Memories Base Combination Production

Back Grounds Memories

 

ジュウゥゥゥゥ・・・”

フライパンの上で、目玉焼きが焼ける音がする。

「よし、これで完成・・・っと」

私は、トーストと付け合わせのサラダを用意して、

キッチンから、テーブルに並べる。

「お父さん〜!朝ご飯出来たよ〜」

2階で身支度を整えているお父さんに声をかける。

「ああ、今行くから、待ってなさい」

お父さんが2階から降りて来るのを待ってから、テーブルに付く。

『頂きます』

挨拶をしてから食べ始める。

しばらくしてから、不意にお父さんが口を開いた。

「美咲、あんまり無理はするなよ」

「えっ?」

「昨日の夜も遅くまでお前の部屋の電気が付いていたからな、テスト勉強でもしていたのか?」

「そんなとこかな」

「そうか、あんまり根を詰めてやるなよ。お前は身体が強い方じゃないんだから」

「うん、気を付けるね」

お父さんは身体が弱い私のことを心配している。

(でも、お父さん私が勉強している理由を知ったらどう思うかな・・・)

そんなことが心配になる初登校日の朝だった。

 

 

The 4th anniversary Special Project

                                         presented by フォーゲル

 

Two stars to which it draws close each other

 

 

第3話 

 

 

「霧島美咲です。皆さん、よろしくお願いします」

ペコリと頭を下げる私。

その後、朝のHRが終わると、クラスメート達が、私の机の周りに集まります。

転校生には、恒例の質問タイムです。

中にはこんな質問も・・・

『霧島さんは彼氏いるの?』

「えっ?」

クラスメートの質問に一瞬、私の思考が止まります。

何故なら・・・

(な、何でここで勝人くんの顔が浮かぶの?)

私がそのことに戸惑っていると。

「こらこら、あんまり変な質問するんじゃないわよ。霧島サンもプライバシーってものがあるでしょ?」

私の隣の席に座っていたショートカットの女生徒が呆れたような声を出す。

その言葉に、クラスメート達も「それもそうか」と納得したような表情を見せる。

その時、丁度一時限目の開始を告げるチャイムがなった。

自分の席に戻るクラスメート達。

私は彼女に『ありがとうございます』と小声でお礼を言い、

彼女は『別にいいわよ』と返して来ました。

 

 

 

  「あたしは古谷美優、古谷でいいから」

 「霧島美咲です、改めてよろしくお願いします。古谷さん」

放課後、廊下を歩きながら、自己紹介をする私と古谷さん。

「しっかし、イメージ通りね」

私の顔を見つめながら呟く古谷さん。

「古谷さんから見て最初の私のイメージはどんな感じだったんですか?」

「『清楚で可憐、典型的な優等生』。一部男子にはウケがいいって感じ。まあ、キャラ作ってないだけマシね。

 ・・・ちなみに結構モテるでしょ?」

「そ、そんなことないですよ。どっちかというと前の学校でも目立たないほうでしたし」

「そういえば、男子とはあんまり会話が無かったわよね。勿体ないわ〜」

頷きながら呟く古谷さん。

「何か、男の子相手は緊張しちゃうんですよね・・・」

(不思議と、白瀬くんとは何故かそんなに緊張しなかったな・・・)

白瀬くんが私を守ってくれていたというのもあったかも知れないけれど、

イジメられて泣いていても白瀬くんの顔を見ると、安心出来た。

「そう?そんなに気にすることでも無いような気がするけど」

私達がそんなことを話しながら、歩いていると・・・

「マネージャー!!」

男の子がこっちに向かって歩いて来ます。

上履きの色から判断すると、一年生みたいですけど・・・

その彼は、私を見ると足を止めます。

「マネージャーの友達ですか?・・・可愛いですね」

その言葉に、思わず顔を伏せる私。

「ちょっと、ナンパをしに来た訳じゃないでしょ?」

「あ、そうでした。実はですね・・・」

男の子が話し始めようとすると。古谷さんは私に向かって目の前で手を合わせます。

「ゴメン、ちょっといい?」

「あ、私のことは気にしないで下さい」

そう言うと、古谷さんと男の子は会話を始めました。

会話が終わり、私の側に戻ってくる古谷さん。

「ゴメン、待たせたわね」

「古谷さん、マネージャーなんて、やってるんですね」

「イメージと合わない?」

「い、いいえそんなことは」

笑いながら言う古谷さんに慌てて弁解する私。

「ちなみに中学時代からやってるのよ」

「でも、マネージャーって大変ですよね。部員の身の周りの世話とかやる訳ですし、身体の弱い私には無理ですよ」

「確かに大変な仕事よ。でもその分、嬉しいことや辛いことも多いけどね」

その時、私は古谷さんの表情が一瞬曇ったことに気が付きました。

だけど、その表情はすぐに消えました。

「古谷さんは、どこの部活動のマネージャーやってるんですか?」

「剣道部よ。主将は実力はあるんだけど、スケジュール管理はルーズなとこあってさ・・・

 最近じゃ顧問もそっち方面に関しては、あたしに話し持って来るくらいなんだから」

『困ったわよ』とでも言いたげに首を竦める古谷さん。

「さ〜て、じゃあ主将に連絡しますか。『明後日、日曜日の練習試合の相手は陽ヶ崎高校よ』ってね」

(そういえば、陽ヶ崎高校の剣道部って白瀬くんも所属してたはずですよね)

