グスターヴ・ホルスト
Gustav Holst
1874-1934
イギリスを代表する作曲家の一人。セント・ポール女学校で教鞭を振るかたわら作曲に没頭し、
インド哲学や神秘主義に接近、「惑星」をはじめとする数々の作品を残すが、
死後、一般的に知られているのは「惑星」のみとなってしまっている不遇の作曲家でもある。
「惑星」だけの一発屋と扱われることも多い。
かつてはパーセル二世とまで呼ばれ、「惑星」の他にも、
民謡や東洋的な題材を用いた作品、吹奏楽曲、合唱曲なども残しており、実はそれらの作品にも隠れファンはいる。
だが、「惑星」以外の作品の録音は極めて少ない。
ホルスト:組曲「惑星」
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1961) DECCA 保留
ホルスト:惑星 他
指揮:マルコム・サージェント BBC交響楽団、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 録音:1961、56、57 EMI (★★★★)
併録されている作品もなかなか良い。「パーフェクト・フール」というバレエ曲は日本のゲーム音楽にソックリ。
ドラクエも聖剣伝説もこれをパクッたのだろう。特に聖剣伝説とは似すぎ。「ベニ・モラ」もそう。
だが惑星の破壊力には及ばず。肝心のその演奏は、お手本のような良さ。オーソドックスで乱れがない。
息を吸う音が生々しい。
ホルスト:惑星/J・ウィリアムズ:スター・ウォーズ
ズービン・メータ指揮 ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団(1971、1977) DECCA (★★★★☆)
カラヤン指揮ウィーン・フィルのレコードと同じく、「惑星」ブームを巻き起こしたレコード。
極めてオーソドックスな演奏で、これを買っておけばまず損はしない。
時々うねるようにテンポを揺らすことがある。この頃のメータは最強だった。
ホルスト:惑星、他
レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック(1971他) Sony (★★★★☆)
バーンスタインの超絶指揮にオケがひっぱりまわされるの図。
それでもバーンスタインの表現力には舌を巻かざるを得ない。
カップリングはエルガーの威風堂々第1番。こちらも名演奏。
追記:SACD化されたとのこと。聴いてみたい。
ホルスト:惑星、R.シュトラウス:ツァラトゥストラはかく語りき
ウィリアム・スタインバーグ指揮 ボストン交響楽団(1970,1971) DG (★★★★★)
なんという爆演。耳が潰れるかと思った。これでもかといわんばかりの爆発感、
スピード感あふれる疾走するようなテンポは一度聴くべし。それにしても録音がいい。
ホルスト:惑星
アンドレ・プレヴィン指揮 ロンドン交響楽団(1973) EMI CLASSICS 決定盤1300 (★★★★☆)
天下のEMIだが音の悪さはあまり気にならない、それほど演奏が素晴らしいということ。
冒頭の「火星」からテンションが高く迫力満点。
静かな曲では美しく、激しい曲では爆発する、平均的にめちゃくちゃレベルが高いお手本のような演奏。
それでいて凡庸におさまっているような指揮では決してない、こういうのを超名盤という。
特に「土星」「天王星」が素晴らしい。
ホルスト:惑星
ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団(1975) (★★★★)
火星は速く、他の楽章はゆったりと。特に木星の演奏時間は数ある演奏の中でも最も長いらしい。
ケレン味をきかせながらもスケールの大きい演奏で、実に特徴のある好演奏である。
他にストラヴィンスキー「火の鳥」組曲を収録。
ホルスト:惑星、エルガー威風堂々
ゲオルグ・ショルティ指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(1978、1976) DECCA (★★★)
う〜ん、ショルティにしては期待はずれ。表現も拙いし、演奏粗いし、素っ気ないし。あっさりしすぎ。
水星、木星、天王星、味気なし。
だいたいなんでこんなド派手な曲を、それこそシカゴ交響楽団とやらなかったんだろう?
