インフルエンザのワクチン接種を受けることが適当でない人や接種時に注意が必要な人はありますか?

予防接種実施規則第6条による接種不適当者
 明らかな37.5℃を超える発熱を呈している者
 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
 当該疾病に係る予防接種の接種液の成分によってアナフィラキシーショックを呈したことが明らかな者
 その他、予防接種を行うことが不適当な状態にある者

インフルエンザ予防接種ガイドライン(インフルエンザ予防接種ガイドライン等検討委員会:平成15年9月改編)、インフルエンザワクチンの添付文書に記載されている接種要注意者は、以下の通りです。
 心臓血管系疾患、じん臓疾患、肝臓疾患、血液疾患等の基礎疾患を有することが明らかな者。
 前回のインフルエンザ予防接種で2日以内に発熱のみられた者又は全身性発疹等のアレルギーを疑う症状を呈したことがある者。(ただし、平成17年度から、定期の予防接種に際しては、予防接種を行うことが不適当な状態にある者(接種不適当者)に変更になっています。)
 過去にけいれんの既往のある者。
 気管支喘息のある患者。
 インフルエンザワクチンの成分又は鶏卵、鶏肉、その他鶏由来の物に対して、アレルギーを呈するおそれのある者。

 年齢の下限はありませんが、通常生後6カ月未満の乳児にはワクチンを接種しません。これは、ワクチンの効果および、ワクチン接種後の副反応に関しての研究がまだ少なく、十分な知見が得られていないこと、また、この月齢までは母体由来免疫の効果が期待できることなどが主な理由です。このような場合には、同居する家族がワクチンなどでインフルエンザを予防するといった方法が考えられます。

 ワクチンの中でインフルエンザウイルスは生きていません(不活化ワクチン)。そのため、胎児に直接影響を与えることはありません。妊婦がインフルエンザにかかると、重症になる場合が多く、使える薬も限られています。ワクチンによって重症化を予防した方が利益があると考えられた場合には、ワクチンを接種しておかれると良いと思います。ただし、国内では、妊婦または妊娠している可能性の高い女性に対するインフルエンザワクチン接種に関して、調査成績が十分に集積されていないため、米国のように勧奨の対象にはなっていません。
 インフルエンザワクチンの接種とは関係なく、一般的に妊娠初期は自然流産が起こりやすい時期であり、この時期の予防接種は避けた方がよいと考えられます。一方、米国では、「予防接種の実施に関する諮問委員会(Advisory Committee on Immunization Practices)」の提言により、妊娠期間がインフルエンザシーズンと重なる女性は、ワクチンを接種するのが望ましいとされています(Prevention and Control of Influenza. MMWR 2008;57(RR-7):1-59参照)。
 これまでのところ、妊婦にワクチンを接種した場合に生ずる特別な副反応の報告は無く、また、妊娠初期にインフルエンザワクチンを接種しても胎児に異常の出る確率が高くなったというデータも無いことから、予防接種直後に妊娠が判明しても、胎児への影響を心配して人工妊娠中絶を考慮する必要はありません。 同様に、ワクチン接種による精子への影響もありませんので、妊娠を希望しているカップルの男性の接種にも問題はありません。

 熱性けいれんの既往がある方に対するワクチンの接種に関しては、日本小児神経学会の見解(平成18年3月)では、「現行の予防接種はすべて行って差し支えないが、保護者に対して予防接種の有用性、副反応(発熱の時期やその頻度他)などについての十分な説明をして同意を得ることに加え、具体的な発熱時の対策(けいれん予防を中心に)や、万一けいれんが出現した際の対策を指導すること」となっています。

 てんかんの既往がある方に対しては、厚生労働科学研究事業の「ハイリスク児・者に対する接種基準と副反応に関する研究班」の2003年の見解では、「コントロールが良好なてんかんをもつ小児では、最終発作から2-3カ月程度経過し、体調が安定していれば現行のすべてのワクチンを接種しても差し支えなく、コントロールが良好以外のてんかんをもつ小児においても、その発作状況がよく確認されており、病状と体調が安定していれば、主治医(接種医)が適切と判断した時期にすべての予防接種をしても差し支えないとしています。また、「発熱によってけいれん発作が誘発されやすいてんかん児(重症ミオクロニーてんかんなど)では、副反応による発熱が生じた場合の発作予防策(ジアゼパム坐剤、経口剤など)と万一発作時の対策を指導しておく。いずれの場合も、事前に保護者への十分な説明と同意が必要である」などと、なっています。てんかんを治療している主治医あるいはその依頼に基づき、事例ごとに検討して、ワクチンを接種するか、しないかを決めるのが望ましいと考えます。

国立感染症研究所 感染情報センター インフルエンザQ&Ahttp://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/fluQA/QAdoc04.htmlより
2009年9月更新



ブログはこちらをクリックしてください。
公式サイトはこちらをクリックしてください。
携帯サイトのトップはこちらをクリックしてください。

Copyright© 2009 Mori Naika Clinic all rights reserved.