「人間の視覚は、感覚器官の中で80%もの知覚能力を持つ中心的器官なのよっ!」

会長がいつものように小さな胸を張ってなにかの本の受け売りを偉そうに語っていた。

というか、かなりの確率で教科書だろう。保健体育か、中学の頃の理科の教科書を引っ張り出しでもしてきたのか。

「というわけで、今日の活動はこれっ!」

そんな俺の思考を余所に、キュッキュッと会長専用のピンクマーカーが、ホワイトボードの上を滑る。

「「「「・・・」」」」

そうして出来あがった丸っこい字の羅列を見て、俺――杉崎鍵を始めとして生徒会役員たちの心は一つになった。

「というわけで、ラジオの校内放送も経た私たちの次の活動は、ずばりプロモーションビデオのさt」

「「「「却下(です)」」」」

「即答!?」

唯一唖然とした表情を浮かべているのは、この生徒会の長である桜野くりむ。更に追撃をするように、他の役員たちが口々に却下の理由を並べる。

「当り前だろ? そもそも、そこまでして今の生徒会を売り込む必要性が感じられねーし」

俺の隣の席からは、ボーイッシュ女子高生の椎名深夏が、持前の男口調で至極尤もな正論を披露し。

「あと、ラジオはともかく映像というのは・・・恥ずかしいです」

その向かいの席で文庫本を読んでいた、儚げな雰囲気を持つ深夏の妹、椎名真冬が消え入りそうな声で恥じらい。

「それに撮った後はどうするの? ラジオ放送とは違って、各教室に映像を映す媒体なんて置いてないわよ?」

そしてとどめとばかりに、俺の向かいの席に座る「女子高生にして美人」という希少キャラ、紅葉知弦が冷静に断じた。

「うっ・・・そ、そんなの些細な問題じゃない。全部何とかするわよ・・・杉崎が」

「わお、清々しいほどの丸投げですね」

「・・・してくれないの?」

「全力で取り組みます!――――はっ」

瞳を潤ませて、上目遣いで頼んでくる会長のお願いに、俺は気が付けば即答していた。

いや、だって、ねぇ。普段はまったくデレてくれない会長の上目遣いなんてレアな攻撃、そりゃ一撃必殺にもなりますよって感じで。

上機嫌になった会長以外の、他の三人のジト目が突き刺さるが、こうなった以上は開き直って説得するしかない。

「深夏、深夏」

「なんだよ、言っとくけどあたしは何を言われても―――」



「や ら な い か」



「やらねーよ! 改行すればいいと思うなよっ!!」

「熱血、戦闘、特殊能力」

「よしっ、のったぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「「えぇ!?」」

まさかの即断に、知弦さんと真冬ちゃんが驚いていた。そう言う俺も、ここまで上手くいくとは思っていなかったが・・・このキーワード戦術はなかなかイケるんじゃないか?

俺は、次のターゲットに狙いを定める。

「真冬ちゃん、真冬ちゃん」

「な、なんですか? 私はお姉ちゃんとは違って、そう単純には―――」

「BL、鍵×善、許されない関係」

「やりましょう、先輩。何が何でもやり遂げましょう」

「・・・真冬ちゃんまで」

とうとう反対派が一人になってしまった知弦さんが、額に手を当ててこの惨状を嘆いていた。

しかし、俺とて不安になってきた。勢いに任せて二人を説得したが、熱血とBLが絡み合うPVを、どう作ればいいのだろうか。

まあ後のことはその場で考えるとしよう。とりあえず今は、会長の好感度を上げることだけを考える。

「さて・・・」

そして残ったのは知弦さんただ一人。だがこの人の場合、先ほどのような説得の仕方じゃ通じないだろう。

確かにこの人のキャラも濃いが、基本的に冷静な常識人だ。「ムチ、ロウソク、妃殿下」とか言っても前の二人のように二つ返事の了承は得られない。

だとすれば・・・ここは切り札を出すしかない!

