BGM  Parallel World Story

    Derivation Projection to make a Future

 

 

 

 

 

 辛い別れを経験し、また絆を確かめ合ったくららと麻那だが、それはそれとして解決しなければいけない問題がある。

 日中で最も暑いと言える正午から午後二時の間に短時間とはいえ外出した二人はそれなりに汗もかいており、わずかながらも汗のにおいは避けられない。

「…………」

 くんくん、と膝の上に乗せて抱っこしている麻那の匂いを嗅いでみるくらら。子ども特有の甘くて愛らしい匂いは変わる事はないが、それに対して自分は

どうだろうと考えるも、自分の体臭は今一つ把握出来ない。かといって麻那に尋ねてみて「くさぁい」などと言われようものなら、くららはこの場で血を吐

いてしまう自信さえある。そんな自殺確定判決を自ら執行するよりも、ここは一つ。

「麻那ちゃん麻那ちゃん。くららおねえちゃん、お風呂入りたいんだけど……貸してもらってもいい?」

「おふろぉ? いいよ〜」

 とすん、とくららの豊かな胸に頭を預け、後ろ向きのまま見上げてくる可愛らしい笑顔。謙悟の存在がなくとも既に義理の姉妹関係を結んだくららに対し

信頼と親愛を抱いているその態度と表情にくららも笑顔で応え、結んであげた柔らかい髪を優しく撫でる。

「でも、着替えないんだよね。謙悟くんの服を勝手に着るのは悪いし……どうしよっかなぁ」

「おかーさんのふく、あるよ? 麻那もってこようか?」

 くららの手の感触を気持よさそうに受け止めながらの麻那の提案だが、生憎それは少々無理がある。

「う〜ん……陽子さんの服だと、おねえちゃんにはちょっと小さいかな」

 少々恥ずかしそうに答える。身長においてはほぼ同じくらいの陽子とくららだが、その体型はかなり差がある。その差を埋めるのは物理的に不可能と言っ

ても良く、そうした点からも十分余裕がある謙悟の服がベストなのだが、電話しようにもメールしようにも、まだ例の話し合いが続いているはずの時間のた

めに、すぐには返事をもらえそうにない。それが済めば冴霞と一緒に帰宅してくるだろうが、冴霞の話では一日付きっきりになるという話だったので、どん

なに早くても一時間や二時間では戻って来ないはずだ。

「まぁ、あとで許可もらえばいいよね♪ それに洗濯っていう手だってあるし」

「おせんたくするの? おふろは?」

 くるんとくららの方に身体ごと向き直り、麻那が首を傾げる。くららはその頬にそっと両手を添えて、むにむにと柔らかすぎる感触を堪能しながら、髪を

結んでいた飾りつきのヘアゴムを外してやる。

「お風呂も入るよ。でも、麻那ちゃんだってちょっと汗かいてるし、謙悟くんと冴霞おねえちゃんが来る前に綺麗にしておかないとねっ」

「さえかおねえちゃんもくるの? やったぁ!!」

 冴霞が来る、という言葉に麻那の表情が輝く。子どもたちを通じてかつての友人関係を取り戻した新崎陽子と今村悠香は、時折待ち合わせをして会ったり

している。麻那も何度か陽子と共に今村家を訪れている為、既に冴霞とは顔見知りであることはくららも知っていたが、これほど喜ぶとは予想外だった。

「麻那ちゃん、サエちゃんのこと好き?」

「うんっ! さえかおねえちゃん、すっごくかっこいいもん!!」

 その評価は誰もが冴霞に抱くものと同じだが、麻那の声にはそれ以上の感情が乗せられていた。年上で背も高く、大人びた魅力を有する今村冴霞は間違い

なく理想的な「おねえちゃん」像であり、そんな冴霞に麻那は憧れを抱いているのだろう。

 くららにとっては生涯の親友であり、人生のパートナーでもある冴霞が、麻那に好かれているというのは素直に嬉しい――――が、同時にちょっとした興

味も沸き上がってくる。これを聞くのは本来躊躇うべきなのだろうが、それ以上に知りたいという欲が口を衝いて出てしまう。

「じゃあ麻那ちゃんは、冴霞おねえちゃんとくららおねえちゃん、…………どっちが好き?」

「ふぇ?」

 頭の上に「?」マークを浮かべてから数秒間、麻那の思考は完全に停止していた。ぱちくりという擬音が聞こえて来そうな瞬きとその表情に、くららも流

石に可愛そうな事を聞いてしまったと考え直し、解いた髪を優しく手櫛で梳いていく。

「ゴメンね、変な事聞いちゃった。くららおねえちゃんとは今日会ったばっかりだから、サエちゃんとは比べられないよね?」

「…………ん〜、麻那ね、さえかおねえちゃんもだいすきだけど、くららおねえちゃんもだいすきっ」

 柔らかく蕩けてしまいそうな笑顔でそう答える麻那。その笑顔に思わずときめいてしまうくららを責める事など、誰にもできない。

「ありがとう、麻那ちゃんっ! くららおねえちゃんもね、サエちゃんも麻那ちゃんも大好きだよっ!!」

「麻那といっしょだぁ♪ じゃあ、おねえちゃん?」

 真っ直ぐに見つめてくる黒曜石の瞳に宿るのは、純粋な好奇心。そしてその問いは、くららにとっても何より大切なもの。

「おにいちゃんのことも、すき?」

「――――うん。謙悟くんのことも、大好きっ!!」

「わぁい♪」

 くららからの言葉を聞いた麻那は、大好きなくららが自分と同じく謙悟を好いているという事に歓喜して抱きついてきた。そしてくららも、そんな麻那を

優しく抱き止めてあげる。

 麻那が抱く「好き」と、くららが抱く「好き」の意味合いは当然異なる。いずれ麻那がくららと冴霞、そして謙悟の三人の間にある関係を知った時、果た

して今のままに接してくれるかどうかという不安を感じないはずがないくららだが、今はその不安は意識の奥に追いやっておこう。

 

 小さく可愛らしい、大切なたった一人の女の子。

そして遠くない未来では義理の妹になるこの子とのひと時は、何物にも代え難い宝物なのだから。

 

 

 

 Boy & Girls Memories

            Girl meets Little Girl Heavens Time !!

 

 

 

