B&G MEMORIAL of SUMMER

BOYS and GIRLS in Long Vacation

 

 

 

 水の重さだけわずかに重量を増したスポンジにボディソープを含ませ、何度か握って泡を立たせる。香り成分として桃の香りが配合されている弱酸性の

ボディソープだけあって、香りはやはり桃のそれだ。だがそれを意識するほどの余裕もなく、謙悟は左手を冴霞の左肩に添えて、ゆっくりと――――

文字通り陶器を手入れするような慎重さと優しさで冴霞の背中を擦りはじめた。

「んっ……」

 小さく冴霞が声を上げる。謙悟はぴたっと手を止めて、スポンジを背中に当てたまま尋ねる。

「悪い、痛かったか……?」

「あ、い、いえ。力はもうちょっと強くてもいいんですけど……背中って、なかなか届かないところもあるから。今ちょうどいい感じだったので、思わず」

 えへへ、と背中越しに。そして正面にある鏡越しに照れ笑いを浮かべる冴霞。その無邪気な笑みとともに頬が朱に染まっているのは、ただ入浴で体温が

上がっているからではなく照れと、嬉しさと、そしてやはり隠してはいるが恥ずかしさからも、だろう。

「それじゃ、かゆいところがったら言ってくれ。出来るだけ、要望には応えるから」

 スポンジを握る手の力を先ほどよりも少し強め、また擦る力もわずかに増して、再び冴霞の背中を洗いはじめる。曇り防止処理をしているガラスに映る

冴霞の表情は心地よさげで、うっとりと眼を細めていた。

 添えている左手からも、またスポンジ越しに伝わる感触からも分かる事だが、冴霞の身体は女性特有の柔らかさがある。元アスリートの名残として、毎日

適度な筋トレをしていても、柔らかさは失われていない。指はわずかに沈むものの、瑞々しさが溢れる柔肌はしっかりと謙悟から加えられる衝撃を押し返す。

その柔らかさにもっと触れたいと思うのは恋人として、そして男として当然の欲求であり――――謙悟もまた、例外ではない。

肩に添えていた左手をゆっくりと離し、背中に残る泡を指の腹ですくい取って、そのまままだ擦っていない首の後ろに手を這わせる。びくっ! と冴霞の

肩から背中が震え、閉じられていた目蓋がぱっちりと開く。

「むぅ……また、首触ったぁ……」

 子どものような拗ねた口調と、ぷっくり膨れた頬。謙悟はその冴霞のふくれっ面をぷにっと人さし指で押し返し、鏡を向かせる。

「もぅ、私が首弱いの知ってるくせに、なんでそんなイジワルするんですか、謙悟くんはっ」

「イジワルじゃないって。首の後ろとか、耳の裏とか、汚れがたまりやすいとこだってのは冴霞だって知ってるだろ?」

 ガーゼタオルからはみ出した後れ毛をちょいっと指で解かし、背中を擦るよりも弱い力で撫でるようにスポンジを当てる。触られると分かっていた冴霞

だが、何度目になっても首への刺激には過剰なまでに反応してしまう。

「ひゃんっ……」

 冴霞の弱点の一つであり、また性感帯の一つでもあるのがこの首、特にうなじだった。昨夜――正確には二日前の夜――この弱点を知った謙悟は、まだ

一週間も経っていないファーストキスの日にも、同じように冴霞の首をいじめていたことを思い出し、謝罪とともにキスをしていた。

「も、もう首は、いいですからぁ……ゃぁん」

 可愛い悲鳴。鏡越しに見れば、冴霞の顔は明らかに紅潮している。イジワルする分にはまだ少し余裕がありそうだが、それは謙悟としても本意ではないし、

いろんな意味で我慢が利かなくなりそうなので、スポンジの位置を首から背中へと戻していく。

「はふ……ちゃ、ちゃんと洗ってくださいっ」

「ごめんごめん、悪かった」

 細い肩に左手を添えて、背中全体を上から下へと擦っていく。シャワーは今は両サイドと足元から熱いお湯を絶えず流し続けており、天井から降り注ぐ

シャワーは背中を洗い始めた時点で止めている。湯気の量はそれに応じて少なくなり、鏡に映る冴霞の裸身も鮮明とまではいかないにしても、必要以上に

見えてしまっていた。

 なだらかな流線を描くボディライン。両手は一番大切なところを隠すように身体の前で組まれているが、その分ただでさえ平均よりも大きいと言っていい

バストが、腕の間に挟み込まれて強調される格好になっている。冴霞にしてみればおそらく、いや間違いなく無自覚なそのポーズは、謙悟にとって不意打ち

であり、自制心が音を立てて傾いていくのを感じていた。

「……冴霞、左手、上げて?」

「あ、はい……って、手?」

 疑問を抱いた時には既に遅く、スポンジを握り変えた謙悟の左手が冴霞の左手を支え、そのままするすると手首から肘、そして上腕を通って腋の下までを

擦っていく。驚いた冴霞が腕を引っ込めようとするが、意識の外にあった謙悟の右手がつぅ〜っと冴霞の背筋を撫で下ろし、その唐突な刺激に抵抗する

こともできずに脱力させられる。

「ひゃぁんっ! け、んご、くんっ……背中、流すだけ、って言った……のに……」

「俺もそのつもりだったけど、さ…………っ、冴霞が可愛いから、ちゃんと洗いたくなった」

「なっ――――そ、そんなの……ずるい、反則ぅ……」

 耳元で囁かれた、甘すぎる告白。大好きな謙悟に、恥ずかしそうに顔を赤らめてまでそんな囁きをされたら、冴霞に抗う事など出来ない。

「それと、これ返しておく。これじゃ、ちゃんと隅々まで洗うってのは、出来ないから」

 そう言って謙悟が冴霞に握らせたのは、今まで冴霞の身体を擦ってきたヘチマスポンジだった。

 

 

 

24.おふろのじかん・そのに 〜恋人編・後〜

 

 

 

