『桜がもたらす再会と出会い〜』特別編・part2
『涙のホットケーキ』第1話
投稿者 フォーゲル
「ねぇ〜ママ〜これでいいの?」
「う〜ん〜どれどれ・・・」
美春はその言葉にフライパンの様子を確かめます。
フライパンの上に引かれたホットケーキはその表面にポコポコと穴が空き始めていました。
「うん!大丈夫だよ。気をつけてゆっくり引っくり返してね。春菜」
「分かった!任せて!」
フライ返しを使って、おぼつかない手付きでホットケーキを引っくり返す。
その表面には、美味しそうな焼き色が付いていました。
「うわぁ・・・美味しそう」
目を輝かせる春菜。
「これで、後は2・3分焼けば大丈夫だからね」
「そうなんだ・・・良かった」
ホッとした表情を浮かべる春菜。
「だけど、どうしたの、急に?『ホットケーキの作り方教えて欲しい』なんて」
学校から帰って来るなり、春菜が言い出したお願いがそれでした。
「えっ・・・べ、別に深い意味なんか無いよ?」
だけど、そう言う春菜の顔がほんのりと赤くなったのを美春は見逃しませんでした。
(なるほど・・・男の子絡みなんだ・・・)
美春は思わず笑ってしまいます。
(偶然ってあるんだなぁ・・・)
好きな男の子のために作るホットケーキ―――
それは、美春も体験していたことでした。
(冬貴君は、ちゃんと食べてくれたもんね・・・)
その時のことを思い出して、ちょっと嬉しくなる美春。
「ママ〜どうしたの?」
笑っている美春を見て不思議そうに聞いて来る春菜。
「ううん、何でも無いよ。それよりもういいんじゃないかな?」
フライパンの上では美味しそうな焼き色が付いた、ホットケーキが完成していました。
「う〜ん。美味しい〜」
自分で焼いたホットケーキを食べながら、春菜が嬉しそうな声を上げます。
「初めてでここまで出来れば、凄いよ」
「そんなこと無いよ。ママがちゃんと教えてくれたから・・・」
照れくさそうに言う春菜。
「キャッ、キャッ」
「ほら、冬樹(ふゆき)だって言ってるよ。『お姉ちゃん、凄いよ』って」
「ありがとう、冬樹」
美春が抱いている、半年前に生まれた弟の頭を優しく撫でる春菜。
「だけど、ホットケーキか〜」
「どうしたの?ママ?」
「うん?そういえばママも子供の頃はパパによく作ってあげたな〜って」
「パパに?」
「そうだよ〜ママ特製のバナナを生地に混ぜ込んだオリジナルのをね」
「パパは美味しいって言ってくれたの?」
「うん!ただ、ママが一番印象に残ってるのは初めて作った時のかな?」
「どうして?」
「その時にね、事情があってそのホットケーキ、今考えると食べられる感じじゃなかったからーーー」
美春がそこまで言った時でした。
“ピンポーン”
玄関のインターホンが鳴りました。
「お客さんかな?」
「あ、じゃあ春菜が見てくる!」
そう言って玄関に向う春菜。
そして―――
「あ〜、葵(あおい)お姉ちゃん!こんにちは〜」
「こんにちは。春菜ちゃん。久しぶりね〜」
聞こえて来たのは久しぶりに聞く友達の声でした。
「久しぶり〜美春。元気だった?」
少し、茶色かがった髪をウェーブを掛けて伸ばしている彼女の名前は『三城(みしろ)葵(あおい)』ちゃん。
冬貴君と同じく美春が朝倉先輩達と知り合う前からの友達―――もう一人の幼馴染です。
最も、冬貴君と同じように美春が朝倉先輩達と知り合う前に引っ越していってしまいましたが・・・
「うん!葵ちゃんは?お仕事大変なんじゃない?」
「まあね〜仕事と休暇も兼ねて初音島に帰って来たのよ」
葵ちゃんは、今芸能界でも注目を集め始めている売れっ子の女優さんです。
「どういうこと?」
「実は、私のブログに冬貴君の事を書いたのよ。『プロ野球で活躍している彼は私の幼馴染です』って。