 麻那に操作を習って浴槽にお湯を入れながら、くららは洗濯機の操作も学んでいた。風呂の操作は幸いにも、自宅にある設備とそう変わらないパネル操作

式のものだったので苦労することもなく、また洗濯機も洗濯機でごく当たり前なドラム式洗濯機だったために何の問題もなかった。

看護師をしている謙悟の母・新崎陽子は自分の仕事着である看護服を業者任せにしないという変わった人なので、洗剤の種類が多種多様だったのには驚か

されたが、使う機会もないのでスルーしておく。

「服はこれで良いとしても、下着は…………むぅ〜」

 謙悟の家を訪れる、という事もあって、今日の下着はそれなりに気合を入れて選んで来た。出来れば手洗いしたいところであり、ましてや乾燥機能を使う

などもっての外なのだが、今回ばかりは妥協するしかない。

「仕方ないかぁ……とほほ」

「おねえちゃ〜ん、どうしたの〜??」

 疑問を呈する麻那の声。その声がした方向――――くららに先んじてバスルームで待機している麻那に向かって、くららは扉越しに返事をする。

「うん、今お洗濯の準備してるから、もうちょっと待ってて〜」

「は〜や〜くぅ〜」

 バシャバシャとお湯を蹴る音が聞こえてくる。まだお湯の注水音も止んでいないが、既にかなりの量が浴槽を満たしているようだ。脱ぎ終えたシャツとス

カート、そして身につけていたブラジャーとショーツもするすると身体から外し洗濯ネットにたたみ入れ、手洗い+温風乾燥モードでスタートさせる。

 文字通り一糸纏わぬ姿となったくららは最後にヘアバンドを外すと、麻那に教えてもらって準備した長めのタオルを使って下ろした髪を普段の髪型と同じ

ような形で留め、頭の上できゅっと結べば、ようやく準備完了となる。あとは特にタオルなどを持っていく必要もないだろう。

 かたん、とドアノブを落としてバスルームへの扉を開くと、中を満たしていた湯気がふわりと漏れ出してきた。しっとりと濡れた空気は暖かく、外の熱と

は違う暑さを感じさせる。

「わぁ……結構広いんだね」

 実家のマンションと比するまでもなく、一戸建ての新崎家のバスルームは相応の広さを備えている。大理石風にあしらった浴槽は麻那が取っ手をつかんで

バタ足が出来るほどであり、くららでも全身をそのまま沈める事が出来そうだ。

「ふあぁぁ〜〜…………おねえちゃんおねえちゃんっ!!」

 じゃばぁっ! とお湯を巻き上げながら浴槽から飛び出し、既に濡れそぼった身体の麻那がくららに駆け寄ってくる。大した距離ではないが転んでしまっ

ては怪我も避けられないバスルーム、くららは咄嗟に膝を屈めて麻那の身長に合わせ、その姿勢で迎え入れた。

「おっとぉ……もぉ、危ないから走っちゃダ〜メ。ね?」

「ごめんなさい……でも、おねえちゃん!」

 むぎゅ、と抱きついてくる小さな身体。そしてその手はくららの豊かな胸をしっかりとつかんでおり。

「おねえちゃんのおっぱい、すっごくおっきい♪ ふかふか〜〜♪♪」

「ま、まま、麻那ちゃんっっ!!?」

 むにゅむにゅと撫でてくる麻那の小さな手を振り解く事を躊躇っていたくららだが、麻那の行為に悪意は欠片もない。単純かつ純粋な好奇心と憧れ、そう

した感情に突き動かされての行為である。それを容認してあげる事は年上であり「おねえちゃん」であるくららにとって難しい事ではない。

 しかし、くららはゆっくりと麻那を引き剥がすと。

「麻那ちゃん、女の人のおっぱいは大切なものなんだから、そんな風に触っちゃダメ。麻那ちゃんだっていきなり触られたらビックリするでしょ?」

「うん……」

 しゅん、と落ち込む麻那の姿は、水気に濡れてしっとり垂れた栗色の髪のせいもあってか、どこか叱られた子犬か子猫のそれを連想してしまう。くららは

そんな事を考えながら、今度は自分から麻那を抱き寄せ、その豊か過ぎる谷間に麻那の顔を埋めた。

「にゃ……おねえちゃ……?」

「でも、麻那ちゃんだから特別。優しく、ゆっくりなら触っても良いよ♪」

