B&G MEMORIAL of SUMMER

BOYS and GIRLS in Long Vacation

 

 

 

 第三フレーム。序盤から波乱の様相を呈したスタートとなったこの第二試合で、この第三フレームが勝敗を分ける分岐点となっている。

 三チームともに第一、第二フレームとストライクを連発し全チームダブルという横一線の状態。ここでさらなるスコアアップを目指し、また確実な優勝を

目指すのならば、第三フレームもストライク――――即ち、ターキーを達成させなければならない。

 無論、まだ試合は序盤だ。後半になって再び盛り返すことも十分に可能なだけのスコアを全てのチームが成し遂げている以上、無理にハイスコアを狙って

行く必要はない。それに、勝てば正体不明の罰ゲームが待っているのだ。むしろわざと負けてペナルティを回避するという選択肢もある。

 だが、そんな後ろ向きな選択肢など。

 この場にいる六人は、誰一人として持ち合わせていなかった。

「ふっ――――!!」

 瞬腕投球。球速は速く、球威も十分。教科書のようなコースで森川総志が投じた十二ポンドボールはストライクを達成し。

「でりゃあっ!!」

 変幻自在。鋭いカーブを描きながら、危なげどころか絶大なまでの安定感を持って、高平継もまた十本のピンを倒し切り。

「っ――――!!」

 剛腕一閃。ただ純粋に力だけで自然な曲がりさえも屈服させ、全て悉く蹂躙する新崎謙悟の一投。響く音はさながら雷鳴。

 三人が思う事はほぼ同じだった。ここでわざと負けることは出来るが、そんなものは趣味じゃない。全力を尽くして、それで負けるというのなら、それは

仕方のないことだ。何も悔いは残らない。それに…………。

「そーじくんっ!」

「やったね、継くん!」

「凄かったですよ、謙悟くん!!」

 自分の好きな女の前で格好つけたくない男なんて、どこにもいないのだから。

 

 

 

 

 

森川 総志

秋月 愛

 

 

 

30

 

 

高平 継

柊木 要

 

 

 

30

 

 

新崎 謙悟

今村 冴霞

 

 

 

30

 

 全チーム、ターキー。もはやプロのそれと比較しても遜色のないほどのスコアと、より一層の過熱ぶりを見せる第二試合。

 男たちは維持と誇りを示し、それに答えるべく立つのは愛に報いる女の運命(さだめ)か。

 試合は中盤へと差し掛かり――――これより、勝負の明暗は分かれ始める。

 

 

 

34.男女混合十柱戯決戦 F

 

 

 

