるのは――――リディアではなく、レオンのほうだった。

「…………」

 横目よりもやや視線を下げ、レオンは自分の肩程度の身長の少女を見る。

 4歳も年下の少女だが、レオンはこれほどまでに異性の女性を意識したことはなかった。彼はそもそも女性に対して免疫というものが極めて薄く、

またチームの誰にも明かしていない騎士以前の『過去』故に、常に他人と距離を置いてきた。

 だが、少なくともこのリディアという少女に関しては、その距離が従来よりも近い。今のチームはそれなりに会話もあり、ロウやリシェルといった他の

メンバーとの交流もほどほどにあり、騎士としては相応しくないが『友達』でもある。

 その友達の中でも、リディア・ハーケンはやはり特別であり。

 率直に言えば、少なからず好意を寄せている相手――――でも、ある。

「? どうかした?」

 問い掛ける顔は、何故か晴れやかな笑顔。レオンはその表情に一瞬戸惑い、しかしいつもの彼らしく。

「いや、何でもない」

 無愛想にそう言い放つ。それを受けて、やや不機嫌そうに変わる少女の顔。しかしその不機嫌な表情もすぐに消え。

 遠慮がちに、リディアの左手がレオンの右手を掴む。

「……何だ、いきなり」

「なんとなく……やっぱり、ダメかな?」

 上目遣いに見上げる青玉の瞳。レオンはその瞳には答えず、ただ軽く、リディアの手を握る。

「駄目なら、こんな事はしない……」

 その行動が意外だったのか、リディアは照れたように微笑む。

「なんか、照れちゃうね」

 ああ、まったく。

 照れ臭くてたまらない。

 自分でも分かってる。こんなのは、いつもの俺じゃない。

 だけど……ほんの少しだけ。

 リディアの反応が見てみたい俺と。

今は、この手を放したくない俺がいるんだ。

 

 

 

 散歩を終え、全国展開しているファーストフード店、モックァリーテに入り軽い昼食を済ませて、さらに街を散策してから。

最終的にはモノレールを使って、リディアとレオンは聖堂機関アーク・トゥエラ、ガナンタイト支部へ出向した。さすがにココまで手をつないで

入るわけには行かないので、2人の手は既に離れ、その距離も今まで通りに戻っている。

 だがそれ以外は、しっかり握り合ってというほどではないにしても、指先をほんの少し絡める程度の状態を維持しており、その度にリディアは

普段よりも高まる鼓動と、赤面しそうになるのを抑える羽目になっていた。

 ――――……自分からやったことでも、ここまで律儀に守られると……正直、緊張する。

 ――――……さすがに、お昼食べてる時まで手は繋いでなかったけどさ。

 ――――……でも……びっくりしたのは、食べ終わってから。

 ――――……だって、レオンの方から手、繋いできたんだよ?

 ――――……それが指先だけでも、やっぱり驚いた。それに、無愛想な顔してるくせに、あたしと眼を合わせようとしない。

 ――――……照れるくらいならやらなきゃ良いのにって、レオンのこと可愛く思う反面……あたしは、キミともっと、手を繋いでいたいって思っちゃった。

 ――――……武勲授与が終わったら、またキミの方から、繋いでくれるかな……?

