概要と製作経緯
ケーブルの断線はコネクタの根元などで半断線の状態から始まり、曲げた時に繋がったり繋がらなかったり、繋がっていても不安定な抵抗値を示したりするところから症状に気付くことが多いと思います。
ホームセンターなどで手に入るテスターには音で確認できる導通チェックが備わっているものが多く、一定の抵抗値を下回ると音が鳴って知らせてくれます。
しかしテストリードの接触抵抗を考慮に入れているのか結構高めの閾値(例えば50Ωなど)に設定されているものが多く、ごく短時間のガリやチャタリングのような断線で「一瞬音が途切れる」のを耳で聴き分けるのは意外と難しいのではないでしょうか。
今回は汎用のテスターよりも低い2Ωの閾値を持ち、閾値以上の抵抗値を検出すると断線状態を記憶(=ラッチ)してリセットボタンを押すまで維持し続ける断線検出用のテスターを製作することにしました。
回路構成
抵抗検出部
ホイートストンブリッジで2Ωの平衡を検出し、コンパレータLM311で閾値を上回っているか否かを判定します。
閾値を可変できるようにすると使いやすいと思ったのですが、今回は2Ωという低抵抗で利用可能な可変抵抗が無い事や、差し替え可能なソケット式にしてもそのソケットの接触抵抗で閾値が不安定に変化すると本末転倒なので、閾値は固定式としました。
LM311の応答速度はおよそ200nsと非常に高速で、汎用テスターと比べると断線の検出時間としては申し分ないレベルです。
ブリッジ両端にある100Ωはブリッジ自体の抵抗値が低いため、電流を制限するとともに端子間電圧を下げる目的で取り付けたものです。
ラッチ回路
ラッチ回路はNANDゲート7400で作った負論理入力のSRラッチを使いました。
LM311のアクティブハイの信号は余ったゲートをNOTとして使い論理反転しています。
ラッチの出力は単純にLEDを接続してOK/NGの表示に使うとともに、NG側にはブザーをつないであります。
測定対象を接続していない場合NGの状態でブザーが鳴り続けて煩いので、ブザー停止スイッチも付けました。
動作テスト
ブリッジを構成している2Ω1%(実測2.08Ω)の抵抗をつなぐと断線状態となり、並列に22Ω5%を入れて実測1.93ΩではOK判定になりました。
テスト端子の接触抵抗で若干不利な方向に傾いているのだと想像され、閾値としての2Ωは正常に機能していることが確認できました。
テスト端子間の電圧を測定すると、電源5V使用時に100mVで計算通りの結果です。
使ってみた感想・製作過程で苦労した点
- 瞬間の断線を見つけるのにとても役立った。
- ダミーコネクタをハンダ付けした専用のテストケーブルを用意すると、コネクタの接触抵抗を排除して簡単に計測できる。
- ケーブルを何本もテストする場合、正常なケーブルを取り外してもNG状態になるので、ラッチ状態の解除が煩わしくブザーがうるさい。1本のケーブルをじっくり検査する用途の方が適していると思う。
- 寄せ集めで用意したブザーが意外と大きく、スイッチやターミナルの邪魔になっている。もう少しよく考えればよかった。
- 小さなケースに組み込む前提で作っていたが、テスト端子や電源をつなぐターミナルを基板に取り付けてしまったのでケースに入れられなくなった。 仕方ないので裏面の絶縁だけでもと思いアクリル板を取り付けておいた。