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フォーエバー・フィーバー / Forever Fever
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(撮影)
(音楽)
(出演)
グレン・ゴーイ
グレン・ゴーイ
1998年
シンガポール
ブライアン・ブレニー
ガイ・グロス
エイドリアン・パン
メダリン・タン
アナベル・フランシス

カラー/1h35
 日本では2000年夏に公開された異色のシンガポール映画。公開当時は「ムトゥ〜」などのアジア系のダンス・ムービーが流行っていて、その勢いで輸入されたような作品。あまりにもB級のイメージが強かったので、当時は別に見ようとは思わなかったけれど、あらためて見てみるととてもいい映画だった。
 舞台は1977年のシンガポール。ブルース・リーをこよなく愛する主人公ホックは、憧れのバイクを買うために毎日こつこつとお金を貯めていた。しかし、ある日偶然仲間と見た『フィーバー』という映画を見て突如ダンスに目覚める。そして賞金目当てに、ダンス大会に出場することになる。
 すっかりトラボルタ気取りのホックを演じたエイドリアン・パンの「クックッ」とした腰の動きに、私は始終目が釘付けだった。70年代には最先端のトラボルタ・ファッションも今となっては結構笑える。なぜ、今どきトラボルタなんだろう?というのはあるけれど、見ているとなぜか自分も踊りたくなってくる(密かに鏡の前で、トラボルタ・ポーズを決めてしまった私。頭の中は『ステイン・アライブ』の音楽が・・・トホホ)。
 主人公を取りまく人々のキャラクターも魅力たっぷりに描かれていて、ラスト・シーンも爽やか。とても後味の良い作品だった。

8人の女たち / 8 Femmes
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
フランソワ・オゾン
フランソワ・オゾン
2002年
フランス
カトリーヌ・ドヌーヴ
エマニュエル・ベアール
イザベル・ユペール
ファニー・アルダン
ヴィルジニー・ルドワイヤン
リュディヴィーヌ・サニエ
ダニエル・ダリュー
フィルミーヌ・リシャール

カラー/1h51
 1時50分からの回を見るために劇場に1時頃到着すると、すでにその回は立見だった。仕方ないので4時20分の回の整理券をGETして、銀座の街をぶらぶらする。4時頃劇場に戻るとすごい人で、平日の昼間ということもあって、ほとんどが中年のおばちゃんだった。(まあ、自分もそのおばちゃんのひとりなんだけどね。)
 「焼け石に水」「まぼろし」に続く、フランソワ・オゾン監督最新作で、登場人物はその名のとおり、8人の女のみ。一家の主人の死をめぐり、閉鎖された空間の中で、一大推理合戦が繰りひろげられる。「十二人の怒れる男」と手法はまったく同じだけれど、ひとつ異なるのは、登場人物たちが突然、歌って踊りだすところ。といっても、これはミュージカル映画ではない。なぜかというと、その歌と踊りがとてもお粗末だからだ。でも、おそらく、そのお粗末さが監督の狙いなのだろう。というか、圧倒的な演技力と拍子抜けした歌と踊りのアンバランスさがいいのかも知れない。まあ、そんな茶番もいつまで続くのだろうかと、少々飽き始めてきたところへ、最後はちゃんと締めてくれるあたり、オゾン監督の並々ならぬ才能を感じる。

連弾
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
竹中直人
経塚丸雄
2000年
日本
竹中直人
天海祐希
冨貴塚桂香
蓑輪裕太

カラー/1h44
 竹中直人演じる佐々木正太郎は、特に働きもせずに、専業主夫として毎日を送っていた。そんな正太郎とは対照的に、妻の奈美子(天海祐希)はキャリア・ウーマンとしてバリバリ働いていた。夫婦の仲は冷めたもので、奈美子は会社の若い部下と浮気をしていた。ある日奈美子は自分の浮気がばれたのをきっかけに、家を飛び出してしまう。しかし奈美子はピアノの発表会で娘と連弾をすることになっていた。練習のために時々家に戻ってくるのだが、正太郎とは相変わらず関係が修復する気配は無い。そんな二人をさめた目でみつめる中学生の娘と、浮気をした母親を不潔だと感じる小学生の息子。二人の心の中では母親を慕う気持ちと嫌悪感が葛藤している。
 特筆すべきは天海祐希の演技だ。竹中さえも食ってしまう天海の怪演がなければ、この作品の面白さは半減していただろう。
 作品中、ところどころで登場人物が鼻歌を歌う場面がある。それぞれの役者が即興でやっているのかと思っていたら、実は全部竹中直人が作っていた。エンドロールにタイトル付きで出てくるのにはびっくりした。

