D.C.U SS

         「Dream World」
                       Written by diary






〜プロローグ〜



「お〜い,義之。ちょっと相談があるんだが・・・」
5月のある日の放課後,渉が突然話しかけてきた。
「悪いな,ちょっと由夢待たしてるから急いでるんだが。」
「・・・バカァ!義之クンのバカァ!!!!このシスコンラブルジョ・・・ヘぶらっっ!!」
とりあえず全力で殴っておいて,さて行くか。
「ちょ・・・カハッ・・・ちょっと待て,これはお前や由夢ちゃんにとっても有益な話なんだが・・・」
・・・足が止まってしまった・・・というか強く殴りすぎたか?血を吐いてるようだが。
「・・・まぁ話くらいは聞くか。ただし手短にな。」
「さすが,義之!!じゃあ簡単にいうとだな━━━ゴフッ・・・」
・・・・先に血を吐ききってからだな。
 
「あ,兄さん。遅かったですね。」
「ハァハァ・・・すまん,ちょっと渉と話しててな・・・」
結局渉とは20分も話しこんでしまった。(といっても渉が喋れるようになるのに10分ほど消費したのだが)
急いで3階から校門まで走ってみたものの,すでに6時を過ぎ,夕日が世界を赤く染めていた。
「ところで,だ。今週の日曜日に遊園地へ行かないか?」
「え?・・それってデートだよね・・・?うわぁ・・・兄さんから誘ってもらえるなんて・・・///
「さっき渉と話し合ってみんなで一緒に騒ごうってことに・・・ってどうした?」
「なんでもないですよ〜だ。兄さんのバカ・・・2人きりのデートだと思ったのに・・・
なにやら怒ったしまったようだ・・・ん〜,わからん・・・
「それで,誰が参加することになってるんですか?」
「え〜と,渉が小恋と杏と茜,それからななかを誘うって言ってたな。俺は由夢と音姉を誘えって言ってた。」
「結構多いんですね・・・女子ばっかじゃない・・・けど兄さんは私と一緒に回ってよね・・・?でも・・・
「ん?どうした由夢・・・さっきからブツブツ言ってるけど。」
「や,な,何でもないですよ。」
「いや,さっきから様子おかしいし,それに・・・」
「そうだ,兄さん。こんな可愛い彼女を,もう5月とはいえこんな夕方の寒いなか一人で校門前で待たせたのに『すまん』の一言で済ますつもりですか?」
・・・・はい?なにやら変な流れなんですが・・・
「ここは何かおごってもらわないと割があわないですよね。あ,チョコバナナ食べたいな〜・・・」
「ちょっと待て!!それはおかしい・・・」
「寒かったなぁ。3人もナンパしてくるし。散々な時間だったなぁ。チョコバナナ食べたいな〜」
「・・・ありがたく奢らせていただきます・・・」
「じゃすぐにいこっか。善は急げってね♪」
「わ,ちょ・・・まったく。」
一人で先に走り出そうとした由夢の左手を優しくつかんだ。
「わ・・・温かい。」
「お前の手が冷たすぎるんだよ・・・・ごめん,こんなに冷たくなるまで待たせちゃって。」
「ううん・・・べつに大丈夫だよ。ただね・・・」
由夢は眩しそうにしながら夕日を見つめた。そして泣きそうな顔をして・・・
「ただ,夕日の中一人で立っているのは正直辛かったよ・・・やっぱり『あの日』のことがあるから,また私は一人になるんじゃないかって・・・・」
「由夢・・・」
 
あの日━━━
桜の木が枯れたことで「桜内義之」という存在そのものが消えたあの日。
自分の非力さを思い知らされたあの日。
そして・・・・誰よりも大切な由夢を悲しませてしまったあの日━━━
奇跡的に生還したとはいえ,由夢にトラウマになるのは無理もない。それは自分が一番良くわかっていたはずなのに・・・
 
気づくと俺は由夢を抱きしめていた。
「に,兄さん・・・ここ,学校の前・・・」
「別にいいさ,どうせ杏たちのせいで俺たちが付き合ってることは学校中に知られてるからな。それより・・・色々ごめん。けど,もう大丈夫だ。もう二度とお前の前からいなくならないって約束するから・・・
「兄さん・・・ありがとう・・・」
2人は目をつぶって顔を近づけ・・・優しくキスをした。
 
互いの唇を離すと,二人ははにかみながら見つめ合っていた。
「・・・冷静になれば,こんなところでキスしてたのってかなりマズかったかな・・・///」
「そ,そうですね・・・///そ,それじゃ,桜公園へ行ってチョコバナナを食べにいきましょうか♪」
「げ・・・覚えてたのか・・・ただし,夕飯の前だから1本だけだぞ?」
「や,甘い物は別腹です♪」
2人は夕日に背を向け腕を組んで歩き出した。二人の前には真っ直ぐと3本の影が伸びていた。
・・・『3本』・・・?2人は腕を組んでいるから1本なんだが・・・
「お〜お〜,今日はあっついな〜・・・40度くらいあるんじゃない?」
「それで,神聖な学び舎の前で,何をしてたのかなぁ?弟くん,由夢ちゃん?」
・・・・様々な事情から”さっきの状況をみられてはいけない人第一位”に見つかったと思ったのはおそらく由夢も同じだろう。そう,2人の後ろにはまゆき先輩と,音姉が(殺気を放ちながら)立っていた・・・
「・・・お姉様,いつから見ていらしたのでしょうか・・・?」
「そうだね・・・『ちょっと兄さん・・・ここ学校の前・・・』ってあたりかな。」
思わず丁寧な口調になっていた俺に対し,音姉は真面目な顔で(こめかみをピクピクさせながら)真剣に答えてくれました・・・つーか全部見てたんだ・・・
「2人とも,そこに正座なさい!!」
「ええ!?ここ外だし!!しかも校門前だって・・・説教は帰ってから十分に受けるから・・・」
「そうだよお姉ちゃん・・・さすがにここじゃ・・・」
「こういうのは,そのときにやらないと罪の意識が薄れるの!!」
・・・だめだ,もう”聞く耳持ちません”モードに入っちまった・・・こうなったらまゆき先輩に頼るしか・・・
「弟くん,由夢ちゃん・・・頑張れ。由夢ちゃんの骨は拾ってあげるから。」
・・・フォローにすらなってませんよ,まゆき先輩。しかも俺の骨はいったいどうなるんでしょう?
こうなったらしかたない。音姉には悪いけど・・・
「由夢,逃げるぞ!!」
「え?ちょっと兄さん!?」
俺は由夢の手をつかむと,家への道を一目散に駆けていった。
「ちょっと,弟くん,由夢ちゃん!まだ一言も説教してないんだから〜!!!!」
・・・・帰ってからが非常に恐ろしいが・・・
「ねぇ,兄さん?2人で手を繋いでゆっくり歩くのもいいけど,こういうのも小さい頃を思い出して楽しいね♪」
「え?」
半ば全力で走っている中,唐突に由夢が話しかけてきた。
「幼い頃,兄さんとずっと遊んでたときのこと。あのときからね,ずっと兄さんが好きだったから・・・まだよく覚えてるんだ。」
・・・なかなか・・・いや,かなり嬉しいことをいってくれるもんだ。
 
━━━2人で仲良く遊んだ過去と,ふたりで仲良く暮らす未来。
お互いの位置づけは違えど距離は同じ。
これからも由夢の傍にいよう・・・そう誓わずにいられなかった━━━


前編へ続く





2007.4.7