文 様

ACT SEIGEI-THEATERという小さな映画館は毎日朝から深夜まで色々な映画を上映しています。
そしてときどきスクリーンを閉じて映写機を止め、光の粒でなく生身の人間が動く舞台に変わるようです。
私にとりまして約三年ぶりの舞踏公演が、ACTダンス・シアターでおこなわれることになりました。
今回『文様』にはながく追求してきました月光のかたちがリフレインされるはずです。
美術に加藤啓、音に一柳泰彦、衣装に新井喜和子の三氏を迎え、この機を弾いてみようと思っております。
演目予定:あみあみ 出窓の怪 あなは呼んでいる プラハ 放心遠近腺 月光のルフラン

「文様」案内状より

 

月は空に浮かぶ穴、虚が一瞬一瞬凝集する変数である。
月光という現象によって他に作用する。

月は冷たい虚の器。
虚の器が生きるのは実のからだが盛られた時。
月はふるえて輪郭をあらわし、自らを透明化する。
透明化という現象のことである。
恥じらいの薄化粧だけが残光となって宙に浮く。

光の裏はあばたの影。
目を閉じると薄れゆく意識のなか、生命の文様と、月の器の相が、幾重にも繰られる。
これが月影である。

月はK音を発する。
無速。

虚体にしてはじめてあらわれる文様。
吸い込まれそうなバランス。
今にもくずれる平衡を変化させつづける、感応装置。
虫の息。

ていねいに階段をおりる。
高みに光はない。
からだの深みにその光はある。
いったんその淵にあれば騒いでも泣いても笑っても静かなのだった。

私は私からすでにずれている。
距離を正確にはかることが技。
変調。

忘れるを忘れる 
生きるを生きる 
踊るを踊る 
対象をもたない動詞が重なることでやっと風が吹く

からだを切ると澄む。
からだを切ると蛇になる。
頭部と腰部の変位。

「花を見るな」
見えない花を見ようとするな。
昼の月は見えない。

自己に対するエキゾチシズム。
胸に水の穴。舟を浮かべた。
とたんにしっぽがはえる。
垂直に立ってやがて脊椎に重なる。

イメージは形象化されていた。
見えた(気づいた)瞬間に運動が始まる。
そこにおいてものすごい早さで時が逆流する、
あるいは見えた私以外の私が、遅れた時間を取りもどさんと形に向かってほとばしる。
流れを流れる技。
形を時に戻して動く技。
そしてイメージは昇華され消える。
形は透明化(輪郭化)し、形象化の企図は不在となる。

二人で踊るソロ。三人で踊るソロ。

時間を先取りする。
間隙を弾く音。
予測の実現は見えない余韻となる。
空間の作業は時間を動かし、時間の作業は空間化される。

「月光のルフラン」(「文様」のためのメモ)

 

performances

月光(序曲)
1991/7/24 東京/physique2B [未来からの風3]

文様
1994/2/25 9:00PM ACT SEIGEI-THEATER企画「ACTダンス・シアター」
音=一柳泰彦 美術=加藤啓 衣裳=新井喜和子

文様〜月光のルフラン
1994/8/19 福岡/IMAGE MAKER 青龍会企画「舞踏の現場」
照明=田中敏

独舞再踏第三回 文様 PATTERNS
1997/3/12 横浜/イギリス館

文様:強風の一夜 Uma noite de Vento Forte
1997/8/23,24 サンパウロ/テアトロ・ヴェント・フォーチ

文様 Mon-Yo
1997/9/19 ローマ/テアトロ・フリオ・カミーロ