未熟児について
「未熟児」とひとくちに言っても、医学的には様々な分類がなされています。
←このマークのコメントはすべて樹についてのものです。)

生下時体重による区分

1000g未満:超低出生体重児
1500g未満:極低体重出生児
2500g未満:低出生体重児
*妊娠37週未満に生まれた赤ちゃんを「早産児」といいます。

1000g未満の超低出生体重児でも、年間約2600人生まれており、その数は年々増加傾向だそうです。

アプガースコア(AP)

赤ちゃんが生まれた時の状態(新生児仮死の度合いなど)をを示す指標が「アプガー・スコア」です。(下記)5項目を10点満点で評価し、5点以下を仮死(7〜10は正常)とします。
出生後1分後と、仮死がある場合は5分後にもまた採点します。これは、仮死児は5分以内に蘇生させないと後遺症が残るといわれているためです。
(満点が10点ですが、赤ちゃんは子宮の中から子宮の外へ出てくるという大仕事をしたばかりなので、8〜9点ということが多いそうです。ちょうど走った後は「息が切れ」たり、「動悸がして脈が速く」なったり、「顔色が赤くなったり、青く」なったりするのと同じなんだそうです。)

1分後の数値より、5分後の数値がより重要で、5分後の値が低い程、予後は悪いとされています。(ある研究で満期以前(妊娠26〜36 週)に産まれた 13,399 例の新生児に関して、新生児期の死亡率は、5 分アプガースコアが0〜3の新生児では 1,000 人当り315人(およそ30%)だったそうです。)

50年程前に発案されたこのアプガースコアは、現在も新生児の生存予測に有意義とされています。


アプガースコア

項目↓\AP点数→ 0点 1点 2点
呼吸 なし

不規則で遅い

弱い啼泣/換気低下

強い啼泣/換気正常
心拍数 なし 100/分以下 100/分以上
筋緊張(手足の動き) 四肢まったく弛緩 四肢やや屈曲 運動活発/屈曲
刺激に反応 なし 顔をしかめる 涕泣する
皮膚の色 蒼白 四肢のみチアノーゼ チアノーゼなし

0〜3点  重症仮死 
4〜6点  中等度〜軽度仮死
7〜10点  正常

※Ap値4〜7点は第1度仮死(青色仮死)、0〜3点は第2度仮死(白色仮死)とも言われます。

【処置】
5〜7点の場合:気道吸引や足底、背部刺激による呼吸の確立を促進する。
4点以下の場合:インファントウォーマーで保温しつつ、仮死蘇生術を行う。
気道確保、酸素投与、アシドーシスの補正等。(=気道吸引後に100%酸素によるマスク&バッグを行い、それでも心拍数、呼吸や皮膚色の改善が認められない場合は、気管内挿管しチューブ&バッグを行う。)

【合併症】
低体温、痙攣、頭蓋内出血、低血糖、低Ca血症、高ビリルビン血症、低酸素性脳症etc


アプガースコアを母子手帳に記載するかどうかについては、いろいろ論議があるようです。ちなみにうちは記載されていませんでした。

樹の場合:AP値:1/3(1分後1点、5分後3点)という信じられない低さでした。生後5分の時点でも重症仮死(AP値0〜3点)の場合、約3割が死亡、また生存しても様々な障害が残る可能性が非常に高いと言われています。

在胎週数と胎児の体重による区分

在胎期間に比較して体重の軽い子:SFD児(Small For DAtes Infant)
在胎期間と体重が釣り合っている子:AFD児(Appropriate Fer Dates Infant)
と区別されます。<→説明1へ>

<→説明1>

「在胎週数別出生時体重基準」というグラフをもとに判定します。
子宮内の発育を評価(週数なりに成熟しているか否かを判断)することは、治療上、また発育を見る上でも非常に重要な情報となります。
(例えばもし1800gで産まれた場合、それが32週であれば、未熟児とはいえ週数なりによく成熟しているわけですが、35週にもかかわらず1800gだった場合、母胎の中で成長できなかった何らかの理由があったと考えられます。この2つのケースを比較すると、35週の未熟児の方が長く母胎にいた分、育てやすいように思いがちですが、実際には週数のわりに成長していないSFD児であるため、予後が悪くなる可能性が高いのです。

<SFD児の危険>
★肺や気道に胎便などを吸い込んで、胎便吸引症候群をおこすことが多い。
★胎児時期から酸素の取り込みが悪く、慢性の酸素不足状態にあるため、分娩時のストレスに耐えきれず、出生時に仮死状態になることが多い。
★しばしば低血糖症をおこす。著しい低血糖のために痙攣をおこしてしまうような時は、中枢神経系の後遺症が残る可能性が高く、充分な警戒が必要となる。
★高ヘマトクリット血症(血液の中に赤血球がありすぎる状態)が重度になりやすい。
★先天性奇形を持っていたり、母からの母胎感染症にかかっている可能性が高い。