 見上げてくる麻那の視線に宿る不安を打ち消すように、優しく可愛らしい声と表情で了承を告げる。それに対して麻那はくららの胸から「ぷはっ」と抜け

出し、言われた通りゆっくりとその大きな二つの果実に小さな手を乗せる。

「ふわぁ……」

 声にならない感嘆。柔らかいながらも確かな張りと弾力は麻那の手を受け入れながらもしっかりと押し返し、その度にふるんふるんと小気味良く揺れる。

「おねえちゃん、ほんとにふかふかで、ぽよんぽよんだぁ〜♪ おかーさんとぜんぜんちがうっ」

「あ、あはは……それ、陽子さんの前で大声で言っちゃダメだからね?」

「??」

 くららが麻那の母である新崎陽子の服が着れない、という大きな原因はまさにこの点にある。豊か過ぎるくららのバストでは、平均的な日本人女性体型の

陽子の服ではどう頑張っても丈が足りず、大胆なへそ出しになってしまう事は避けられない。かと言って前開きのシャツを選ぼうものなら、百パーセントに

近い確率でボタンを留める事が出来ないだろう。

「じゃあ、おねえちゃんもお風呂に入るから、麻那ちゃんちょっとゴメンね」

「うんっ」

 ぴょこん、とくららの身体から退いた麻那は、そのままぺとぺととバスルームを移動し、自分用のリンスインシャンプーのボトルを取り出す。くららはそ

れを見ながら手桶で浴槽のお湯を掬い、ばしゃあっと勢い良く身体に掛けていく。

 夏場と言う事と麻那も入るという事もあり、お湯の温度は少々温めにしてある。ゆっくり浸かる分には丁度良いし、リラックスも出来る上に湯冷めもしに

くいとメリットを揃えたたっぷりのお湯に足を差し入れ、くららはほど良い心地よさに文字通り身を沈めていく。

「はぁ…………んんんん〜〜〜〜っ」

 足を目一杯伸ばし、ぐんっと両腕を天井に向けて突き出す。自宅の風呂でも出来る事だが、やはりマンションのバスルームと一戸建てのバスルームでは基

本的な広さが違う。あちらはあくまで一人用として広めなのに対し、こちらは少なくとも二人が入ってもまだ少々の余裕があるのだ。

「ぷはぁ〜〜〜〜……ゆったりお風呂……しあわせ♪」

 ばちゃん、と腕をお湯に沈めると同時に、両腕に大きめのシャンプーボトルを三つも抱えた麻那がくららの元に戻ってきた。

「お、おねえちゃ〜ん……これ〜」

「わわ、む、無理しないで、麻那ちゃんっ」

 ひょいひょいと麻那の腕からボトルを取り、浴槽の淵に並べていく。ボディーソープと、シャンプー、コンディショナーの三種はいずれも陽子が使ってい

るものなのだろう。どれもくららが普段使っているものとは異なるが、その分お値段も少々高めのものばかりだ。

「これ、あたしが使ってもいいの? 勝手に使って大丈夫かな?」

「へーき! 麻那もね、ときどきおかーさんといっしょにつかうから!」

 確かに、少ない交流ながらも陽子の性格を多少なりとも知る身であるくららも、陽子がそう言うかも知れないという想像が何となくできる。陽子はとかく

女の子に甘く、くららや冴霞を溺愛していると言っても良い。実の娘である麻那に対してはそれがより顕著であり、きっと「麻那ももっともっと綺麗になら

なきゃね?」などとのたまいながら、これらを使っているのだろう。

「じゃ、お言葉に甘えて……麻那ちゃんも御風呂入ろっか? ずっとはだかんぼのままだと、ちょっと寒いでしょ?」

「うんっ! いっしょに入る〜♪」

 言うが早いか、麻那はじゃぼんと小さくない波を立てて浴槽に飛び込んできた。そしてそのまま潜行し、顔を出したのは丁度くららの顔の前。

「ぷはっ……ただいまぁ、おねえちゃん♪

「ん、おかえり♪ でも麻那ちゃん、お風呂に飛び込んで入っちゃダメでしょ〜?」

 くららが濡れた手で麻那の柔らかほっぺを挟みこみ、むにゅむにゅむにゅむにゅとこね回す。麻那も「ふぉめぇんにゃしゃい〜〜」と反省の言葉を口にす

るが、その間の二人はどちらも微笑ましくなるような可愛らしい笑顔だった。

 

 

 

