―It’s a Sword of Starlights―
レスクリッス大陸。
ベレメリィア、アクタハルマ、ゼルノースタ、ブリュンテルファ、エルトニルストの5カ国があるエルモンデア大陸と対を成す、ゼンポゥラのもう一つの大陸。
東西に長く広がるエルモンデアに対し、レスクリッスは南北に広くその面積を取る。
南西部に位置する『機国』ガナンタイトからは連絡船としてリェルス・ボウラが配備されており、そこから島国であるワルマーシアや、
ワルマーシアを中継点としてエルモンデア大陸に繋がり、また北部からは海底トンネル・ブレンバースを使用しての移動も可能。
また、ゼンポゥラ11カ国において唯一、機械が占める割合の方が高い『機国』ガナンタイトには、11カ国中最多数の空港が配備されており、遥かなる
宇宙(そら)への道である海上マスドライバーや、垂直離陸式シャトル発射台と、水平離陸式プレーン滑走路なども設けられている。
およそ3ヶ月前。
ケルタ軌道上に突如現出した所属不明艦『アンノウン』に対し、唯一直接的なアプローチを可能とする場所。
現在ガナンタイトは、その重要な基点であり。
また――――リディア達4人の、任務が課せられた国でもある。
海上船、リェルス・ボウラ展望サロン。
相変わらずリェルス・ボウラの乗客数は多くなく、ここ展望サロンも、半ばリディアらの貸しきり状態。
ガナンタイトまでの移動時間は5時間ほどあり、現在はまだその距離の6割を消化したところだ。
今までどおりなら、談笑したり、簡単なオンラインゲームを楽しんだり、食事をしたりする空間であるその場所だが。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………(ずずず……)」
「きゅぅ…………」
何故か、重苦しい沈黙に包まれていた。
第三話 孤高の青年
01.4人目の戦友
事の発端は、船に乗り込んですぐのこと。
乗船手続きを済ませた4人だったが、リディアはすぐさまレオンの側に駆け寄り、彼を呼び止めた。
「レオン!!」
「……なんだ」
「なんだじゃないよっ! レオン、この前はアーク・トゥエラだ、なんて一言も言わなかったよ!?」
「言う必要が無い。そもそも、俺たちは通常身分を秘匿するべき立場だ。自分からほいほい名乗る莫迦が居ると思うか」
「あ、うん……」
レオンの言うとおり、アーク・トゥエラは必要時以外は自身の身分を明かしてはならない。各国警察関係者との兼ね合いもあり、有事以外はそもそも戦闘をすることも無い。
一見すると華やかに見えるが、基本的に彼らの存在は名前だけでも十分な抑止力となる。それに加えてゼンセイバーという、個人が持つには不必要なまでに強大な武器。
それらを衆目に晒す事ははなはだ不適切であり。
しかしそれ故に、その名欲しさに荒くれ者が集まってしまう。
「それはともかく……まさか、お前みたいなヤツが俺と同業か」
「え?」
きょとんとした顔でレオンを見上げるリディア。しかし、レオンは僅かに溜め息を漏らすと。
「お前みたいな子どもに、騎士が務まるのかと言ってるんだ」
「な――――」
耳を疑うような暴言。リディアの実力を知らないとは言え、レオンの言葉はおよそ仲間に対して向けられるものではなく。
その言葉に、さすがのリシェルも反感を露わにする。
「レオン。いくら先任騎士とはいえ、今の言葉は侮辱極まるわ。撤回して頂きたい」
「事実を言ったまでだ。小動物を連れて任務が務まると思っているのか。アーク・トゥエラを舐めるな」
「な、舐めてなんかないっ! レオン、おかしいよ!? この前はそんな人じゃなかったのに!!」
「この前はこの前だ。今はお互い立場が違う」
冷たい視線。6日前とは別人のようなその瞳に、リディアは驚き……そして、彼から視線を切って、ずかずかと横を通り過ぎる。
そこに、言葉は無い。リシェルもロウも、リディアの背中を目で追うが……レオンだけは、最後まで振り向きもしなかった。
「貴方……一体どういうつもり!?」
「どう、とは?」
「貴方とリディアの経緯は知らないけれど、少なくとも不仲ではなかったんでしょう!? なのにそんな突き放すどころか、侮辱するような態度をとるなんて……!」
