B&G MEMORIAL of SUMMER

BOYS and GIRLS in Long Vacation

 

 

 

 総志・愛ペアと謙悟・冴霞ペア。それぞれが微妙な問題を抱えたままに迎えた第七フレームの初球を担うのは、引き続き秋月愛である。第一試合に比べ、

比較的良好なペースで得点している彼女だが、それでも六人の中で最も不安定であることは変わりない。正直なところで言えば、パートナーである総志で

さえも、半ば敗北――――罰ゲーム回避という事実上の勝利ではなく、順位的な意味での最下位としての負けを覚悟していた。

 しかしその覚悟を吹き飛ばす快音が響いた時には、総志も思わず我が目を疑ってしまった。

「あ……や、やったぁっ!!」

 思わずガッツポーズを取り、椅子から中腰になって立ち上がりかけていた総志に抱きつく愛。その衝撃でわずかに眼鏡がずれるものの、ディスプレイに

映る結果だけは見間違えるはずがない。

 燦然と輝く『STRIKE』の文字。期待通りと言うべきか、予想外と言うべきか。一度落ち込んだ波はここへ来てその勢いを取り戻し、続く第八フレームに

総志の投球順を回すことに成功したのだ。これで総志が第八フレームもストライクを獲得出来れば、冴霞や継を抑えて勝利する事も出来るだろうし、負ける

事なく勝たず、しかし勝利をものにする事が出来る。

「ああ、よくやったぞ。さすが愛だ」

「えへへぇ〜、もっと褒めてっ」

 ニコニコしながらぐいぐいと、人目も憚らず抱きついてくる愛。しかし総志はそれを邪険にあしらうような事もせず、優しく彼女の頭を撫でていた。

 とにかくこれで総志・愛ペアにも光明が差してきた。このままのペースで、総志が続く第八フレームで再びストライクを取る事が出来れば、最下位を避け

られる可能性は大きく跳ね上がる。次の投手である継のスコアも気になるところではあるが、それ以上に気がかりなのは腕を痛めた冴霞の調子だ。

 謙悟・冴霞ペアの実力の高さは総志も既に認めるところである。彼ら二人のスコアは、第一試合・第二試合を通して、八点未満を取った事が一度もない。

その片翼であり、むしろ主力と言える冴霞が負傷したとなれば、戦局が大きく変化する事は想像に難くない。彼女たちには悪いが、これは総志にとっては

数少ないチャンスなのだから。

 だがそんな暗い喜びを感じるよりも今はまず、愛のことを素直に褒めてやりたい。そしてその為には。

「愛、そろそろ離れなさい」

「にゃ〜」

 ごろごろと懐いてくる愛を促し、ようやく密着状態から離れる二人。そのあまりにも甘々な姿に、謙悟と冴霞、そして既に見慣れた継と要でさえ生温かい

視線を送らざるを得なかった。

「相変わらずだなぁ、愛ちゃんは」

「も、もうちょっと人目を気にした方が、良いと思うよ? 一応、公共の場なんだし……ね?」

「はぁ〜い。えへへっ」

 要の叱責もあまり効果は期待できない様子の生返事。継は二人のやり取りを可笑しく思いながら、アドレスに入る。

 図らずも愛のおかげで幾分か気持ちも楽になってはいるが、継の狙いはあくまでもストライクのみだ。やや右寄りに立ち、得意のカーブボールを投じる。

それは何ら変わりはなく、変化を伴うボールとしてはかなりの球速で放たれた第一投。的確にストライクコースを射抜くボール、角度は申し分無かった。

 だが、不運にもストライクには至らない。ほとんどのピンは球威と倒れる前面のピンに押され転がったが、唯一九番ピンだけがその衝撃に耐えたのだ。

ぐらぐらと揺れながらも最後の最後で持ち直し、倒れずに残るわずか一本。要がそれを問題なく回収するも、終わりが近いこの局面でストライクが取れない

というのは、継・要ペアにとって小さくない痛手となってしまう。

「ドンマイ、継くん」

「ああ……分かってるよ」

 苦笑いする継。要がぎゅっと手を握ってくれたおかげで、わずかに高ぶりかけた気持ちが萎んでいく。幼いころから継の事を見てきたことと、生来の勘が

良い要は継の気持ちを敏感に察し、荒れてしまう前に収める方法をマスターしている。言葉や態度には出さない信頼関係。長年培ってた幼馴染であり、今は

恋人同士である二人の歴史があればこそ、成し得るものだろう。

 そして第七フレームラスト、冴霞の投球。疲労から来る腕の痛みは謙悟のマッサージのおかげで少々楽にはなったが、すぐに完治するものでもない。引退

