緊急特集 映画『パールハーバー』について
この間ひょんなことから時間が空いたので、話題になっていた映画『パールハーバー』を見た。結論から言えば、いろいろ言われてる映画ではあるが作品的にはたいしたことなかった。ある批評では、名作でも問題作でも駄作でもなく、「珍作」であると紹介されていたが、的を射ている。
いまだ公開中なのでネタバレしない程度に、ストーリーを紹介するなら、テネシー州で兄弟同然に育ったレイフ(ベン・アフレック)とダニー(ジョシュ・ハートネット)は陸軍航空隊の戦闘機パイロットとなる。そしてレイフは軍の健康診断に来ていた看護婦のイブリン(ケイト・ベッキンセール)と出会い恋仲となる。欧州大戦の英国不利が伝えられる戦局のなかで、上司のドゥーリットル中佐はレイフに英国空軍中立国義勇隊(イーグル部隊)への志願の話を持ってくる。レイフは迷いながらも志願する。恋人イブリンに「必ず戻ると」別れを告げ、そしてダニーにはこれは「命令」だからといい、「万一のときはおまえから彼女に伝えてくれ」と言い残して英国に出撃する。
ダニーとイブリンはハワイ・真珠湾に転属となり、のんびりとした(わるくいえば堕落的な)生活を送る。レイフからは悲惨な戦局をつたえる便りが届く。一方水面下で日米関係の緊張は一触即発となっていく。ある日ダニーの元にレイフ戦死の知らせが届く、ダニーはイブリンに伝え悲しみを分かち合う。そしてお互いにレイフの思い出を語りあい、励ましあっていくなかで、ダニーとイブリンの間に愛が生まれていく。しかし思いもよらぬ事態が起こる。12月6日、戦死したはずのレイフが奇跡的に助かって戻ってきたのだ。レイフ、ダニー、イブリン複雑な感情の絡み合いは、酒場に舞台を移したレイフとダニ―の鉄拳の雨になる。その混乱から二人は車で抜け出しそのまま眠ってしまった。そして12月7日の朝を迎えると・・・というとこである。
戦争映画じゃなくてラブストーリーだという宣伝もあったが、それにしては三流の三角関係ストーリーで、歴史考証を「意図的に」サボったかのようなお粗末さを隠すための言葉ではないかと思えてしまう。戦闘シーンにこだわったという割に、登場する零戦は真珠湾攻撃当時は三菱製21型(白)なのに大戦末期の川西製52型(緑)になってた。これに対するマイケルベイ監督のコメントは「緑のほうが映えるから」だそうだ。ここからして戦争映画でも歴史ロマンでもないといえる。しかも仲たがいした主人公が攻撃が起こって仲直りして共に戦うんじゃ、「男女の愛を奪い、男たちの友情を引き裂い」たのは欧州大戦のほうで、むしろ日本軍のおかげじゃないかとツッコミたくなる。
この映画のウリがCGと実写を織り交ぜた、3時間映画の45分におよぶ戦闘シーンでこれは確かに迫力があった。ただここでも史実的には事実誤認がある。ゼロ戦が、主人公が操縦する旧式のP40にボコボコ撃墜されたり(実際はゼロ)、ゼロ戦がおぼれた兵士や民間人を機銃掃射したり(これはアメリカの方がやったこと、日本は弾丸の節約のためやらなかった)、山本五十六が赤城に乗ってたり(南雲中将の立場は・・・)、連合艦隊の軍議を鳥居がある河川敷でやってたりするのに至っては呆れてモノが言えない。
戦闘シーン以降はアメリカ万歳の国策映画に成っていて。ルーズベルト(ジョン・ボイト)が真珠湾攻撃さるの電報を見ると。ショックで思わず紙を落としてしまうという。クサ過ぎる演出と「リメンバー・・・」の演説やドゥーリトル空襲があって、結局締めかたは今のアメリカの繁栄はこういうことのおかげですといううことでおわり。
もしテレビでやるとしたら真中の一時間だけ見るだろうね。確かに日本軍の出撃シーンは武者震いするほど
感動的だった。あれだけを1000円で見せるんなら安いかもしれない。腐りきった米軍に日本軍が叩きなおし気合を入れに行くようなストーリー展開になっているんでね。
もっとも危惧するのは、これを相対化するだけの歴史的予備知識がない人間がこれを見て、これを史実だと勘違いすることの方が恐ろしい。この映画を見た後、口直しにレンタルビデオ屋に寄り『トラ・トラ・トラ』を借りてみた。30年前の映画にもかかわらず、PHに負けない、いや歴史考証やキャストなど総合的にははるかに凌駕しまくっている作品に感動し、その偉大さを再認識させられた次第である。このストーリーで現代のCGがあればさぞかしすばらしいだろうと想像しつつ筆を置く。