睨み付ける紫紺の瞳。しかしレオンはその視線を受け止め、踵を返して歩き出す。
「待ちなさい、まだ話は――――!!」
「話すことなど無い。そして、俺はお前らと馴れ合うつもりは無い」
リディアの後を追うわけでもなく。かと言って、リシェルと言い争うわけでもなく。
レオン・ウィルグリッドは、最悪の印象を与えたまま、何処かへ消えていった。
「何て、男なの……っ! あんな男が、私たちの戦友になるだなんて!!」
歩き出すリシェル。その後ろ姿に、今まで黙っていたロウが声をかける。
「何処に行くの?」
「リディアを探すわ。とりあえず、PCで捕まえる。貴方はサロンで待っていて」
「それは構わないけど……でも、レオンは?」
「今は私も冷静じゃないわ。しばらくは、顔を合わせたくないの」
その言葉を最後に、リシェルは角を曲がり、ロウの視界から消失する。1人取り残されたロウはほんの少し、思案して――――歩き出した。
「やあ。こんな所に居るとは思わなかったよ」
リェルス・ボウラの第二船尾甲板。波飛沫だけが舞い踊るその場所に、レオンは立っていた。
ロウは第一船尾甲板から覗き込むようにレオンを見ており、一度仰け反ったかと思うと――――鮮やかな身のこなしで階下に飛び降り、レオンの隣りに立った。
「…………何の用だ。お前もあの女と同じように、文句を言いに来たのか」
「言われたいんなら言ってもいいけどね。そういうの、僕の得意な事じゃないし。あぁ、でも誤解が無いように言っておくけど、リシェルだって得意な訳じゃないよ?」
視線を合わせることもなく。体の向きも正反対に。
レオンの視線はただ波を。ロウの視線は天を見る。
「キミは、人が嫌いなんだね」
「……興味が無いだけだ」
「興味が無いってことは、嫌いじゃないんだ。逆を言えば、本当は触れたい」
「…………」
「でも、嫌われるのが怖い。好きな相手を作り、触れるのが怖い。好きにさえならなければ、嫌われることも失うことも無い。だから興味が無いなんて言う」
いつぞやと同じく、淡々と語るロウ。その言葉に、レオンは何の反応も示さず――――しかし、その声を聞いている。
「キミは今までそうやって生きてきた。ううん……そうしなければ、生きていけなかったのかな?」
「何を言ってるのか、良く分からないな…………そもそも、的外れだ。俺はお前に」
「お前に理解されようとは、思ってない」
声は重なり、視線が絡む。
レオンは無表情に、ロウを見つめ。
ロウは微笑み、レオンを見つめる。
「理解なんかじゃないよ。これは、僕の勝手な推測。僕達は他人を完全に理解することは出来ない。どんなに親しくなっても――――ね」
「…………」
「でも、この世に完全なものなんていくつある? きっと何処にも在りはしない。それを知ってもなお、僕達は他人と関わる。僕達は1人で足りてはいけないんだから」
人は、1人で生きることは出来ない。
とうに使い古された言葉だが、それは真理だ。
「…………キミは、昔の僕に似ているよ」
「知った風なことばかり言うんだな、お前は……」
表情は変わらず、声の音も変わらない。だがその言葉を受けて、ロウは緩い笑みを浮かべる。
「僕はサロンにいる。きっとリシェルもリディアもいるよ。キミも、ぜひ来て欲しい」
助走もつけず跳躍し、第一船尾甲板へ。
体重を感じさせない軽やかさは、180センチを超える長身からはとても想像出来ない。
「――――待て」
「んー?」
呼び止めてもなお、視線は絡まず。しかし
「お前、名前は?」
興味が無い、と言った青年は彼の名を尋ね。
「――――ロウ・ラ・ガディス。……待ってるよ、レオン・ウィルグリッド」
ロウもまた、敢えて視線を向けずに名乗る。
足音が去り、レオンはふと、気づいた。
――――あの男は、自分の名前を名乗るまで、一度も俺の名を呼ばなかった――――。
「…………サロン、か」
呟きよりも早く。
足は、自然に動き出していた。
海の景色は変わらない。しかし、彼女の心は切り裂かれる波のように揺れていた。
彼は言った。騎士を舐めるな、と。
どうだろうか? あたしは騎士というものを甘く見ていたのだろうか?