「――――リディア、認証番号」

「え? は、はいっ!?」

 突然声を掛けられ、リディアは慌てて今までの思考を中断する。レオンはそんな事など意にも介さず、エントランスのパネルを叩いた。

「アーク・トゥエラのライセンスナンバーと、指紋認証。これが済まないと、中には入れないぞ」

「あ……うん、ごめん」

 記憶している10桁のナンバーをタッチパネルで入力し、その上に右手をかざす。スキャンは1秒と掛からずに完了し、自動ドアは左右に開いていく。

「ぼーっとするな。査定にも響きかねない」

「そ、そうなの!?」

 意外な事実に驚き、レオンを見上げる。だが彼は呆れたようにリディアを見て。

「そんなわけないだろ」

「んなっ……!? う、嘘つき!!」

 むーっとむくれ、ずかずかとエントランスホールを進むリディア。レオンはその後ろで、やれやれといった感じで溜め息を吐いてから、少し急ぎ足で

彼女の後を追った。

 距離はすぐに縮まり、リディアの肩に手を触れようとした、その時。

「あら、レオン? それに……確か、リディア?」

 唐突に現れたアリーナ・フェムタスという予想外の登場人物に、リディアは急停止し。

 レオンはとっさに、触れようとしていた右手を引かざるを得なかった。

「アリーナさん……でしたっけ?」

「ええ、アリーナさんよ。良かった、リディアとは1回話しただけだから、覚えてないかと思ったわ」

「そ、そんなことないですよ! あたし、1回会った人は忘れませんから」

 ほぼ初対面の2人だが、それでも話せばそれなりに会話になる。だが、レオンはそんな2人から数歩距離を置く。

 そんなレオンを目ざとく見つけ、アリーナは彼のほうに近づいた。

「そ、アンタも武勲授与なんだ?」

「……だから何だ」

 冷酷な物言いは普段の彼よりもなお低温。アリーナはレオンのその態度を受け、しかし嘲笑うように。

「べっつにぃ?……リディア、アンタも苦労するわよ? コイツ、こーゆー奴だからさ」

 顎をしゃくって、侮蔑するように。

 アリーナはいくばくかの悪意を込めて、リディアに同意を求める。

 だがそれを受けて、リディアは。

「アリーナさん……レオンをそんな風に、悪く言わないで」

「は……?」

 その、真っ直ぐな視線と、強い意志の瞳は決して揺らぐことなく。

「レオンはあたしの大事な仲間で、友達なんだから。……また同じような事言ったら、絶対に許しません――――!」

「なっ……なによ、いきなり……」

 リディアの溢れんばかりの覇気にアリーナはたじろぐ。これがさっきまで話していた少女と同一人物かと疑うほどの、濃い怒り。

 アリーナの視線はさまよい、ふっとその先にレオンが納まる。彼はただ何も言わず、しかし視線だけはこちらを捉え――――いや、リディアを見ていた。

「そう……そういう事なんだ」

「?」

 何を得心したのか、アリーナは2、3度頷いて。

 悪意と侮辱と、恍惚の入り混じったような醜悪な表情で2人を嘲笑した。

「そういう事ねぇ。アンタたち、出来てるんだ。ハハッ、手が早いって言うか、なんて言うか……英雄の再来だかなんだか知らないけど、こんな可愛い新人を早々に

手篭めにするなんて、アンタも好きモノよね? それともロリコンなの? この変態さんっ!」

「っ――――!」

 アリーナが言い終わると同時に、リディアが破裂する。数メートルの間合いなど、風のフォームを修める彼女には無に等しい。

 振り上げた右手は、平手ではなく拳。女性同士であっても、それは暗黙の了解とされている禁じ手。だが、今のリディアにはそんな事を考えている余地はない。

今のリディアの中にある思いは唯一つ。

 この人を許せないという、ただそれだけ。

 しかし。

「止せ、リディア」

 手を掴み、静止の言葉を呟くレオン。リディアは咄嗟に彼のほうに振り向く。そしてその瞬間は、アリーナにとっては絶好の好機。

「な、何よ、マジになっちゃって……莫迦じゃないの!?」

 距離を取り、なおも侮辱する言葉を投げつける。リディアは再び距離を詰めようとするが、レオンの手は離れない。

「――――失せろ。もう俺の前に、姿を現すな」

 鋭利すぎる、拒絶の言葉(やいば)

 金髪の隙間より放たれるのは、静かな怒りの炎。

 かつての仲間は、その瞳に貫かれ。

 忌々しげに視線を切り、無言でその場を去った。

「…………ゴメン。チームメイトだった人に、あんなこと……」

 背中越しのその声は、本当に申し訳無さそうに小さく。

 そして、言葉よりも小さなリディアのその背中を、レオンは衝動的に抱きしめてやりたくなった。

 だが、理性がそれを押し留める。抱きしめるということは、リディアとの距離を縮めるということ。

 ――――守る力を持っていても、いつか失う時が来る。

 ――――失いたくないから、距離を詰めたくない。

 そんなジレンマの壁に、押し負けて。

 レオンはただ、リディアの肩を叩くだけにとどまった。

「気にするな。元々、不仲だからな……お前達以外とは」

「そんなの……寂しいし、悔しいよ……」

 重なる少女の手は、ただ暖かく。

 リディアの熱は、いつかレオンの壁を崩す時まで、静かに彼の中に沈んでいく。

 