ドラえもん のび太とロボット王国(キングダム)
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(原作)
(製作年)
(製作国)
(声)
芝山努
岸間信明
藤子・F・不二雄
2002年
日本
大山のぶ代
小原乃梨子
野村道子
たてかべ和也
肝付兼太

カラー/1h23
 たまには子供の気分を味わってみようと、この年になって、云十年ぶりにドラえもんを見た。久し振りに見るドラえもんは、気のせいか少し大きくなっていた。家の備品も少し変化しているようだった。しかしのび太は相変わらずおばかさんだった。今回のお話はドラえもんたちが時空を超えて、人間とロボットが共存する星に迷い込んでしまうというもの。内容は特筆すべきものでも無いのであえて触れない。それよりも、この年になると(この年ってどの年だ?)、ドラえもんの出す道具にいちいちケチをつけたくなってしまう。昔はもっと感心したもんだけどなぁ。藤子先生もアイデア不足かなぁ。番組で子供たちから道具のアイデアを募集したりしてるしね。
 それから、この作品は結構いろいろな映画からアイデアをパクっていて、映画ファンには興味深い。話の大筋は『A.I.』からアイデアをいただいているのだろうし、ところどころが他の映画のワンシーンのパロディになっている。まぁ、私としては『A.I.』なんかよりずーっと感動したし、納得もできたけどね。

ヴァージン・ハンド / Picking Up the Pieces
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
アルフォンソ・アラウ
ビル・ウィルソン
1999年
アメリカ
ウディ・アレン
シャロン・ストーン
デヴィッド・シュワイマー
キーファー・サザーランド
マリア・グラツィア・クチノッタ

カラー/1h36
 ハッキリ言って、この作品は「ウディ・アレン映画」ではない。単なるウディ・アレンの出演している映画だ。その辺を勘違いして見ると、後で痛い目にあうことになる。アレンがどこまで製作にかかわったのか分からないが、監督はアレンではない。正直言って、この作品はつまらない。久し振りに「早く終わらないかなぁ」という気分になった。何がダメかと言うと、すべてがダメだと言うしかない。脚本も演出もアイデアもギャグも登場人物のキャラクターも、すべてが面白くない。おそらくアレンが主演でなかったら、単なるB級映画になっていただろう。
 このようなキリスト教をおちょくったような作品は、アメリカ大衆には受けるかもしれないけれど、「奇跡をもたらすヴァージン・ハンド(マリア様の御手)」という主題自体が、そもそも体質的に日本人にはピンとこないんだよね。

がんばれ、リアム / Liam
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
スティーヴン・フリアーズ
ジミー・マクガヴァーン
2000年
イギリス
イアン・ハート
クレア・ハケット
ミーガン・バーンズ
アンソニー・ボロウズ

カラー/1h31
 監督は『ハイ・フィデリティ』で音楽オタクの恋物語を見事に描いたスティーヴン・フリアーズ。舞台は1930年代初頭のリバプール。リアムはリバプールに住む7歳の労働者階級の男の子。不況のため街は失業者で溢れかえっている。そんな中、リアムの父親が働く造船所が突然閉鎖してしまう。リアムは聖体拝領の日を間近に控えていたが、一家は毎日の食費を捻出するので精一杯だった。
 物語全体に漂うせつなさに胸が締め付けられる思いがする。不況でいがみ合う大人たちとは対照的に、健気に生きる子供たちの姿にホッとさせられる。リアムを演じたアンソニー・ボロウズのなんとも言えない表情は、演技なのか天然なのか・・・タイトルどおり、「がんばれ、リアム!」と何度も声援を送りたくなる。ラストのリアムの姉のあまりにもせつない一言がいつまでも心に鳴り響いて止まない。

山の郵便配達 / 那山 那人 那狗 Postmen in the Mountains
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(原作)
(製作年)
(製作国)
(出演)
フォ・ジェンチイ
ス・ウ
ポン・ジェンミン
1999年
中国
トン・ルーチュン
リウ・イエ
ジャオ・シィウリ
ゴォン・イエハン
チェン・ハオ