 両手にボディソープを数滴落とし、手の中で泡立たせる。そうして出来上がった泡を洗い終わっていない冴霞の左手の指に、そして指の間にもしっかり

差し入れ、洗っていく謙悟の指。同時にマッサージをするかのように手のひらや手の甲、指をきゅっきゅっと握り、それに応じるように冴霞も謙悟の指を

握り返す。そして左手が終われば、今度は右手に移行するのは当たり前の流れだ。

「じゃあ、今度は右手上げて」

「はい。……こんなこと言うの失礼ですけど、謙悟くん、なんだか慣れてません?」

 鏡に映る謙悟の顔に問いかける。謙悟は伸ばされた右腕の、腋の下からゆっくりと洗いながら同じように鏡越しに冴霞を見下ろす。

「やっぱり、麻那を風呂に入れてるからかな。でも、ちょっと経験があるくらいじゃ、上手には洗えないって。サイズだって全然違うし、それに……」

 指の間に指を通し、石鹸を馴染ませる。その指をきゅっと握り込んで、とすんと冴霞が謙悟の身体に寄り掛かる。

「それに、なんですか?」

「……それに、妹と好きな人じゃ、やっぱり気持ちが全然違うから。ただ洗うだけじゃなくて、その……いやらしい意味じゃなくて、触っていられるのが

嬉しい……んだと思う。もちろん、それなりに恥ずかしいけど」

「ん……それは、分かります。私も今こうして洗ってもらってますけど、恥ずかしいのと嬉しいの、両方ありますから」

 ボディソープから香る桃の香りがシャワールームの中に漂う。その中で、冴霞は高鳴っていく自身と謙悟の心音を感じながら、半歩ほど謙悟との距離を

縮めた。痛いくらいに響く鼓動。だけれども、今はそれが心地良い。

「えっと……終わったから、次洗おうと思うんだけど……いいかな?」

「次って……今度は、どこを?」

 冴霞の問いに答えるように謙悟の右手が離れ、今まで背中を支えていた左手と同時に、脇腹からへその下に回される。その下――――下腹部にまで手を

伸ばさなかったのは、謙悟としても最後の一線であり理性が保てるギリギリの、文字通りの限界だった。

「ここから上、全部」

「ぁぅ……それってやっぱり、胸も?」

 冴霞の視線が下に落ちる。へそから上、という事は当然胸も含まれるわけであり、今更尋ねるまでもない事だ。

「隅々まで洗うっていう、約束ですから」

「その約束は反故にしても、誰も怒らないですけどねっ」

 呆れと諦念をない交ぜにした、投げやりな声。だがその一方で冴霞の手は謙悟の手に重ねられ、仕返しにつねるわけでもなく大切なものを愛でるように、

優しく撫でていた。言葉ではどうあれ、本音はやはり嬉しいのだろう。

 謙悟もそれを感じて、手に残ったボディソープを冴霞のお腹に馴染ませる。適度に鍛えられ、それでいて瑞々しい柔らかさ。その中で一段くぼんだへそに

小指を侵入させると、重ねられていた冴霞の手が謙悟の手をきゅっと握り締めた。

「っ……おへそ、触らないでください……」

「そうは言うけど、ちゃんと綺麗にしないと」

「い、いつも綺麗にしてますっ! それに、そこは皮膚が薄いんだから……あんまり強くしたら、怪我しちゃうんですよ?」