 

 

 太陽が中天を過ぎ、徐々に落日へと傾き始める18時過ぎ。

 リシェルとロウは、ペティーネイト・ランドの大観覧車のゴンドラの中で、絶景としか言いようのない景色を眺めていた。

 5時間以上のデートとも言えないデートはただひたすらアトラクションを堪能する時間であり、途中に取った昼食も、ランド内の

ファーストフード。栄養価度外視の食事はしかし、今日この場においては許されるべきものであり。

 偶然にもその店が、リディアたちが昼食を取ったモックァリーテだったことは、無論リシェルもロウも知るはずはない。

「そろそろ、帰ろうか? リディアとレオンの武勲授与も終わるはずだし」

「ええ……」

 リシェルの視線は外界へと向いており、その横顔は彼女が綺麗と言った景色に勝るとも劣らない美しさ。

 ロウはそんな彼女の横顔を、ただ慈しむように見ていた。

「……? どうかした?」

「いや……キミに見とれてたんだよ」

 臆面もなく本音を曝すロウに、リシェルはくすっと笑う。

「ロウって、なんだか誰にでもそんなこと言ってそうね」

「そんな事ないさ。僕はいつだって、真面目なんだよ?」

 黒髪が揺れ、魔性を秘めたような真紅の瞳が太陽の輝きを得て、妖しく光る。

 その妖しさは彼の言葉と相俟って、底知れぬ魅力を醸し出す。

 これまでロウの容姿について触れることはなかったが、彼もまたレオンと同じく、十分に二枚目と呼んで差し支えない顔立ちをしている。だが

その言動ゆえに、どこかふざけている様にも、逆に不真面目な様にも取れない、つかみどころのない部分が強く表に出ており、彼の魅力を曇らせている。

 だが、リシェルはこれまでの彼の言動を振り返り――――それが、彼が作り上げた偽りのキャラであることは、察していた。

「――――貴方は、本当は何を考えてるの?」

「? なにって……」

「誤魔化そうとしてもダメよ。いつもみんなの間を上手く取り持って、諍いが起きないようにしてるけど……それは、単にチームを維持したいから?」

 そう、彼の言葉はこれまでに度々チームの争いや、個々人の争いを取り持ってきた。ワルマーシアへ向かう途中の船内、このガナンタイトへ向かう途中の

リディアとレオン。その度に、彼は和平の使者として活動している。

「それに……貴方は、レティシアのことも知ってた。カナンの弟子というのなら納得も行くけど……貴方は、まだ私たちに隠してることがある」

「それは否定しない。でも、それを最初から告げることは出来ないって、言ったはずだ」

 それは、あの日船上で告げた言葉。

 しかし、リシェルは躊躇う事無く。

「最初じゃない。あれからまだ短いけど、私たちは同じ時間を過ごしてきたわ。それに――――」

 少女の手が、青年の手を掴む。

 同年代の異性の手に、自ら臨んで手を触れることは、実はリシェルにとって初めての体験。

 だが、それ程までに。

「私は……貴方のことが、知りたいの」

 その言葉が、ロウにどれほど響いたのかは、リシェルには分からない。

 その言葉が、どれだけ深く自分の心を抉ったのかを、ロウは痛感する。

 

――――時は2人を置き去りに、ただ残酷に針を進め。

――――青年はただ一言だけ、小さく短い答えを出した。

 

 

 