答えは勿論、ノーだ。
だけど、レオンの言い分を理解できないわけでもない。確かにいくら親友とはいえ、本来なら森で穏やかに暮らしているべきルゥを連れ回し、
行動をともにさせている。ミオちゃんの一件もあり、ルゥにも少なからず辛い思いをさせてしまったことは事実。
それはやっぱり――――ルゥが言葉を多少なりとも理解していても。
彼女には、自分の思いを明確に伝える手段が無いから……どうしても、あたしの意志で決めてしまってる。
「ルゥは、どうしたい? あたしと旅をするのは……イヤ?」
「??」
首をかしげる。あたしが問いかけると、ルゥはたいてい首をかしげてから、あたしの指や頬をなめる。あたしはそれを肯定だと思って、つい――――甘えてしまう。
「あたしの身勝手なんだよね……ルゥが、ここに居るのは」
「――――でも本当にルゥが貴女に付いて来たくなかったら、最初からここに居ないとは思わない?」
不意に、背後からかけられるリシェルの声。だがリディアはそれに動じることも無く、ゆっくりと振り向いた。
「なんか、ずいぶんあっさり見つかっちゃったね」
「それほど大きくない船だもの。それにPCのGPSを使えば、そんなに時間も掛からないわ」
そこは、リェルス・ボウラのカフェテリア。
席に座っている乗客はほんの数人ほどであり、リディアは入ってすぐの席にぽつんと座っていた。
「コーヒー、飲む?」
「……うん」
テーブルに備え付けられている端末を操作し、メニューの中からコーヒーを選ぶ。すると1分もしないうちに、ウェイトレスロボットがコーヒーを運んで来た。
リディアは一緒に運ばれてきたミルクの封を切り、ルゥを促すと、ルゥは彼女の肩から飛び降りて、そのミルクを飲み始めた。
しかし、コーヒーを頼んだ2人は無言で俯き――――、一口もカップに口を付けようとはしない。
「……正直に言うわ。気を悪くしないで、聞いて」
「…………うん」
僅かに、呼吸を整えて。
リシェルは、リディアに告げる。
「私も、本当はレオンと同じ考えよ。小動物を連れて、騎士としての任務がこなせるなんてとても思えないし、賛成も出来ない。せめてワルマーシアにおいてくるべきだった、
と私は思っている」
「――――っ」
予感は、していた。
だがこうして、数日とはいえ3人の中で一番付き合いの長いリシェルにそう言われると……リディアとしても、ショックは隠せない。
「やっぱり……甘いのかな、あたし。端から見たら、舐めてるように、見えちゃうのかな……」
「そうね。少なくとも、何も事情を知らない人間が見たらそう思われるでしょうね。それに万が一、ルゥに身の危険が迫ったら……貴女は、その責任を取れるの?」
その言葉は、リディアの心を痛烈に抉る一言だった。
「……そ、それは……」
「私との戦いで見せたような速さで戦っていたら、体の小さなルゥはあなたの身体にいつまでもしがみついていられない。かと言って貴女から離れれば、狡猾な敵ならすかさず
人質にするかも知れない。どういった過程にしても、結果的にルゥの生死を左右するような状況に陥る可能性は高くなる」
リシェルの言い分はまさしく正論だ。いかに卓越した技量を持つリディアであっても、戦闘中にカバーできるほど余裕が出来るかと言われれば、断言は出来ない。
かと言って、動きをセーブして戦闘が出来るかと言われれば、それも無理な話だ。相手のレベルは場合によっては未知数。必勝出来るほど、慢心できるはずも無い。
慢心する戦士は須く死す。そのことは、彼女も剣を学ぶ者である以上、心に刻んでいる。
「じゃあ……やっぱり、ルゥは……あたしと、一緒に居ないほうがいいのかな…………?」
「そうかしら。私はそうは思えないけれど」
その、意外すぎるほどに呆気ないリシェルの言葉に。
俯いていたリディアはがばっと顔をあげ、彼女を見つめる。
「なに、それ……リシェル、言ってること、変だよ?」
「何が?」
「だって、賛成できないって……! ルゥが死ぬかもしれないって、今!!」
「簡単な話よ。死ぬかもしれない状況に陥るのなら、ルゥに最初から安全な場所にいてもらえば良い。何もわざわざ戦闘に引っ張り出さなくてもいいのだから」
「…………へ?」