SFD児の見かけは、痩せて、頭が身体のわりに大きく見えます。(顔つきが少し老けて見えることも。)身体の中に栄養分の蓄えが少ないために、特別な問題を持つことがあります。また、もともと体格が小さい場合もあります。

現在は超音波画像診断(エコー)が非常に進歩したので、胎児の大きさがよく測定でき、発育遅延に対する治療を試みたり、出生体重を予想してリスクを予見できるようになってきました。
SFD児はAFD児より格段にリスクが高いといえますが、そのリスクを出生前に予見することで、対応や治療の効果を著しく上げることが可能です。

樹は「やや小さめ」くらいでした。(大きくかけ離れてはいない



外見

在胎週数によっても多少違いがありますが、おおまかな未熟児の外見上の特徴として…
★皮膚が薄く、皮下脂肪や筋肉が少ない
★しわが多く、少し毛深く感じる
★耳の形がつぶれて見える
★肛門、膣等の外性器が飛び出して見える
★まぶたが閉じたまま (日数が経てば開くようになります)

1000g未満の超低出生体重児の場合、生後すぐはむくんだように見え、肌が水っぽくジェリーのような皮膚をしています。体や手足に比較して頭が大きく見えます。


最初はこういった外見の違いやあまりの小ささに驚き、戸惑うかもしれませんが、週数が進むにつれ、正期産で生まれた赤ちゃんと同じに(その子なりのペースで)育っていきますので、心配しないで待っててあげてくださいね。

生後の体重減少

赤ちゃんは、たくさんの水分を貯えて生まれてきます。
(早く生まれるほど、その水分量が多い)
早く生まれた赤ちゃんほど皮膚が薄いため、皮膚からも水分が出て行きます。
そのため、生後しばらくの間は(水分が出ていくので)体重が減ります。


体重減少の程度や、体重が増え始めるまでの時間は個人差があります。

樹の場合:体重減少が大きく、その後も禁水の時期が長かったりでなかなか体重が増えず、長い事ヤキモキさせられました。

五感

皮膚感覚:妊娠の8週頃〜妊娠24週頃(口の周りから始まり全身に)
聴覚:妊娠25〜28週頃〜。
視覚:妊娠24〜27週〜。


ほとんど反応がないから、何もわからないように見えても 上記週数の頃にはそれぞれ五感が備わってくるそうなので、パパ、ママが赤ちゃんに会いに来た時は、見たり、話しかける声を聞いたり、撫でてくれることもちゃ〜んと解っています。
パパやママが側に来て、話しかけ、見つめて、触れることで、赤ちゃんはとっても安心するし、発育などにもとても良い影響があるそうです。

preemieちゃんの心配なこと

呼吸:<肺の仕組みや働き(※注2)脳の呼吸中枢の働き><呼吸運動に必要な筋肉>等がまだ未発達であることと、胸の形を保つ肋骨が細く柔らかいために呼吸がしにくい等により、人工呼吸器その他により呼吸を助けることがあります。
無呼吸(※注3)の状態になることもあります。
(※注2)肺の仕組みや働き>早産児(特に32週未満)では肺胞の膨らんだ状態を保ちにくく呼吸が上手くいかないことがあります。
息を止めると聞くと驚いてしまいますが、成長とともに改善され、自分で呼吸がちゃんと出来るようになります。


(※注3)無呼吸>呼吸は常に一定でなく周期的に変わります。 (大きく息をしたり、しばらく休んだり)
そのような呼吸は赤ちゃんにとって大きな問題ではないですが、特に長い時間(約10秒以上)息を止めてしまう(=無呼吸)と、身体の中の酸素不足がおきます。
無呼吸になると警報音が鳴ります。看護士が身体に触れて刺激してみたり、またバッグとマスクで肺に空気を送り込んだりもします。
酸素や人工呼吸器等の使用や、肺の拡がりが不十分な場合は、人工サーファクタンという薬を使用します。

樹の場合:肺出血があった時に、一時サーファクタンを使用したそうです。


心拍大人の心拍数の2倍以上です。(それ以上の血液の循環が必要になると心臓が疲れやすいといえます。)


黄疸約80%(低出生体重児では90%以上)に出る黄疸は「生理的黄疸」といい、特に問題なく1〜2週間で消えます。生後黄疸が強くなった場合は、治療の必要があります。(病気、出血、感染症が合併した場合等)

樹も長い間、強い黄疸が出ていました。(原因は胆道拡張症だったのかも知れませんが…)


貧血生後すぐの場合は輸血で対処することがあります。(主治医から説明、両親の承諾の上で)輸血後は合併症の有無を定期的に調べることになります。
(生後二週間〜経ってからの場合は、注射して予防するようです。)


未熟児網膜症早産児は目の血管がまだ未完成なため、目の血管の発育が不均等になり、まれに視力に影響することがあります。
特に超低出生体重児はその頻度が増しますが、視力に影響するような未熟児網膜症は多くはありません。
その予防のために眼科医が1〜2週間に1回くらいずつ眼底検査を行います。