B&G MEMORIAL of SUMMER

BOYS and GIRLS in Long Vacation

 

 

 

第二試合の順番は、スコアが低かった順番から進行することになった。一番手は総志&愛、二番手は継&要、そしてラストに謙悟&冴霞。

二試合のみでアベレージを競うというルールから、この第二試合こそが文字通りの優勝決定戦となる。そのあとに続く個人戦に関してはハイスコアのみを

競い、これといったペナルティは課せられていない。だがこのペアマッチに関しては、実はある罰ゲームが用意されていた。

「ちょっと待て、そんな話聞いてないぞ」

「え? 言わなかったっけ?」

 謙悟の問いに対し、愛はさも当たり前のように聞き返す。しかし謙悟のみならず、冴霞、継、要、そして総志さえも愛の言葉を肯定するように頷く。

「だいたい、条件づけがおかしいだろ。何で負けた人間じゃなくて、勝った奴が罰ゲームの対象なんだよ?」

「だって、負けた人が一方的に不利な条件を飲むなんて不公平でしょ? だから、勝った人にしてもらうの!! ちなみに何をするかはあとでいきなり言う

から、覚悟してね!!」

 にこやかに告げる愛。さすがの総志もここまでのアホっぷりには突っ込む気力も起きないのか、呆れて肩をすくめるとぐしゃぐしゃと愛の髪をかき交ぜた。

「…………ま、まぁ、罰ゲームはとりあえず保留してよ。今は普通にボウリングを楽しもうぜ?」

「そ、そうだね。じゃあ……あたしと継くんが同じチームになるから……一試合目のスコアは、二人のアベレージで良いんですか?」

「はい。百四十八と百二十八ですから、足して割って百三十八。これが要さんと高平くんのスコアになります」

 簡単な足し算と割り算とはいえ、ほとんど考えずにサラッと答える冴霞。その横で謙悟は端末の操作をして、チーム名の変更を行った。

 

 

 

10

合計

 

 

森川 総志

秋月 愛

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高平 継

柊木 要

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新崎 謙悟

今村 冴霞

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、じゃあ早速始めようか。一投目は……二試合目は男からだから、俺からだな」

 すうっと立ち上がり、眼鏡を外す総志。やや目つきが悪く見えるが、これが総志の素顔だ。謙悟も冴霞も一度くらいは見たことのあるが、愛をはじめ

継、要の表情もわずかに緊張を帯びている。

「? どうかしたんですか?」

「えと、その……総志さんが本気になったみたいです」

 冴霞の問いに答える要の顔色は、明らかに曇っていた。だが視力の低い人間が眼鏡を外すことは逆に不利になるのではないだろうかと思いながら、謙悟と

冴霞は総志の投球を見る。

 しかし、二人の予想は大きく裏切られることになる。そもそも前提条件からして間違っているのだからそれも当然と言えば当然。

 森川総志は眼鏡をかけてはいるが、決して視力が著しく低いわけではない。彼の場合、眼鏡は視力の補助よりも瞳そのものを保護する意味合いが強い。

むしろ文字通り目の前にあった遮蔽物が無くなったことで、より集中力が高まる。

そして、本気になった総志の力と技術を持ってすれば――――ストライクを取ることなど、今の継と同じく造作もないことなのだ。

 

 

 

33.男女混合十柱戯決戦 E

 

 

 

 初球からストライクで始まった第二試合。続く継も変わらず好調のままにストライクを達成し、謙悟も有り余るパワーボールを見事に制御し、ストライク。

第一フレームの面々が全てストライクというハイレベルな出だしを引き継いで、続く第二フレームは女性陣の番となる。

「はふ……っと」

 秋月愛はゆるい深呼吸の後に、アドレスに入る。先の第一試合、二度ほどストライクを達成してはいるものの、彼女の成績はかなりよろしくない。

 実際のところ、第一試合は勝てる試合でもあった。だが都合三回のガターが見事に足を引っ張ってしまい、勝利には至らなかった。楽しくプレイする事を

信条としている愛だが、総志が本気になった以上自分もいつまでものんべんだらりと悠長に構えているわけにもいかない。

「負けるのだって、楽しくないもん……ねっ!!」

 たどたどしいリズムで刻まれる五歩助走。球速は並、しかしボールコースは極めて良好。ボールの行く末を見届ければ、結果は期待通りのストライク。

「うっし!!」

 ぐん、と大きくガッツポーズ。始まったばかりとはいえ、早々にダブル達成が出来たことはスコア向上に大きく貢献できる。微妙なバランスでムラッ気が

多く、いつ崩れるとも知れない愛のスコアだが、だからこそツボにハマれば大きく伸びてくる。そしてそれを信じられるからこそ。

「今度は勝つぞ、愛」

「うん、楽しく勝とうね!!」

 迎えに飛びつく愛を、総志は嫌な顔をせずに受け止める。頭を撫でる力も、先ほどとは違い弱く優しい。

 

 