「はい、麻那ちゃん。ばんざ〜い」

「ばんざぁ〜いっ」

 言われるままに高々と両手を上げる麻那を、たっぷりのボディーソープを染み込ませたタオルで優しく洗っていくくらら。

 一通り温まった後、二人は浴槽から出て身体を洗う事にした。先に身体を洗ってから入浴した方が、汚れを落とすという意味では正しかったかなぁ、と内

心感じながらも、過ぎてしまった事は仕方ないと気持ちを改めたくららは、麻那の小さな身体を丁寧に擦ってあげている。子ども特有のきめ細やかな柔らか

い肌と、ぷにぷにの感触はタオル越しでも十分に分かるほど心地良い。

伸ばした指の間もきゅっと擦り、手桶を使って肩からお湯をかけて泡を落とす。「ほわぁ〜」と気持ちの良さそうな声を上げる麻那に、くららも満足した

ように頷いた。

「うん、これでおしまい。背中、かゆいトコない?」

「ううん、きもちよかった! ありがと、おねえちゃん♪ じゃあつぎは、麻那のばんね?」

 座っているくららの膝にぺたんと両手をつき、下から顔を覗き込んでくる麻那。今はくららの真似をして頭にタオルを巻いているその表情には確かなやる

気が感じられ、それを無下に断る事などくららに出来るはずがない。

「ん〜……じゃあ、お願いしちゃおっかな?」

「はぁ〜いっ」

 くららの手からタオルを受け取り、ボディーソープを追加してぎゅっぎゅと泡立てる。追加したボディーソープの量が少々多いような気がしなくもないが、

麻那の頑張りを期待し、応援しているくららは何も言わずに見守っている。

「おねえちゃん、おててだして」

「はいっ」

 しゅ、と腕を差し出すくらら。その腕を麻那はタオルを使って懸命に擦っていく。手の先から下腕、そして二の腕まで擦るようになると、麻那とくららの

距離は、くららが麻那を抱っこするような体勢と見紛うほど接近していた。だが集中している麻那はそれに気づく事無く――――くららの豊かな胸に顔から

突っ込んでしまった。

「わぷっ? ……ふぁ、おねえちゃん?」

「あはは、近づきすぎちゃったね♪ 折角だから、洗いっこしよっか?」

 身体を洗うもう一つの道具としてバスルームに用意されていたボディースポンジを取り出し、浴槽から洗面器でお湯を掬い上げる。水を含ませてボディー

ソープを適量落として泡立てれば、麻那が持っているタオルと同じ役割を果たす事が出来るそれを、くららは優しく麻那の首に当てた。

「さっきは、麻那ちゃんの背中だけしか洗わなかったからね。これから一緒に身体を洗って、最後に麻那ちゃんがおねえちゃんのお背中洗ってくれる?」

「うんっ!!」

 その提案にぱぁっと表情をほころばせ、麻那もくららの真似をして首にタオルを当てる。ぺたんこ座りをしているくららと膝立ちになっている麻那の身長

差は普段よりもぐっと近く、ほとんど差がないと言っても良い。

「んしょ、んしょ……」

 お互いの手が邪魔にならないように麻那はくららの首から下へと手を下降させ、くららは麻那のお腹から洗い上げていく。ぽっこり膨らんだお子様体型の

お腹を優しく擦り上げ、脇腹や腋下も丁寧に洗っていくが、その衝撃は唐突に訪れた。

「っ!? ぁんっ……?」

「? おねえちゃん、どうしたの?」

 胸から走った電流のような刺激。それがこの場において相応しくない感覚であると知りながら、くららが視線をそちらに向けると、そこには半ば予想して

いたが麻那の手があった。タオルを掴んでいる指先が、くららの豊かな乳房の先に色づいている敏感な桜色のつぼみを偶然にも爪弾いたのだ。

「な、なんでもないよ? 早く洗っちゃおうね〜?」

「??」

 ぎこちない笑みを浮かべて誤魔化そうとするくららに対して、麻那は首を傾げながら先ほどの自分の行為を反芻する。くららの柔肌の中でも特に柔らかな

二つの大きなふくらみ。自分はもちろん母でさえ有していないそこを、自分は今どうしたのだったか。

「んっと……?」

 自分の行いを思い出し、今度は直接指で触れる。

「ひぁっ!? ま、麻那ちゃん!!?」

「ほぇ〜……お姉ちゃん、おっぱいのここくすぐったいの?」

 くりくりと指の腹でくららの先端を刺激する麻那。ただその行為の結果が「くすぐったい」以上の効果をもたらしているなど夢にも思わない麻那を、叱り

つける事を躊躇ってしまうのがくららの優しさなのだが、だからといって好きにさせて良いという理由にはならない。

「ま、麻那ちゃんにも、お返し〜〜っ!!」

「にゃぁ〜♪ おねえちゃん、くしゅぐったぁい♪

 まっ平らな胸の先をスポンジでくりくりと弄り返すが、まだまだ性感とは無縁の幼女に効果があるはずもなく、麻那はただ身を捩るだけだ。しかしそれで

も引き剥がす事には成功し、くららはホッと溜め息をつく――――のだが。

「おねえちゃぁん♪」

 天使の笑顔で飛び込んでくる麻那を拒む事など出来るはずもなく、くららと麻那の熾烈(?)な洗いっこはさらに激化するのだった。

 

 

 

