はじめに
皆さんは計算尺をどこで知りましたか?アニメ「風立ちぬ」で見たという方も多いことでしょう。
計算尺は一般的に乗除算や対数、三角関数などを求めるために使われます。
計算尺には棒形計算尺と円形計算尺があり、求める関数の多さや携帯性などを考えてどちらかを選ぶことになります。
今回の記事では私が自作した円形の計算尺を簡単に作れるExcelデータと使い方をご紹介します。
目次
この計算尺でできる計算
この計算尺では一定割合の乗除算や時間の計算が出来るようにしてあります。
私たちの生活では走行距離と給油量から燃費を求めたり、メートルとインチの単位を変換したりと、乗除算だけでも役立つ場面はたくさんあります。
特に単位の変換は一定の掛け率を覚えておくか、定数機能のある関数電卓を使わないと難しいですよね。
計算尺ではこういった定数掛け率の計算が得意です。実際にできる計算は以下の通りです。
- 乗除算
- 秒速/分速/時速の相互変換・所要時間と単位時間の算出
- 長さの換算 メートル/インチ/フィート/ヤード/ポイント/陸マイル/海里
- 重さの換算 グラム/ポンド/常用オンス
- 面積の換算 平方メートル/平方インチ/平方フィート/坪
- 体積の換算 リットル/米液量ガロン/石油バレル/液量オンス/立方インチ
- π/√2/√3での乗除定数
- 紙の連量・坪量換算
- 動画などのビットレートとファイルサイズの算出
元々この計算尺は印刷関係の会社に勤めていたころに、紙の重さ、フォントサイズの換算、ローラーの直径と円周、印刷時間の計算に使っていたものを応用したものです。
自動車や航空機の運航にしか使わない単位変換も入れてあるので、ドライブやフライトシミュレータで遊ぶ時にも手軽に使えます。
印刷手順
sliderule_v8.zip 説明書のPDF
上のzipファイルを展開してExcelで計算尺v8.xlsxを開くと、外スケールと内スケールが表示されます。 このスケールは散布図のグラフですので、プロットエリアを選択した状態で印刷すると紙サイズいっぱいに印刷されます。 プリンタドライバのプロパティで希望の用紙サイズ(不定型サイズなど)を設定して印刷してください。 私ははがきに印刷して使っていました。お使いのスマホやカードの横幅と同じにすると、使いやすいサイズになると思います。
上のzipファイルを展開してExcelで計算尺v8.xlsxを開くと、外スケールと内スケールが表示されます。 このスケールは散布図のグラフですので、プロットエリアを選択した状態で印刷すると紙サイズいっぱいに印刷されます。 プリンタドライバのプロパティで希望の用紙サイズ(不定型サイズなど)を設定して印刷してください。 私ははがきに印刷して使っていました。お使いのスマホやカードの横幅と同じにすると、使いやすいサイズになると思います。
外側スケールは四隅に小さなトンボの四角が、内側スケールは薄い細線で円が描かれているのでこの線に沿ってカットしてください。
少し厚めの紙に印刷してラミネート加工しておくと、とても使いやすく耐久性も上がります。
それぞれのスケールの中央に小さく×印が描かれているので、この中心に穴を開けて割ピンやハトメを使って2つのスケールを組み合わせます。 私は2ミリのハトメで止めました。Amazonだと菊割りポンチとセットで1,000円程度で購入できます。 穴の位置がずれると計算結果の精度が悪くなるので、極力ずれないようにするのがポイントです。 工作のうまい下手にもよりますが、70mm四方で印刷すると計算誤差は0.5%程度でした。 誤差を減らすためには計算尺を大きく印刷してください。コンパクトに作ると相対的に誤差が増えてしまいます。
それぞれのスケールの中央に小さく×印が描かれているので、この中心に穴を開けて割ピンやハトメを使って2つのスケールを組み合わせます。 私は2ミリのハトメで止めました。Amazonだと菊割りポンチとセットで1,000円程度で購入できます。 穴の位置がずれると計算結果の精度が悪くなるので、極力ずれないようにするのがポイントです。 工作のうまい下手にもよりますが、70mm四方で印刷すると計算誤差は0.5%程度でした。 誤差を減らすためには計算尺を大きく印刷してください。コンパクトに作ると相対的に誤差が増えてしまいます。
使い方
- 目盛の読み方
- 2つのスケールを使った乗除算
- 片方のスケールだけで比率計算 (長さ・重量・容積・用紙連量の換算)
- 時間(60進数)の表現と計算
- 平均時速や燃費の計算
- 動画などのビットレートと時間・ファイルサイズの計算
目盛の読み方
円形計算尺には常用対数が使われています。
目盛間隔が異なり難しいイメージを受けますが、それぞれの角度を比べてみると、変化量が一定になっていることが分かります。
この特性を利用し、外側と内側のスケールを一定比率に合わせることによって、乗除算ができるようになっています。
厚紙をラミネート加工したものは指が滑りやすく使いにくいので、小さなゴムのポッチを16.6の内側の空きスペースに付けていました。 そのため、一般的な計算尺には「カーソル」という細かく目盛を読むためのスライダがありますが、この計算尺には付いていません。