「私たちが滞在する、セーフハウス。そこに留守番させておけば良いだけの話でしょう?」
呆然とするリディアをよそに、リシェルは自分の分のミルクを開封し、ルゥに与える。ルゥはそれを、口の周りを真っ白にしながらペチャペチャと舐め続ける。
「……まぁ、確かに賛成は出来ないけれど。連れて来てしまっている以上、現状で出来る改善策を見出すしかないわ。それに、まさか航空便で故郷に送り返すなんて非常識な
真似、私が提案するとでも思った?」
はにかみの笑顔はただ、優し気に。
リディアはその微笑を見て――――、一気に脱力し、溜め息を吐いた。
「はぁ〜〜〜〜…………リシェルなら言い出すんじゃないかって、ドキドキしてたよ…………」
「貴女って、失礼な子ね……」
コーヒーカップを持ち上げ、ゆっくりと口に運ぶ。そして一口飲むと同時に――――リシェルのPCに、メールが入った。
「…………ロウからだわ」
「なんて言って来たの?」
「…………レオンがサロンに行くから、サロンで待っててくれ、ですって」
リディアの鼓動が僅かに高まる一言。
彼の言い分は理解できる。だが今し方、友に示された一つの答えが、彼女に勇気をくれている。
「あたし、サロンに行く。レオンとちゃんと話したいからね。リシェルは?」
「…………私としても、彼の態度は納得が行かないわ。話し合う余地があるのなら、話をしたい所よ」
2人して席を立ち、注がれていたコーヒーを一気に飲み干す。砂糖もミルクも入れていないブラックコーヒー。その苦味にリディアは顔をしかめ、大きく息を吸って、吐いた。
「じゃあ、行きましょうか」
「うんっ!!」
そして、時間は今に至る。
リディアとリシェルは切り出す切っ掛けを作ろうと思案しており、レオンは目を閉じて沈黙。彼の隣りではロウが暢気にコーヒーを飲んでおり、ルゥはこの
妙な緊張感漂う空気に戸惑っている。
だがいつまでも黙っていては、時間だけが無意味に過ぎていくだけだ。
「……レオン、話があるの。聞いてくれる?」
切り出したのはリディアから。レオンはその声に応えるように目蓋を開き、色鮮やかな碧の瞳で少女を捉える。
「……何だ」
「その……確かに、レオンから見ればあたしは騎士に相応しくないのかもしれない。まだ子どもだって言うのも分かるし、ルゥを連れてることが悪いことだって言われれば、
否定できないよ。でもね…………」
ぐっ、と青い瞳に力が宿る。その眼差しの奥に灯る静かな炎は、他者に興味を持たないと言っていた青年の心を…………ほんの僅か、揺らめかせる。
「それでも。あたしは、自分がこうしたいって思って決めたことに悔いはないよ。ルゥを連れてきたことに後悔なんかしない。そして、あたしが騎士になりたいって思った
ことにも、後悔なんてしてない。あたしは、自分がなりたい騎士になってみせる」
少女の決意は何処までも真っ直ぐで、堅く、そして眩い物だった。
だが、現実は彼女の理想ほど甘美ではない。それを誰よりも知るのは――――。
「やっぱり、お前の言い分は子どものそれだ。何も分かっていない」
切り捨てるような言葉はただ冷たく。
騎士としての重みを知る青年に、少女の理想は最早、夢想の物。成し得る事など、出来よう筈もないと両断する。
だが。
「分かっていないのは貴方のほうじゃない? それとも、まだリディアの力量も測らない内にそんなことを決めてしまえるほど、貴方は聡明なのかしら?」
リシェルの弁護は正鵠を射ているが、その温度は氷点下に達するかと思えるほどに冷徹であり。
「騎士としてどれほどのキャリアを積んでいるのかは知らないけれど。ただ単に、ルゥを連れているという理由だけでリディアのことを軽んじているというのなら。
はっきり言って、短慮この上ないわね。ええ――――貴方こそ、何も分かっていないわ」
「リ、リシェル、何もそこまで……」
弁護してもらったリディアの方が慌てているという奇妙な図が出来てしまった。だがリシェルはリディアの言葉をきっぱりと無視して。
「どうかしら? 相互理解のために、ガナンタイトでの貴方の任務。リディアにサポートについてもらう、というのは」
さらには先任騎士であり、チームリーダーともいえるレオンに対し、挑発めいた……いや、挑発そのものの提案を行った。
