『かがみside〜幕間〜』
窓の外には白い雪がチラチラと舞い始めた。
「あ〜お姉ちゃん、雪だよ雪」
それに気がついたつかさが嬉しそうな声を上げる。
「本当ね。急に冷え込んだと思ったら・・・」
「今日はクリスマスですから、ロマンチックですね」
みゆきが、話を繋ぐ。
「そのクリスマスに、俺は何をやってんだかな・・・」
がっくりと机に倒れこむ祐一くん。
「いや〜でも祐一くん、状況としてはかなり恵まれてるよ?」
「どういう意味なの?こなたさん?」
「だって、クリスマスに美少女4人に囲まれてるなんて、ギャルゲーの主人公っぽいじゃん」
「それで、こんなに切羽詰まってなければいいんだけどさ・・・」
「こら!2人共無駄話しない!」
『は、はい!』
見事に2人の声がハモる。
そして、こなたと祐一くんは再び参考書に目を通す。
ここは陵桜学園の3−Bの教室。
そこに私達5人は集まっていた。
そもそもクリスマスに何で私達が集まっているのかというと・・・
「全く・・・2人共もう後が無いのよ?分かってるの?」
「自信はあったんだけどさ・・・」
力なく言う祐一くん。
「緊張しちゃってね〜」
それに同意するこなた。
2人は最初の大学受験に失敗していた。
「特に祐一くん!アンタは滑り止めの大学に落ちたんだから、本命に合格するしかないのよ!」
「わ、分かってるよ」
「ま、まあまあ、かがみさん、息抜きも時には必要ですよ」
「そうかも知れないけど・・・」
みゆきの言葉に渋々同意する私。
「だけど、かがみさんもみゆきさんもつかささんもいいの?」
「何が?」
「いや、3人はもう受験終わってるし・・・俺達に付き合うことは無いけど」
私とみゆきは推薦でもう志望校に進学が決まってるし、つかさは調理師の専門学校に合格していた。
「3人共、せっかくのクリスマスなのに・・・デートとか無いの?」
「わ、私はそのような相手は・・・」
「私もだよ〜」
少し照れながら答えるみゆきとつかさ。
「かがみさんは?」
「・・・わ、私も同じよ」
本音は違っていた。
あの日―――桜藤祭が終わった2日後の学園の屋上で私は自分の祐一くんへの想いに気が付いた。
そして、それ以来気が付いたことがある。
それは、祐一くんの周りには常に人がいるということ―――特に女の子が―――
同じクラスのこなたやつかさ、みゆきはもちろんのこと、
たまに自販機の前では、ゆたかちゃんやみなみちゃん達と仲良く話していることも多い。
それを見るたびに、私の心は痛くなった。
そんな時、祐一くんが受験に失敗したことが私の耳に入った。
落ち込んでいる祐一くんを見て、私は思わず口を開いていた。
『じゃあ、私が勉強見てあげるわよ』って・・・
祐一くんが困っているのなら助けて上げたかった。
何より、落ち込んでいる祐一くんを側にいて励ましてあげたかった。
それが、私に出来る唯一のことだと思ったから。
「そうなんだ。かがみさん可愛いのに、今や陵桜のアイドルでもあるんだし・・・」
陵桜のアイドル―――
その言葉に私は思わず心の中でため息を付く。
それが最近の私の悩みだった。
「・・・どうしたの?かがみさん?」
そう聞いて来たのは、祐一くんだった。
「えっ?な、何が!?」
「いや、何か表情が少し暗かったからさ。何か悩みごとかなと思って」
「な、何でも無いわよ!それより、とっとと勉強する!」
「わ、分かったよ・・・」
(おかしいわね〜表情には出さなかったつもりなんだけど)
「うわ〜凄い雪だよ〜」
つかさの声に私は窓の外を見る。
さっきまで、粉雪程度だった雪が今はボタン雪並になっていた。
「うわ〜これは確実に積もるわね」
「もう、今日はこれくらいにしておいた方がいいんじゃない?」
「そうだな。俺はともかくみんなは電車通学だろ?止まる前に帰った方がいいんじゃない?」
「そうですね〜都会はちょっとの雪で交通機関がマヒしてしまいますから」
「仕方ないわね・・・こなたと祐一くんは家に帰ってもちゃんと勉強するのよ」
「分かってるよ」
「さすがに今年は真面目に勉強しよう・・・クリスマス限定のアイテムとかあったんだけどな〜」
「またネトゲーの話か・・・」
こんな時でもゲームのことを考えてるこなたに呆れる私だった。
「明けましておめでとう!」
「おめでとう〜」
あちこちで新年の挨拶を交わす声が聞こえて来る。
私達の家は神社をしているので、毎年お正月になるとこうして参拝客が来る。
有名どころの比じゃ無いけど、結構参拝客も多い。だから・・・
「お姉ちゃん〜休憩終わったよ〜」
向こうから巫女服姿のつかさが歩いてくる。
「お姉ちゃんも休憩して来たら?朝から全然休んでないんでしょう?」
「そうね、じゃあつかさ、後お願いね」
「は〜い。ゆっくり休んでね〜」
つかさの声に送られて私は家の方に向った。
(今年も人多いわね〜)
袴や晴れ着姿に身を包んだ人達を見ながら私はそう思った。
(そういえば・・・こなたの姿を見ないわね。祐一くんも)
