「きた」左側の竿にアタリだ。すぐに竿を手に取ると、一気に入った。
そこで大きくアワセ、すぐにリールを巻こうとすると、そのままグイグイと引き込まれるではないか。
 大きい、ついに待望の5Kgのイシダイが来た。バラしてなるものかと、力一杯竿をたてた。
根に入られてはと、懸命にリールを巻くと、魚が水中を少し浮いた。
早く巻かなければと、心が焦る。少しずつではあるが、リールが巻ける。
4kgはあるナ。これが大型イシダイの引きなのだと思いながら、何とか無理やりリールを巻くと、
3メートルばかり下の磯に魚が見えた。カンダイだ、昨夜のテレビで見たばかりなので、
魚がカンダイなのはすぐにわかった。一瞬抜き上げようと思ったが、大きい、重すぎる。
どうしようかと迷った。同じ島(太海の棚)に渡船者が1人上物を釣っていた。手伝ってもらおう。
それまでは1人で釣り上げたいと思っていたので声をかけなかったが、「タモ、タモ、」と呼んだ。
上物師がタモを手に走ってきた。大急ぎでタモを伸ばし魚の方に寄せてくれるが、なかなか入らない。
しばらくそんなことをしていたが、どうにも魚が大きすぎる。ダメだ、タモではどうにもならない、
どうしようかと考えた。
そうだ。以前、三宅の三本に渡船したとき、メジナを波に乗せて取り込んでいた、それしかない。
磯を見ると、5メートルばかり右側に波の寄せる岩礁がある。そこに乗せるしかないと思い、
右側に足場を移動する。しかし、うまく波に乗らない、波が引くとき、非常に重い。
もうバレてもしかたない、などと考えていた。
なんとか岩礁に魚を引き寄せた。もう少し上までと思ったが、次の波が来ない。
波が止まっているように見えた。今だ、上物師に竿を渡し、糸を張っていてもらい、急いで下の磯に
降りていった。カンダイという魚を実際に見たのも初めてなので、エラに手を入れるのをちゅうちょしたが、
早くしなくてはとエラの中に手を突っ込んで持ち上げ、磯の上の方に引きずり上げた。
よく見ると、巨大なのにびっくりした。何kgぐらいあるのか、見当もつかない。時間は午前11時頃だった。
帰りの船がくるのは午後1時の約束になっていたので、それからまたしばらく、イシダイ釣りを続けた。
しかし、もうアタリはなかった。

南房 太海のタナでカンダイ 16,5kg