 ぱしゃぱしゃとお湯を蹴る麻那を膝の上に乗せたまま抱っこして、くららはゆったりとぬるま湯を堪能していた。身体だけではなく髪もしっかりと洗い終

えた今、あとは体を温めて風呂を出るだけとなっている。

「まだ、洗濯は終わらないかな……」

 麻那と一緒に入浴してからおよそ三十分が経過しており、ギリギリ洗濯の方が終わるかどうかという時間。乾燥までを考慮すればせめてあと二十分は待ち

たいというのがくららの正直な気持ちだが、その間麻那をバスルームに拘束するのも、家の中で待たせておくのも、どちらにしても申し訳ない。

「よしっ…………麻那ちゃん、そろそろ上がろっか?」

「うんっ!」

 しっとり濡れた髪からふんわりと良い香りを纏い、麻那はくららの膝から降りてそのまま浴槽を出る。その後に続いてくららも立ち上がり、暖かな空気と

湿度が充満するバスルームを後にした。

 ごうんごうんと音を立てて稼働中の洗濯機の方は、やはりまだまだ時間が掛かるらしい。半ば覚悟していた事とはいえ目の前でこうして見せつけられると

溜め息が出そうになるくららだが、それで何が解決するわけでもない。密かに考えていた方法を取るべく、事前に麻那から聞いていた場所から大きなバスタ

オルを取り出し、それをそのまま身体に巻きつける。

「さ、麻那ちゃん。身体ちゃんと拭かないと、風邪ひいちゃうよ〜」

「はぁ〜い。ねぇ、おねえちゃん?」

 その後に続く麻那の言葉に、くららは思わず言葉を失ってしまった。

 

「おねえちゃんのおせんたくおわらなかったから、おかーさんのおようふく、あとでもってくるねっ」

 

 年齢不相応の優しさと気配り。子どもらしくないとして一度は否定した麻那のそれは、近しい人への遠慮だと思っていた。だがそれは麻那の本質的な優し

さも含めていた事を、くららは直感的に理解した。

ただ聞き分けの良いだけの子どもなら、入浴前にくららが言った言葉を守ろうとするだろう。くららも実際はそう考えていたのだが、それは今、麻那自身

の言葉によって否定された。麻那はただ、大好きなおねえちゃんであるくららの為を想ってくれている――――。

「ありがとう、麻那ちゃんっ!」

「わぷっ…………えへへ、おねえちゃんふかふか〜♪」

 

 

 