「知弦さん、知弦さん」

「何かしら? 言っておくけど、私は深夏や真冬ちゃんのようにはいかないわよ?」

「ふふふ・・・コレを見てもそんな事が言えますかね?」

そっと、知弦さんだけが見えるようにして、俺の携帯の待ち受け画面を見せる。

「――っ、こ、これは!」

知弦さんが目を見開く。当然だ。俺が見せたのは、彼女の「アカちゃんの寝顔シリーズ」の中でも上位に食い込む、非常にレアな「よだれ垂らしver」なのだから。

以前に生徒会室に来た時、部屋の中には会長しかいなかった。しかも無防備にも熟睡しているものだから、とりあえず携帯のカメラモードで五十連写くらいした中の一枚。

普段は背伸びしまくっている会長だからこそ、こうした非常に気の抜けた写真はレア度が増す。・・・いや、まあ基本的に会長は隙だらけだけど。

「どうです、知弦さん?」

「これも生徒会の活動の一環なのだし、是非協力させて頂くわ」

一秒で堕ちた。他の皆は不思議がっていたが、写真を見られるわけにはいかない。特に会長には。

「さ、会長。準備が整いましたよ」

こっそりと知弦さんの携帯にさっきの写真を転送しながら、そう会長に笑い掛ける。

彼女は未だに釈然としない様子ながらも「ええ」と答えて、そして再度その小さな胸を張って宣言した。


「それじゃあ、生徒会のプロモーションビデオの撮影を始めるわよっ!!」





生徒会の一存シリーズ SS

               「撮影する生徒会」

                           Written by 雅輝








「さて、準備も整ったことだし、始めましょうか」

大方会長に泣き落としでもされたのか、放送部により準備が整った生徒会室。机は全て端に寄せられ、中央にスペースが作られている。

とはいえ、大掛かりなものでは勿論無い。照明は頭上の蛍光灯で事足りるだろうし、そもそもそんな設備は、いくら碧陽といえど無いだろう。

なので準備されたものといえば、少し本格的なビデオカメラと三脚。後は椅子に座ってふんぞり返っている会長が手にしている、カチンコ――撮影開始時とカット時に鳴らす拍子木のようなもの――くらいだ。

「ちょっと待ってください、会長」

「なによ、杉崎。あと、私のことは会長じゃなくて監督と呼ぶこと!」

あぁ、だから普段は絶対に被らないようなキャップ帽を被っているのか。キャップ帽イコール映画監督ってイメージが、彼女の中にはあるのだろう。

「――じゃあ監督。撮影の前に、大まかなシナリオは作らなくていいんですか?」

「シナリオ?」

「ええ、いくら生徒会のPVだからって、何かしらのコンセプトくらいはいるでしょうし」

「だったら、熱血だな!!」「BL要素が良いと思います!!」

「「「・・・」」」

ほとんど同時のタイミングで、天高く片手を伸ばす椎名姉妹。今日はアレか、椎名姉妹が暴走する日なのか?

先ほどのキーワード戦術の代償が早くも回ってきたことに、流石に冷や汗を隠せない。

『ど、どーすんのよ杉崎。何とかしなさいよね!』

『何とかって言われても・・・知弦さん、何か良い案はありませんか?』

『無いことはないけどね。それをすれば、あの二人は一生モノのトラウマを抱えることになるわよ?』

『『らめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!』』

三人でアイコンタクトを交わすも、知弦さんの意見は聞くまでもなく却下だ。会長と二人で、ブンブンと首を横に振る。

「・・・とりあえず、二人の意見を参考に撮ってみます?」

「まあこのまま何もしないよりは・・・」

「いいかもしれないわね。その内、何かアイデアも出てくるでしょう」

俺たち三人は、熱血かBLかで言い争っている姉妹を見て、嘆息しながら準備を始める。

―――しかし熱血要素もBL要素も生徒会の活動とは無縁だというのに、いったいどんなPVに仕上がるというのだろうか。





〜テイク1〜  「熱血とBLの狭間」 シナリオ考案:椎名深夏 椎名真冬

キャスト:杉崎鍵 特別出演:中目黒善樹



「超魔爆炎覇ぁぁぁぁぁっ!!」

「うわぁああああああああああああっ!」

俺が放った超高熱の波動が、敵を――組織のNo.2の特殊能力で操られた俺の親友を呑み込む。

嫌でも耳に入ってくるその苦痛な叫びを甘んじて受けながら、俺は奥歯を噛み締めた。

――長年パートナーとして仕事をこなしてきた親友。まさかあいつが、敵の魔の手に掛かってしまうなんて、今になってもまだ信じられない。

だがこれは現実だ。洗脳を受けたことであいつの強さは限界を振り切り、俺も本気を出さざるを得なかった。

「うぅ・・・っ」

俺の技によって中目黒の軽い華奢な体は吹き飛ばされ、十数メートル先の壁に大きなクレーターが穿たれる。そしてずるずると落ちた奴の瞳には、既に光が戻っていた。

「中目黒っ!!」

洗脳が解けたのだという結論に至った瞬間、俺は駆けだした。壁までの距離がやけに長く感じる。

「すぎ・・・さき、くん」

目の前まで来て、足を止める。――もう助からないと、直感的に悟ってしまった。それは俺が放った技の所為でもあり、脳というリミッターが外れたことで体を限界まで酷使してしまった所為でもあった。

