B&G High School Memorial
『〜♪ お風呂が沸きました』
機械の合成音声が浴槽にお湯が溜まったことを伝える。今日のお湯の量は半分よりも少々多いくらいに設定しており、最大で三人同時に入る事を想定した
上での湯量だ。いくら女性三人でも、それだけ集まれば総重量は百キロを超える。あまりお湯を入れ過ぎれば、無駄に消耗してしまうだけなのだから。
「バスタオルも良し、と……」
人数分プラス予備に二枚ほどを用意して、冴霞と巴は顔を見合わせ苦笑いした。幼馴染で親友の冴霞、巴、彩乃は何度も一緒に風呂に入ったことがあるが、
さすがに高校生になってからはその機会はなかった。仮にあったとしても、三人とももう肉体的には……彩乃に対しては少々疑問が残るが、十分大人である。
それに伴い精神的にも成長し、少なからず羞恥心というものが芽生えてきた。裸を見られるのは恥ずかしいという気持ち。社会的通念にも基づくものだが、
その心理作用がまだまだ薄すぎる麻那には全く理解できないものであり、だからこそあの大胆発言が出来る。
「一緒に入ろう、かぁ……まぁ、それだけあたしたちに懐いてくれたって事なんだろうけど」
「そうだね。でも考えてみたらこんな事、これから先あるかどうかも分からない事だし、一回くらいはしてもいいかな?」
冴霞の発言に、巴は小さくため息を吐く。だがそれは呆れを含んだものではなく冴霞の笑顔を喜んでのものだ、悪意は欠片もない。冴霞もそれは気付いて
いるようで、変わらず笑いながらサウナルームの電源を入れた。
「しかし、唯一の難点は脱衣所ね。さすがに六人も入れないわよ?」
「うん……しょうがないよ、一人ずつ脱いでもらうようにするね。上がる時も順番にしてもらうから」
あれこれと計画を立てておかなければ、こればっかりは難しい。いくら広いと言っても、所詮は一般家庭に比しての大きさ。銭湯などの公衆浴場と比較
するものではないのだから、ちょっとした事にも気を配っておかなければならない。
しかし、その点に関して言うならば。
優れたリーダーシップを発揮する巴と、彼女の姿を追いかけて独自の道を切り拓いた冴霞が協力すれば、出来ない事は何もない――――はずだったが。
「おふろっ、おふろぉ〜!」
「ちょ、ま、待て、麻那ちゃん!!」
「まだ脱いじゃ駄目だってば!! って、愛ちゃんも脱ごうとしない!!」
「え〜? だって、女の子しかいないんだからいいじゃんっ?」
「少しは恥じらいを持たんか、秋月!!」
廊下から聞こえてくる、かしましい喧噪。どうやら既に麻那は脱いでしまっており、それに便乗して愛まで脱ごうとしているようだ。要と彩乃がなんとか
止めようと頑張っているが、麻那の小さな足音は徐々に近づいてきている。
「…………だってさ」
「…………あはは……予定通りには行かないね」
苦笑いするが、冴霞も巴もこの状況を楽しんでいる事は言うまでもない。六人も入れば手狭になる事は重々承知しているが、冴霞はカチャンと脱衣所の
ドアを開け、裸で飛び込んでくる麻那と、そのあとに続く愛たちを迎え入れた。
Another Episode
冴霞と麻那の姉妹な一日。
第九話 Lodging Party 3 ~Healing Bath Time !!~
「ほえ〜……ホントにひろ〜い……」
「おぉ〜……」
感嘆の声を上げる愛と麻那。一足先にバスルームに入った彼女たちは素直に驚いていた。冴霞が言っていた通り、浴槽は二人ならば余裕で。三人くらい
ならば普通に収まるだけの広さがある。そして入口左手側には透明なドアで仕切られたスチームシャワールームが設置されており、さらにその隣にはサウナ
ルームがほのかな電球色の明かりを照らしていた。
「相変わらず、無駄に広いお風呂よね」
「だが、そのおかげでこうしてみんなで入れるんだ。この家を買ったおじ様にも感謝しなくてはな」
後に続いて入ってきたのは巴と彩乃だ。そして最後に冴霞と要がバスルームに入り、パタンと扉を閉めた。今村家のバスルームは、全体の面積だけならば
