荒 城 の 月  (mp3)

                   作詞:土井晩翠  作曲: 瀧 廉太郎


 平成13年5月、私どもは「いとこ会」を開いた。全員が60歳を過ぎ、中には50年以上会ったことのない顔ぶれもあった。宴を終え、「いとこ会」は岐阜市にある加納城址を訪ねた。



 加納城は関ヶ原の戦いに勝った徳川家康が、西国の勢力に備えるため、1601年に築城した。併せて城下町が整備され家臣団が集住し、加納の地は中山道沿いの宿場町として、美濃地方では最も賑わいを極めたという。その加納城は明治6年(1873)に取り壊され、以降、荒れるに任された。

 昭和12年(1937)、私は加納西丸町に住む祖父母と暫く起居をともにしたが、そのころの加納城は笹藪 が小学校一年の私の頭を覆うほど生えており、子供たちの戦争ごっこの遊び場所であった。

 昭和16年、私は再び祖父母と起居をともにすることとなる。このころの加納城には日本陸軍の通信隊が事務所をかまえ、一般人は立ち入り禁止となっていた。

 敗戦後の昭和21年(1946)、加納城は米国進駐軍の事務所となったが、空襲で焼けたキリスト教会が土曜日と日曜日に限り進駐軍の事務所の一室を借りて日本人向けに礼拝を行っていた。

 そして今は、本丸周辺の約4万平方メートルが史跡として指定され、桜や松が植えられた公園となって一般に開放されている。



                 春高楼の 花の宴
                 めぐる盃 かげさして
                 千代の松が枝 わけいでし
                 昔の光 いまいずこ

                 天上影は かわらねど
                 栄枯は移る 世の姿
                 写さんとてか いまもなほ
                 ああ 荒城の 夜半の月



 50年ぶりに加納城址に立った、「いとこ会」の面々の心中に去来した感慨は果たして何であったろうか。