変わらない絆
「〜〜♪」
鼻歌と、まな板の上から一定のリズムの乾いた音が響く。
『深澄(みすみ) 七聖(ななせ)』
それが今のわたしの名前。
この名前が変わることは二度とないだろう。
わたしには、夫がいる。
世界でただ一人、わたしが愛している人。
幼いころから、想いを寄せていた人。
彼との出会いは『二回』あった。
もちろん日常的に会っている回数ではないよ?
彼との『はじめまして』の数。
それが二回。
『おかしい』って思う人もいると思うけど、これは本当のこと。
一度目の『はじめまして』は、物心つく前から。
彼とは家がお隣で、幼馴染だったから。
彼に事故があって、引っ越すことになってしまい、離れ離れになっちゃったけど……。
二回目の『はじめまして』は、彼の事故から六年後の、高校一年生の夏。
彼がまた引っ越してきて、わたしの学校に転校してきたの。
彼の姿を見たときはすごく嬉しかった。
『もう会えない』って思っていたから。
でも、喜びもつかの間。
わたしは衝撃の事実を彼から聞かされることになる。
『きみ……、誰だっけ……?』
それが再会したときの、彼の第一声だった。
最初は悪い冗談かと思った。
でも、事実だった。
そのあとに彼と、彼のご両親から『六年前の事故以前の記憶がない』って
話を聞いたときは、もっと驚いた。
六年前。
離れ離れになった年。
あれは……そうだ。
木の上から降りられなくなった仔猫を、わたしが『助けてあげて』って、お願いして。
そして彼はその子を助けようとして、落ちた。
彼はそれからすぐに引っ越しちゃったから、その後の顛末を知らなかった。
彼が病院で目を覚ましていたときにはすでに記憶が失われてたみたい。
だから彼にとって、わたしは『はじめて会った人』にすぎなかった。
わたしにしてみれば、大切な幼馴染。
すごくつらかった。
でも、ある日から、それは変わった。
『再会と初対面』から、本当の意味での『再会』になった。
理由は簡単。
彼の記憶が戻ってきたから。
記憶が戻った原因はたぶん、事故の再現。
あの時と同じように、木から降りられなくなった仔猫を助けようとして。
またわたしのことを忘れちゃうんじゃないかって、不安になったけど杞憂だった。
目が覚めるまで、膝枕をしてあげた。
もしかしたら目が覚めないんじゃないかって思ったけどこれも杞憂。
わたしの膝の上で、ちゃんと目を覚ましてくれた。
わたしの名前を呼んでくれたときは嬉しくて、思わず抱きついてしまった。
彼は完全に目を覚ましてなくて、何が起こっていたかわからなかったみたい。
だんだん意識がはっきりしてきてはじめて今の自分の状況がわかってきて。
すごい勢いで飛びのいてたっけ。
少し落ち着いてから、彼に『なっちゃん』って呼ばれたときは、驚きのあまり誰のことを
呼んでいるのか、わからなかった。
昔のわたしをそう呼んでたのは彼だけで、再開してからはずっと『牧宮さん』だったから……。
喜びと不安半分で、昔の呼んでた彼の名前を言った。。
『ゆう……くん……?』って。
そうしたら彼は、静かに頷いて、わたしにこう言ってくれた。
『久しぶり……かな?本当の意味で』
『全部……思い出した。記憶をなくしてたときのことも覚えてる。
なっちゃんのことが好きだったことも。もう、絶対に忘れない。』って。
そして改めて、『小さいころから好きだった』って、告白された。
嬉しかった。
ただただ嬉しくて、その場で泣き崩れてしまった。
彼は私が泣いて、すごく慌ててた。
『俺、変なこと言ったかな』って心配してくれた。
その心遣いが、嬉しくて。
彼に抱きしめられて、泣いた。
泣き止んで落ち着いたころに、わたしも今までの想いを告げた。
『小さいころから好きでした』って。
そして、恋人になった彼とわたしは、卒業と同時にプロポーズ。
2年後、つまり彼が記憶をなくしてから、8年後には結婚して夫婦になった。
それからさらに6年……。
あの事故から14年……。
わたしは子供を授かり、無事男の子を出産。
名前は――――『灯夜』
由来は、『夜も照らせるような灯のような子に育って欲しい』っていう意味。
そんな子も、もうすぐお兄ちゃんになる。
『兄弟』になるのか、『兄妹』になるのかどうかはわからないけど……。
この子は、めんどうくさがりだけど優しいから、いいお兄ちゃんになると思う。
家のドアが開く音がした。
彼だろう。
帰ってきたのかな?
『ただいまー』って言っているからきっとそうだろう。
結婚してから、変わってない日常のやりとり。
子供たちともう一人。
わたしが、最も愛する人。
わたしが、一生を共にする人。
『優一』くん――――。
「おかえりなさい、ゆうくん」
わたし、今すごく幸せだよ。
――Fin――
コメント
はじめましてm(_ _)m
榛菜(はるな)と申します。
え〜、実を言いますとこの作品、自分の本当の意味での処女作になります。
「プロットから考えて完結した作品はこれが初めて」ということです。
完結していない作品はまだあるんですけどね……。
加筆修正をさせていただきましたけど。
『幸せ』をテーマに書いたつもりなんですが、
書いた自分が何が言いたいのかわからなくなってしまいました(泣)
タイトルに内容が沿っているかもわからなく……(汗)
駆け出し小説書きとしてこれからも文章力向上に励みたいと思いますので、
これから、なにとぞよろしくお願いいたします。
感想などもいただければ幸いです。
掲載していただいた雅輝さん、ありがとうございますm(_
_)mペコリ
管理人の感想
フォーゲルさん同様、フェニックスさんのサイトに投稿していた榛菜さんの作品でした〜。
処女作・・・にしてはかなりしっかりとした文章だと思いました。
少し表現に荒い部分が見えるものの、書きたいことが伝わってくるようなお話でしたね。
そしてこの話の根幹になる作品も、現在執筆中との事。
私自身、楽しみに待たせてもらいま〜す^^
では、ありがとうございました。