 分かっていた事だが、やはり陽子の服はくららには小さかった。オーソドックスな半袖Tシャツはくららの豊か過ぎる胸に押し上げられており、本来なら

ちゃんと上半身を覆う事が出来るはずの物が、大胆なへそ出しスタイルに変貌してしまっている。

下に履いていたスカートの代わりに用意してもらったハーフパンツも、丈は良いのだがウエストが緩すぎる上にヒップも少々余裕があるため、押さえていな

いと落ちてしまいそうだ。

「(しかも、ノーパンだし……背に腹は代えられないとは言え、恥ずかしいよぉ……っ)」

 もじもじと居心地の悪い感触に耐えつつ、くららはソファーに座って今はタオルを使って麻那の髪を乾かしてあげている。下手に動こうものなら何が起き

るか分からないし、あと十分程度で乾燥作業も終わる。それまでの辛抱と割り切って耐えるしかない。

「ふぁ…………にゃぅ……」

 大きな欠伸を噛み殺しながらも、麻那はむにゅむにゅと眠そうに口を動かしながら目をしぱしぱ瞬かせていた。どうやら身体が温まったことで少々眠気が

強まってきたようだ。加えて、くららの手で優しく髪を拭いてもらっているという心地良さも手伝っており、眠りに落ちるのは時間の問題と言える。

「? 麻那ちゃん、眠いの?」

「…………ぅうん、だいじょおぶ〜…………」

 かくんっ、と盛大に舟を漕ぎながら言われても説得力ゼロでしかない。くららはそんな麻那を見てくすっと笑みを漏らし、ソファーにいくつか置かれてい

るクッションを一つ取り、塵一つないフローリングの床にぽんと置いた。

「くららおねえちゃんも眠くなっちゃった。一緒にお昼寝しよっか?」

「ぁぅ…………ぅん……むゅ」

 目を擦りながらも、麻那はぺとぺととクッションに歩み寄ると、そのまま顔から突っ込んだ。あまりの唐突さにくららは思わずソファーから立ち上がった

が、当の麻那は全くダメージを受けた様子もなく、見ている側の方が蕩けてしまいそうなほど気持ち良さそうな表情を浮かべている。

「もぉ……びっくりしちゃったよぉ」

 隣に同じくクッションを置くと同時に、乾燥終了を告げる洗濯機のアラームが鳴る。これでなんとか最悪の事態は避けられる事となったくららは、素早く

脱衣所で下着を着用し――――しかし、服は麻那が用意してくれたものを再び身につけて、タオル置き場から持ってきた大判バスタオルを広げ、麻那と自分

の身体の上に掛けた。

「くぅ…………むにゃ…………すぅ……」

 まだ完全には乾いていない栗色の髪をしゅっと梳いて、くららは麻那の頬に触れる。

 知り合ったばかりだが、自分の事を「おねえちゃん」と慕ってくれる可愛い女の子。大好きな謙悟の妹であると同時に、くららにとっても大切な、たった

一人の「妹」。これから何度でも触れ合って、言葉を交わして。その度にお互いの知らない面を知っていくのだろう。

「おやすみなさい。これからもよろしくね、麻那ちゃん♪

 

 

 柔らかなほっぺたに、親愛の証を。

 最愛の男性と女性が戻ってくるまでの、短くも長くもないささやかなひと時。

 そのひと時に刻まれたのは、二人だけのヒミツの一幕。

 

 

 

 

 

 