 武勲授与式はさほど大袈裟なものではなく、ホログラフィ・ディスプレイに映し出された首相からのありがたい訓示とともに、

金属製の勲章が与えられるだけである。勲位によって色や形状は異なるが、第五位は中央に紅玉をあしらった、親指程度の小さな勲章だった。

 そして、初の武勲授与であるリディアに与えられたのは、新しいライセンスナンバーと給与の昇給。さらには一部装備品の支給なのだが。

「……じゃあ、コレでいいです」

 とリディアが選んだのは、無骨なデザインの上着だった。サイズは彼女の身体には若干大きいが、まだまだ成長途中のリディアには丁度いい

かもしれない。

 だが、その選択を隣りで聞いていたレオンは、支部を出てから彼女に尋ねた。

「何故、靴にしなかったんだ? この前の戦闘で、壊れたとぼやいてたのに」

「だって、ダサいんだもん。運動性は良いかも知れないけど、やっぱりデザインも大事なの」

 心底嫌そうに語るリディア。確かに、アーク・トゥエラが支給する靴は見栄えは良くない。だが運動性能の高さ、頑丈さで言えば、市販のブーツなどとは

比べるまでもないほどに高い性能を誇っている。

 しかし、リディアは騎士である前に、女の子だ。それなりにオシャレもしたい年頃でもある。それを鑑みれば、彼女の思いも分からなくもない。

「それで、今もそのブーツを履いてるのか」

「いいもん。今月中に新しいの買うから」

 壊れて、底が剥げかけている愛用のショートブーツ。高級ブランド品ではないが、有名なスポーツメーカー・ネイフェニック社が生産しているブーツであり、

リディアが履いているモデルは2ヶ月前に出たばかりの新作。

 スポーツメーカーがブーツを作ると聞くと意外に思われるかもしれないが、この会社が作るブーツはデザイン性も運動性も極めて高く、

アスリートシューズのノウハウをしっかり踏襲した作りになっている。足首の動きを阻害せず、また激しい動きでも壊れることはまずない。

高級ブランドに対抗する異端児として生み出された『アスリートブーツ』という新機軸は時間をさほどかける事無く定着し、今はネイフェニック社の代表作品の

一つとして、高い評価を得ている。

それが壊れるということは、やはりひとえにフォームの反動だろう。想定している動きを遥かに凌駕するリディアの超速のフォーム・ウィータの前では、いかに

スポーツメーカー謹製の代物でも耐え切れなかったという事だ。

「……なら、今から買いに行くか」

「ふへ?」

 不意に出されたレオンの提案に、リディアは思わず妙な声を上げてしまう。だがレオンはそれには突っ込まず、

「お前の靴だ。どうせだから、オーダーメイドくらいしておけ」

「え、でも……オーダーしたら高いよ?」

「俺たちの給料からなら、大した出費にもならないだろう?」

 そっと、レオンの手がリディアの手に重なる。咄嗟にリディアは彼の顔を見上げるが……やはり、無愛想に視線をそらしている。

「…………えへへ」

「何だ、何がおかしい」

 照れ隠しにしか聞こえない、ぶっきらぼうな物言い。それがまた可笑しくて、可愛くて。

 リディアは、レオンの腕に抱きついた。

「っ……!?」

 レオンは驚いてリディアを見下ろすが、彼女は満面の笑みのまま彼を見上げて。

「行こう? 早くしないと、時間かかっちゃうよ」

 ぐいぐいと腕を引き、先を急がせる。店がどこにあるのか調べようともせず、躊躇いもなく自分を引っ張るリディア。

 小さく溜め息をつきながら、レオンは自分のPCを展開し、ネイフェニックの販売店を調べようとした――――その時。

「リディア?」

「レオン?」

 聞き間違えるはずのない、友人達の声に。

 レオンも、そしてリディアも…………息をする事さえ忘れて立ち止まっていた。

 背後から歩いてくるのは、間違いなくリシェルとロウ。リシェルは何故か左手にペティーネイト・ランドの紙袋を抱えており、

ロウは近くにあるショッピングセンターの買い物袋をぶら下げている。彼らの手は、先ほどまでのリディアたちと同じように緩く繋がれていたが、

リディアの視線がそこに行くと同時に、その繋がりは解かれた。

 だが、レオンの腕を抱きしめているリディアはそこにばかり眼が行ってしまい、自分が離れるということを完全に喪失していたのだ。

「リディア、貴女……いつの間にレオンと?」

「レオンも、まんざらじゃ無さそうだけど……?」

「いや、俺たちは、そういうんじゃない」

「て、リシェルとロウだって、さっき手繋いでたのに!!」

 思いがけない街中での再会。しかも、互いに見られるのは非常に宜しくない状態であり、弁解の言はすぐには思いつかない。

 相互の勘違いは、等しく同じもの。

 それ即ち――――言うまでも無いかも知れないが。

 

 ――――一体、いつの間にそんな関係に!?――――

 

 

 