ふと、そんなことを私は思いだしていました。

 

 

 

 「はぁっ!!」

気合いの声と共に、竹刀を振り下ろす俺。

誰もいなくなった道場には静寂が落ちた。

ついさっきまでは、ここに陽ヶ崎高校の剣道部員達もいた。

前剣道部の顧問だった、朝岡が異動で学校を去って以来ウチの剣道部は指導者が居なくなった。

顧問は幸いすぐに決まったのだが、やっぱり、有段者の実力者がいないことは、

実力を付けるためには、大きな痛手だった。

昔はインターハイベスト8など強かった時期もあるせいか、強豪剣道部としての復活を望むOB・OGも

多く、俺としても、2年生にして主将に任命された身としては、期待に答えたいと言う思いもある。

そんな俺を見ていたのか、親父が提案してきた。

 

「仕事が休みの時だったら俺が見てやろう」と。

 

親父は国体でも上位常連の選手で、その名前は県の剣道関係者の間では有名人だった。

後輩達も『そういう人が教えてくれるなら・・・』ということでやる気を出してくれるようになった。

「今年は、やれるかもな・・・」

そんなことを考えながら、俺は道場を後にした。

 

 

 

 

 「あ〜気持ち良かった」

風呂上り、頭をタオルで拭きながらベッドに腰掛ける。

正直、このまま眠りたいところだが、宿題があるのでそうもいかない。

「おっくうだけど、やるか・・・」

自分の身体に気合を入れ直し、机に向かう俺。

カバンの中から、ノートを取り出そうとしたその時。

 

“パサッ”

 

一枚のプリントが落ちる。

(あ、そうか、これもあったんだっけ・・・)

俺はそれを手にとって見つめる。

 

『進路希望調査表』

 

そう書かれているプリントを見つめて俺はため息を付く。

(そういうことも考えないといけない時期だよな)

今の不景気の世の中を考えると、俺達の年代でも考える時期に来ているというのは分かる。

でも、いざ『さあ、何がやりたい?』って自分の心に問い掛けた時に―――

 

(何も浮かんで来なかったんだよな・・・)

 

かと言って適当に書く訳にも行かないし。

「どうしたもんかな・・・」

俺の口からまた深いため息が漏れた。

その時だった。

 

 

『♪〜♪〜♪』

 

俺の携帯電話が鳴る。

『はい、もしもし』

『あ、勝人、あたし』

『何だ、紗雪か、どうしたんだよ』

『【どうしたんだよ?】じゃないわよ。用事があるから電話したに決まってるじゃない』

電話の向こうで少し怒りながら言う紗雪。

『それで、用事って何だよ』

『勝人、明日か明後日ヒマ?』

『明後日は剣道部の練習試合があるから、明日だったらヒマだぞ』

『じゃあさ、明日、あたしに付きあってよ』

『別にいいけど・・・何か裏があるんじゃないだろうな』

『人聞き悪いわね〜ちょっと協力して欲しいことがあるだけよ』

『また、料理研究会絡みか?』

『そうなのよ〜実は樹希がね・・・』

紗雪の話を要約すると要は、料理研究会で出品するコンテストがあるらしい。

その代表の座を紗雪と久慈で争うことになったから、新メニュー開発に付き合えということだった。

(全く・・・紗雪も素直じゃないよな)

幼馴染のカンだが、紗雪は久慈のことが好きなんだと思う。

(久慈がどう思ってるかは別として)

「だけど、俺は紗雪みたいなタイプはな・・・彼女にするなら、もうちょっとおしとやかな・・・例えば―――」

その時、俺の脳裏には好きなアイドルタレントの姿が浮かぶのかと思った。

しかし、浮かんだのは、この間再会した栗色の髪の女の子―――

 

(霧島?)

 

「いやいやいや!!何でだよ!?」

そ、そりゃ霧島は可愛いけどさ・・・

「勝人〜!!何騒いでいるの!!とっとと寝なさい!!」

「わ、分かったよ!!」

下の階から声を掛けるお袋に反論しながら、俺は自分の考えに戸惑っていた――

 

 

〜第4話に続く〜

 

こんばんは〜フォーゲルです。

 

Two stars to which it draws close each otherの第3話目になります。

 

今回は陽乃平高校に通い始めた美咲の様子と

 

部活の悩み将来の悩み、

 

そして美咲に対する自分の感情に戸惑う勝人の様子を書いて見ました。

 

勝人パートはともかく、今回は美咲パート・・・というか美優を書くのが難しかったです(汗)

 

BGMシリーズ』での自体の出番が少ないうえに、産み出した鷹さんから見ると違和感があるかもとか

 

いろいろ考えてしまいます。

 

個人的には冴霞=美咲だとすると、巴=美優なポジションになってもらおうかと思ってます。

 

何だかんだで面倒見は良さそうだし>美優

 

次回も楽しみにして頂けると嬉しいです(また一か月くらい空きそうですが・・・)

 

それでは、失礼します〜






2009.11.29