カラー/1h33
 舞台は1980年代の中国。山間部で郵便配達の仕事をする父と息子を描いた、心温まる物語。長年、郵便配達の仕事をやり遂げてきた父親は、そろそろ24歳になるひとり息子に仕事を引き継がせようと考えている。そして仕事を教えるため、息子と愛犬を連れて最後の郵便配達に出かける。3日間で120kmの山道を、郵便物の入った重いかばんを背負って歩く郵便配達の仕事は決して楽ではないが、父親はこの仕事を愛し、何よりも誇りに思っていた。仕事が忙しくほとんど家にいることのなかった父親と息子の間にあったわだかまりも、この旅を通して次第に解消する。息子が父親を背負って川を渡る場面が印象的で、父親は息子の逞しさに驚き、息子は父親の体の軽さに驚く。最初は慣れない山道にヘトヘトだった息子を気遣いながら歩いていた父親も、次第に力強く歩を進める息子の姿に、安心して仕事を任せられることを確信する。最初は父親の言うことしか聞かなかった犬も、最後には息子の後をついていくようになる。逞しく成長した息子の姿に、過去の自分を重ね合わせ、自分の人生に誇りを感じる父親の姿が感動的だった。

アマデウス〈ディレクターズ・カット〉 / Amadeus: Director's Cut
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(原作)
(製作年)
(製作国)
(出演)
ミロス・フォアマン
ピーター・シェイファー
ピーター・シェイファー
2002年
アメリカ
F・マーレイ・エイブラハム
トム・ハルス
エリザベス・ベリッジ
ロイ・ドートリス
サイモン・キャロウ
ジェフリー・ジョーンズ

カラー/3h00
 1984年に公開されたオリジナルに、20分の新たな映像を加え、音楽もデジタル処理でリ・マスターしている。オリジナルのほうは9部門でオスカーを獲得した。アマデウス・モーツァルトとウィーンの宮廷作曲家サリエリとの確執を、100倍くらい脚色して描いた作品で、サリエリの独白と回想という形で構成されている。品格には欠けるが天賦の才能に恵まれたモーツァルトと、神に祈りを捧げ努力を重ねるが傑作を生み出すことのできないサリエリ。モーツァルトの才能を誰よりも理解し、憧れ、嫉妬した男の行き着く果てが見事に表現されている。ふたりを演じた俳優の演技も見事。
 3時間という上映時間に加え、レイトショーだったにもかかわらず、全然眠くならなかった。それどころか、ところどころに挿入されるオペラの上演シーンでは、興奮して鳥肌が立つほどだった。モーツァルトがすごいのか、映画がすごいのか分からないけれど、まるで目の前でオペラが上演されているような感覚だった。インターミッションも入らなかったのに、時間の長さをまったく感じなかった。それから、些細なことだけど、いくら製作がアメリカだからって、モーツァルトに「アスホール」とか「シット!」なんて言わせないで欲しいよ。キャラづけしてるつもりなのかもしれないけれど、モーツァルトが段々アメリカ人に見えてきたよ・・・トホホ。

初恋のきた道 / 我的父親母親 The Road Home
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
チャン・イーモウ
パオ・シー
1999年
アメリカ/中国
チャン・ツィイー
チョン・ハオ
スン・ホンレイ
チャオ・ユエリン

カラー/1h29
 町で働くルオは、父の訃報を聞き、しばらく振りに村に帰ってくる。葬儀のため、病院から父の亡骸を運ばなくてはならないのだが、母は車で運ぼうという村長の意見には耳を貸さず、昔のしきたりにそって、人力で担いで運んで欲しいという。そうすることで死者の魂もちゃんと家に辿り着くことができるのだという。そこには父に対する母の熱い想いが込められていた。そして場面は若き日の父と母の思い出に変わる・・・。
 この作品で監督のチャン・イーモウは、2000年のベルリン国際映画祭で審査員特別賞を受賞した。チャン・イーモウと言えば、純真な田舎娘を撮らせたら、右に出るものはいない。「あの子を探して」では頬を真っ赤にヒビ割らせながら、必死に生徒を探す田舎娘を見事に描いた。この作品でも少女の内に秘めた燃え上がるような恋心を見事に表現している。とにかくこの作品はヒロインを演じたチャン・ツィイーにつきる。あどけなさを残すその顔に胸キュンとなったおじ様方は多いはず。雪の中でいつまでも愛する人を待ち続ける乙女心に、忘れかけていた感覚が蘇って、私も胸がキュンとなって涙が出たよ。

