D.C.U SS

         「ピクニックの楽しみ方?」

                         Written by diary




〜後編〜


ピクニック当日。天気は最高に晴れて,まさにピクニック日和といった感じであった。ただ,時期が冬なだけあって,お花見なんて上品なものではなく,本当にちょっとした小山を登るといった趣旨であった。
「・・・で,相変わらず企画者の杉並は時間ギリギリにしかこないのか・・・」
義之は半ばあきらめながらボヤいてみた。集合時間の12時にはあと3分あるが,他のみんなはすでに集まって準備を始めているからだ。
「まだあと数分あるから大丈夫だろ?」
「別に“遅刻しない“ってのはわかってるからいいんだけどな・・・というか,なんでピクニックなのに最終目的地に現地集合なんだよ・・・これじゃただの昼食会だろ。」
そう,ピクニックはもはやただみんなが食事や遊ぶものを持って来て楽しむだけの遠足と化していた。準備はただブルーシートを敷くだけでいいので,もはや準備と言えるかどうかすら怪しい。
「まあ。準備手伝わなかったバツくらいは受けてもらうか。ゴミは杉並持ちだな。」
渉も杉並に関しては楽観視しているようである。
「いやぁ,すまない諸君。ちょっと軍曹に呼ばれてな。」
杉並はいつもどうり時間ギリギリに現れた。読みどおりといえばその通りだが,時計を見てみると秒針まできっちり12時を指していた
「遅かったな杉並。ピクニック・・・?の準備はもう終わったぞ」
「ふむ,それはよくやったな。さてそれでは遅くなったがこれを諸君に配っておこう。」
義之の疑問調を軽く無視しながら,杉並はどこからともなく紙の山を取り出し,それを一人づつに配った。
「これが今回のしおりだ。予定表,経路など詳しく書いてあるから,これで持ち物が分からなくなったり道に迷ったりすることはないだろう。どうだ白河!この内容といい,表紙のデザインといい・・・完璧だと思わないか?」
「え〜と・・・音姫先輩,どこにツッコミをいれたらいいと思います?」
「え!?わ,私に聞かれても・・・ねぇ?」
「や,お姉ちゃん,そこで私に振られても困るんだけど・・・」
こうしてるうちに,全員が「作るのが遅い」とただ一言ツッコミを入れるタイミングさえ逃してしまうのであった。

杉並が来たことでとりあえず面子は揃った。開催者の杉並と義之,渉,由夢,杏,ななか,茜まではいつもと一緒なのだが,今回は留学先から一時帰国している音姫と,さらにたまたま小恋も転向先から一時帰島していたので参加して,音姫がまゆき先輩誘ったためきてもらえることになった。唯一,美夏はメンテンナンスの都合で来れないとのことだったので,次の機会に誘うことを約束するだけに留まった。
「えー,本日司会を務めさせていただく板橋です。本日はお日柄もよく,このように晴天の中皆様とピクニックを開けたことに私は,今,猛烈に感動しているしだいであります。本日このような会を開かせていただいたのは,皆様との交流と・・・」
「さて,全員コップは持ったな?では,乾杯!!」
「「「カンパ〜イ!!」」」
「あ,杉並!!俺の音頭まだ終わってねぇ!!?」
渉の司会は杉並以下全員に軽くスルーされながら,ピクニック(?)は開催された。料理は音姫・小恋・ななかの3人がたくさん作ってきて,茜・杏が飲み物を,義之・渉が菓子類を,そして杉並が遊びの小道具持ってくる,という形になった。

