新型インフルエンザは「弱毒」ではありません

 2009年5〜6月の関西地区の流行後、夏にかけて一時的に発生数が一段落したこともあってわが国では新型インフルエンザ(S-OIV)を楽観視するような論調も見られました。すなわち、S-OIVは「弱毒」性であって通常の季節性インフルエンザと変わらないので厳重な対応策は緩めてもよい、という意見です。

 マスメディアでは、臨床的に軽いという意味で「弱毒」と言う言葉を使っているようですが、ヒトのインフルエンザウイルスにはH1からH3までの3亜型が知られているだけで、ウイルス学的に「強毒株」とか「弱毒株」という区別はなく、言葉の使い方自体が誤りです。

 しかも、S-OIVの重症度は以下に示すように少なくともmoderate(中等度)であり、季節性と同じようなmild(軽度)なものではありません。本年8月以降、わが国でも各種の基礎疾患を有する感染例に死亡が見られ始め、若年層にも被害が出始めていますが、従来の季節性インフルエンザは高齢者を中心にして0.1%前後の致死率であるのに対し、今回のS-OIVは本来健康な若年者が中心でありながらWHOの発表では未だに1%近い致死率を示しています。メキシコや米国、最近では南米などの被害が大きく、1%をはるかに超える致死率が報告されている国もあります。このことからも、S-OIVは決して軽症とは言えません。
 過去に人類が経験した(当時の)新型インフルエンザであるいわゆるアジアかぜや香港かぜの出現当時と同じようなレベルの重症度であると考えなければなりません。

 しかも、本年の秋以降には大規模な発生が起こり、1〜2年で全国民の50%以上が感染することも予想されているのです。「弱毒」と侮ることなく、万全の対処を準備しなければなりません。

 日本感染症学会緊急提言「一般医療機関における新型インフルエンザへの対応について」(第2版)http://www.kansensho.or.jp/news/090914soiv_teigen2.htmlよりコピー
2009年9月更新



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