したとはいえアスリートであった冴霞はそのことを誰よりも承知しており、だからこそ無理はせずにゆったりとした投球で臨む。球速はこれまでの放たれた

彼女のものから比較すれば見る影もなく落ち込んでおり、ダメージのほどが窺える。

 しかし、球速が遅くとも構わない。倒しきれなくとも構わない。この試合は冴霞一人で戦っているものではない。

 残ったピンは四番、七番、そして八番の三本。運良く一ヵ所に固まって残ってくれたおかげで、謙悟の実力は遺憾なく発揮される。

 ピンが砕けるのではないかというほどの剛速球。第六フレーム時とほぼ同等の速度を叩きだした一球は問題なくスペア達成を果たし、迎えに来てくれた

冴霞の手と軽くタッチすると、お互いにニッコリと微笑んだ。

 

 

森川 総志

秋月 愛

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1

6

5

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30

58

78

89

96

116

 

高平 継

柊木 要

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F

1

G

9

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30

60

87

105

113

121

 

新崎 謙悟

今村 冴霞

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7

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30

59

79

95

110

127

 

 

36.男女混合十柱戯決戦 H

 

 

「よし……」

 席を立ち、ボールリターンに向かう総志。愛がせっかく作ってくれたチャンスを無駄にしない為にも、再び眼鏡を外し、継や要曰く『本気モード』で

臨む第八フレーム一投目。ここでストライクを取っておけば、仮に愛が第九フレームでミスをしたとしてもスペアでリカバリを狙い、さらにラストである

第十フレームまで持ち込んでの勝負が出来る。スコア二百を超えるのは厳しいが、難敵の一人である冴霞の調子がすぐには戻らない事を考えれば、それは

流石に出来過ぎだろう。そしてなにより今は、この第八フレームで確実にストライクを決めなければならない。

「愛、持っててくれ」

「うんっ、頑張ってね!!」

 愛に眼鏡を手渡し、十二ポンドボールを持ち上げる。ポジションは最もストライクを狙いやすい、やや右寄りの位置。勝ちたい、という確固たる意志とは

裏腹に、凍てつくように冷静で滑らかな投球。若干の休憩を挟んだ事で復活した総志は再びストライクを達成し、連続ストライクであるダブルを達成した。

 

 

 続くのは四連続となる一投目を担う、継の番だ。総志がダブルを決めた事でわずかに保たれていた優位性は消滅し、また続く冴霞・謙悟ペアのスコア次第

では最下位となる。四連続ストライクによるアドバンテージに甘えていた気持ちが自身の中にあった事を、継はようやく受け止めて……ゆっくりと大きく

深呼吸した。

「ふぅ…………っし!」

 気持ちを改め、アドレスを決める。ボウリングが得意だからという慢心を切り離し、ただこの一球で確実にストライクを達成させる。継が心に思い描いた

のはただそれだけであり、失敗することなど微塵も考えていない。明確過ぎるほどのイメージは時に、現実においてもその力を遺憾なく発揮する。優れた

競技者が、試合の前から勝利する姿をイメージするように継もまたそれを実践し、そして。

 鳴り響く快音。実に四フレームぶりとなる継・要ペアのストライク。継が最も得意とするカーブボールが鋭く突き刺さり、先程は倒れず耐えた九番ピンも

屈服させての、文句なしの結果。要は帰還した継をハイタッチで迎えると、継もそれに応えるように要の肩を軽く叩いた。

「次、頑張れよ? 応援してるからな!」

「も、もう、プレッシャーかけないでよぅ……もちろん、ちゃんと狙うけどっ」

 困ったように言いつつも、要の声の調子は暗くはない。負けず嫌いの継の為に、彼女も頑張ろうと一生懸命なのだ。

 それを誰よりも知る継だからこそ、要の事を深く信頼している。

 