右の写真では10~45あたりを見ていただくと内外の目盛が少しずれているのが分かりますか?これは中心のハトメの位置がずれているのが原因です。 手作りなので中心を合わせるのが難しいかとは思いますが、位置ずれは計算結果の誤差につながるので、極力合わせるように心がけてください。
厚紙をラミネート加工したものは指が滑りやすく使いにくいので、小さなゴムのポッチを16.6の内側の空きスペースに付けていました。 そのため、一般的な計算尺には「カーソル」という細かく目盛を読むためのスライダがありますが、この計算尺には付いていません。
右の写真では10~45あたりを見ていただくと内外の目盛が少しずれているのが分かりますか?これは中心のハトメの位置がずれているのが原因です。 手作りなので中心を合わせるのが難しいかとは思いますが、位置ずれは計算結果の誤差につながるので、極力合わせるように心がけてください。
2つのスケールを使った乗除算
内側スケールの10を外側スケールの15に合わせると、全体の目盛が1:1.5を指すようになります。これで1.5倍の掛け算が割り算が出来るようになりました。
さて、内側スケールの80に対し、外側スケールは12となっています。80の1.5倍は120ですから、円を1周するごとに10倍になるという事を覚えておいてください。
円をもう1周すると20倍ではなく、100倍になります。
計算尺では円形であれ棒型であれ、1周まわると位が上下します。計算尺を初めて使う方はこの位取りを考えるのが面倒で挫折してしまうので、出来るだけ早く慣れましょう。
さて、内側スケールに書かれている√2を見てみましょう。外側スケールは21.2あたりを指しています。15√2=21.21です。
直径15cmの円周はいくらでしょうか?内側スケールの31.4にはπが描かれていますね。15×3.14=47.1となります。
さて、内側スケールに書かれている√2を見てみましょう。外側スケールは21.2あたりを指しています。15√2=21.21です。
直径15cmの円周はいくらでしょうか?内側スケールの31.4にはπが描かれていますね。15×3.14=47.1となります。
片方のスケールだけで比率計算
長さ・重量・面積・体積・紙重量の換算は変換定数が多いため片方のスケールだけで計算できるようになっています。
例として長さの換算をしてみましょう。
右の写真では内側スケールのインチが1を指しています。10インチと考えても良いですよ。 1インチに対応するメートルは2.54cmです。1インチは0.0833フィートなので位取りに注意してください。 1インチの大きさのフォントが欲しい場合は72ポイントになります。よく使う10.5ポイントが何ミリメートルになるかも一目で計算できますね。
重さの比率は内側スケールに青色で、体積の比率は外側スケールに青色で、紙重量の比率は外側スケールに赤色で書かれています。
右の写真では内側スケールのインチが1を指しています。10インチと考えても良いですよ。 1インチに対応するメートルは2.54cmです。1インチは0.0833フィートなので位取りに注意してください。 1インチの大きさのフォントが欲しい場合は72ポイントになります。よく使う10.5ポイントが何ミリメートルになるかも一目で計算できますね。
重さの比率は内側スケールに青色で、体積の比率は外側スケールに青色で、紙重量の比率は外側スケールに赤色で書かれています。
時間(60進数)の表現と計算
時間の計算で重要な事は、内側スケールが必ず時間の単位(分)になるという事です。
それに対して、外側スケールに距離や燃料などの数値を入れます。
内側スケールの10は1分と考え、60は60分、つまり1時間は60の場所に来ます。 時間の表現は60進数ですから、内側スケールのさらに内側に100を1時間40分と読めるような60倍の補助スケールが描かれています。 さらにその内側には10時間から100時間までの補助スケールもあります。
時間に関する定数は緑文字で書かれています。少し表現が分かりにくいですが、m/sが秒速を表します。 たとえば右の写真のように、2018年に起きた台風21号の最大瞬間風速58.1m/sを時速に直すと、60分の所が211になっています。 3,600倍されているのでかなり位が上がって時速211km、電卓で計算すると時速209kmになります。少し目盛の誤差がありますね。
内側スケールの10は1分と考え、60は60分、つまり1時間は60の場所に来ます。 時間の表現は60進数ですから、内側スケールのさらに内側に100を1時間40分と読めるような60倍の補助スケールが描かれています。 さらにその内側には10時間から100時間までの補助スケールもあります。
時間に関する定数は緑文字で書かれています。少し表現が分かりにくいですが、m/sが秒速を表します。 たとえば右の写真のように、2018年に起きた台風21号の最大瞬間風速58.1m/sを時速に直すと、60分の所が211になっています。 3,600倍されているのでかなり位が上がって時速211km、電卓で計算すると時速209kmになります。少し目盛の誤差がありますね。
平均時速や燃費の計算
タクシーで市街地を3km走るのに8分かかりました。時速はいくらでしょうか?