 第四フレーム、第一投を担うのは秋月愛。普段は天然自然な振る舞いでおちゃらけている彼女も、さすがにこの状況においては緊張せざるを得ない。

 三連続ストライクによる横一線の均衡。この膠着状態を崩してしまう可能性が最も高いのは、本人も自覚している事ではあるが愛なのだ。愛の運動神経は

お世辞にも良いとは言えず、種目にもよるが要と大差ないほどに落ち込んでいる。しかし、愛と要と決定的な差は、先の第一試合で要が見せたようなツボに

ハマった時に起きるような……いわゆる『爆発力』というものが無い。調子の良い時もあれば、悪い時もある。それは定められた波のようなもので、好調の

後には必ず不調の波が訪れるというのが、愛の不安要素だった。

「すぅ……はぁ……」

 ゆったりと、気持ちを落ち着かせるように深呼吸をする。だがこの行為からして、愛らしくない。普段の彼女ならば結果など気にせずに、究極と呼んでも

いいような弛緩(リラックス)ぶりを見せて投球に臨むはずだ。それが乱されているのは――――実は、第二フレームの投球からであった。

 あの時、愛は意識してストライクを狙い、それが見事に叶った。楽しく勝とうとは言ったものの、この時点で総志以上に勝ちを意識しており、そこから

既に彼女の本来の目的である『楽しむ』は『勝つ』に置き換えられていた。無論、その先には愛自身が提言している罰ゲームの存在があるのだが、真剣に

試合に打ち込んでいる総志の姿勢を見せられては、彼女も決意せざるを得なかった。

「――――愛っ」

「わぁっ!? び、びっくりしたぁ……そーじくん、おどかさないでよぉ」

 アドレス前で悩んでいる愛を見かねたのか、総志が声をかけると愛は飛び上りそうな勢いで肩を震わせ、思わずボールを落としそうになった。総志は愛の

手を支え、そうはさせまいと手ごとボールを持っている。

「どうした? 緊張してんのか?」

「う……うん」

 他人行儀な話し方ではなく、愛と話す時だけに使われる砕けた言葉遣い。それに安心を感じたのか、愛はあっさりと自身の不安を自白した。

「だって、ここまですごいスコア出されちゃったら、失敗なんてできないと思って……それに、そーじくんと一緒に勝つって、約束してるし……」

 しゅん、と小さくなりながら心の内を明かす愛。すると総志はゆっくりと手を上げて――――がすっ! と愛の脳天にチョップを落とした。

「はぐっ!?」

「余計な事を考えるなっての、お前は」

 手をそのまま広げ、頭を撫でる。恨みがましいような涙目で見上げる愛だが、不思議と総志に撫でられることで気持ちが落ち着いていた。

「うぅ、でもでも、そーじくんだって勝つってゆったじゃん?」

「ああ、勝つさ。でもそれは、お前が提案する罰ゲームに勝って、その上で勝つって意味だよ」

「????」

 頭の上から「?」を連続して飛ばす愛。総志はアホな顔をして考えている愛の抜けた表情に、思わず笑いそうになりながら。

「つまり、罰ゲームを避けたってことはある意味勝ちだ。そして、残った二組の中で勝っていれば……事実上、二位が一位扱いだろ?」

「……………………あ、そっか」

 条件を提示していた本人にも関らず、愛は総志に言われるまでその事に気が付いていなかった。確かに、優劣で言えば一位ではない。しかし罰則を受ける

事が無い以上、負けたわけではない。そして下にはもう一チームがいると来れば、勝ってはいないが勝ちであり、同時に負けてもいない。

「でもそれって、へ理屈だよね?」

「いいんだよ。負けなきゃ勝ちなんだ、このルールでは。だから心配しないで、思いっきり楽しんで来い」

 ゆったりとした優しい笑顔。眼鏡をかけていない総志が向ける、素顔の頬笑み。愛にだけ向けるその思いやりに後押しされて。

 愛が放った一投目は、やはり予想通りにストライクこそ達成できなかったものの、八本のピンを倒し、残すところ六番ピンと十番ピン。総志は続く第二投、

危なげなくピンを落としてのスペアを達成させた。

 

 

 