ウエスト・サイド物語〈ニュープリント・デジタルリマスターバージョン〉 / West Side Story
[データ] [感想]
(監督)

(脚本)
(原作)

(撮影)
(音楽)

(音楽監督)
(製作年)
(製作国)
(出演)
ロバート・ワイズ
ジェローム・ロビンス
アーネスト・レーマン
ジェローム・ロビンス
アーサー・ローレンツ
ダニエル・L・ファップ
アーウィン・コスタル
シド・ラミン
ジョン・グリーン
1961年
アメリカ
ナタリー・ウッド
リチャード・ベイマー
ジョージ・チャキリス
リタ・モレノ

カラー/2h31
 1961年のアカデミー賞を総なめした作品で、上映時間3時間以上にも及ぶ超大作ミュージカル映画のリバイバル。シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を、ニューヨークの下町を舞台に現代風に翻案している。
 私はミュージカル映画は大の苦手なのだけれど、とりあえず名作だから押えておくか、というノリで観に行った。が、やっぱり辛かった。性根がせっかちなので、私にはミュージカルというのは向いていないのかもしれない。もっと歌やダンスを素直に楽しめればいいのだけれど、登場人物たちが歌いだすと、「もういいから、次、次!」と思ってしまう。これではミュージカルを観る資格なんて無いよね。
 作品について言えば、確かに40年前だったら70mmの大画面いっぱいにひろがる歌と踊りは迫力満点だったかもしれない。現代人はかなり感覚がマヒしているからね、それほどダイナミズムは感じられなかったよ。
 感想も尽きたので、アカデミー賞での受賞部門を挙げると、作品、監督、助演男優(ジョージ・チャキリス)、助演女優(リタ・モレノ)、撮影、美術、編集、録音、衣装デザイン、ミュージカル映画音楽賞の10部門。当然、アメリカ以外の国の賞は無いよ。

千と千尋の神隠し / Spirited Away
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(原作)
(音楽)
(製作年)
(製作国)
(声)
宮崎駿
宮崎駿
宮崎駿
久石譲
2001年
日本
柊瑠美
入野自由
夏木マリ

カラー/2h05
 私はこの作品を都合3回見た。当初テレビ欄でこの作品の放映を知ったときは特に見ようとは思わなかったけれど、あることを確認したくてもう1度見ることにした。あることとはこの作品の人気の秘密がどこにあるかということだ。良い映画というのは、見れば見るほど、新しい発見や感動がある。しかし残念ながら、今回の鑑賞では、今まで感じた以上のものを見出すことはできなかった。この作品はベルリンで金熊を獲ったり、今まさにアメリカで各映画賞のアニメ部門を席巻していて、海外でも非常に評判が高い。アカデミー賞の長編アニメ賞の受賞も有力視されたりしているけれど、アメリカ人がこの作品をどれほど理解しているのか疑問がある。他国の文化を理解できない(しない)アメリカ人が、果たして「八百万の神」や「湯屋」をどの程度理解できたのだろうか。もしかしたら、登場する神々をモンスターと勘違いしていないか?「番台さん」という言葉はどのように英訳するのだろうか?などと余計な心配ばかりしていたら、全然集中できなかった。この作品を見た欧米人の感想を聞くと「創造性」を褒める人が多いけど、本当に分かって見ているのかしら、と疑問になる。

バティニョールおじさん / Monsieur Batignole
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)

(製作年)
(製作国)
(出演)
ジェラール・ジュニョー
ジェラール・ジュニョー
フィリップ・ロペス=キュヴァル
2002年
フランス
ジェラール・ジュニョー
ジュール・シトリュック

カラー/1h43
 1942年、ナチス占領下のパリで、ひょんな事からユダヤ人の子供を匿う羽目になってしまった男の物語。パリで肉屋を営むバティニョールは、自分の引き起こした騒ぎが原因で、隣人のユダヤ人一家がゲシュタポに連行されてしまう。その事が心に引っ掛かっていたバティニョールは、12歳のシモンが家に逃げ込んでくると、匿うことを決意する。そして、自らの危険を顧みず、シモンをスイスへ逃がすために一緒に旅に出る。
 素材としては私好みで、うまく作れば泣き所満載になるはずなのに、いまいち強弱がない。なぜバティニョールが家族まで捨てて、子供を守ろうとするのか、動機付けがいまいち説明不足でよくわからない。ハラハラする場面も盛り上がらないので、その後の感動も薄くなってしまう。ナチスとユダヤ人を描いた作品は数多くあるけれど、このテーマに対しては、私たちはとても大きなものを期待しがちなので、相当気合を入れて作らないと感動させるのは難しいね。