 オープンカフェの4人席で、4人は何故か重苦しい空気に包まれていた。飲み物を注文することもなく、ただじっと沈黙を保っている彼らは

店側からすれば非常に迷惑な存在であり、店長並びに店員達は「早く何か注文してくれないかなー」というオーラをひしひしと送っている。

 だが、そんな彼らの願いなど気付くこともなく。

「その、なんて言ったら良いのか分からないけれど……おめでとう、と言うべきなのかしら」

 最初に口を開いたのはリシェルだった。だが言葉とは裏腹に表情は硬く、どこか納得の行かないところがあるのも事実。

 まさか、自分よりも年下のリディアが、出会って間もないレオンと交際しているなど、誰が想像出来るだろうか。

 確かに、この2人にはそれなりの事情があるようだし、仲が良いのも認める。性格的な面で不一致の多そうな2人だが、これから時間を掛ければ

そんな問題は些細なものに変わるだろう。

 だがそれよりもまず。

 年下に先を越された、というのはそれなりに悔しいものがある事を、否定できない自分がいるのだ。

「いや、リシェル、勘違いしてるよ? あたしとレオンは、別にそんな……」

「仲良さそうに腕組んで歩いておいて、それは苦しいんじゃない? リディア?」

 否定しようとした矢先に飛んでくるロウの一矢。そこを突かれては、リディアとしても反論のしようがない。あの行為は、単純な「友達」という枠から大きく

はみ出しており、明らかに仲の良い男女関係から一歩先んじた、恋人同士のそれである。

「で、でも、ロウとリシェルだって! 手繋いでたじゃない!?」

 やや赤面しながらのリディアの抗弁。それに対し、リシェルは僅かに苦渋の表情を浮かべるが、ロウはいつもの微笑でそれをいなし、

「仲が良ければ手ぐらい繋ぐさ。僕達は今日は、2人でデートまがいの事をして来たからね」

 余裕綽々といった感じでさらりと言い放つ。リディア自身も自覚していることだが、こと口論に類する話し合いでは、ロウに勝てる者はこのチームにいない。

唯一可能性があるレオンは、押し黙ったままさらには目蓋まで閉じて、ただ会話のみを聞いているのが現状だ。

 しかし、反論する者はレオンではなく、彼の横に座っていたリシェルだった。

「待って。確かに、私と貴方は遊園地に行ったわ。ええそれは事実だし認めもする。でも私は、あれをデートだなんて一言も言っていないわよ!?」

「え? そうなの?」

「ええ、そうよ!!」

 ドガン! とテーブルを叩くリシェル。量産品とはいえそこそこ有名なブランドデザイナーが作った逸品だ。壊されては堪らない店長はしかし、生来の

気の優しさ故に「お客様」相手に強く出ることは出来ず、ただ店内でオロオロするばかりだった。

「んー……でも僕は今言ったよね? デートまがいだって。それをデートとすり替えたのは他ならぬキミ自身だ。ならあれはやっぱりデートなんじゃ……」

「そんなもの、ただの詭弁じゃない!! 私は単に貴方に引っ張られてあそこまで行っただけよ!?」

 立ち上がって、さらには振りかぶってリシェルはテーブルを叩く。そのあまりの剣幕にリディアは思わず身体を震わせる。そしてそれ以上に店長は

見ていて可哀想になるくらいにガクガク震えていた。

「…………楽しんでたクセに」

「っ……!!」

 ぼそっと呟いたロウの言葉に、リシェルは途端に赤面する。年甲斐もなくアトラクションを堪能していたのはロウではなく、むしろリシェルの方だったのだ。

「まぁ、リシェルはさておいて。キミ達は何でまた、あんなラブラブで?」

 意気消沈しかけたリシェルをさらりと流し、ロウが2人に問い掛ける。リディアは困ったように一瞬レオンに視線を送り、それを敏感に感じ取ったのか、

レオンはうっすらと目蓋を開いた。

「……俺たちは、武勲授与のために支部に出向いただけだ。その途中に食事をしたりもしたが、その程度でデートになるのか」

「そ、そーだよっ。それに、この間の事件でブーツが壊れちゃったから、これから見に行こうとしてただけなんだから!」

 2人の言い分は事実そのものだ。どこにも虚偽はない。だが――――

「だからって、腕を組む理由には程遠くない? あれはどー見ても……」