とりあえず昼食を食べ終えた一同は,食後の遊びということでトランプをして遊ぶことにした。
「ふむ,これであがりだな。さぁ板橋よ,早く引くがいい!!」
「だ〜!!なんでさっきから俺ばっかりジョーカー回って来るんだよ!!くそ,また杏と1対1かよ・・・さぁ引け!!」
「・・・ねぇ渉?どっちがジョーカーかしら・・・もし教えてくれたら,パンツくらい見せてあげるかも・・・」
杏は左手で太腿らへんを押さえながらスカートを軽くひらつかせた。
「み,右側の少し出っ張ってる方がジョーカーであります!!」
「ありがと。私も上がりね。あ,ちなみに見せてあげる”かも”だから,見せないわよ。」
「な,なんだと!!?お願いだ杏!
これが負け犬の俺の最大かつ唯一の希望なんだ!!頼むから見せてくれ!!!」
「・・・渉の変態。」
「しょうがないよ,渉くんだからね〜♪」
「板橋〜,あんまり妄想ばっかりしてると元生徒会権限でしょっぴくよ。幸いここには元会長様もいるんだし。」
「ま,まゆき・・・こういう場なんだし,もう少し大人げのある反応をしてあげようよ・・・」
涙ながらに杏に懇願する渉の姿は負け犬そのもので,もはや周りからは冷ややかな笑いしかでなかった。
「というか,なんでさっきから俺がドベ街道を爆進してるのに,なんで義之と由夢ちゃんがずっと交互に1位,2位を独占してるんだよ!!なんか仕組んでるのか!?」
「別に仕組んでないって。それに,もしそうだとしてもお前のドベは先に上がってる俺たちには仕組みようがないし。」
「そうですよ,板橋先輩。別に仕組んでませんよ。私と兄さんがずっと1位なのはその・・・運なんです!!」
「・・・もう愛の力ってことでよくないかな?」
「ふむ,さすが白河。即座に的確な言葉を引き出してくるとは。」
「お〜暑い暑い。ヴェネツィアは世界遺産なんだけど,地球温暖化で沈没の危機がかかってるんだから,地球温暖化貢献はほどほどに頼むよ〜。」
「べ,別にそんなんじゃないです!確かに私は兄さん恋人ですから,その,夜もいろいろあったりしますけど,今日はそんなんじゃなくて・・・!!」
「由夢落ち着け!そんないらないこと言わなくていいから!!そんなこといったら・・・」
「・・・弟くん?由夢ちゃん?夜なにがあるのかな〜。お姉ちゃん留学してるから日本の文化は最近はよくわからないだけど,教えてくれないかな〜?」
二人を冷やかそうとしていた一同もろとも空気そのものが凍りついたように冷えた。あの渉すらなにやらおびえているようにすら見える笑顔を浮かべている。杉並は早くも避難したようでもう見当たらなくなっていた。

「・・・えっと,そう!いつもいっしょに漫才番組を見てるんだよ!最近売り出し中の,”欧米か!”で有名なあれが大好きでさっ!!」
「そ,そうですよ!私もあれは大好きで・・・そういえばこないだのやつビデオ撮ってたから帰ったらお姉ちゃんも一緒に見よっか!!」
「ふーん,そっか。そうなんだ〜。で,その後は何をしてるのかな〜?」
「「・・・・・・・・」」
義之はまゆきに目で援助を求めてみたが,先にそうくると呼んでいたのか,ひたすら胸の前で十字を切っていた。ほかのみんなは鳴らせもしない口笛を吹いてみたり,小恋に無理やり転向先の話を聞いたりしてなんとかその場の空気から逃れようとしていた。
「二人ともまだ学生だからおとなしくしてると思ったのにな〜・・・もう!!え,エッチなのはいけません!!二人ともその場に正座!!!」
こうして青空の下,久々の30分の正座説教を受ける二人であった。

