B&G MEMORIAL of SUMMER
BOYS and GIRLS in Long Vacation
「ふう、さっぱりした……部屋は、どこだっけ」
短い髪をタオルで拭き上げながら、新崎謙悟は慣れない階段を上る。初めて訪れた高平家の中はそれほど入り組んでいるわけではないが、なにしろ部屋の
数が自宅の倍近くある。たった三人で住んでいたにも関わらず、だ。
一階にあるのは高平継の父・高平晃司の事務所と晃司の部屋、リビング、ダイニングキッチン、そしてバス・トイレと地下室へ下りる専用階段。また、
家の中から駐車場に行けるようにもなっており、小さな子どもからすればちょっとかくれんぼが出来るくらいの間取りである。
そして二階がそれぞれの部屋なのだが、一階のリビングとは別に客間なるものが作られている。リビングのそれとは違い、家族ではなく客を応接する為の
広い空間であり、ちょうどその上が屋上になっている。さらに今は空き部屋になっている継の兄・高平弌(はじめ)の部屋と継の部屋もこの二階にあり、
さらに一階と同じくトイレが設置されている。また、本来ならば三階までを結ぶ家庭用エレベーターも設置予定だったのだが、そこまですると本当に家とは
呼べない事務的な建築物になってしまうので、晃司の亡き妻・遼子の進言によりエレベーターは廃止。そのスペースは収納スペースとして活用されている。
三階は広い和室と、六畳程度の部屋。和室の方には仏壇が置かれており、部屋の方は生前遼子が使っていた部屋だ。毎日晃司自らが掃除しており、ここに
入室する人間は限られている。毎年、遼子の命日には高平家と和泉家――遼子の実家――の親戚が集まり、また彼女の親友家族である柊木家もここを訪れる。
その日だけは、この小さな部屋に花が敷き詰められ、遼子の好きだったお菓子を作ってくるのは柊木要の母・柊木千景の大事な役目だという。
閑話休題。
「風呂、上がったぞ……何やってんだ、高平」
「見てわかんねぇか? ゲームだよ、ゲーム。レースしてんの……っと!!」
ぐいっと身体を捻り、ハンドル状のコントローラを切る。対戦相手は運転免許を取得している森川総志であり、女性陣はソファーに座って観戦モード。
「そーじくん、頑張れ〜!!」
「継くんも、負けないで!!」
相方から上がる声援を背中に受けて、それぞれが加速する。しかし迫るのは難関のヘアピンカーブだ、減速しインを取ろうとする継、そこへ大外から
カウンターを当て、切り込むように被せてくる総志のテクニックの前に、わずかに優位を保っていた継は抜き去られ、一位と二位が入れ替わる。
「ぬあっ!? く、くっそ〜!!」
「まだまだ甘いな、継くんは」
陽乃海スポーツセンターにはなかったカーレースゲーム。深夜を迎え、日付を跨いでも、まだまだ真夏の競演は終わらない。謙悟は客間のテーブルに
置かれているコーラを一つ取ると、要たちと同じくソファーに腰掛けて観戦している冴霞の足元に座り込んだ。
「隣に座ったらいいのに」
「いや、風呂上がりでまだ熱いから。フローリングの方が気持ちいいんだ」
ジーンズを膝近くまで捲り上げているのがその証拠である。冴霞はそんな謙悟を見て、くすっと笑みを漏らしながらスリッパを脱いで、裸足になった足を
謙悟に寄せ、器用に謙悟が使っているタオルを掴む。
「ゲームしないんですか? 謙悟くん、私よりもレースゲーム得意でしょう?」
「自慢するようなものじゃないけどな……って、イタズラしてないで、風呂入って来なさい」
既に男性陣は三人とも入浴を済ませており、継は自宅なので寝巻代わりの薄手のシャツにハーフパンツという、なんとも涼しげな格好だ。しかし唐突な
宿泊になった事で、総志と謙悟はシャツだけは継から借りて、ズボンはそのままで就寝する事になっている。ちなみに、下着に関しては洗濯乾燥機の高速
乾燥機能を使って入浴中に乾いているので、一応清潔なものだ。