 遠慮無しに疑いの視線を向けるロウ。しかしそれは決してやましい感情だけではなく、純粋な興味から来るものも多分に含まれていた。まぁ、だからと言って

形はどうあれ、友人を疑うのは褒められたものではないのだが。

「だ、だから、あれはぁ……」

「ただ腕を組んで歩いていた。それだけだ」

 すっぱりと事実だけを切って捨てるレオンの言葉。リシェルはその言葉に驚き、ロウはどこか寂しげに溜め息を吐き、そして。

 リディアは、彼が何を言ったのかわからなかった。

「え……?」

 リディアはただ呆然と、レオンを見る。しかしレオンの表情に変化はなく、静かに彼は席を立った。

「……先に戻る」

 ただ一言、そう言い残して。

 レオンは1人、雑踏の中へと埋もれていった。

「……どうしたの? 追いかけなよ、リディア」

「……え……?」

 戸惑う視線は定まらない焦点をようやくロウに向ける。いつも明るい青玉の瞳も、この時ばかりは僅かに色を失っていた。

 無理もない。いままでそれなりに親しくしてきた異性に、いきなり突き放されたのだ。誰でも戸惑うし、それはリディアと言えど例外ではない。

いかに強くても、まだ彼女は年端も行かない『女の子』なのだから。

「行きなさい、リディア。行って、あの莫迦を殴ってきなさい」

 貴族の育ちとは思えない、リシェルの物言い。しかしその言葉に背中を押されて。

「うん……行ってきますっ」

 席を立ち、硬い地面を蹴る。

 追いつけるかどうか分からない。見つけられるかどうかも分からない。

 でも行かなきゃ、歩かなきゃ。

 距離は、縮まらないから――――!!

 

 その後ろ姿を見送って、ロウは優しく微笑みながら、満足げに溜め息を吐いた。

 確かに、自分の取った行動は褒められたものではない。この時点だけでの結果を見れば、レオンもリディアも、等しく傷つけるような形になってしまっている

のは、リシェルから見ても分かることだろう。

「貴方が余計なことを言うから、2人がまた険悪になってしまうかも知れないわ。ちゃんと責任を取れるんでしょうね?」

 鋭く突きつけられる言葉の刃。だがそれも、ロウにとっては想定の範囲内。

「大丈夫。リディアなら上手くやれるし、レオンだって本心では、リディアと仲良くしたいはずだよ」

「自信満々ね……」

「まぁね」

 そう、ロウには自信がある。なぜなら、彼とレオンは――――

「レオンと僕は、よく似てるよ。彼は昔の僕にとても近い。だから、何を考えて、どう行動するか……なんとなく、想像がつくんだ」

「これからの環境次第では、レオンも貴方みたいになると言うことかしら?」

 皮肉めいたその物言いに、ロウは僅かに苦笑する。

「それはないよ。似てると言っても、僕たちはやっぱり違う。同じ道を歩む可能性は、限りなく低いよ」

 足元に置いていた荷物を取り上げ、ロウが席を立つ。それにつられるようにリシェルもまた、荷物を抱えて座席を立った。

「さぁ、僕らは僕らでやらなくちゃいけない事があるからね。早く帰ろう」

 ――――人の優しさに、救われた自分がいる。

 ――――孤独故に、救われなかった彼がいる。

 ――――だが、温もりを知れば。

 ――――暖かさを与えてくれる、誰かを守りたいと思えるようになれば。

 ――――キミはきっと、道を開ける。

 ――――それを知る者として、僕はせめてキミの助けになろう。

 

 

 

 

 雑踏の中を、ただ何処を目指すわけでもなく、レオンは歩いていた。

 自分の行為が、おそらくリディアを傷つけたであろうことは分かっている。だがあの場を切り抜けるには、自分が離れる以外なかった。

 不器用な自分には、こういう風なやり方でしか誰かを助けてやることは出来ない。

 ひとつを犠牲にすることで、状況を解決し、その場を切り抜ける。

 刹那的なやり方だということは理解しているが、俺は他のやり方を知らない。

 ――――だが。

 あの時のリディアの表情が、頭から離れない。

「俺は……間違えた、のか……?」

 ひとりごち、不意に立ち止まる。

 周囲の人々は僅かにいぶかしむような視線をレオンに向けつつも、しかし歩みは止まらず。

 人波に押されてもなお、レオンはその場所から決して動かなかった。

 ――――じゃあ、どうすれば良かった?