 事実である。実際、幼児などがへそをいじって怪我をしたという事例は数多くあり、強い刺激は怪我のもとになる。謙悟は小指を離すと、そのまま手を

広げて上腹部に移動した。

「……痛かった? 強くしたつもりはなかったんだけど」

「あ、いえ……痛くは、なかったですけど。でも、爪がついてるんだから、指ではしないでくださいね?」

「じゃあ、指じゃなかったらいいんだ?」

 右手で鳩尾のあたりを軽く押しこむように洗いながら、一方で左手を使ってボトルからボディソープを補充する。やってみると分かるが、これは中々に

器用で、なおかつ手が大きくなければ出来ない芸当である。

「揚げ足を取らないでくださ、いっ、きゃぁっ!?」

 びくっ、と冴霞が身をよじる。その原因は謙悟の手が置かれている場所――――脇腹だった。人体の急所として最も知られている部位の一つであり、また

刺激には敏感に反応する箇所。冴霞も例外なく脇腹は弱く、ふにふにとそこを揉んでくる謙悟の指に過剰な反応をしてしまった。

「ちょ、やめ、いやぁんっ……くすぐっ、た、ぃぅんっ」

 甘ったるい嬌声。恨みがましそうに見上げてくる鏡越しの視線。頬は朱に染まり、そこはかとなく色気を醸し出している。

「冴霞って、弱いところばっかりだな」

「わ、笑わないでっ。それに、どこも急所なんだから、弱いのは、あたりまえじゃ、ないですかっ」

 力ない声で、切れ切れになりながら抗議する冴霞のくびれた脇腹からするすると手を移動させ、謙悟の両手が胸の下で停止する。たっぷりと実の詰まった

果実を連想せずにはいられない、豊かな乳房。そこに至って、冴霞は謙悟の腕に自分の腕を添えた。

 ささやかな抵抗。しかし決して強くはなく、求められればたやすく応じてしまうほどに弱々しいもの。だからこそ、謙悟は問いかける。

「……大丈夫? 嫌なら、しないけど」

 気遣いが込められた優しい声。昨夜も冴霞を奪った時には、同じように声を掛けてくれた。彼にだって欲はあるのにそれを抑えて自分を思いやる強さと、

溢れんばかりの優しさ。もうそれだけで、元々許すつもりだった冴霞の気持ちは固まった。

「……ううん。よろしく、お願いします」

 する、と冴霞の手が落ちる。謙悟はこくりと頷き、冴霞の豊かな乳房を下からくっと持ち上げ、形をなぞるようにゆっくりと洗っていく。背後から洗って

いるので直視こそ出来ないが、鏡に映るその美しさと、触らずとも分かる形の良さ。さらにずっしりと手に残る重さと、マシュマロよりもはるかに柔らかく、

さわり心地の良いきめ細やかな肌の、張りのある瑞々しい感触。他の女性と比べる事は出来ないしする気もないが、謙悟にとって冴霞のそれは最高としか

言いようがなかった。

「っ……んぁ」

 目蓋を閉じ、きゅっと引き結んだ冴霞の口唇から甘い吐息が漏れてしまう。謙悟に触れられる、と意識するだけでもドキドキが治まらないのに、実際に

こうして触れられれば、その高鳴りは尋常ではない。身体の芯から熱くなり、アルコールよりもはるかに酔わされてしまう、甘美な火照り。その火照りが

やがて快感へと変わっていくことを、冴霞は陶然とした意識の中で理解していた。

 

 

 