「入るのは良いんですけど、時間がかなり遅くなるから……ほら」
そう言って、掛け時計を指差す。時刻は既に深夜一時を過ぎており、このまま女性陣が入浴すれば、最終的には深夜二時半近くになるだろう。だが入浴は
年頃の女の子にとってはとても重要なものの一つである。それなりに時間を要し、みっちりと磨きをかけておくのは必要な事であり、必然、時間も長くなる。
「だったらぁ、三人で一緒に入っちゃえばいいんですよぉ!! 要ちゃんも、そうした方がいいよね?」
いきなり会話に入り込んできたかと思えば、秋月愛はぎゅうっと要の身体を抱き締める。要は頬を染めて抵抗するものの、確かに愛の提案は結果だけを
優先すれば理にかなっている物でもある。
「で、でも、いくら継くんの家のお風呂でも、三人も入ったら狭いし……恥ずかしいよぉ……」
「別に隠さなくたっていいじゃん。男の子はいないんだし、それに自慢したって良いくらいだよね〜、センパイ?」
好奇の視線を向ける愛と、半泣きになって哀願する要。今のところ賛成・反対はそれぞれ一票で拮抗しており、冴霞がどちらに票を投じるか次第で結果が
変わってくる。冴霞はふむ、と顎に手を当てて考えながら要の身体をじ〜っと観察し、きっかり十秒後に決めたとばかりに微笑んだ。
「……そうですね。せっかくだから、みんなで一緒に入りましょうか!!」
「そんなぁ〜〜〜〜!!?」
「センパイ、ぐっじょぶ、超最高!! はい、ハイタッチ!! いえ〜い!!!!」
「いえ〜いっ!!」
ノリノリで手を打ち鳴らす愛と冴霞に挟まれ、さめざめと嘆く要。その、ある種異様な光景を、ゲームそっちのけで眺める継と総志が操っていたマシンは
思い切りコースアウトしており、謙悟は少々呆れながらも。
友人に囲まれた冴霞の楽しそうな笑顔を見られた事に、誰よりも喜びを感じていた。
Midnight Stage 〜Shangri-La〜
高平家のバスルームは新崎家のそれよりもやや広く作られてはいるが、二人程度ならばまだしも三人が同時に入る事は想定されていない。しかし、浴槽と
シャワーを上手に使い分ければ無理というほどでもなく、特に今は夏場である。夜とはいえ秋冬ほどに冷え込む事はなく、風邪をひくような事もないだろう。
「よっと……要ちゃん、脱いだ下着はここでいいの?」
「あ、待って。ちゃんと洗濯するから一回集めるね。冴霞さんも脱いだらこっちに下さい」
「はい。……それにしても」
シャツを脱いで、長い髪をタオルでくるくると纏めながら冴霞が要を見る。要はその視線に答えるように「?」と首を傾げた。
「どうかしました?」
「いえ、夕食の時もそうでしたけど……やっぱり、高平くんの家に慣れてるなあって思って」
的を射た冴霞の言葉に、要の頬がぽっと染まる。既に下着を脱いで入浴準備万全となっている愛は、にやにやと笑いながら要の肩を叩く。
「そりゃそ〜ですよお。なんたって幼馴染だし、今は彼氏彼女だし。この家に泊まった事もいっぱいあるんだもんね〜? あたしもぉ、そーじくんの家には
ずっと前から泊まったりしてるし♪」
「そ、それは、愛ちゃんの家は総志さんのお隣だからだよ。家族ぐるみで仲良しだし……あ、それはあたしもか」
「何だか、お二人って境遇がとても似ているんですね。幼馴染の男の人とお付き合いして、家族で仲が良くて。私は親戚は多いんですけど、歳も離れてるし
みんな女の子ばかりで、住んでいるところも遠いですから。幼馴染って言えるのもやっぱり女の子で、十年来の親友です」
「へえ〜」
「そうなんですか……」
話をしながら下着も脱いで、タオルを手に冴霞と愛が先にバスルームへ入る。要は洗濯用のネットの中に下着を一つずつ分類して入れると、早速洗濯機を
『高速手洗いモード』というちょっと矛盾しているのではないかというモードでスタートさせてから、二人の後に続いた。
湯気が残るバスルームには、まだ人が入っていた名残を感じさせるように、水滴が床と壁のタイルを濡らしている。だがそんな中で既に三人が入浴した