 ――――受け入れればよかったのか? リディアのために。

 ――――でもそのほうが、アイツを傷つけるんじゃないのか?

 ――――嘘を吐かれれば、リディアはきっと悲しむ。だから、俺は……。

 そうして、考えた結果がコレだ。

 終わったことを悔いても仕方がない。過去は戻せない。仮にその場を繕っても、結局また同じことを繰り返して、疎遠になっていく。

 なら最初から、距離を縮めようなんて思わなければいい。

 人と距離を置くことに慣れ過ぎてしまったレオンには、距離を縮める方法が分からない。

 リディアとは上手く行っていたのに、自分のせいで離れてしまう。

 人を求める心がある以上、離れることは辛い。でも離れる必要もないくらいに遠くにいれば、そんな危惧はしなくて済む。

 たまに顔を合わせる程度のジェス達となら、その距離が保てる。だから彼らとは、上手く付き合って来れた。

だが、リディアはいつも、レオンのすぐ傍にいる。その距離感が彼を惑わす。

「――――レオンっ!!」

 そう、こうやって。

 彼女(リディア)はいつも、彼(レオン)の傍に――――。

 

 

「……なんだ」

 変わらない粗暴な口調。今まで走ってきたリディアはそれでも息一つ乱す事無く。

 そして、何も言わずにレオンの左頬を叩いた。

「っ……」

 その平手打ちを、レオンは敢えて避けずに受け止めた。だが痛みは軽く、視界がぶれるほどの威力はない。

「――――なんで叩かれたか、分かってる?」

 強いようで、泣きそうな声。しかしリディアの瞳には涙の雫は無く、ただその瞳の色だけが悲しげな光を放っていた。

「……俺の行動が、お前を傷つけたから……だろう」

「違うよっ…………レオンが、逃げちゃったからだよ!」

 その言葉に、レオンの心は確かに揺れる。逃げたと言われれば、なるほど確かにその通りだ。レオンはロウから提示された質問に答えることすらせず、

その質問を放棄して逃走したのだ。

「だが、だからと言って嘘を吐く事は出来ない。アイツが期待するような関係じゃないのは、お前だって分かってるだろ?」

「そんなの分かってる! でも、あそこで逃げたら……っ!」

 どん、とリディアの軽い体重がレオンに掛かる。彼女の小さな頭は彼の胸元に納まり、また下を向いている為に表情も確認出来ない。

「レオンは……また、独りのままなんだよ……!?」

 新人当初に受けていた、敬遠の視線と態度。

 レオン本人からリディアだけに明かされた、誰とも親しくなれなかった時期。

 アリーナから見舞われた、悪意に満ちた侮蔑の言葉を受ける事。

そんな日々を、再び彼に味わわせる事など……絶対に、認めない。

「そんなの、あたしは絶対いや。レオンだけが寂しい想いするなんて、間違ってる! 独りになんて絶対させない!!」

 絶叫のような言葉が、痛いくらいに突き刺さる。

「、……っ」

 手が虚空を仰ぐ。

この少女を抱き締めてやりたいという、数時間前には諦めた行為。

 だが、彼女は言った。言ってくれた。

 俺が独りなのはいやだと。

俺を、独りにさせないと。

 その真摯な想いに、答えたいから。

「あっ――――」

 小さく漏れるリディアの声。20cm以上の身長差では、抱き締めれば顔が見えなくなってしまう。それを気遣ってレオンの抱擁は若干緩めであったが、

逆にリディアの両腕がレオンの身体を引き寄せた。

「――――2人とも待ってるよ? 一緒に帰ろう」

「ああ…………だが、そのまえに寄る所がある」

 すっと身体を離して、互いの顔を見合わせる。

「約束したからな……まずは、お前のブーツを買いに行こう」

「あ……うん!」

 大輪の向日葵のような笑顔。さっきまでの悲しげな声も表情も、今はなく。

 自然と繋がれた手は、少なくとも店に着くまでは離れることはないだろう――――。

 

 

 