 

 第八フレーム最後は、まだ腕の調子が良くない冴霞の投球。謙悟のマッサージのおかげで腕の震えは収まってきたが、治っていない状態でまた同じ運動を

繰り返せば、長期的に見ればトレーニングにはなるものの、この短い時間では負担以外の何物でもない。そこで冴霞が取った解決策は、今以上に腕の負担を

かけないようにするための応急処置だった。

「八ポンド……これで、大丈夫か?」

「んっ……まぁ、何とか」

 四.五キロの十ポンドボールよりも、約一キロほど軽い八ポンドボール。元々は女性陣用にと持ってこられたボールだったが、冴霞はこれを「軽すぎる」

と言って一度は棚に戻したのだ。だが、結果としてその選択によって負傷という結果に至り、冴霞は自分の行いを悔いるように溜め息をついた。

「ダメですね……十ポンドを選んだのは、軽いっていうのもあったんですけど……本当の事を言えば、私のワガママなんです」

「ワガママって?」

 ボールを抱えたままの冴霞の手を支える謙悟。その気遣いと優しさを心底嬉しく思いながら、紺青色の瞳が謙悟を見上げる。

「謙悟くんの前で、格好良いところを見せたかったんです……」

 その告白に、謙悟は思わず笑ってしまいそうになった。だがすぐに思い直し、支えている冴霞の手をそっと握る。

「今更、そんなことしなくても……俺はちゃんと格好良い冴霞を知ってるし、そうじゃない冴霞も知ってるんだから……肩肘張って、無理しなくていいよ。

それで怪我されたら俺は、何て言ったらいいのか分からないし」

「うん……ごめんなさい……」

 しゅん、としょげてしまう冴霞。謙悟は冴霞の肩をポンと叩き、彼女を促す。

「ちゃんと見てる。冴霞の格好良いところ、今までもずっと見てたけど……無理しないで、頑張ってくれ」

「―――――はいっ」

 愛らしい笑顔とともにアドレスに向かう冴霞。緩やかな投球はコースも良く、ストライクには至らなかったものの四番ピンと七番ピンを残すという良好な

結果となった。そしてその位置ならば、謙悟が回収する事も難しくはない。

 

 

森川 総志

秋月 愛

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高平 継

柊木 要

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新崎 謙悟

今村 冴霞

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110

127

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 第七フレーム時点のスコアでは、三チームともほぼ横一線といったところか。しかし調子が上がってきている総志・愛ペアを相手にすれば、個人レベル

ならばいざ知らず、要の力がどのように反映されるかで継・要ペアの勝敗は大きく揺らいでくる。一方、謙悟・冴霞ペアも続く第九フレームの一投目が冴霞

であることを考えれば、やはり不利と言わざるを得ない。

 

 

 

冴霞「実力伯仲」

総志「好勝負」

継「一進一退」

要「五分と五分?」

愛「五十歩百歩?」

謙悟「それはどっちかっていうと、悪い意味じゃないか?」

冴霞「まあ、同じような意味ですし」

愛「細かい事は気にしないという事で」

継「じゃあ、今回の締めはこのお二人」

謙悟「短いな。では、お願いします」

総志・愛「続きますっっ!!!」 


あとがき:

まさに白熱の試合展開。ここへ来て調子を上げてきた総志・愛ペアと、ようやくの復活を遂げた継。
負傷しながらも堅実にスペアで固めていくノーミスチーム・謙悟&冴霞ですが、やはり情勢不利である事は変わらず。
次回でボウリング編も最終回。最後の勝者と、罰ゲームの栄冠は誰の頭上に輝くのでしょうか??



管理人の感想

うーん、大熱戦ですね。
現時点では完全に横一線。どのチームにも優勝の可能性があり、また同じく最下位の可能性もあるという。
好調の波が来た総志・愛ペア。そして同じく復活のストライクを決めた継・要ペア。そして現時点ではトップであるものの、負傷というハンデを抱える謙悟・冴霞ペア。
予想すら難しいこの試合、果たしてどうなるのか!?
ただ、各ペアの仲の良さに嫉妬(ぇ



2009.6.6