博士の異常な愛情/または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか / Dr. Strangelove: or How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)


(原作)
(製作年)
(製作国)
(出演)
スタンリー・キューブリック
スタンリー・キューブリック
ピーター・ジョージ
テリー・サザーン
ピーター・ジョージ
1964年
イギリス/アメリカ
ピーター・セラーズ
ジョージ・C・スコット

カラー/1h33
 1964年にキューブリックによって作られた問題作。タイトルが異常に長いことでも有名。冷戦下のソビエトとアメリカをブラックユーモアたっぷりに描いた作品。ある日、気が狂ったアメリカ空軍の司令長官が、ソビエトを攻撃せよとの命令を出してしまう。ソビエトには攻撃に対し自動的に作動する「皆殺し装置」が配備されている。一発でもソビエトに着弾すれば、地球全滅は避けられない。しかし攻撃取り消しの暗号は、司令長官しか知らない。両国首脳はなんとか攻撃を回避しようと四苦八苦するが・・・。
 私はこの時期にこの作品を放映したNHKに拍手を送りたい。なぜならこれはアメリカの呆れた軍事体制を強烈に皮肉った作品だからだ。ラストは美しいほどのキノコ雲の映像で幕を閉じる。その前のあのシーンには大いに笑った。恐るべしキューブリックである。ちなみにピーター・セラーズは英国大佐、米大統領、マッドサイエンティストの一人三役を演じている。

メリーに首ったけ / There's Something about Mary
[データ] [感想]
(監督)

(脚本)



(製作年)
(製作国)
(出演)
ボビー・ファレリー
ピーター・ファレリー
エド・デクター
ジョン・J・ストラウス
ピーター・ファレリー
ボビー・ファレリー
1998年
アメリカ
キャメロン・ディアス
マット・ディロン
ベン・スティラー

カラー/1h59
 キャメロン・ディアス演じるメリーという美しい女性を取り巻く男たちの、恋のさやあてゲームを描いた作品。ファレリー兄弟は2002年にジェームズ・B・ロジャーズを監督に起用してヘザー・グレアム主演(厳密には主演じゃないが)の『ギリーは首ったけ』を作っているが、こちらのほうはさっぱり面白くなかった。ヘザーのポロリを期待して観た人にとっても、面白くない結果になっている。まぁ、そんなことはさておき・・・。
 この作品はとにかく何も考えないで観れるのがいい。とにかく「面白かった!」「楽しかった!」という感覚が残るだけで、今は頭に何も残っていない。だからこうして今、感想文を書くのにとても苦労している。ストーリーもあまり良く思い出せない。覚えているのは、キャメロン・ディアスのプラチナブロンド・ヘアーが綺麗だったとか、ブルー・アイズが印象的だったとか、脚が長いなとか、そういうことだけだ。とにかくこの作品はキャメロン・ディアスの魅力につきる。ただそれだけ。以上。

刑務所の中
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)


(原作)
(製作年)
(製作国)
(出演)
崔洋一
崔洋一
鄭義信
中村義洋
花輪和一
2002年
日本
山崎努
香川照之
田口トモロヲ

カラー/1h33
 この作品を観ようと思ったきっかけは、「タモリ倶楽部」で紹介されていて、面白そうだったから。番組の内容は、映画に登場した刑務所のいわゆる「臭い飯」をみんなで試食しようというもの。これが意外と美味しそうで、正月にはおせち料理も出るという。食事だけでなく、入浴の仕方や刑務作業などでの決まりごとなど、いろいろ紹介されていて興味深かった。原作は、自分自身の獄中体験を漫画にした、花輪和一のベストセラーコミック「刑務所の中」。
 山崎努演じる花輪は銃刀法違反で懲役3年を受け、北海道の日高刑務所に投獄される。しかしそこでの生活は、いままでの刑務所のイメージを一新するものだった。
 受刑者同士の会話がバツグンに面白い。受刑者たちが真剣に「島田の乳首って、すげー小さいんだぜ!」とか「誰々の××の先にティッシュが付いてるの見たんだ!」とか、どーにもくだらないことを真剣にしゃべる姿はほんとうに笑える。刑務所の中では、どんな些細な事でも大事件なのだ。山崎努に「島田の乳首を見るのを忘れた!」なんて言わせるギャップもたまらない。この「偉大なるムダ話」こそ、この作品の最大の魅力なのである。でも、途中からちょっと飽きてきたかなぁ。
【後日談】
 本屋で原作の漫画本を立ち読みしたけど、セリフがほとんど同じで、カット割りまでほとんど一緒だった。これなら1600円で漫画を買って読んだほうがお得かも。映画には盛り込みきれなかったエピソードもあるみたいだし、何度も読めるしね。