「中目黒・・・すまない」

心なんてとうに捨てたと思っていたのに、何故か涙が溢れそうになった。

だがそんな弱さを見せていいわけがない。俺は表には出さないように気を付けながら、膝をついてその冷たくなりつつある手を握った。

「こっちこそ、ごめんね・・・杉崎君に、余計なものを背負わせちゃった」

奴は気丈にも、いつもの笑顔でそんなことを言う。粉々になってしまっている眼鏡が何とも痛ましい。

「余計とか・・・言うなよ。まだ助かる。だから―――」

「無理、だよ。杉崎君だって・・・分かってるで、しょ? 僕も、分かる。自分のこ、とだから」

次第に、中目黒の声が途切れがちになる。それでも奴は、その儚げな微笑みを崩したりはしなかった。

「――最後に、一つだけお願いしていい?」

「・・・ああ、何でも聞いてやる」

「キス、して欲しい、な。もうこれ、からは、出来なく、なっちゃう、から」

「――分かった」

これが、最後の口付けだ。せめて永遠に、中目黒が俺を――俺が中目黒を覚えていられるように。

頬に手を添える。俺はその震える唇に、そっと顔を近づけてくぇrちゅいおp@あsdfghjkl;zxcvbんm、。





「出来るかあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」

――天高く、全力で叫んだ。

「カーット! 杉崎、ちゃんとやりなさいよ!」

「いやいやいやいやいやいや! ・・・いやいやいやいやいやいや!!」

会長の方を振り返り、涙目で否定する。思わず繰り返してしまうほどの衝動だった。

我ながら恐ろしい。演技に熱中するあまり、中目黒の顔が実際に目の前に迫るまで気付かないとは。

「なんだよー、そこは演技でもしとけよなぁー」

深夏。思った以上に熱い展開だったのは認めるが、このやりきれない殺意はどこにぶつければいいんでしょうか?

「あぅ・・・残念です」

残念なのは自分用のビデオカメラを構えていた君の方だよ、真冬ちゃん。

「杉崎君・・・」

そして何でお前が一番残念そうなんだ、中目黒。・・・いや、やっぱり知りたくないからいいや。

「でも、意外とシナリオはしっかりしてたわね。流石は姉妹といったところかしら」

知弦さん。冷静にそう言いつつも、俺と中目黒が顔を近づけたシーンを何度もデジカメで激写していた貴女は、その写真を何に使われるのでしょうか?

「っていうか、これ生徒会のPVでしょう!? 生徒会まったく関係ないじゃないですかっ!!」

「盲点だったわ」

「そんな冷静に・・・」

「盲点だったわ☆」

「星を付けても駄目です!」

「紅葉☆知弦」

「だから何のために!? それにそのネタは前にやりましたよっ!!」





「さて、じゃあテイク2に行くわよっ」

「はあ・・・」

もう既にテイク1だけで疲れきってしまった俺は、まだ張り切っている様子の会長の言葉に、げんなりと生返事を返す。

次の撮影に出番が無ければ休めたのだが、シナリオ担当である知弦さんから既に「全員参加ね?」と威圧されてしまったため、それも叶わないだろう。

「さて・・・うわぁ」

覚悟を決めて、知弦さんから渡された台本に目を通そうとするも、その表紙に印字された題名を見ただけで思わず泣きそうな声が漏れた。



〜テイク2〜 「生徒会室の惨劇」 シナリオ考案:紅葉☆知弦

キャスト:桜野くりむ 紅葉知弦 杉崎鍵 椎名深夏 椎名真冬



私立碧陽学園。

この学園の生徒会役員は学園の全生徒の人気投票という稀有な審査法で選抜されるため、役員たちは総じて美少女が選ばれる。美男子は往々にして男子から反感を買うが、美少女は男子女子共に憧れるケースが多いためだ。

