海外ニュース - 3月3日(金)3時9分

米、インドに核協力 首脳会談合意 技術輸出の規制解除

 【ニューデリー=藤本欣也】ブッシュ米大統領は二日、インドのニューデリーで同国のシン首相と首脳会談を行い、核拡散防止条約(NPT)未加盟のインドに対し、米国が民生用の核開発分野で協力する協定に合意した。米議会の承認などを経て核技術や核燃料の対インド輸出規制が解除される。両国はまた、戦略的パートナーシップの拡大でも合意し、域内で台頭する中国をにらみ、政治、経済、軍事面の協力関係を強化する姿勢をアピールした。

 米大統領のインド訪問は二〇〇〇年のクリントン前大統領以来六年ぶり。会談後の共同記者会見で、ブッシュ大統領は「今日の合意は歴史的なものだ」と成果を強調、シン首相も「両国のパートナーシップに制限はない」と意義を語った。

 ただし、米国が今回、NPTへの参加を拒むインドに対し、特例として核技術の移転などを容認したことで、イランや北朝鮮が反発し、両国の核開発問題の解決に悪影響を与える可能性がある

 インドの核開発への協力について、米国内にも核不拡散政策の転換との批判があるが、ブッシュ大統領は「時代は変わりつつある。過去にしばられてはいけない」と指摘。「インドの原子力産業の発展はわが国の経済や世界のエネルギー問題にも資する」と述べ、懸念の声が残る米議会に理解を求めた。

 米欧各国や日本などが参加する「原子力供給国グループ」(NSG)はこれまでNPT未締結のインドに対し、原子力発電用の核燃料、核関連技術などの輸出を規制。インドの原子力開発にとって障害となっていた。

 米印両国は昨年七月の首脳会談で、(1)インドが核施設を民生用と軍事用に区分けする(2)民生用についてはインドが自発的に国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れる−などを条件に、禁輸措置を解除する方針で基本合意。その後、どの核施設を民生用とするか、その区分をめぐり交渉が続いていた。

 一方、ブッシュ大統領は会見で、パキスタンでこの日起きたテロを非難しつつ、四日からの同国訪問に変更がないことを確認した。

核保有を認知、NPT形骸化

 米国とインドによる原子力協力協定の合意は、核拡散防止条約(NPT)を締結しないまま核を保有するインドを何とか核管理体制に組み込む狙いがあった。ただ、核査察の面からみれば、インドに自発的な査察を認めることで米露中英仏の核保有国と同じ扱いとなり、六番目の核大国として認知したことになる。米国は、インドが民主主義国家で、核拡散の懸念は小さいとするが、イランなどが核開発を加速するのは必至で、今回の合意でNPTの枠組みが大きく揺らいだのは事実だ。

 一九七〇年に発効したNPTは、六七年一月一日以前に核爆発装置を製造し爆発させた五大国を「核兵器国」と定めている。それ以外の「非核兵器国」は、国際原子力機関(IAEA)による核関連施設への査察受け入れが義務づけられている。査察の対象はすべての核物質・施設で、「特定査察」「通常査察」のほか、条約違反の疑いがある国には、九三年に北朝鮮に実施を要求した「特別査察」がある。

 しかし、核を保有する五大国はIAEAと結んでいる協定により、各国が持つ民生用の核施設の中から、査察を受け入れても構わないと判断する施設をIAEAに申請し、査察を受けるだけでいい。インドの場合も、IAEAに五大国と同様の協定締結を提案するが、IAEAは今回の合意を歓迎しており、提案受け入れは確実だ。(菅澤崇)

(産経新聞) - 3月3日3時9分更新

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