であろう浴槽のお湯は綺麗なもので、お湯の量もほとんど減っていない。
「あ、お湯が入れ替えてある。新崎くんの仕業だね。気が利いてますね〜」
「ちゃんと掃除もしてあるみたい。……新崎くんって、家事が得意なんですか?」
「お料理はそうでもないみたいですけど、やっぱりご両親がいない事が多いですからね。自然と身に付いたって言ってました」
そう告げる冴霞の声はどこか嬉しそうだった。自分のために大好きな謙悟が何も言わずに気を利かせてくれたこと。またそれが要と愛に認められ、好評を
得られたことは、冴霞にとっても喜ばしいのだろう。
「そんじゃ、さっそく綺麗なお湯でお風呂タ〜イム……の前にぃ」
わざとらし過ぎるほどに満面の笑みを張り付けた愛が冴霞と要を見る。その視線の意図を理解出来なかった冴霞だが、要の方はある程度予想がついている
らしく、摺り足で移動して距離を取る。
「ていっ!!」
「きゃあっ!?」
愛の右手が迸ったかと思うと、その手は冴霞の胸に当てられていた。そしてそこを起点にくるりと背中側に回り込み、背後から抱くような姿勢で冴霞の
腰へ手を回し、這うような手つきで冴霞の身体をさわさわと撫でていく。
「あっ、秋月さん!? いきなり、なにを……っ!?」
「ぬふふ〜。昼間からず〜っと我慢してましたっ、センパイへのボディーチェックのチャンスがやっと巡って来たんですよ? 思う存分、楽しゲフンゲフン。
チェックさせてもらいますからね〜!!」
「今楽しむって言いましたよね!? 言いましたよね!!? かっ、要さん、助け……ひゃぅっ」
慣れた手つきで胸を揉み上げ、さらにみぞおちから下のラインをなぞりながら、腰回りも器用に撫でる愛。同じような事は数日前、謙悟にもベッドの上で
されてはいるが、アレとは比較にならないくらい遠慮がなく、また熟達している。
「ご、ごめんなさい、冴霞さん……でも、あたしもされた事あるから……」
「う、裏切りも、のぉ〜……ぁぅんっ」
腰に回っていた手が、今度は形良く引き締まったお尻を撫でる。そして胸に触れていた右手は爪弾くように桜色の先端をなぞると、そのまま胸の谷間を
抜けて冴霞の顎をくっと持ち上げた。
「ん〜♪ センパイって締まるところはしっかり締まってて、出るトコはばっちり出てるんですねぇ。おっぱいもあたしよりありそうだし、ホントにモデル
さんになれるんじゃないですか?」
「そんな、ので、誉められても……ふあぁっっ!?」
ちゅるん、と愛の舌が冴霞の首筋を舐める。首、特にうなじは冴霞の敏感な部分の一つだ。思わず力が抜けそうになり、踏ん張っていた足は震えている。
「あやや、首が弱かったんですか。このまま座っちゃいます? そしたらあたしも楽にチェックできるから全然OKですよ? その綺麗なおみ足と、それと
……わぷっ!? って、ひゃああああああああああ!!!!???」
突然浴びせられたのは冷水シャワーだった。不意打ちのシャワーを見舞ったのは見るに耐えかねた要であり、冴霞も少なからず水浸しになりながらも
愛の拘束を振り切り、熱を取り戻すようにそのまま浴槽に飛び込む。
「セクハラ禁止!! えっちな事も禁止!! 愛ちゃんは頭を……」
きゅっ、きゅっ、とさらに蛇口をひねり、水勢を強める。痛いくらいの水圧に叩かれ、愛は抵抗するどころの騒ぎではなくなっているが、昔日の恨みも
あってか、要の手は止まらない。
「冷やしなさあぁぁ〜〜〜〜いっっっ!!!!」
「んのおおぉぉぉぉ〜〜〜〜!!!!!???」
「ぶえっくしっっ!! う゛〜……さ、寒かったぁぁ〜〜……」
「自業自得っ!!」
「ありがとうございます、要さん。でももうちょっと早く助けて欲しかったです……くしゅんっ」
ガタガタ震えながら浴槽で暖まっている愛をよそに、冴霞は要に背中を流してもらっていた。愛と違いセクハラされる危険性が全くないため、安心して