よって。そうして集まった「憧れの女の子達」で構成される碧陽学園生徒会室は、いつしかこう呼ばれるようになった。

そう――――惨劇の館、と。



「カットーーーーーーーーーーーーーーー!!」

会長がカチンコを何度も鳴らしながら、必死に撮影の中止を訴えていた。

気持ちは痛いほどわかる。俺は今回ナレーターを任されているのだが、まさか生徒会の紹介で「惨劇」なんて言葉を口にするとは思っていなかった。

「あら、どうしたの? アカちゃん」

「何でしれっとしてるの!? っていうか、惨劇の館って何!?」

「――美少女たちが集まるそのコミュニティでは、何故か毎年一人の行方不明者と、一人の死者が・・・みたいな?」

「その「ひぐ○し」的なシチュエーションはやめようよっ!!」

「でも今年は違った。例年なら美少女4人で構成されるその場に、優良枠として一人の男子生徒が入ってきた」

「おっ、ここで俺の登場ですね? しかも何やら、結構おいしそうなポジションな予感が――」

「ちなみに、入って4日で死ぬけどね、キー君」

「俺ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

まさかの一人目の被害者だった。というか、これも既に生徒会の紹介じゃない気がする。

「誰がキー君を殺したのか。それがきっかけとなり、次第に疑心暗鬼になっていく生徒会のメンバー」

「あっ、一応続きも考えてるんですね」

「でも結局、一週間後にはキー君の死を乗り越えて、みんなで協力しながら生徒会の活動をこなしていくのだけれどね」

「えぇ!? 俺、めちゃめちゃ死に損じゃないですかっ!」

「そんなことないわよ。最後に、こんな一文を載せてあげるから。



――その後、生徒会で毎年起きていたはずの惨劇は起こらなくなった。それは一人の男子生徒が、その身と引き換えに生徒会室の「呪い」を消し去ったからだという噂が流れ・・・しかし信憑性が無かったため、二週間で消えてしまった。真相は闇の中、である。



「結局報われてねえええええええええええええっ!!」

「あら、主人公としては、かなりカッコいい死に方じゃない?」



「そりゃもちろん、生徒会のみんなを守れたのは良かったですが。でも俺が死んだら、みんなを幸せにすることは出来ないじゃないですかっ!!」



立ち上がってそう宣言した俺の言葉に、4人はきょとんとした顔をしていた。心なしか頬が赤い気がするが――やっぱり気のせいなのだろう。

「? どうしました?」

「・・・はぁ、鍵はこれだから始末に困る」

「え?」

「でも、先輩らしいです」

「真冬ちゃん?」

「ホント、呆れるくらい真っ直ぐなんだから」

「知弦さんまで・・・ど、どうしたんですか、いきなり」

「杉崎は知らなくていいことだよ」

「ぐっ、そう言われると逆に気になりますって!」

俺はそう騒ぐも、心のどこかではもういいやって思ってた。

もういいやって思えてしまうほど―――彼女たちの楽しそうな笑顔は、綺麗だったから。





「じゃあ次は、俺のシナリオですねっ!」

再度撮影の準備を整え終わった頃。俺は会長に、目を輝かせながらそう主張した。

今まで散々精神的な凌辱をされてきたんだ。ここは俺も暴走してやらないと気が済まない。

「うっ・・・そ、そうだ杉崎。ちょっとジュース買ってきてよ!」

「時間稼ぎをしても何も変わらないと思いますが・・・まあいいです。どこの自販機がいいですか? 俺的には、購買部の紙パックのやつがオススメで―――」


「ううん、火星まで宜しく!」


「遠っ!!! 爽やかな笑顔で何言ってんですかっ! っていうか、着く頃には人生の大半を費やしてますよっ!」

「むぅ、使えないわね。じゃああそこでいいよ。ムー大陸で」

「何か妥協して近場でいいみたいな言い方しましたけど、実質火星より難しくなりましたからね?」

本気で言っているのか冗談で言っているのか、会長なら前者でも充分あり得るので何とも言えない。

俺は、まだ「じゃ、じゃあ失楽園で・・・」とか言っている会長を無視し、皆に飲みたいジュースのリクエストを聞くことにする。・・・会長には後でこっそりと、失楽園は地名ではないということを教えてあげよう。

「あっ、じゃあ鍵。私も頼んでいいか?」

「おう、どうせ俺も喉が渇いてたしな。ついでに買ってくるわ」

「だったら、神仙水を頼む」

「ああ。・・・ええぇ!?」

余りに自然に言われたため、そのまま受け流してしまうところだった。何だその、飲んだら神や仙人に近づけそうな名の飲み物は。

「あっ、じゃあ真冬はエリクサーをお願いします」

「そして君もか! 二人とも、せめて現実世界にある飲み物を頼んでくれないかなぁ!!」

「現実世界にあるもの? んー、プロテインとかか?」

「自販機には絶対に置いてねえしっ!」

「あっ、分かりました。ポーションです!」

「確かにあるけど! あるけど納得いかないのは何故!?」

「じゃあ私は、キー君の体内に流れる紅黒い液体でいいわ」

「ひっ! 脈絡もなく首筋に爪を立てるのはやめてください、知弦さん! っていうかそれ、絶対俺の血が目当てでしょう!