地球は女で回ってる / Deconstructing Harry
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
ウディ・アレン
ウディ・アレン
1997年
アメリカ
ウディ・アレン
エリザベス・シュー
ジュディ・デイヴィス

カラー/1h36
 ウディ・アレン監督、脚本、主演の、いつもどおりのアレン映画。主人公はたいてい作家かマスコミ業界の人で、女難の相を持つ冴えない中年男。今回は自分の女性遍歴の暴露本を出した作家ハリーが、それに逆上した女性たちに追い回されるというドタバタ・コメディー。
 アレンの作品はウィットに富んだ会話が命だから、必然的に会話が多くなる。ほとんどの日本人は字幕に頼らざるをえないから、字幕ばっかり追うことになり、非常に疲れる。アレンの作品は本当は字幕なしで、直接英語で聞くほうが数倍も面白いのかもしれない。字幕では書ききれないこともあるだろうし、絶妙なギャグを日本語にするのも難しいだろう。どうしても訳者のセンスが入り込んでしまうし、微妙なニュアンスが伝わらなければ面白さも半減してしまう。あ〜、もっと英語が理解できれば、もっと映画を楽しめるのになぁ。

NO FUTURE A SEX PISTOLS FILM / No Future: A Sex Pistols Film The Filth and the Fury
[データ] [感想]
(監督)
(製作年)
(製作国)
(出演)
ジュリアン・テンプル
2000年
イギリス
セックス・ピストルズ
 ジョニー・ロットン
 シド・ヴィシャス
 グレン・マットロック
 スティーヴ・ジョーンズ
 ポール・クック

カラー/1h45
 70年代後半のイギリスのパンク・ムーブメントの旗手であるセックス・ピストルズの奇行?とも言える活動を追ったドキュメンタリー。1979年に同じ監督で作られた『グレート・ロックンロール・スウィンドル』のリメイク版。実際のライブ映像や、バンドが起こした事件の映像の合間に、当時を振り返って語るメンバーのインタビューが挿入されている。
 ピストルズは1976年にデビューするが、その過激な言動で1978年には解散。その過激さは若者たちの社会に対する怒りや不満を煽り、その存在自体が社会問題にまでなった。テムズ川での無許可の船上ライブで、メンバーが全員逮捕されたのは有名な話。中でも最も過激だったベース担当のシドは、オーバードーズで21歳という若さでこの世を去っている。私は正直言って、これまでピストルズの歌を聞いたことも、映像を見たこともなかった。なんとなくのイメージでしか知らなかったけれど、ここまで大バカ野郎だとは知らなかった。というか、ここまでくればバカも偉大だ。まあ、はっきり言って、これは映画が凄いというよりも、ピストルズそのものの存在が大きいね。

アレックス / Irreversible
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
ギャスパー・ノエ
ギャスパー・ノエ
2002年
フランス
モニカ・ベルッチ
ヴァンサン・カッセル
アルベール・デュポンテル