背中を預ける事が出来るし、なにより洗い方が丁寧だ。
「要さん、なんだか慣れてるみたいですね。何かコツでも?」
「コツって言うか、お母さんと一緒にお風呂に入ったりしてましたし……そ、その、継くんとも……小さい頃は……」
恥ずかしそうに俯きながらも手の動きは止めない。それが要の本質的な優しさであり、冴霞はくるりと振り返ると要の手からスポンジを奪い取った。
「じゃあ、今度は私が背中を流しますね。要さんは後ろを向いて下さい」
「あ、はい……じゃあ、お願いします」
背中を向ける要。ボディーソープをスポンジに補充し、手で何度も握り返して泡立たせてから、そっと背中を擦る。身長が冴霞よりも十センチほど小さい
要だが、やはりプロの洋菓子職人を目指しているだけあってそれなりに筋肉も付いており、見た目ほど華奢ではない。そしてなにより要の身体で一番目を
惹くのが――――背中から覗きこまずともそれと分かる、大きなバストである。
「……やっぱり、生で見ると大きいですね」
「ぶっ!? い、いきなり何を言い出すんですか!!?」
呆れたように言いながら振り返る要。するとその動きに従い、また慣性の法則によって大きく胸が揺れる。その光景に思わず溜め息をついてしまう冴霞。
「……良い物を見せてもらいました」
「て、手を合わせて拝まないで下さい! 冴霞さんだって十分大きいじゃないですか!!?」
「だってぇ、要ちゃんのはモノが違うもん。確か今、Fカップでしょ?」
浴槽の角に顎を載せてだら〜っと気の抜けた表情の愛が暴露する、要のバストサイズ。その事実に冴霞は無意識に要の胸に手を伸ばし、熱い視線で彼女を
見つめた。
「さ、触っても……良いですか?」
「だ、駄目に決まってますよ! 愛ちゃんも、余計なこと言わないで!!」
「余計とは失礼だにゃー。センパイの知的好奇心に答えてあげたんだから。それに触ったり揉んだりしても、減るもんじゃないんだからいーじゃん!!」
「減らない分、増えるからイヤなの!! ただでさえ、最近ちょっとキツくなって……はっ!!?」
迂闊な発言に思わず口を閉ざす要だが、時既に遅し。冴霞は驚いたように目を丸くして要の顔と胸を交互に見ているし、愛はわざわざ浴槽から出てきて、
わきわきと指を動かしている。
「聞き捨てならない言葉が出ましたよ、センパイ」
「ええ。これは私もちょっと見逃せませんね。是非確認しなくては」
「確認しなくていいですから!! ほ、ほら、愛ちゃんだっているんだから、先にそっちを――――」
自分が逃れるために愛を差しだそうと指差す要。しかしその手を『ガッ!』と掴んで、冴霞はにっこりと笑顔を浮かべた。
「いえいえ。まずは美味しい方から頂きます。それにさっき助けてもらいましたけど、一度は見捨てられた身としてはお返しの一つもしておきたいので♪
秋月さん、手を貸して下さい」
「はいな。要ちゃんも自業自得だね〜」
冴霞に押さえられている以上抵抗する術のない要の後ろに回り込んで、そのまま羽交い締めを敢行する愛。そして冴霞の長い指が下から持ち上げるように、
たっぷりと中身の詰まった果実に触れる。
柔らかく、しっとりと。それでいて確かな重量は自身のそれと比較してもかなり重い。冴霞の場合は柔らかくも張りと弾力があり、触れてくる指を内側
から押し返すものである。習慣的に鍛え、マッサージなどでしっかりケアをしているからこそ保たれている努力の結晶といえるだろう。
だが、要の場合は天然の要素に加えて、普段の食生活に大きく起因している。日本食もそれなりに食べてはいるが、家がレストランを経営している都合上
洋食とは切っても切れない間柄であり、またお菓子作りの際には牛乳をはじめとした様々な食材を味見がてら食すため、その成長が顕著なのだ。
「うん……何て言うか、癒される感じ……ですね」
「でしょ〜? あっ、あたしにも触らせて下さい!」
「ちょ、やんっ……め、愛ちゃんは、触り方が……やらしーよぉ……」