2人共今年は神頼みしている場合じゃないかも知れない。
私がそんなことを考えてた時だった。
“ドンッ”
誰かとぶつかった。
「イテッ!」
「あ、ご、ゴメンなさい」
「アンタ、ちゃんと前見て歩けよな!」
見ると、私の前には不良っぽい高校生が3人居た。
「す、すいません」
私はもう一回謝る。
その時、私の顔を見た不良の一人が声を上げる。
「あれ?この娘、この間の学園祭のミスコンで優勝した娘じゃないか?」
「あ、そういえばそうだな」
「へ〜巫女さん姿も可愛いね〜」
ニヤニヤと笑いながら言う男3人組。
「・・・」
これが私のミスコン優勝してからの悩みだった。
目立ったせいか、ナンパされることが多くなっていた。
「すいません。失礼します」
そう言って私はその男達の横を通り抜けようとする。
「まあ、待てって」
男の一人が私の腕を掴む。
「何ですか?謝ったわよね?」
今度は、声に怒りをこめながら言う私。
「まあ、つれないこと言うなって、ちょっと俺達に付き合えよ」
「ちょっと、イタッ・・・無理に引っ張んないでよ!!」
「何だと!」
私の手を掴んだ男のもう片方の手が振り上げられて―――
「それぐらいにしとけよ」
その時私の耳に聞こえたのは、聞き慣れた声だった。
「ゆ、祐一くん!?」
男の手を祐一くんが掴んでいた。
「何だ、お前は!?」
その男の問いに祐一くんはとんでもない答えを返した。
「俺?俺はこの娘の彼氏だけど」
『!!』
(なっ・・・なっ・・・)
この言葉に急激に顔が赤くなっていく私。
そんな私の様子に祐一くんは気がつかないまま言葉を続ける。
「ほら、行くぞ、かがみ」
「う、うん」
男達に背を向けて歩き始めた祐一くん。
その後を慌ててついて行く私。
「何だよ、彼氏持ちかよ・・・」
そう呟いて人込みに消えていく男達の姿が振り返った私の背中越しに見えた。
「本当にゴメン!!」
祐一くんは私に案内されて家に入るなり、そう言って頭を下げた。
「な、何で謝るのよ」
「いや、助けるためとはいえとっさにあんなウソ付いちゃったし」
「あ、ああそのことね」
“ほら、行くぞ、『かがみ』”
祐一くんに呼び捨てされたことを意識して顔が赤くなる私。
「ほら、これが原因で変な噂がたったらかがみさんだって困るだろうし」
「べ、別にいいわよ。助けてくれるためにやったことだし・・・それに、別に噂になってもいいし・・・」
「えっ?何か言った?」
「な、何でも無いわよ!」
ますます赤くなる顔を見られないように祐一くんから顔を逸らす私。
「そ、それでやっぱり祐一くんも初詣に来たの?」
「うん?それもあるけど、お守り買いに来たんだ」
「ここまで来て、神頼みなの?」
呆れたように言う私。
「というかやれることはやったから、神頼みくらいしか縋れるものが・・・」
「ふ〜ん・・・祐一くんちょっと待っててくれない?」
「えっ?う、うんいいけど・・・」
私はその言葉を確認してから、自分の部屋に向った。
「はい、これ。アンタにあげるわ」
私はそう言って手の中の物を祐一くんに渡す。
「これって・・・お守り?」
「そうよ?私が受験の時に持っていったお守りよ。効き目はあるわ」
「でも、いいの?」
「いいわよ。それに、アンタの本命の大学は私と同じなんだし。き、気休めにはなるんじゃない?」
「分かった。ありがとう。これで自信が付いたよ」
「そ、そう?でもやっぱり一番はアンタが頑張らないとダメなんだからね」
「分かってるよ、よ〜しこれで頑張れる気がして来た。ありがとう!かがみさん!」
祐一くんはそう言って外に出て行った。
(祐一くん・・・頑張って)
私はその背中に向って祈った。
そして―――
(春になったら一緒の大学に通いたいな・・・)
本人を目の前にしたら言えそうにないことを私は思っていた―――
〜かがみside・らきメモ編へ続く〜
こんばんわ〜フォーゲルです。今回は幕間の話ですね。
一応『ラキレボ編』と『らきメモ編』を繋ぐ話ですね。
かがみがミスコン優勝したら巻き込まれてそうなトラブルとかを書いてみました。
ニヤニヤ分が少ないかも知れませんね。
というか久々に書いたからかがみのキャラがブレてるような気もします(汗)
次回からはらきメモ編になります。
楽しみにして頂けると嬉しいです。それでは!!
管理人の感想
というわけでフォーゲルさんの新作、「らきメモ編」と「ラキレボ編」を繋ぐ、二人の一コマでした〜^^
今回は完全にオリジナルですね。大学受験の話。
かがみとみゆきが推薦での入学が決まっており、つかさが調理師学校、なのにこなたが落ちているのがやけにリアルといいますか(ぉぃ
そしてわれらが主人公祐一も。でもかがみからお守りを受け取るフラグだと思えば良かったのか?(笑)
しかし・・・らきメモと言えば桜藤祭の演劇。しかしラキレボ編で肝心の桜藤祭は終わってしまいましたし・・・。
その辺りがどうなるのか、というのにも注目しながら、今後も楽しみにしていきたいですね^^
ではでは♪