どのくらいダメな演奏かというと、のちに同じジャケットでデュトワ指揮の演奏に差し替えられ、
デッカの中でなかったことにされているほど。
このアルバムでは、ボールトにも負けるし、レヴァインにも負ける。
同じデッカではカラヤン、メータ、デュトワにも負ける。
ショルティがこんな演奏をしてしまうほど、惑星という曲の指揮は難しいのだな、と思う。エルガーの方では凄い演奏をしているだけに。
ホルスト:惑星
エイドリアン・ボールト指揮 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(1978-79) EMI (★★★★☆)
さすがは惑星の初演者。どの楽章もお手本といえるようながっちりした素晴らしい演奏ばかり。
教科書通りなんていう言葉は微塵も感じさせない熱気の高さも凄い。
80歳近い指揮者の演奏とはとても思えない。今なお輝き続ける演奏。エルガーの「エニグマ変奏曲」を併録。
ホルスト:惑星
サイモン・ラトル指揮 フィルハーモニア管弦楽団(1980) EMI CLASSICS 決定盤1300 (★★★★★)
EMIにしては珍しく音も良い。だから「EMI CLASSICS 決定盤1300」シリーズは、EMIのなかでも例外的に好きだ。
この録音も好リマスタリング。ラトルは若干24歳にしてこの曲を録音。
そのセンスの光った格調高い、迫力満点の指揮は素晴らしい。
「木星」「土星」のスローテンポなキラキラとした解像度の高い演奏は忘れられない。
ホルスト:惑星
ロリン・マゼール指揮 フランス国立管弦楽団(1981) Sony (★★★★☆)
どろり濃厚。聴く人によっては嫌らしさ満点の指揮と思えなくもないが、僕はこういう味の濃い惑星の方が好きだ。
カラヤン指揮ベルリン・フィルとは別な形での惑星の頂点と言える。他にプロコフィエフ「3つのオレンジへの恋」を収録。
ホルスト:惑星
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1981) DG (★★★☆)
カラヤン・ゴールドと比べると本当に同じ演奏かと思う。まさか編集……
ホルスト:惑星
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1981) DG カラヤン・ゴールド (★★★★★)
DG輸入版のゴールドエディションは、素晴らしいリマスタリング(編集?)によって、圧倒的な演奏になっている。
どの曲も完璧な演奏といっても過言ではない。もっともスタンダードな演奏といえる。
編集を批判するのはおかしい。どんな演奏だって必ず音源化する際に編集入ってるんだから。
ホルスト:惑星/エルガー:威風堂々
シャルル・デュトワ指揮 モントリオール交響楽団(1986) ショルティ指揮、ロンドン交響楽団(?) DECCA (★★☆)
ショルティのアルバムのジャケはそのままに、惑星の演奏をデュトワに差し替えただけ(笑)。
おかげでふたつのオケがアルバムの中に無理矢理混入されてしまっているという珍事態になった。
デュトワの惑星だけが入っているアルバムを選びましょう。ショルティは蛇足すぎる。
なんでデッカは、変なカップリングばかりするようになったんだろう……。
ホルスト:惑星
サー・コリン・デイヴィス指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1988) (★★★★★)
知性的な名演。飾らずに金星・木星・土星をゆったりとしたテンポで聴かせてくれるのが好印象。
ミスが少なく、迫力も満点で、非の打ち所がない。
ホルスト:惑星、リムスキー・コルサコフ:ムラダ組曲
指揮:エフゲニー・スヴェトラーノフ フィルハーモニア管弦楽団 録音:1991 (★★★★)
スヴェトラ節炸裂! どのくらい異様な演奏かは、時間を見ればわかる。
火星は8'34(!?)、金星8'49、水星4'11、木星5'46(誤植)、土星9'52、天王星8'39(誤植)、海王星9'12。
いかに変かご想像はつくだろう。遅すぎて怖い。本当に面白いゲテモノだ。空中浮遊だ、まるで。
「ムラダ組曲」も良い。
オルフ:カルミナ・ブラーナ、ホルスト:惑星
「カルミナ・ブラーナ」デイヴィッド・ヒル指揮 ボーンマス交響楽団、他(1994)
「惑星」チャールズ・マッケラス指揮 ロイヤルリヴァプールフィルハーモニー管弦楽団(1988) Virgin (★★★★) 2CD
カルミナ・ブラーナと惑星がカップリングされ、2枚組みとなって発売されている。
カルミナの方はヒルという聞きなれない指揮者に、聞きなれないオケ。演奏は、迫力に欠け、合唱もおとなしく、素っ気なく、
お世辞にも合格点はやれない演奏。オケもやる気なし。
大体トライアングルが一番強いオケってなんなんだろう。
惑星の指揮はマッケラス。なかなかパワーがある。普通にいい。好感がもてる。
歌いあげるような「木星」、「天王星」あたりがすばらしい。好演だ。
ホルストが作曲したバレエ曲も入っていて、これがまた良い曲だった。
彼がゲーム音楽・映画音楽に与えた影響は大きい。
カルミナの方は完全にオマケだ。最初からカルミナもマッケラスが指揮していればよかった。
ホルスト:惑星
ジェイムズ・レヴァイン指揮 シカゴ交響楽団(1989) DG (★★★★★)
素晴らしい録音、圧倒的な迫力! 所々テクニックの拙さも感じるが、それを補って余りあるパワーと爆進力!
まるで戦車だ。最初の火星から圧倒されまくり、体が自然と動いてしまう。
そして物凄い音質! カラヤンとベルリン・フィルの演奏と並んで、トップクラスだ! 録音エンジニアはよくやったぞ。
ジェイムズ・レヴァイン大好き!
ホルスト:惑星、他 ジョン・エリオット・ガーディナー指揮 フィルハーモニア管弦楽団(1994) DG 保留
追記:SACDバージョンあり。
ホルスト:惑星
サー・コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団(2002 LIVE) (★★★★)
ベルリン・フィルの頃と比べてゴージャス感が増した。音もイギリスらしくなっている。丁寧な仕事は相変わらず。
少し合唱が弱い気がするが、ライブ演奏にしては信じられないほどの完成度を誇る。
ノイズは一切なく、ミスもない。