信じられない事に八畳ほどの広さがある。ただ、スチームシャワールームは半分が壁の中に埋め込まれるようなデザインで設置されており、サウナルームに
至っては完全に壁の中に埋まっている。ほぼ別室的な扱いと言っていいこの二つを差し引けば、単純にバスルームとしての面積はおよそ四畳半くらいだろう。
もっとも、一般的な高級マンションでもおそらく三畳に満たないであろうバスルームが、これほどの広さを有しているということ自体、十分すぎるほどに
異常なのだが。
「では、みんなでいつまでも固まっていても仕方がないし、狭いので……早速、お風呂に入りましょう。麻那ちゃんはどこに行きたいですか?」
マンションの風呂場で「どこに行きたいか」などという言葉が出るのもおかしいが、それを気にしていない麻那は迷うことなく、ぴっとスチームシャワー
ルームを指差した。
「あれ! あれ入りたい!!」
「あ……」
「はいはい!! あたしもあたしも!!」
麻那に便乗したのは愛である。要も彼女らしく控えめにちょこんと手を上げていたが、スチームシャワールームの定員は一応二人までだ。しかし、冴霞は
要に目配せすると、そのまま入るようにと視線だけで答えた。
「要さん、秋月さん。麻那ちゃんのこと、お願いしますね」
「は、はいっ」
「ほぉ〜い」
要と愛に手をつないでもらい、麻那はそのまま三人でスチームシャワールームに向かう。その姿を見送ってから、冴霞は浴槽に溜まっているお湯を手桶で
身体にかけ、既に入浴している彩乃の正面に場所を取った。
「トモも早く来い。いい湯だぞ〜……っと」
「江戸っ子か、あんたは」
二人の間を縫って、足だけを浴槽に浸ける巴。手には冴霞も髪をまとめるのに使っているガーゼタオルを持っており、それをさっと首に引っ掛ける。
「……でも、ホント久し振りだね。こうして三人揃って、私の家のお風呂に入るなんて」
「そうだな。中学の頃は、まだ三人で湯船に浸かる事も出来たのに……随分狭く感じられる」
「あんたはその頃とほとんどサイズが変わってないでしょうが」
ぐさっ! と巴の射かけた矢が彩乃の胸に突き刺さる。身長百四十九センチの彩乃は、実は中学卒業時から二センチしか伸びていない。せめて百五十台に
到達したいという彩乃の願いは、あとわずか一センチ――――正確には、八ミリを残して敗れ去っている。
「くっ……そ、そういうトモだって、背はサエより低いくせに、体重は大して変わらないだろう!?」
どすっ! と鈍い音を立てて、彩乃が巴に槍を突き立てた。巴の身長は百六十四センチと日本人女性の平均を上回るものではあるが、それに比例して体重
の方も少々ある。といっても、それにはちゃんとした理由があるのだ。
「そ、そりゃ、あんたたちと違ってちゃんと部活動に精を出していましたから!? 筋肉ついて、体重増えるのは当り前じゃない! ……っていうか、一番
おかしいのは冴霞でしょう!?」
「な、なんで私に矛先を向けるの!?」
ぎろり、という音が聞こえそうな彩乃と巴の鋭い視線が、冴霞の身体に向けられる。長く美しい脚線に、ふっくらと丸みを帯びたヒップライン。そして、
細くくびれた腰と豊満と言って差し支えないバスト。トップモデルクラスの容姿はかつて見た時よりもさらに洗練されまた、えもいわれぬ色香と瑞々しさを
漂わせている。そんな冴霞に引き寄せられるように彩乃は浴槽の中を移動し、また巴も座っている位置を移動して――――。
「羨ましいヤツめっ!! 新崎くんにどんだけ可愛がってもらってんのよっ?」
「ヘンな事とかされてないだろうな!? もしされてるんだったら、あたしがタダじゃおかないからなっ!?」
「や、やぁ、ちょ、く、くすぐったいよぉっ!!?」
親友二人に抱きつかれて、わさわさと身体をくすぐられる冴霞。そしてそれをシャワールームの中で見ている要たちはと言うと。
「ん〜、向こうも盛り上がってますねぇ、麻那ちゃん?」
「だ、ダメだってば、まだ麻那ちゃんには早すぎるよっ!!」
「……めぐちゃん、おねえちゃんたちって、おすもうしてるの?」