冴霞の揉んでいるだけの触り方とは違い、愛の場合は明らかに性感への刺激を目的とした触り方だ。外側から中央に向かって搾るような手つきと、微かに
先端を指の腹で撫でながら、爪の先で軽く弾く。その刺激に思わず要の身体はびくっ、と跳ね、何度か繰り返されるうちに自然と吐息に熱がこもる。
「んっ……はっ、はあぁっ……や、だ……めぐ、みちゃ……」
「あ、秋月さん、やりすぎじゃ……?」
「う、うん……なんだか、あたしもドキドキしてきましたよ……? っていうか、要ちゃん敏感過ぎじゃない!?」
手を止めて愛が要の顔を覗き込む。その瞳は熱に浮かされたように蕩けており、さらに目の端には微妙に涙まで浮かんでいる。愛としてはそれほど強く
刺激したつもりはないのだが、まさかここまで要が敏感だとは完全に予想外だった。
「そ、……そうじゃ、なくてぇ……冴霞さんにも、見られてるって、お、思ったら……ヘンに、熱くなって……」
「えっと……そ、それって、つまり……」
「要ちゃんって……そーいう……?」
敢えて口には出さず、冴霞と要はお互いに顔を見合わせてから、うんと深く頷き合い。
「「すみませんでした!!!!」」
と、バスルームの床に正座して、まだ熱の醒める気配のない愛に土下座して謝罪した。
「くすん……」
浴槽の中で体育座りして縮こまっている要を後ろから抱っこした冴霞が肩を揉み、愛も身体を洗いながら申し訳なさそうに笑っている。さすがに女性三人
ともなれば浴槽は手狭になるので、まだ身体を洗っていない愛が外に出る事でなんとか収まっている状態だ。
「ごめんなさい、要さん……当たり前ですけど、誰にも言いませんから!!」
「ほ、本当にゴメンね……、許してくれる?」
「……………………うん」
ようやく頂けたお許しの言葉に、ぷはぁ〜と力が抜けていく冴霞と愛。かれこれ五分以上謝り続けての成果だけに、喜びと疲労もひとしおである。
「んじゃ、そろそろ上がりますか? 洗濯も終わったと思うし――――」
シャワーで一気に泡と汚れを落とし、きれいサッパリといった感じで愛が笑う。しかしその隙に要は浴槽から抜け出て、愛の身体に抱きついた。
「にゃ!? か、要ちゃん、いきなり何を!?」
「許しはするけど、お返しくらいさせてもらわないと割に合わないからねっ! 冴霞さんも、今の内にっ!!」
「あ、は、はい!」
要に促されて冴霞も浴槽を出ると、そのまま愛の豊かな乳房に触れる。冴霞の方が大きい、とは愛の弁だが、実際触った感じではそんなに差はないのでは?
というのが冴霞の素直な感想だった。しかし、愛は百六十七センチという長身の割にほっそりとしており、それで冴霞と同等のバストを誇るというのなら、
もしかしたら一番スタイルが良いのは自分ではなく愛の方では? と思うと……それとなく、悔しい気持ちになってくる。
「や、やめっ……ってセンパイ!? なんか怒ってない!!?」
「それは、いの一番に弄られましたからね!! ちょっとくらいはお返しさせてもらいますよ!!」
「あたしだって!! いつもいつも弄られてばっかりなんて悔しいもん!!」
むにゅうっ、と胸を押し付けての攻撃。それが攻撃に成り得ておらず、むしろ愛を気持ち良くさせている事など考えてもいない要は、これでもかと身体を
押し付けている。しかしその気持ち良さゆえに愛は半ば放心状態になり、「このまま責められるのもいいかもにゃ〜」などと呑気な事を考えてしまっていた。
「って、効かない!? どうして!?」
「愛ちゃん、くすっぐたくもないの……!?」
「ほえ? あ〜、うん。あたしこういうのもう慣れっこだから。総志くんくらいのテクじゃなきゃ我慢するくらいワケないのだ!!」
「「!!?」」
愛の告白に、落雷に打たれたかのような衝撃を受ける冴霞と要。
そんなに変わらない歳の、三人の中では一番子どもっぽい言動の、この秋月愛が。まさか自分たちが及びもつかないほどに上級者だったとは……っっ!!