 続く第二投手は柊木要である。第一試合中盤から爆発し、今もなお好調を続けている要は気負いもなくアドレス位置を決めると、大きく振りかぶって勢い

ある投球を繰り出す。だが力みがあったのかボールは要の普段の投球が描くカーブよりも強く曲がり、ストライクコースよりも厚めに入ってしまった。

 厚めに入るとスプリットになりやすい、というのはよく言われる事だ。要も継に付き合って何度もボウリングをプレイしている身である以上、それは承知

している。そしてそのリカバリの難しさもまた、良く知っている。

 だが、運が良かったのか。

 予想以上に大きく曲がってくれたおかげで、ストライクコースとは逆に位置する一番ピンと二番ピン――――ブルックリンに当たり、そのまま見事全ての

ピンを倒し切って、四フレーム連続のストライクとなるフォースを達成してしまった。

「や、やったぁ!! 継くん継くん、四連続だよ!!?」

「お、おお! すっげぇぞ、要!!」

 喜びの余り飛び上る要と、興奮しながらもそれを褒め、同時になだめようとする継。しかし喜びの方が強いのか、表情は嬉しそうに笑っている。

 これにより、継&要チームはこの試合でかなり有利な立場となった。この先調子を落としたとしても、堅実にスペアを取り続けることが出来ればスコアが

二百を超える事は容易いだろう。それに加えて個人の実力ではトップに位置する継のモチベーションも上がっているので、更にスコアの向上は見込める。

 盛り上がる二人。今の継と要は、勝利の後に待っている罰ゲームの存在など完全に忘れ去って手放しで喜んでいた。

 そして、第三投手である冴霞はというと……。

「ふぅ…………えいっ」

 素早く中央にアドレスを取り、リラックスしての一投。速球メインだった今までとは一転して、女の子らしい緩い投球。ナチュラルなカーブは控えめに、

コロコロと転がるボールは丁寧にピンを倒していき、七番ピンを残して九本を倒した。

「はい、謙悟くん。タッチです」

「おう」

 ペチン、と軽くお互いの手を叩き合わせ、謙悟が二投目を投げる。ストレートボールを持ち球としている謙悟はいつも通りの鋭く強い投球で七番ピンを

弾き飛ばし、こちらもキッチリとスペアで仕上げてきた。

 継と要は、そんな冴霞たちのプレイスタイルに疑問を感じていたが……総志だけは冴霞の狙いに気が付いていた。

「なるほど、そういうことか……今村さん」

 

 

 

 

 

森川 総志

秋月 愛

 

 

 

30

58

78

 

 

高平 継

柊木 要

 

 

 

 

30

60

 

 

新崎 謙悟

今村 冴霞

 

 

 

30

59

79

 

 スコアだけを見れば、圧倒的優位にいるのは当然継&要ペアだ。しかしスコアを崩した総志&愛とは違い、冴霞には余裕があった。その態度こそが冴霞の

策略であり――――総志の予想では、間違いなく彼女も狙っている。

 罰ゲームを回避しなおかつ決して負けない位置。本当の意味で勝利と言える順位である、二位を。

 その手段はおそらくこれから先、さらに巧妙さを増していくだろう。

総志にとって最大の敵は実力に置いて上回る継ではなく、策で遥か上を行くであろう陽ケ崎随一の才媛・今村冴霞に他ならない……。

 

 

 

 

継「な、なんか変な雰囲気になってきたなぁ!?」

愛「策略家が陰謀を巡らせております?」

要「そ、そんな感じだね……いいの? 新崎くん?」

謙悟「良いも悪いもない。冴霞が楽しめるんなら、俺はそれでいいよ」

冴霞「ありがとうございます、謙悟くん♪」

総志「そうやって笑っていられるのも、今のうちだよ。今村さん……」

継「あ、ああっ、総志さんが……っ」

愛「三流ヤラレ役の中ボスみたいなセリフをっ!?」

要「……愛ちゃん、結構ヒドいよ、それ」

総志「ふふん、なにはともあれ……次回のお楽しみだ。ではお二人さん、どうぞ?」

謙悟「……やっぱりやるのか、これ」

冴霞「私だって恥ずかしいんだから、我慢してください……」

謙悟&冴霞「「続きますっ!!!!」」




あとがき:

久し振りの本編、第三十四話でした。度重なるストライクラッシュに思わぬ緊張を
感じてしまう愛でしたが、総志のナイスフォローによって失敗しつつも見事復活。そして
絶好調の要はとどまることを知らず、遂に四連続ストライク。しかしその一方、罰ゲームを
回避する事を念頭に置く二人の策士によって、戦いはスコアだけではないものへと変化しつつ
あります。純粋な勝利よりも安全な敗北。果たして、罰ゲームは誰の手に!?



管理人の感想

うわ、凄っ・・・。
まさにストライクラッシュですね。まさか12フレーム中、10フレームがストライクとは^^;
しかし皆が白熱する中で、二人ほど違う燃え方をしているようですねぇ。
1位には素敵な罰ゲーム。よって二人が狙うは2位。しかし策略だけではどうにもならないのがボウリングの面白いところ。
というわけで、次回もお楽しみに〜^^



2009.3.30