純粋無垢かつ天然な麻那の思いがけない発言。それを聞いた要は思わず顔を赤らめ、愛は満足げにうんうんと頷いた。
「いいねいいね〜、麻那ちゃん、将来有望だよっ!!」
びっ、と愛がサムズアップをする。それを真似して麻那もびしっと親指を立てた。唯一まともな思考を保っている要は、痛む頭を落ち着かせるように、
ゆるゆると左右に振るのだった。
全員が一通り身体を洗い終えまったりとしているところで、麻那はぺたぺたと浴槽へと移動した。浴槽では要と巴がのんびりお湯に浸かっており、麻那は
ちゃぽんとそこに混ざって、二人をまじまじと観察する。
「ん? どうしたの?」
「……かなめちゃん、やっぱりいちばんおっきい!!」
唐突な評価を下され、思わずお湯に頭を打ちつける要。その見事なリアクションに、巴もたまらず噴き出した。要は身長もやや高めで、体重を気にしては
いるものの、太っているわけではない。しかし、彼女の姿を見た初対面の人間がまず視線を奪われるのは、可愛らしい顔ではなく、その豊満なバストだ。
「あははっ、そうね。どうせなら触ってみたらどうかな、麻那ちゃん?」
「うん!」
「ちょ、ちょっと、巴さ――――」
要の言葉など意にも介さず、麻那の小さな手がむにゅうっと乳房に触れる。その感覚に驚いた要がザバッとお湯を波立たせ、衝撃で麻那の頭が要の胸の
谷間にすっぽりと埋没した。
「ぅぁっ……ふぁ〜……やわらか〜い……」
「わ、わわわ、ま、まま、まな、ちゃん!!?」
むにむにと感触を確かめるように要に触れ、心地よさげに息を吐く。冴霞のそれと比しても明らかに大きい要のバストは、Fカップにもなる。だが実際は
要の恋人である高平継の仕業によりさらに大きく成長しており、そろそろ下着のサイズアップを図らなくならねばなっているというのだから、なお驚きだ。
無論、これは今いる女性陣の中でトップの大きさであり……麻那にとっては、初めて目にし、触れるものである。
「……ぁっ……ん」
たどたどしい手つきが敏感な個所に触れ、思わず甘い声が出そうになる。要はそれをぐっと堪え、やんわりと麻那を引き剥がした。
「ん……おしまいなの?」
「うん、おしまい。……麻那ちゃん、今度は巴さんにして上げて?」
「え、ま、麻那ちゃん? って――――きゃあっ!?」
逃げ出す暇も場所もなく、巴が体勢を変えるよりも前に麻那が胸に飛び込んできた。麻那の手は要にしたように、拙い動きで巴の乳房をくにくにと弄り、
上目づかいで顔を見上げた。
「ともえさんも、おかあさんよりおっきい……でも、おねえちゃんより小さいね?」
おねえちゃん=冴霞であることは巴も分かっているが、何気に傷つく事を言われたような気がした。確かに、冴霞が大きいのは認める。だが自分は決して
小さい方ではなく、むしろ一般的な大きさのCカップだ。規格外の要や冴霞と比較しないでもらいたい。
「……麻那ちゃん? 小さいっていうのは、あたしじゃなくて彩乃の事を言うのよ?」
「あやのちゃん?」
とそこへ、今までサウナに入っていた彩乃と愛が戻ってきた。愛はどこかぐったりとしており、ズカズカと前を歩く彩乃が呆れた様子で溜め息を吐いた。
「まったく。たかが十分で音を上げるな、秋月……ん?」
「だってぇ、熱いんですも〜ん……お?」
浴槽から出て来た麻那が、彩乃と愛を見上げる。身長は百六十七センチと冴霞に次いで二番目の長身を誇る愛も、なかなか立派なものを持っている。その
最たる理由は栄養のある食事と、長い期間恋人である森川総志に可愛がってもらった結果だ。サイズはD。一時期はEカップと間違えていた事もあったが、
何度か測り直したところ今のサイズに落ち着いている。
そして、彩乃は――――身長が低く、また長年空手を続けていたことから、脂肪よりも筋肉の方が先行してしまい、真っ平らでは無いものの小さい。昨今、
発育のいい小学生などが多々いる中で、そんな少女たちにさえ敗北を喫しているのが来栖彩乃……堂々の、Aカップである。体型をあえて表現するならば、
間違いなく幼児体型という言葉が当てはまるだろう。見る人が見れば一発で轟沈しそうな容姿でもあるのだが、残念ながら本人に自覚が皆無なのが、本当に
