中国新聞   2000年(平成12年)11月19日(日曜日)版 (3) より
因島市愛媛・上島諸島4町村
越県合併目指し連携
 因島市と愛媛県越智郡の上島諸島(弓削町生名村岩城村魚島村)との間で、県境を越えた合併の可能性を探る動きが出ている。五市町村は五月、行政の連携を進めようと連携交流協議会を設置。将来の合併に向けた環境づくりが進みつつある。ただ、全国でも四十年ぶりとなる越県合併の実現には、架橋の整備や漁業権をめぐる問題などの課題が待ち受けている。
実現すれば全国で40年ぶり
架橋・漁業権…課題多く
今治市内のホテルで十月三十日に開かれた、愛媛県加戸守行知事と越智郡などの首長が会談した「えひめトップミーティング」。弓削町の木下良一町長は「住民投票した場合、広島側になるかもしれない」と、因島市との合併の可能性を示唆した。これに対し、加戸知事は「県境越えをタブー視するわけではない。住民の意思が示されれば、広島県側とも討議する用意がある」と回答した。

航路通じ交流発達

上島諸島の航路は因島を中心に発達してきており、双方のつながりは深い。上島の四町村は、雇用や経済、医療などを長年にわたって因島市に依存。日立造船因島工場をはじめとした造船・関連企業には、生名村や弓削町などから通勤する人が多く、市内のスーパーや商店街も上島諸島の人たちの生活を支えている。四町村のうち、最も因島との関係が深いのが生名村。両市村を隔てる長崎瀬戸の距離は、わずか約三百b。村営渡船が一日四十九往復し、「因島のべッドタウン」と呼ばれている。 昭和三十年代初め、生名村では因島市への合併機運が高まり、村議会が合併を決議するなどした。しかし、越智郡や今治市の漁業者が船団を組んで生名島沖で海上デモし、愛媛県も反対したため、結局「破談」になった。が、「今でも因島との合併を望む住民は多いはず」と田尾紀村長は見る。
 愛媛県側よりも、生活圏として結ばれた因島市に対する親近感が強い上島諸島だが、実際の合併となれば、交通網の整備が大きな課題になりそうだ。

サービス低下懸念


四町村で因島市から最も遠く約二十`離れた魚島村。佐伯真登村長は、因島市との関係の探さを認めながら、「隔絶性の高い島には合併自体のメリットがない。村民には、行政サービスの低市や、人口流出への懸念が強い」と言う。
 生名村と同様、因島市と隣り合う弓削町の木下町長も「架橋や船便の増強がなければ、合併の意味がない」と言い切る。因島市の村上和弘市長も「上島架橋の整備と同時進行で合併を考えていかなければならない」と強調する。

両県は理解を示す

 今回の県境を越えた合併論議について、両県は理解を示す。広島県広域行政推進課は「関係自治体や住民の意向がまとまれば、積極的に支援したい。愛媛県との具体的な協議も行う」。愛媛県市町村課も「最終的には住民の意思を尊重したい」としている。
 だが、愛媛県側の漁業者には依然、反対意見がある。越智郡宮窪町漁協の高取武則組合長は「岩城村沖などは好漁場で、広島側になればこの辺りの漁業者の死活問題。できるだけ避けてもらいたいのが本音」と打ち明ける。
 自治省によると、戦後に進められた越県合併は六件。一九五九年の群馬県桐生市と栃木具足利郡菱村の合併を最後に、四十年以上、実現していない。
因島市と上島諸島との合併は、島しょ部という条件的な難しさも加わる。合併実現の行く手には、まだハードルが横たわってい
.。

広島県市町村合併推進要綱 しまなみ協議会
トップに戻る