 Epilogue

 

 

「ただいま」

「お邪魔します」

 時刻は午後六時前。

 帰宅を告げるのは新崎謙悟。そして訪問の挨拶を告げるのは今村冴霞。冴霞は今日、初めて謙悟の家を訪れる事もあり内心少々緊張しているのだが、普段

通りの表情からはそれを読み取る事は出来ない。それでも何となく察する事が出来るのは、謙悟とくらら位のものだろう。

「くららー、麻那ー?」

「どこかに出掛けてるんでしょうか……あっ」

 リビングを覗いた冴霞が、思わず笑みを浮かべて謙悟を手招きする。謙悟もそれに応じてペタペタとスリッパを鳴らして入口に近づき、冴霞の横からリビ

ングを覗き込むと――――その光景にはもう、微笑を浮かべる以外の選択肢はない。

「くぅ…………すぅ…………」

「んん…………むにゅ…………」

 くららと麻那は一枚のタオルを共有して、沈んでいく陽光に照らされた茜色のリビングで、二人寄りそうように眠っていた。

「やっぱり、大丈夫だったな」

「まぁ、くららちゃんに懐かない麻那ちゃんじゃないとは思ってましたけど……正直、たった一日でここまで仲良くなるのは、私も予想外です。ちょっと妬

けちゃいますね♪」

 そう言いつつも、冴霞の表情はどこまでも優しい。自分にとっては親友であり恋人でもあるくららが、同じく恋人である謙悟の妹と仲睦まじい関係を結べ

たということは、等しく自分自身の幸福でもある。

 そして謙悟も、人見知りしがちな妹がこうして、恋人であるくららに心許してくれたのは素直に嬉しい。これから長い付き合いになっていくという事を、

麻那がこれから先どう受け止めて行くかは分からないが。

 

今はただ、穏やかな二人の寝顔が、何よりの報酬。

 三重奏は四重奏へと変奏し、はるかな未来を紡いでいく。

 

 

 

                                                                    終

 

 

 


あとがき:

05のアフターエピソード。麻那とくららちゃんの交流第二弾は、もうすっかりお馴染になっている(?)お風呂編。
文字通りに裸の付き合いというやつですが、流れ的には以前書いた麻那と冴霞のそれに準ずるもの。しかし
今回は謙悟の存在がないので、少々変化しました。それ以上に麻那の心中も冴霞に向けていたものとは異なって
いるので、くららちゃんと麻那の関係はより「姉妹」らしくなったつもりです。


管理人の感想

おっふっろっターーーーーーーイムァッ!!(爆)
いやぁ、相変わらずの麻那ちゃんの可愛さについついテンションが上がってしまいました(ぇ
今回のお話は、5話のアフターストーリー。
ほのぼのとするやりとりの中で、お互いが大好きな気持ちがとてもよく伝わってきました。思わずにやけてしまうような作品って感じですね。
麻那ちゃんにとって、おっぱいは「甘えられるもの」なのでしょうね。大好きな姉二人が持つ魅惑の果実、その中はとても安心するのでしょう。
まあ謙悟の場合、悶死確定ですが(笑)

ではでは、今回もありがとうございましたー!^^



2011.2.9