二人の説教がようやく終わり,気分転換も兼ねてお菓子で宴会を開くことになった。説教の間にまゆき先輩は用事があるといって帰ってしまったのだが,まだピクニックは終わってないという空気しかない。
渉と義之が持ってきた菓子の封を切っていき,杏と茜が飲み物を入れていくという形で準備を進めて,昼食に続いて再び宴会が始まった。
「・・・義之,ちょっといい?」
「ん,杏?なにか用でもあるのか?」
「フフフ・・・ちょっとね。ここじゃマズイから向こうに行きましょうか。」
少し嫌な予感を感じつつも,とりあえず杏のあとについていくことにした。
「で,話って何だ?」
「ちょっとね・・・えい♪」
杏は突然義之に抱きつくと,胸に頭を深く沈めた。
「ちょ・・杏,何を・・・」
「私・・・義之のことが・・・」
杏は瞳を潤ませながら義之の顔を見上げるとそのまま瞳を閉じて唇を尖らせてきた。まるでキスをしろとでもいうように━━━
「はぁ・・・どうせいつもの冗談だろ?いい加減この手やめないか?確かに最初はちょっとドキッとしたけど,今じゃもうなにも感じないぞ?」
「あら残念・・・まぁ確かに冗談だからいいんだけど,まぁいいわ・・・じゃあ用事はそれだけだから。まぁあとは頑張って。」
そういうと杏は再びみんなのところに戻っていった。義之は一人,杏が「頑張って」といった意味を考えながらしばしの間その場に佇んでいた。
 
義之がみんなの元に戻った瞬間,”事件”はすぐに起こった。みんなが座っているビニールシートの手前10mくらいのところにきたとき,ジュースを飲んでいた由夢が紙コップを持ったまま走りだしてきた。
「お,由夢。いきなり走ってきてどうし・・・」
義之が言い終わる前に由夢は義之に抱きつき,そのまま唇を奪ってきた。さらに口の中に含んでいたジュースをそのまま義之の口へと流しこんだ。柑橘系の甘さと少し苦みが口の中に広がった。
「どう,兄さん?おいしかった〜?」
「おいしかった〜ってお前・・・これ,まさか・・・」
「ん〜,普通のオレンジジュースらけど,兄さんも飲む〜?」
義之は”ただのジュース”ではないと直感した。由夢は目の焦点があってなく,さらに多少呂律が回っていない感がある。さらに元々人前では堂々とキスを仕掛けるような性格ではない。
義之は由夢が持っていた紙コップをひったくって飲んでみて,その直感を確信へと変え,そして杏との話で浮かんだ疑問の回答をつかんだ。そしてビニールシートで暢気に座っていている張本人らしき人の元へと向かった。
「杏・・・これ酒だろ!なんでこんなもの持ってきてるんだよ!!」
「あら,私は『飲み物は私たちが持ってくる』とは言ったけど,何を持ってくるかリクエストはなかったから自由に持ってきただけだけど?」
「・・・私たちってことは茜もグルか・・・?」
「ピンポーン♪楽しそうだからつい杏ちゃんの誘いに乗っちゃった♪」
「『乗っちゃった♪』じゃねぇ!?とりあえず酒は回収して由夢は寝かせて・・・」
そのとき,義之の背中に急に何かがのしかかり,前のめりに倒れてしまった。ゆっくり後ろを振り返ってみると,音姫が涙目になりながら義之の体にしっかりとしがみついていた。
「弟く〜ん,私ねむこうでも頑張ってるんだけどね,やっぱり言語の壁が大きくてね,もう私どうしたらいいか・・・」
「音姉が泣き上戸になってる!!?おい,杏,茜,なんとかしてくれ!!
「義之,私あなたのことが・・・」
「あ,私も〜・・・♪」
「お前ら絶対酔ってないだろ!?こんなときまでふざけるなよ!!」
「義之くん,俺も実は・・・」
「やめろ!鳥肌が立つ!!」
義之はとりあえず酔っ払って便乗してきた渉には,男相手ということで全力で顔面にストレート一発を入れておいた。渉は声になってない声をあげて右へ左へと地面を転がってから気絶したらしくピクリとも動かなくなった。
「なにやってるの,義之?」
「あ,小恋。実は杏と茜が酒を持ってきてて由夢と音姉が酔っ払って大変なんだ・・・って,おい・・・マジかよ・・・」
義之は小恋の顔を見て絶望感に浸った。小恋の顔は真っ赤で目も完全に据わっていて,一目で飲んでいるのがわかってしまうほどであった。
「何て景気の悪い顔してるんよ義之〜。ほらほら,美少女に囲まれていい思いしちゃってるくせに〜」
「こ,こっちは笑い上戸か・・・誰でもいいから助けてくれ・・・」
義之は周りを見渡して助けを求めてみた。が,ななかはまるで見世物をみるようにニヤニヤしているし,杉並はいつのまにやら失踪。渉は先ほど義之自身が倒してしまっているし,最大の頼みの綱のまゆき先輩もすでに帰ってしまった。もはや義之に味方はいなかった。
 