 胸の外側から内側までしっかりと洗い終える頃には、もう謙悟の精神的疲労は臨界点に達していた。少しでも油断しようものなら即座に鼻血の数滴も零れ

落ちるであろうことは想像に難くなく、特に胸の谷間に指を差し入れてしまった時などは、そのあまりの感触に意識が飛びかけたくらいだ。

 だがそんな時間ももう終わる。洗うべき場所を洗い終えた以上、謙悟がこれ以上シャワールームにいる理由はない。あとは冴霞が自分で身体と髪を洗い、

長すぎるようで短いこの時間を終えるだけ……だったのだが。

「わ、私にも、謙悟くんの背中くらい、洗わせて下さいっ!」

 頬を染めて上目遣いにそんな懇願をされては、さすがの謙悟も無条件で首を縦に振らざるを得なかった。

「えっと……じゃあ俺、背中向けたほうがいいかな?」

「あ、いえ……こ、このままでも、なんとか……出来る、っていうか……やります」

「出来るって……」

 今の二人は互いに向き合っている状態だ。この状態で背中を流すことなど不可能であり、出来るとすれば冴霞自身が謙悟の背中側に回り込むしかない。

だがそれは冴霞の言う『このまま』からは少々遠い物になるのではないか、と謙悟が考えていると、冴霞は準備万端とばかりに両手にボディーソープで

作った泡を付けたまま――――がしっ! と謙悟に抱きついた。

「な――――っ!?」

 絶句せずにはいられない。冴霞がやっていることは明らかに『背中を流す』という行為から大きく逸脱している。謙悟は両手を冴霞との身体の間に挟み、

そのまま彼女の肩を掴んでわずかに引き剥がし、ほんの少し距離を取る。

「な、何を考えてんだ!? こんな……っ」

「あ……で、でも、その……」

 拒絶されたことのショックが大きかったのか、冴霞は怯えたような表情で謙悟を見上げていた。謙悟の背中に回されていた両手はかすかに震えており、

その震えを感じて、謙悟の胸がちくりと痛む。

「っ……ごめん。でも、ちゃんと聞かせてくれ。そうじゃなきゃ分からないし、俺もどうしていいか……分からない」

 謙悟の濡れた手が冴霞の頬に触れる。冴霞はこく、と小さく頷くと、静かに深呼吸をしてから口を開いた。

「…………その……謙悟くんが、洗ってくれたのが、すごく嬉しくて、それに気持ち良かったから……私からも同じようにしてあげたいって、思ったんです。

でも、どうやったらちゃんとお返しできるかって考えたら……け、謙悟くんも、男の子なわけですから……」

「あーいうことの方が、効果があると思ったわけですか……」

 はぁ、とため息をつく謙悟。冴霞はそれを呆れられたと思い、夢中で謙悟に抱きつく。

「ご、ごめんなさい! 不愉快な思いをさせてしまって……嫌いに、ならないで……」

 眼の端に涙を浮かべて、不安この上ない表情での訴え。謙悟はそんな冴霞の額にこつん、と額を合わせる。

「嫌いになんかなるわけないだろ? 冴霞が俺の事を考えてしてくれたことなら大抵の事は許せるし、嬉しいよ。でも一言くらいは言って欲しかったかな」

「だ、だってそれは……驚かせようと思ってしたことですから、言えませんし、それに……」

「それに?」

 目元にぽっちりと浮かぶ涙を、謙悟はちゅ、と口唇だけで吸い取る。わずかに涙の跡が残る顔は謙悟をじっと見上げ。

「は、恥ずかしかったんだもん……」

「――――あぁ、もうっ!」

 ――――最終防衛ライン突破寸前。理性防壁損傷率九十九パーセント。駄目です、もう持ちません! 神よ――――。

 そんな妄想が一瞬だけ頭を過ぎったが、謙悟はそれをしっかりとスルーして、冴霞の柔らかな口唇に口づける。冴霞もそれを待っていたかのように謙悟の

身体をかき抱いて、さわさわと背中を擦りながら熱い舌を絡めていく。

はらりとガーゼタオルが落ち、流れ出る黒髪をシャワーのお湯が濡らす。その黒絹のヴェールをかき分けて、謙悟の腕が冴霞の腰を引きよせ、さらに

密着度を高める。それでも最後の最後、本当の限界を超えなかったのはさすがと言うべきだろうか。ぎりぎりで残った一パーセントは伊達ではなかった、

ということだろう。

「くちゅ、ん……ぷぁっ、けん、ご、くん……」

「さえか……つづきは、あとで……な?」

「ぅ、じゃあ――――もう一回、して……んむっ」

 全部言い終わるよりも先に、冴霞の方から求めのキスを押しつける。謙悟もそれに応じ、愛し合う二人の夜はまだまだ終わらない。



あとがき:

お風呂後編、糖度満載でお送りいたしました。甘ッ!
これはあれですね、砂糖100%の砂糖水に自ら紐無しバンジーを敢行するようなものですね。
このあと二人がどうなるかは次回書きます。結果は次回のお楽しみ。もう一歩踏み込む予定も
あるにはあったのですが、そこまで行くとジオ様の手が・・・おや、滅多に鳴らない我が家の
インターホンが。こんな時間に誰かきたようd



管理人の感想

ここはシュガーの楽園か?(爆)
というわけでこんばんは、雅輝です。
もうビックリするほど甘いんすけど。甘いんすけど!
これはある意味、初夜以上の甘さ? そして堪えた謙悟は、同じ男子としてマジで尊敬できます。私なら無理d(ry)
冴霞可愛いし!無茶苦茶可愛いし!があああくぁああああああ!!(壊)
ふう・・・これ以上は暴走しそうなので、この辺で。次回もお楽しみに!^^



2008.11.8