 2時間ほどしてから2人が部屋に戻ると、リビングには甘い香りが充満していた。覗き見たキッチンには様々な食器と、それ以上の材料。

「リシェル、ロウ……何やってんの?」

 ネイフェニックの紙袋を抱きかかえたリディアが問い掛ける。すると、ロウは得意そうな表情で。

「今日が何の日か知ってる?」

「何の日って……17日でしょ? 何かあったっけ?」

 首を傾げ、レオンを見上げる。するとレオンは事情を察したのか、どこか憂鬱そうに溜め息をつく。

「……どこで調べた」

「勿論、データベースで。……リディア、今日はレオンの誕生日なんだよ?」

「…………えぇえーーー!?」

 目を見開いて驚嘆の悲鳴を上げる。そのリアクションに満足したようにロウはうんうんと頷き、ダイニングでケーキと料理の配膳をしていた

リシェルは仕度を終え、小さな包みを持ってきた。

「突然のことだから、大したものは用意できなかったけれど。私とロウからのプレゼントよ」

「……すまない、ありがとう」

 ぶっきらぼうに、しかしどこか照れ臭そうに感謝の言葉を述べるレオン。そんな彼を見て、リシェルもロウも、優しく微笑む。

「一応謝罪の言葉として受け取っておくわ。でも、また友達を傷つけたら、ただじゃ置かないから。そのつもりでね」

 銀髪をなびかせて颯爽と身を翻すリシェル。その後ろ姿にレオンは僅かに頷き――――そして。

「さて。知らなかったリディアちゃんは、レオンに何をプレゼントするのかな?」

 分かりやすく意地悪な言い方で、ロウはリディアに質問を向けた。

「え? や、その……急に、言われてもぉ……」

 用意できるものなど、何もない。というか逆に、レオンから今抱えているブーツの半分を出してもらったくらいである。金銭的なプレゼントは

早急には用意できない。少なくとも来週まで持ち越しになってしまう。

「――――ロウ。悪いが、リディアからはもう貰ってる」

「え?」

 驚きの反応はロウではなくリディアの方だった。一体いつ、自分が彼にプレゼントをしただろうか。そんな覚えは全くない。

 だがレオンは戸惑うリディアの肩を軽く叩いて。

「貰ったのは…………俺の、居場所だ」

「あ――――」

 もう、独りじゃない。

 傍に居てくれる友達がいる。

 対等に会話が出来る相手がいる。

 

 

その居場所を作ってくれた、この少女に。

 そして、18歳の誕生日に。

 ――――おめでとうと、ありがとうを。

 

 

 

Extra Story  Event on a Certain Day

                          ~Happy birthday, dear Leon!!~

 

 

 

 

 

 

 

ロウ「ところで、何貰ったの? リシェルに任せたから僕も知らないんだ」

レオン「……ピアスだ。一応、左につけてるからな」

リディア「うぁ……あたし、そんな勇気ないよお」

リシェル「シンプルなデザインだけれど、一応いいトコの品よ。リディアもつける?」

リディア「え!? や、いや、遠慮します!」

レオン「そんなに痛くないが……」

ロウ「それじゃ、ケーキ切るよー? 僕の自信作なんだから、残さず食べてね?」

リディア「はぁーい!」

リシェル「あ、逃げた」




あとがき:
予想以上の長丁場となりました、3話と4話の中間に位置するエクストラ・ストーリー。
もともとレオンの誕生日ネタを考えていたので、それと兼ね合わせてまだある溝を
埋めていくような話を、と思って書きましたが、はたしてどの程度溝は埋まったのか?
4話は3話よりも過激な戦闘描写が入る予定です。ある意味、ここからが本番的な
ところもありますので


管理人の感想:
第3話と第4話の幕間のような形で、エクストラストーリーを書いて頂きました^^
本編ではシリアスが多いので、番外でリディア×レオンとリシェル×ロウの恋模様(?)を。
事実、この組み合わせが一番自然ですよね。4人はチームですが、2:2で分かれるときはこの形がバランスも良いですし。
どちらかというと、リディアとレオンの方が進んでるかな?というか、もう恋人同士の雰囲気でしょアレは(笑)
存分に堪能させて頂きました〜。皆さんも感想などがありましたら、是非掲示板を活用してくださいね?

それでは、第4話を楽しみに待ちましょ〜^^



2007.3.24