「アハハ,義之モテモテだね〜♪私も入って,もう一夫多妻目指しちゃったら?ほら♪」
「らめ!!兄さんは私のものれす!!」
「もうお姉ちゃんどうしたらいいかわからなくて・・・」
「・・・義之,愛してるわ・・・」
「義之くんかっこい〜♪」
「んー,楽しそうだし,私もはいっちゃえ♪」
「ななかまで・・・もう勝手にしてくれ・・・」
完全に酔っ払った小恋・由夢・音姫と,からかいモード全開の杏・茜・ななかに抱きつかれて身動きすら取れなくなった義之は結局酔っ払った3人が疲れて寝てしまうまで抱きつかれたままでいるしかなかった。
 
・・・・後日,”何者か”にそのときの状況を写真に収められていたらしく,非公式新聞部見出しから始まって学内掲示板,食堂,各教室の前後の黒板などにその写真が掲載されていた。
その日から,義之は各少女達のファンの尋問に追われ,逃げ続ける日々を送ることになったのはいうまでもない。
 
 
fin.
 
 
 
 
 
(コメント)
久々に投稿してみたdairyです。「前編upから3ヶ月も経ってるやん!!」とか突っ込みはなしの方針でお願いします(ぇ
今年は暑い日が続きますねぇ・・・・今年は私は受験生なので勉強に精を入れ・・・てたわけでもないですが(ぉぃ
・・・とは言え,夏休みに入って逆に休みが減るという特異な経験をしているのは私くらいかと・・・世間的に夏休みといわれてる期間にも毎日学校に通い,しかもその間は日曜まで消滅しました・・・orz
今回は最初からオチは考え付いていたんですが・・・そこまでのつなぎに苦しむ展開に。やむを得ず杏に必死に頑張ってもらいました。ついでにななかがおいしいところを全部もっていく形に・・・結局渉はやられ役でしたとさ(殴
今年はもう書く時間はないかな〜とか思いつつもあかね色に染まる坂のなごみんを書いてみたい気もするし・・・と悩んでます。まぁ多分「書かない」で終わりそうな予感・・・
では,今回も最後まで見てくださった方々,本当にありがとうございます!!
2007年8月24日(金)by dairy


管理人の感想

ということで!diaryさんの投稿作品「ピクニックの楽しみ方?」でした〜^^楽しんで頂けたでしょうか?
今回はドタバタ劇って感じでしたね。いつもながらの杉並の唐突な提案。そしてそれに巻き込まれる義之たち。
本編でも使われそうな流れを、オリジナリティ溢れる内容でよく表せていたと思います^^
ほぼ全員が揃ったピクニック(?)。各キャラの個性がハッキリと出ていて、面白かったです。
とりあえず、思いっきり音姫の居る前で自爆発言をする由夢カワイス(笑)
そして最後は惨劇に・・・。まあ素直な性格の音姫、由夢、小恋なんかはすぐにお酒に飲まれてしまいそうですよね。
その横で我関せずといった様子で傍観しているななかが印象的でした(爆)

それでは、ありがとうございました!!