もったいない所でもある。
「な、なんだ、麻那ちゃん。あたしと秋月を見比べて……」
「ひょっとして……これかにゃ?」
しゃがみこんで、ふにっと彩乃の胸を揉む愛。そこへさらに麻那の手が伸び、また彩乃だけではなく愛の乳房にも同時に触れ、小さな手で揉んでいく。
「ちょっ!? ま、麻那ちゃん!? あ、秋月、離さんか……ぁんっ」
びくん、と身体を震わせる彩乃。麻那の拙い手動きによる刺激と、愛から与えられる強い刺激。その二つに同時に攻められ、思わず声が出てしまった。
「およよ、彩乃さ〜ん? 今の声は何でしょ〜ね?」
「ば、バカっ、麻那ちゃんの前だぞっ!? 変な事をするなっ!!」
「へんなことなの?」
麻那の無垢な瞳が彩乃を貫く。間違いなく、麻那はこの行為を『イケない事』だとは思っていない。ただのスキンシップ、あるいは大人の女性の乳房に
対する興味と憧れ。ひいては、そこから今は傍にいない母の姿を重ねているのかも知れない。そう考えれば、彩乃に麻那を咎めることなど出来なかった。
この辺りが彩乃の優しい所でもあるのだが……。
「ん〜……あやのちゃん、いちばんちっちゃいねっ」
膨らみさえしていない幼女に言われたくもない、残酷極まりない現実。後ろでずっと揉み続けていた愛も、がっくりとショックを受けて、口から出ては
いけないものが出かけている彩乃を見て、慰めるように抱き締めた。しかしそのおかげで愛の豊かな胸が背中に押し付けられ、彩乃は更に昇天に近づいたと
いう。
「もう、さっきから何をやってるんです、みんなして……」
スチームシャワールームから出てきた冴霞が、長い髪をたなびかせながら戻ってきた。冴霞の裸を見るのは麻那も二度目だが、他の面々も一様に瞬間的に
目を奪われ、ほぉ……と溜め息を吐いてしまう。だが、冴霞はそれには気づかずに麻那の前にしゃがみ込むと、こつんと軽く額を小突いた。
「あうっ」
「麻那ちゃん? 触りたい気持ちも分かりますけど、女の子のおっぱいは大切なものなんですから、やたらと触っていいものじゃないんですよ? それに、
大きさなんて大した意味はないんですから、比べるのもダメ。ね?」
めっ、と優しく叱りつける冴霞。麻那も「ごめんなさい……」と謝罪を述べる。だが――――
「冴霞が言うと、説得力無いわよねぇ」
「……持つ者は持たざる者の悩みや苦しみなんて、分からんだろうからな」
嫉妬に燃える二人の親友。だが、それも全ては彼女達のコミュニケーションの一つであり、心から嫉妬しているわけでも、ましてや憎んでいるわけでも
ない。無論冴霞もそれを承知しており、また要と愛も、短い付き合いながらも彼女たち三人が本当の絆で結ばれているというのは理解できている。
だからこそ、冴霞は麻那を自分のふくよかな胸の谷間に抱きしめて。
「でも、今の私があるのは、彩ちゃんと巴ちゃんのおかげだよ。それと、要さんも秋月さんも。今日は本当に、ありがとう!!」
「……ありがと〜っ!!」
仲良し姉妹な冴霞と麻那から向けられた、感謝の言葉。その言葉と笑顔だけで、彼女たちは十分すぎる報酬を受け取った。
あとがき:
乙女の花園・今村家のバスルームでの一幕でした。本当はもっともっと、スキンシップという
言葉が生温く感じられるくらいにしてもよかったのですが、麻那がそこまで出来るわけもないので。
とはいえ、湯けむりの中。裸で歩きまわる美少女たち。それぞれに魅力があり、誰も彼もが可憐な花。
そして夜は更け、やがて朝を迎える。……次回で最終回です。
管理人の感想
ぼ〜〜・・・・・・はっ!? やっべ、意識飛んでた(ぇ
ってことで、思わず頭をぼ〜っとさせてしまうような、S&Mの第九話をお送りしていただきました〜^^
とりあえず、一言だけ言っておきましょう。
麻那ちゃん・・・グッジョブ!!b(←自重)
まさに「桃」源郷って感じでしたね(ぉぃ
そして最後に締めるのは、やはり冴霞&麻那。彼女たちに勝てる人はいないということでしょう。
ではでは、次回の最終回を皆さまお楽しみに!