内側スケールが必ず時間(分)になるという事を忘れないようにしてください。
8分(80)を3km(30)に合わせて60分を見ると22.5km/hくらいです。3×60÷8=22.5で正解ですね。
合わせ方を忘れやすいので、内側の凡例を見ると良いでしょう。
DISTは距離(Distance)、minは分(Minutes)、1時間の三角を見ると速度(Ground Speed)が分かります。
自動車で燃料満タンで506km走り、燃料が無くなったので再び満タンまで入れると28.17リットル入りました。
1リットルで何キロ走れたでしょうか?
細かく求める必要はないので近くの目盛に丸めて外側に505km、内側に28.2リットルとでもしておきましょう。
1リットル(10)を見ると18.0km/lくらいです。505÷28.2=17.96でほぼ正解ですね。
内側の凡例には、総距離(DISTance)、燃料(FUEL)、1の四角には燃費(Fuel Consumption)と書かれています。
動画などのビットレートと時間・ファイルサイズの計算
ビットレートの計算では再生時間・ファイルサイズ・ビットレートの関係を計算できます。
この計算はファイルサイズがMB、ビットレートがkbpsで考えられているので、ファイルサイズにGBを使う時はMBに直してください。
これはキロ→メガで変化するのに1,024という端数を掛けなければいけない所に起因しています。
75分の動画を700MBに収めるためにはビットレートをいくらにすれば良いか? 内側スケール75を外側スケール70に合わせてkbpsの矢印を見ると、12.74指していることから1,274kbpsという答えが出ます。 動画の場合オーバーオールビットレートがこの数値になるため、例えば音声128kbpsを引いて映像が1,146kbpsと計算できます。 ややこしいので1,100kbpsあたりにするのが良いでしょう。
逆に考えて、ビットレートが1,274kbpsで再生時間が25分だとすると、ファイルサイズは232MB程度になる事が分かります。
75分の動画を700MBに収めるためにはビットレートをいくらにすれば良いか? 内側スケール75を外側スケール70に合わせてkbpsの矢印を見ると、12.74指していることから1,274kbpsという答えが出ます。 動画の場合オーバーオールビットレートがこの数値になるため、例えば音声128kbpsを引いて映像が1,146kbpsと計算できます。 ややこしいので1,100kbpsあたりにするのが良いでしょう。
逆に考えて、ビットレートが1,274kbpsで再生時間が25分だとすると、ファイルサイズは232MB程度になる事が分かります。
使ってみて分かったこと・製作過程で苦労した点
- 名刺やカードのサイズでもそこそこの精度が出ることが分かった。日常生活なら有効数字2~3桁あれば十分である。
- 動画のビットレート計算はとても便利である。
- 外側スケールを四角形にすると手に取った時にどの辺が上なのか分かりにくいので一辺を曲線とした所。 ちょっとした工夫をするだけで使い勝手が良くなった。カットにはCD-Rの淵を利用した。
- 変換定数の矢印同士や文字と重ならないようにうまくずらさないといけなかった所は苦労した。
Web計算尺
画像をマウスでドラッグすると内側スケールが動き、実際の計算尺を体験することができます。
旧バージョンのデータなので計算できる内容は同じですが、内側の凡例が英語のままです。
旧バージョンのデータなので計算できる内容は同じですが、内側の凡例が英語のままです。