4チャンネルミキサー付きステレオパワーアンプの製作

製作:2021年3月6日~2021年3月16日
執筆 2021年3月17日
IC1個で手軽に作れる簡易ミキサー付きのBTLパワーアンプを作りました。 チャンネルごとの音量調整はありませんが、出力は1.2W+1.2Wで2段階のゲイン変更機能が付いています。

概要

SJ-MR250 私の机の上には、かつて使っていたMDプレーヤのパワーアンプと小さなスピーカが置いてあります。 サイズは小さいのにそこそこの音量と低音が出る良いセットで、流石メーカーの設計という印象です。 MD付属のクレードルの内部にBTLのパワーアンプICが入っていたので、MDが壊れた時に取り出して流用していました。
近頃はPC・スマホ・モバイルオーディオプレーヤと音楽を再生する機械をいくつか所持しているのですが、日常的にこれらをつなぎかえて使っています。 実は楽器用のミキサーも所持しているのですが、携帯用のスマホやオーディオプレーヤを鳴らすために150Wも電力を食うミキサーを経由させるのは少々大げさです。 かと言って音楽を聴きながら一緒にTR-505などを鳴らしたいという時に備えて、簡易のミキサー付きパワーアンプを作りました。

わざわざ記事を起こしておきながら言うのもなんですが、今回使用しているパワーアンプIC「NJW1105」は残念ながらディスコンになっています。 Chip1Stopで在庫限りの新品が入手できると思って注文すると、なんと0.8mmピッチのSMDが届きました。完全に確認不足です。また引き出しの肥やしが増えてしまいました。 IC自体は普通のオペアンプなので、型番が異なっても考え方は同じです。そのあたりを応用できる方に是非参考にしていただけたらと思っています。

パワーアンプIC NJW1105について

リファレンス回路 NJW1105はBTLのパワーアンプが構築できるように内部配線された高出力のオペアンプが4個、1/2Vccを発生させるレールスプリッタ用のボルテージフォロワが1個内蔵されています。 データシートのリファレンス回路どおりに部品を接続すると、電圧利得が4倍のステレオBTLアンプが完成します。 MDプレーヤ付属のクレードルの中身はこの回路とまったく同じで手抜きだろと思いました。

回路としては、非反転入力から音声を入力、1/2Vccでバイアスした状態で1+(47k/47k)=2倍に非反転増幅されて出力、 その出力を1/2Vccでバイアスした10k/10k=1倍の反転増幅回路で増幅し、二つの差動出力をスピーカにつないで電圧利得は合計4倍という流れです。

入力ソースが1系統だけなので非反転増幅回路で受けていますが、この回路のままミキサーとして複数の音源から抵抗経由で入力すると、個々の出力電圧の変動に応じて信号が干渉してしまいます。 つまり、入力ジャックに音源を接続するか否かで他の音源の音量が変化するということです。これでは使い勝手が非常に悪いので、反転増幅の加算回路として動かすように自前で回路を考えないといけません。

反転増幅で受けてミキサーを付けた回路

こちらが今回作った回路図です。

他の入力ソースの影響を受けないように、反転増幅の加算回路で複数の入力を受けます。 注意する点として、反転増幅回路の出力は位相が反転するので、音源を入力している初段側の増幅部はスピーカのマイナス側になるということです。 そして、その出力を1/2Vccでバイアスした10k/10k=1倍の反転増幅回路でさらに反転し、スピーカのプラス側として使います。

ゲインの切り替えに関して説明すると、スイッチをオープンにした時の電圧利得は(5.1k+5.1k+10k)/5.1k=3.96倍(BTLで7.92倍)、 スイッチを閉じて10kΩをショートした時は(5.1k+5.1k)/5.1k=2倍(BTLで4倍)となり、非反転増幅回路の時のゲインと揃えてあります。

その他の部分、たとえば初段増幅の非反転入力は5.1kΩを通して1/2Vccでバイアスしていますが、値の根拠は入力バイアス電流のキャンセル用として3.4k or 4.07kΩを付けるべき所を手元にあった5.1kΩで適当に代用、 C_BIASはC_DIVと同じ意味で電源の変動を吸収するための物といった程度で、あとは適当にパスコンや電源コンデンサがぶら下がっている感じです。

基板の製作・ケース組み込みのポイント

今回は引き出しに眠っていたタカチのケースYM-90を使い、内部をいっぱいまで利用できるようにメイン基板とフロント基板の2枚に分けてあります。 もし分割せずに作ってしまったら...突き出たジャックがケースに当たって入らねーよと泣きを見るポイントですね。 オペアンプの入力・帰還まわりは最短で配線せよというのが定石ですが、今回はスイッチで帰還抵抗を切りかえるので、どうしてもルートが長くなってしまいます。致し方ないでしょう。 両面基板を使うと固いガラエポになって加工が面倒なので、片面のガラスコンポジットを使っています。 実装面積を稼ぐために電解コンデンサは超小型のUMAシリーズ(φ3mm/L=5mm)を使い、抵抗と小容量のコンデンサは1608サイズのチップ品を裏面に実装しています。

(右写真)ハンダが流れるので付けにくいのが難点ですが、レジストがかかっていないピカピカの基板大好きです。 参考までに、デザインルールは電源の一部を80mil、それ以外は40mil、GNDベタ処理をしてクリアランスは15milと設定してあります。 サンハヤトの感光基板は10mil/10milあたりが限界ですが、今回はそこまで攻める必要はありません。(mAQUOSは10mil/7milで作っていました)

製作過程で苦労した点・使ってみて分かったこと