カラー/1h39
 こんな作品を見に来るのは、自称映画評論家か、モニカ・ベルッチの肢体を堪能しに来た20〜30代の男性くらいだろうと思っていたら、なんだか客の年齢層が妙に高かった。中にはおばさんたちのグループもいたけど、はたして内容知って見に来たのだろうか。
 去年のカンヌでは、途中退出者続出で物議を醸した作品だけど、私的にはそれほど大したことはなかった。話題となった9分間にも及ぶノーカットのレイプシーンやベルッチの放尿シーンも、私が見る限りでは大したものではなかった。肝心なモノがうつっているわけでもないし、世間がそれほど大騒ぎするほどのものではないと思った。恐らくギャスパー・ノエ監督の前作『カルネ』や『カノン』を見た人たちが、先入観で必要以上に反応しちゃっただけなんじゃないかな。私はギャスパー・ノエに関してほとんど無知だったから、たいした拒否反応も出ずに見れたのだと思う。まぁ、すべてひっくるめて、私たちはマスコミの宣伝にひっかかっちゃたんだろうね。
 この作品の「時はすべてを破壊する」という哲学的なコピーも、作品には微塵も反映されていないし。そもそもこの作品を作るきっかけが、ギャスパー・ノエが当時夫婦関係にあったカッセルとベルッチを使って、低予算の官能的なメロドラマを作ろうというところから始まっているのだから。それならポルノでも作ったら?って言いたいところだけど(フランスってポルノと一般映画の境ってなさそうだけど・・・)。ハッキリ言って大したことの無い、ただのつまらない作品でした。

ピストルオペラ
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
鈴木清順
伊藤和典
2001年
日本
江角マキコ
山口小夜子

カラー/1h52
 日本映画界でカルト的人気を誇る鈴木清純の作品ということで、気には留めていたけれど、CFがあまりにもつまらなかったので、劇場には行かなかった。有名な『けんかえれじい』も『ツィゴイネルワイゼン』も見たことが無いので、清順監督の作風は知らないけれど、かつて日活を解雇された理由がそうであるように、難解なものであるというイメージが強い。(後で知った話だが、『けんかえれじい』では、主人公が憧れの女性のピアノの鍵盤をアレで叩くシーンがあるそうな・・・トホホ。)
 ということで、この作品も案の定、不思議な作品だった。ハッキリ言って、話の意味がわからん。役者の言っていることも、ようわからん。江角が時々吐く、「チュウチュウタコカイナ」というセリフもようわからん。わからん事だらけだ。なんだか出来の悪い夢でも見せられているみたいだ。ついていけない。勝手にやってくれ!って感じ。

ロベルト・スッコ / Roberto Succo
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(原作)
(製作年)
(製作国)
(出演)
セドリック・カーン
セドリック・カーン
パスカル・フロマン
2001年
フランス/スイス
ステファノ・カセッティ
イジルド・ル・ベスコ
パトリック・デリゾラ

カラー/2h04
 80年代欧州を震撼させた、実在の連続殺人犯ロベルト・スッコの自暴自棄な行動を、淡々と描いた衝撃作。監督は、前作『倦怠』でフランス映画最高峰ルイ・デリュック賞を獲得したセドリック・カーン。
 ロベルト・スッコは19歳のとき、両親を殺害して刑務所に入れられるが脱走。その後も7件の無差別殺人・強盗・誘拐を繰り返し、26歳で再び逮捕され独房で自殺する。その行動はまったく不可解だったが、ただひとりレアという恋人だけが、奇跡的にも殺されることはなかった。作品中、「なぜスッコは殺人を犯すのか」に対する答えは用意されていない。スッコの動機の無い犯罪の事実を忠実に再現しているだけだ。まるで「生きる凶器」のスッコだが、そんなスッコも人間であることに変わりはない。今の世の中、スッコのような人間は山のようにいる。私もスッコも「紙一重」かもしれない。

チアーズ! / Bring It on
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
ペイトン・リード
ジェシカ・ベンディンガー
2000年
アメリカ
キルステン・ダンスト
エリザ・ドゥシュク
ジェシー・ブラッドフォード

カラー/1h40
 日本ではあまりメジャーでない「チアリーディング」を題材に、アメリカのハイスクールのチアリーディング部の奮闘ぶりを、元気いっぱいに、ささやかなラブストーリーを織り込みながら綴った、青春スポ根ムービー。一見華やかに見えるチアリーディングの世界も、倒れて鼻血出したり、ライバル校と喧嘩したり、いろいろと大変なのだ。
 この作品の最大の魅力は、何と言っても彼女たちのチアリーディングシーン。最初から最後までチアリーディングシーンがてんこ盛り。ピチピチの女子高生たちが飛んだり跳ねたりするシーンは爽快で、自然と元気が湧いてくる。特に最後のコンテストのシーンは見ごたえ十分。主演のキルステン・ダンストは決して美形ではないけれど、キュートな魅力で好感度大。あー、彼女たちの若さを少しだけでも分けてほすぃーわ。