 その隣を抜けて、続く二番手がボールリターンから八ポンドボールを持ち上げる。第一試合では惜しくも最下位に甘んじた、柊木要だ。

 継との絆を取り戻し、要のテンションもより好調に仕上がっている。愛と同じく気持ち次第でスコアが増減しやすい彼女だが、前回よりも向上している

状態において不安要素は欠片も見当たらない。

「しょっ――――っと!!」

 中央右寄りのアドレスより投じられた速めの投球。緩やかなフックを伴って、ストライクコースに乗れば、導き出される結果は決まっている。

 またしてもストライク。要自身は本日通算二度目、しかしこんなにも序盤でストライクを出せたことは、これまでの要の経験ではかなり少ない。普段は

スロースターターの彼女だが、これもやはり。

「要! よくやった!!」

「うん! 頑張ろうね、継くん!」

 偏に、継との関係が修復されたことによる好影響だろう。それを知ってか知らずか、継はしっかりと要を出迎えて彼女の健闘を讃える。

 二チーム続けてのダブル達成。熾烈な展開の中、第二フレームラストを飾るのは、第一試合において最も多くのストライクを挙げた――――今村冴霞の

順番である。

 

 

 

 どことなく余裕がないような冴霞の様子に気がついていた謙悟は、愛の投球中に彼女を連れて少し離れた自動販売機のそばまでやってきた。受付の際に

もらっていた一日フリーパスを自販機のスキャナにかざすと、飲み物のランプがパッと点灯する。その中から謙悟はスポーツドリンクを選び、取り出し口

から缶を取り出すと、冴霞に手渡した。

「ありがとうございます。……それで、話って?」

「いや、大したことじゃないんだけど……何か、緊張してるみたいだったから」

 視線を彷徨わせた後、心配そうに冴霞を見る謙悟。冴霞はゆったりと優しげに、また嬉しそうに微笑むと、謙悟の肩に頭を預ける。

「……なんて言ったらいいんでしょう。…………もしかしたら、ちょっとプレッシャー感じてるのかも知れません」

「プレッシャー?」

 うん、と頷いて缶のプルトップを引き上げ、スポーツドリンクを飲む。それが終わると冴霞は物憂げに溜息を吐いた。

「秋月さんが言っていた、罰ゲーム。勝った人がするっていう……」

「ああ。でも、あの秋月だからな。別に変な事は言わないだろ」

「だとは思いますけど。今のところ、その条件に一番近いのって私たちなんですよね。……自分でも分かってる事なんですけど、どうも私、勝負事にかなり

執着するタイプだから……特に」

 上目づかいに謙悟を見上げる紺青色の瞳。そして差し出されるスポーツドリンク。

「謙悟くんが見ている前では私、絶対に負けたくないから」

「それは……ありがとう、って言うべきなのかな」

 差し出されたスポーツドリンクを冴霞の手ごと持って、一口飲む。そう言えばさっきは水だけしか飲んでいなかったな、と他人事のように思いながら。

「でも冴霞、俺だって冴霞の見てる前では負けたくないって気持ち、ちゃんとある。それに秋月が言う罰ゲームが……その」

「?」

 途端に口ごもる謙悟。だが冴霞は続きを急かすことなく、信頼の情を瞳に込めてじっと彼を見つめる。謙悟もそれを察して、意を決した。

「……どんな突拍子のない物でも、俺がちゃんと冴霞のこと……守るから」

「……はいっ。私も、謙悟くんのこと守ります」

 今日、初めて交わす互いの口唇は甘く、溶け合うような味とともに。

 

 

 決意も新たに冴霞が投じた渾身の一投は、ピンを砕かんばかりの快音とともにストライク。

 三チーム、六人ともにストライクを達成した第二フレームまでのスコアは、全チームダブルというプロボウラーに匹敵するほどの結果と相成った。

 

 

 

 

 

森川 総志

秋月 愛

 

 

 

 

高平 継

柊木 要

 

 

 

 

新崎 謙悟

今村 冴霞

 

 

 

 

 順番は一巡りし、第三フレームは再び男性陣の投球となる。三組六名ともが勝利を渇望する中、戦いは徐々に中盤へと向かっていく。

 

 

 

 

継「つか、みんなスゲェな!!」

総志「まだまだこれから、だよ」

謙悟「どこから崩れるか分からないからな」

冴霞「でも、負けませんけどね」

要「あ、あたしだって負けませんよ!?」

愛「い〜感じで盛り上がったところで、続きます!!」

継「ちなみに、これで続きコールは全員言ったんだっけか?」

要「そうだね。次はどうなるんだろ?」

総志「まぁ、お決まりのパターンだろうね」

愛「だね〜」

謙悟「……嫌な予感しかしない」

冴霞「あ、何故か私も……」




あとがき:

後半戦スタート!!そして早速とんでもない展開を迎えるという。
このままストライクラッシュが続くか、はたまたどこかのチームが瓦解するか。
どちらにしても一筋縄では行きそうにない二回戦であり優勝決定戦。勝者とともに
気になるのは、愛が唐突に言い出した「罰ゲーム」の存在。勝者に待つのは天国か地獄か。


管理人の感想

とうとう始まりました、第二回戦。
復活を果たした継・要ペア。とうとう本気を出してきた総志・愛ペアに、謙悟・冴霞ペアがどう太刀打ちするのか。
っていうかみんな凄いなぁ(汗) ホントにプロの試合並。これは、200を超えるペアも出てくるのではないでしょうか。
果たして栄冠と罰ゲームは誰の手に?(笑)



2009.2.11