● 鴨長明 1155頃〜1216 久寿2頃〜建保4


鎌倉初期の歌人,文人。中世隠者の代表的人物の一人。法名蓮胤(れんいん)。京都下鴨神社の衝宜鴨長継の次男。

7歳で従五位下となり二条天皇中宮高松院の北面に伺候するなど恵まれた幼少期を過ごしたが,1173年(承安3)19歳のころ父(35歳)を失って以後曲折多い生涯を送った。

芸術的才能に富み,和歌は若くより俊恵主宰の結社〈歌林苑〉最末期の会衆に加わり,琵琶は楽所預中原有安に学び,ともに熱心に指導をうけた。81年(養和1)《鴨長明集》を自斤。1200年(正治2)後鳥羽院主催の〈正治二年院第二度百首〉の作者に加えられ,翌年《新古今集》斤進のため院が再興した和歌所(わかどころ)の寄人(よりうど)に選ばれて諸歌合に活躍,精勤ぶりに好意を抱いた院は亡父の旧職たる下鴨神社末社の河合社の衝宜に長明を任じようとしたが,下鴨神社惣官鴨祐兼の反対により成らず,04年(元久1)50歳で失踪筒世した。

洛東大原で5年を送った後,08年ごろ洛南の日野に方丈の草庵を構え数寄を愛する生活を送った。

11年鎌倉へ下向,源実朝に謁する。この年,歌論書《無名(むみよう)抄》,翌年随筆《方丈記》を執筆。説話集《発心(ほつしん)集》の完成は14年ごろ。

《方丈記》《発心集》を通じて強烈な意志に支えられた筒世者の生きざまに憧憬を抱きながら,それに徹底しえないみずからの心の弱さを凝視告白している点が彼の魅力となっている。《新古今集》に10首入集。  村上 学

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