Roland TR-505 サウンドROM拡張ボード TREX-2の製作

製作:2020年11月3日~2020年11月10日
執筆 2020年11月14日
TREX-2 TR-505のサウンドROM拡張ボード"TREX"の音源メモリを8バンク構成にアップグレードしました。 基板上のICの配置を見直し、TR-505への組み込みに引っかかりやすかった問題も軽減しました。

TREX-2の組み立てキットとして用意した21セットの頒布は終了いたしました。ご購入いただいた皆様ありがとうございました。(2022/3/3)

開発経緯

TREX 3か月前に作ったTR-505の拡張ボードは、純正のROMに4倍サイズのフラッシュROMを併設する5バンク構成でした。 開発当初は追加した4バンクすべてを使い切るとは思っていませんでしたし、サンプラーを持っていた時代もろくに触りもしなかったので、これで十分だと本気で思っていたのです。
しかし、いざ使ってみると気に入ったドラムセットが増えてしまい、収拾がつかなくなってしまいました。 また、サンプルを書き換えるために頻繁にトップカバーを開け閉めするのですが、どうも部品のレイアウトが悪いらしく、トップカバーの内側とROMが擦れてしまうのです。 目視採寸でぎりぎりを攻めすぎたようです。

ある日の朝、目を覚ます瞬間にひらめきました。
「どうして同じサイズのICが並んでるのに片方の容量が小さいまま使ってるんだろう...。」
あと4本、足を処理するだけでメモリサイズが4倍になるんですよ。もったいない。ということで純正ROMを取り去り、4MbitのフラッシュROMを2個並べた新バージョンを作ることにしました。 8メガショックとでも言っておきましょう。

TREXからの変更点

TREXの開発時点でソフト的な機能はかなり煮詰めてしまっているので、使いもしない蛇足機能は追加せず、必要なところだけ改善するようにしました。

バンク切り替え信号の変更

回路図 TREXでは純正ROMの/CE信号をFETで作ったNOTで反転させてフラッシュROM側の/CEとし、A17, A18ラインを使って4バンクを選択しています。 純正ROMの時は1バンクしかないためアドレスラインは意味をなさず、常時"0"を出力していました。
回路図 新たな回路では、A17, A18を並列に接続してバンク選択を行いつつ、/CEを使って2つのチップを選択しています。基本ですね。 アドレスラインを引っ張ってくるだけなので、たいした変更ではありません。ソフトの方もバンク番号0~7を実直に処理するだけなので、5バンク構成よりも作り込みが楽になります。

押しボタン長押しでバンクリセット

バンク数を増やすと当然押しボタンスイッチの操作回数が増えてしまいます。ちょっとした便利機能ということで、押しボタンを1秒間押して離したタイミングでバンク0に復帰させる機能を追加しました。 機能を実装するにあたり、タイマー割り込みのプログラムサイズが大きくなったため、割り込みを使わずメインのプログラムループでタイマーのオーバーフローをポーリングするように変更しました。

電解コンデンサC1の廃止

一般的な電子回路では、電源を安定させるために電解コンデンサを入れます。 TREXのプロトタイプ基板には10μFの電解コンデンサC1を取り付けていたのですが、TR-505の電源スイッチを素早くOFF/ONするとTR-505のアドレスカウンタが誤動作して出音がおかしくなることが頻繁にありました。 TREXを取り外して純正ROMに戻すと再現しないため、試しにこのコンデンサを外したところ再発する事はなくなりました。
組み立てキット化した後もC1はそのまま未使用パターンとして残っていたのですが、ややこしいので基板変更に伴い廃止としました。

基板レイアウトの変更

TREXの基板レイアウトにおいて、TR-505との位置の基準点になるのは28ピンの連結ソケットと10mmの大穴の部分です。 ケース内部に接触しないようにするため、これらの位置を変更せずにROM ICの位置だけを変更する必要があります。 TREXでは基板上端のマージンにほんの少し余裕を作ってあったので、ROM ICを25mil(0.63mm)上にずらしました。

使ってみて分かったこと・製作過程で苦労した点

ドキュメント類置き場

TREX / SSTWRITER関連の販売に使っているドキュメント、ソフト類のリンクはこちらです。
TREX ファイル置き場 - Google Drive