ロウはそんなリシェルの言葉を聴きながら含み笑いを漏らし。
当事者たるレオンは、怒りを露わにするでもなく、ただ静かに溜め息を吐いた。
「――――いいだろう。あんたの言う通り、リディアと組んでやる。だがもし俺の邪魔をしたり、満足な結果を出せなかった場合は……どうする?」
問い掛けはリシェルではなく、リディアに向けられたものだった。
「っていうか……あたし、話に参加してない……」
「まぁまぁ。それで、もしそうなったら、リディアは何をするつもり?」
ロウが再び問いかける。リディアはしばし考え込み……頭を2、3度ひねってから。
「…………エルゥ・ウィーダ(この世界の飛行機の総称)の、内側の席に座る……」
「「「は!?」」」
別にどうということもないその答えに、リシェルもロウも、そしてレオンも、なにを言われたのかまったく理解できなかった。
「何それ、どういうこと?」
「別にそれくらい、誰でも出来そうだけれど?」
「ふざけてるのか?」
容赦ない3人のツッコミ。だがリディアは何故か恨みがましそうな表情で3人を見る。
「ふざけてなんかない! あ、あたし……その、空が見えない、狭い乗り物が……、大っ嫌いなの!!!!」
リディアの唯一の弱点。それは、狭所恐怖症である。
まだ彼女が5歳頃の話。家族で国内旅行をしようという話があった。リディアも最初は乗り気だったが、その日のエルゥ・ウィーダの乗客率は旅行シーズンだったこともあり
比較的高く、ハーケン家の座席は窓からは遠い内側の席だった。
ここまではよくある話だ。だが離陸し、一定高度まで達した後――――惨劇は起きた。
まず、外が見えないことへの不安感。元来開放された世界で育ってきたリディアにはそれが耐えられなかった。
次に、人に圧迫された狭所空間。人見知りしない性質のリディアだが、やはり先程と同じ理由により、狭い空間は苦手とするところ。
せめて外が見えていれば、まだ救いはあったのだが……乗客の多いその機内では、移動は困難。
結果、リディアは泣き、喚き、吐瀉し、気絶。機内はその凄惨過ぎる状況に騒然となり、家族旅行は出発からして大失敗となった。
ちなみに帰り道はエイス・ルフェの国内線を使って帰った。もちろんリディアは窓際で、ずーっと外を見ていたという。
「……ってこと。あ、あたしだってイヤだけど、その……失敗したときの責任は、ちゃんと取るもん」
ぷいっとそっぽを向く。そんなリディアの肩を、リシェルは優しく叩く。
「これで決まりね。じゃあ私は、ロウと組むわ。有事の際は必ず連絡を取り合うこと。異論は無いわね? レオン」
「……ああ」
「さぁて。話しも纏まった所で、乾杯でもしようか。そういえばリシェルはレオンにちゃんと自己紹介、してないんじゃない?」
ロウに言われて、リシェルもレオンも初めて気づいた。だがそれも無理も無い。今のところ、この2人は破滅的といっても良いほどに険悪だ。リシェルの名前は既に
レオンもロウやリディアから聞いてはいるものの、リシェル自身の口からは一言も聞かされていない。
「そうだったわね……。今更だけれど、リシェル・ベルムントよ。取り敢えずよろしく、レオン」
「……こちらこそ」
視線は合うことなく、挨拶とも思えぬ挨拶が交わされる。
現状、このチームはバラバラと言ってもいい。
しかしチームとしては未熟であっても、個々の繋がりはそこそこにある。
この4人が、真のチームとなった暁には、おそらく。
歴史に名を残しうる、最強のチームの一つとして数えられるのかもしれない。
「4人目の戦友に、乾杯!!」
管理人の感想
とうとう始まった四人の旅。でも開始早々、険悪なムードで・・・。
その一端を担っているのは間違いなくレオンなのですが、騎士としての彼の言い分も分かりますね。
本人はそのつもりではなくても、周りから見ればそうなのだと・・・凹んでいるリディアに、リシェルがいい感じでフォローしていると思いました。
そして結局、実践で確かめるということで落ち着きましたが・・・ロウはなかなかの策士ですね。彼のお陰でなんとかまとまったって感じですし^^;
さあ次回は戦闘シーンが入るとのことなので、期待しておきましょう^^