十字尾翼について


お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、きむらクラフトでデザインされた
オーバーハンドのHLG全て十字テールになっています。

それ以前にデザイン、製作した機体のほとんどがVテールだったのですが、
あることを機に方針転換をしました。

ところで、尾翼には色々な形がありますね。
形によって特性も様々なのですが、私の知る限りで特性を述べてみます。

まずT尾翼です。これは最近の実機グライダーなどはほとんどこれですね。 
FOXやSALTO、スイフトなどは違いますが。
一昔前の競技用グライダー(F5BとかF3B)はみなこれでした。



特に水平尾翼が主翼の起こす後流の影響を受けにくく、さらに効率が良いと
言うことで水平尾翼を小型化、低抵抗化することが出来るそうです。

さらに、離着陸時に水平尾翼を草などに引っかける心配がありません。
反面、垂直尾翼の強度が必要で、リンケージも複雑になって重量増加が
あります。


次にV尾翼です。こちらは翼面が2枚しかなく軽量で、大きな抵抗を生む
”又”の部分が1つだけです。
エレベーターとラダーを2枚の動翼で共有するために何かしらのミキシング
機構が必要です。 ラジコンの場合、昔は機械的なリンケージで対処して
いましたが、最近ではほとんど送信機の方で行います。

このVテールは舵の動作角が少なくて済み、ささいな抵抗も問題になる
高速機には適していると思います。
また、バンク中のアップはラダーとエレベーターを同時に打ったのと同じ様な
感じになります。

また、Vの開き角度の調整次第で、機体の性格を変える事も出来ます。


しかし、低速機の場合大きく舵を切る必要があり、舵の動作角が大きくなると
大きな抵抗になりますし、2枚の舵面で付け根となる胴体をねじる事となるため、
テールブームの細くてねじれ剛性の低いパイプを使用したHLGなどには向いて
いるとは思えないのです。

この”ねじれる”と言うことは、普通の⊥型の尾翼にも言えることです

ちょっと極端ですが、ねじれる図を見てください。左にラダーを打っています。

この場合、テールは後ろから見て右に押し出され、右主翼が風圧を受けて主翼は
左に傾きます。

主翼は左に傾こうとしているのに、尾翼は右に傾こうとしていますね。
Vテールではこの現象がより顕著です。

例えば翼長1.5メートル弱の軽量グライダーに6ミリのカーボンパイプをテールブー
ムに使った場合、舵を左に切った途端にテールは右側に捩れて、最悪、片方の水平
尾翼を失った⊥型尾翼の機体と同じ状態になります。

この現象をうち消すために十字テールを考案しました。

尾翼がねじれる中心から上下にうち消すように動翼を配置していますので、尾翼の
ねじれを最小に押さえることが出来ます。

特に軽量で細いカーボンパイプをテールブームに使用した場合には強い見方になる
でしょう。
実際に使ってみると、ラダーの効きがスティックに良く付いてくる様な感じを受けます。


ブームが弱い、ラダーの効きが今ひとつ不安だと思っている方、ぜひお試し下さい。
重量の増加はノーマルの物と比べてもほとんど無いと思います。
ちなみにVirgil2K−1の垂直水平尾翼合わせて12グラムです。

サイドアームで投げる機体の場合、垂直尾翼が大きく右に(右利きの場合)
ねじれています。 スロー動画や分解写真、ランチ直後を撮った写真でそれを見る
ことが出来ます。

これらの機体はほぼ100%十字テールとなっていますが、垂直尾翼の上下バランス
を見直す事でねじれを解消する事が可能です。

ただし、下側に出っ張る部分が大きくなりますので着陸時には注意が必要ですね。


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