そしたら、事務所の社長が冬貴君との対談企画の仕事を持って来てね〜」
その企画内容が『2人の生まれ故郷の初音島を探索しながら思い出話でも語って貰おうって言う企画なの。
葵ちゃんが話してくれたのはそんな内容でした。
「それに、春菜ちゃんや冬樹くんにも会いたかったし」
そう言いながら春菜の頭を撫でる葵ちゃん。
そして、テーブルに置かれている春菜が作ったホットケーキを見て目を細めました。
「美味しそうね〜」
「あ、春菜が作ったんだよ〜」
「どれ、一口頂戴ね」
手近にあったフォークで一つまみするとパクリと口の中へ。
「うん!美味しい〜やっぱり美春の血を引いてるだけあって料理上手ね、春菜ちゃん」
「えへへ・・・ありがとう」
嬉しそうな笑顔を浮かべる春菜。
「ホットケーキって言えば、いつかの冬貴君の誕生日の時のこと思い出すわね」
「あ〜確かにそうだね」
「まあ、私は『その時のこと』で美春は冬貴君のことが好きなんだって分かったんだけどね♪」
「そ、そうなの?美春はまだ気づいてなかったんだけど・・・」
恥ずかしくなって顔が真っ赤になる美春。
「だから、高校2年になって風見学園に戻って来た時に美春と冬貴君がラブラブなの見ても、あんまり驚きはしなかったな」
「葵お姉ちゃん、パパとママってそんなに仲良かったの?」
「うん!いろいろラブラブ話はあるよ〜」
「ま、まあいいじゃないですか?その頃のことは〜」
興味深々の春菜と面白がって話そうとする葵ちゃんを止めようとするので美春は必死でした。
その後、葵ちゃんは今日は実家に帰って行きました。
『もうすぐ冬貴君も帰って来るよ』美春はそう言って葵ちゃんを引きとめたんですが、
『明日、会うことになるから大丈夫よ』葵ちゃんはそう言いました。
その後、美春はお夕食の準備を済ませて、ソファーに座ってゆっくりしていました。
「ねえ〜ママ」
ふと、気が付くと春菜が美春の隣りに座っています。
「どうしたの?春菜?」
「・・・パパの誕生日の話聞かせて欲しいな」
どうして?そう聞こうとして美春はふと思いつきました。
(春菜もその時の美春と同じ状況なのかな)
好きな男の子に何かプレゼントするってのは女の子は緊張するもんね。
春菜は春菜なりに、美春の話から何かを感じたいだろうし。
「いいよ。パパが帰って来るまで時間もあるし」
「本当?」
こうして美春は話し始めました。冬貴君との大切な想い出を―――
〜第2話に続く〜
こんばんわ〜フォーゲルです。久々に『桜がもたらす再会と出会い〜』の方です。
と言っても本編では無く、リクエストのあった『冬貴と美春の過去編』です。
本編も近い内に再開出来たらなと思います。
春菜に弟が出来ているので本編・未来編の1年くらい後と言う設定です。
この話は全3話を予定しています。ちょっとボリュームが少ないかも知れませんが・・・
次回はメインの過去編ですね。
新・オリキャラ葵ちゃんも含めた3人の関係性は分かりやすく言うなら、
冬貴が純一だとすると、美春が音夢で葵がさくらみたいな感じかなと。
でもこれだと美春が嫌なキャラっぽく見えるな(汗)
次回も楽しみにして頂けると嬉しいです。それでは!!
管理人の感想
華麗なる復活(?)!フォーゲルさんの「桜がもたらす再会と出会い」の番外編が満を持して登場しました。
実は掲示板でのやりとりから生まれているこの作品ですが。他の読者の方にも、冬貴と美春の過去を気になっていた方はいらっしゃるのではないでしょうか。
今はもう結婚していて、二児の親となっている二人の、大切な思い出。再び初音島で再会するよりもっと前のお話。
オリキャラの葵も含め、これからどのように展開していくのか非常に楽しみですね^^
それでは!