「……すみませんでした、愛先輩」
「私達が、甘かったです……!!」
「え? え〜……んまあ、頑張りたまへ♪」
びっ! と親指を立てる愛。その姿に平身低頭する冴霞と要。
乙女三人が集った一夜限りの桃源郷は、こうして幕を下ろしたのだった。
時刻は深夜二時過ぎ。
洗い終えた下着を身に付け、脱いでいた服をまた着直した三人が客間に戻ってくると、既にゲームは終了していた。つきっぱなしのテレビにはレースの
タイムが表示されており、『KEN』の名前が一位から三位までを独占。その次には『SOJ』、五位にわずか〇.二秒差で『KEI』の名前が入っており、
当の男三人はというと継は既に自室に戻っているらしく、総志も愛宛の起き手紙で空き部屋で寝てると書いており、そして謙悟はソファーに座ったまま船を
漕いでいた。
「みんな、寝ちゃってるんだね……新崎くん、風邪ひくよ?」
「ふわぁ〜〜……あたしたちも、このまま寝ちゃいましょっか?」
「そうですね。布団は用意してありますし……自分の彼氏がいる部屋で」
くすっとイタズラな笑みを浮かべる冴霞。要も愛もそれに同意するように同じような笑みを浮かべ、置いていたタオルケットを持ってそれぞれの想い人の
部屋に向かって行った。
もう夜も遅い。恐らく要も愛もすぐに眠ってしまうだろう。冴霞はそう思いながらゲームとテレビを消し、さらにリモコンを使って客間の照明を落とそう
とすると、視界の隅に布団と一緒に置かれた謙悟のシャツを見つけた。
「…………」
何の気なしにそのシャツを取り、きゅっと抱き締める。電話越しとはいえ悠香を相手に「俺が守る」とまで宣言した謙悟の匂いが微かに残った物。
汗の匂いも少し混じっているが、だからこそ余計に愛おしい。
「……しょっ、と」
タオルケットで謙悟と自分を包み、彼の肩を枕にして。
そして、少しでも謙悟を感じていたくて、シャツを勝手に着る。それで朝になってみんなにからかわれる結果になるとしても、全く構わない。
「今日はとっても楽しくて、とっても嬉しい日でした。謙悟くんはどうでした?」
「…………んむ……」
寝言にすらなっていない唸り声。口元から香るコーラの甘い匂いと髪に残るシャンプーの匂い。同じシャンプーを使った今日は、謙悟と何もかも一緒。
「おやすみなさい、謙悟くん。……大好きです」
「…………ん」
おやすみのキス。きっと朝を迎えれば、またそれぞれの家に帰ってしまう。それまでにキスが出来るかは分からないから、今のうちに。
桃色の花弁(くちびる)をそっと、謙悟の頬に添えた。
END
あとがき:
BGM40話のアフターエピソードになりますが、ナンバリングには入らない番外編になります。
お風呂を書くのはもはや恒例行事となっていると言ってもいい中で、特に今回は女の子の絡みを重点的に。桃色テイストが
若干強めだった気もしますが、ご容赦ください。さらに男性陣の出番が異常に少なかった事に関しても……まあ、これはいいか。
また機会があれば、単発で書き下ろしを作るかもしれませんので。お楽しみいただければ幸いです。
管理人の感想
こ、ここは桃源郷かっ!!?(爆)
というわけで管理人です。鷹さんより、BGMの番外編を送って頂きました〜。
最終話の後の夜。まさかまさかのドキワクイベントでした^^
しかし・・・この三人の入浴は、色んな意味でヤバいですよねぇ。誰しもがモデルになれそうな体型をしてるし。特に一部分が!
そして最後は、やはりこの二人で締め。ホントに、羨ましいほどラブラブですねぇ。
それでは、また書きおろしがあるかもしれないということで、皆さまも期待しましょう!