「・・・キー君には今まで黙ってたけど、実は私・・・チュパカブラだったのよ」

「前代未聞のチョイスミスだ! そこは普通にサキュバスでいいじゃないですか!!」

ちなみに、チュパカブラとは人や動物の生き血を吸い尽くすとされている空想上の生物のこと。知弦さんにはそれはもう当然、妖艶なサキュバスの方が似合うというものだろう。

「じゃあ私は・・・」

「実は、会長の分は既に用意してあります」

会長がボケる前に、被せるようにしてその言葉を遮る。――この生徒会では、基本的に暴走したもの勝ち。

「・・・杉崎、これは?」

「ミルクですけど?」

「そこはいいわよっ! なんで哺乳瓶に入っているのかって聞いてるのよっ!!」

「人肌ですよ?」

「だから何っ!?」

「あっ、会長は粉ミルクじゃなくて、母乳派でした?」

「粉ミルクなの、これ!? っていうか、そこは別にいいわよ!」

――ふう、相変わらず会長をイジるのは楽しいなぁ。・・・さて、脱線し過ぎなのでそろそろ戻ろうか。「撮影する生徒会」ではなくなってきてるしな。





「というわけで、俺のシナリオのスタートをお願いします、監督!」

「・・・はぁ、しょうがないわね。よーい・・・カットォ!」

「終わった!? 斬新過ぎますよ!!」



〜テイク3〜 「淫らなハーレム生活」 シナリオ考案:杉崎鍵

キャスト:桜野くりむ 紅葉知弦 杉崎鍵 椎名深夏 椎名真冬



私立碧陽学園。

ここには、副会長の杉崎鍵を唯一の男性メンバーとして、その他の役員が美少女で構成された生徒会がある。

しかも美少女達は総じて彼にべた惚れ。昼夜を問わずに5人で行為に励むため、いつしか生徒会室はこう呼ばれるようになった。

そう――――杉崎鍵の美少女ハーr「カットー。はい、お疲れー」

「「「お疲れさまでーす」」」

「えっ、ちょ、ちょっとみんな!?」

とてつもなく白い目でカチンコを鳴らした会長が部屋を出ていくのに倣い、他のメンバーも鞄を手に次々と生徒会室を後にしていく。

その余りにも急すぎる展開に付いていけなかった俺は、一人ポツンと生徒会室で佇む。

「・・・な、泣いてなんかないんだからねっ!」

――思わずツンデレ化してしまうほどの寂寥感だった。







付記

結局何も撮影せずに終わった俺たちだったが、真儀瑠先生がこっそりと隠し撮りしていた「会長の名言から始まった会議全体の映像」が、翌日の全校集会で晒し者のように放映された。

相変わらず、ダメダメでグダグダな会議風景ではあったが―――生徒たちの呆れたような笑顔だけでも、活動した甲斐があったというものだ。

今回の俺たちの活動は、「撮影する生徒会」というよりは「撮影される生徒会」だったのかもしれない。



end


後書き

久しぶりの生徒会SSが、ようやく完成しましたよっと。

というわけでこんばんは、管理人の雅輝です^^

今回は888888HITの記念リクエスト作品として、ソラさんより受けたリクエスト「生徒会の一存」を書きました。

しかしリクエストを受けてから、そろそろ一か月が経とうかとしております。ダメダメですね。


さて、内容ですが。今回も割とギャグに寄り気味かな? シリアスもちょこっとだけ挟んでますが。

やはり難しいです、生徒会。いや、書くのは楽しいんですけどね? 自分では、笑える作品に出来上がってるか分からないもので。

とりあえず、オチはもう少し勉強しようと思った(笑)


ではでは、リクエストしてくださったソラさん。そしてここまで読んでくださった全ての皆様に。

ありがとうございました!今後とも「Memories Base」を宜しくお願い致します^^




深夏 「感想とかは、ここによろしくなっ!」



2009.10.24  雅輝