シュウシュウの季節 / 天浴 Xiu Xiu : The Sent-down Girl
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)

〈原作)
(製作年)
(製作国)
(出演)
ジョアン・チェン
ジョアン・チェン
ゲリン・ヤン
ゲリン・ヤン
1998年
アメリカ
ルールー
ロプサン

カラー/1h39
 女優として活躍し、後に『オータム・イン・ニューヨーク』を監督したジョアン・チェンの初監督作。舞台は文革時代の中国。下放政策によって都会から辺境の地に送られた少女シュウシュウは、本部の命令でチベット男のラオジンのところに住み込みで放牧を習うことになる。カネもコネもないシュウシュウは、両親の住む成都に帰るために、やがて自分の体を売り始めるようになる・・・。
 おそらくこの作品の評価は賛否両論あるだろう。好き嫌いがはっきり分かれるかもしれない。正直、私もこの作品を見ている間中、切ない気分でいっぱいだった。目を背けたくなるようなシーンもあった。でも不思議と嫌悪感はなかった。この時代の中国のことが書かれた書物を読むと、シュウシュウのような、あるいはそれ以上の酷い目を受けた人々はたくさんいる。悲しいけれどこれが歴史の真の姿なのだ。私たちは決してそこから目をそらすことはできない。そんな悲しい現実を女流監督のジュアン・チェンはありのままを淡々と見事に表現してみせた。この物語は別の見方をすれば、ラオジンのシュウシュウに対する純愛物語であるところも、また切ない。

チョムスキー9.11
[データ] [感想]
(監督)
(製作)
〈企画)
(製作年)
(製作国)
(出演)
ジャン・ユンカーマン
山上徹二郎
山上徹二郎
2002年
日本
ノーム・チョムスキー

カラー/1h14
 同時多発テロ以降、鋭い政治評論を展開する言語学者ノーム・チョムスキーのインタビューとその活動を追った記録映画。チョムスキー自身アメリカ人だけど、アメリカの外交政策を批判する運動を積極的に行っている。その言動から、アメリカの政治家やマスコミからは変わり者扱いされているけれど、アメリカ以外の国の人が聞けば、極めて真っ当なことを言っているのだ。以前見た『日本鬼子〈リーベンクイズ〉』と同じように、私はこのような作品が製作されたこと自体を評価したい。映像のほとんどがチョムスキーの演説とインタビューで占められていて、まるでチョムスキーの演説を聞く一聴衆になった感覚を味わえるのも良い。
 この作品は今まで小規模の劇場でしか公開されなかったけれど、本当はもっと多くの人に見てもらいたい。NHKスペシャルとかで放映すればいいのにと思う。日本の政治家たちにも是非見てもらいたい作品だ。

WASABI
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
ジェラール・クラヴジック
リュック・ベッソン
2001年
フランス
ジャン・レノ
広末涼子
ミシェル・ミューラー

カラー/1h35
 リュック・ベッソンが『フィフス・エレメント』に続いて、スケベ根性で作った作品。ジョヴォヴィッチに広末と、どうやら彼にはロリータ嗜好があるらしい。この作品を作るにあたって、どうやら彼は日本でのジャン・レノと広末と自分自身の人気を過大評価していたようだ。
 フランス人刑事ユベール(ジャン)が、かつての日本人恋人の死を知り、その一粒種のユミ(広末)を悪の手から守るという途方もない内容で、ストーリー自体は何の面白みもない。と言うか、よく分からない。登場する悪役の格好がすべて黒服にサングラスというのも今さら陳腐だし、とにかくそれが出てくるとやっつけるだけ、というのも乱暴すぎる。広末の役は「爆弾のような女の子」という設定だけど、ぜんぜんはまってなくて見ていて痛々しかった。それから相変わらず外国人の日本に対する発想が貧困で、日本であることを強調するために、とりあえず画面の片隅にちょうちんや障子を映すっていう手法はいい加減やめて欲しい。正直言って、広末とジャン・レノのファン以外の人が見てもさっぱり面白くないよ。ワサビってタイトルの意味もさっぱり分からないし。

耳に残るは君の歌声 / The Man Who Cried
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
サリー・ポッター
サリー・ポッター
2000年
イギリス/フランス
クリスティナ・リッチ
ジョニー・デップ
ケイト・ブランシェット
ジョン・タートゥーロ

カラー/1h37
 いつもの事ながら、ジョニー・デップが出演しているという、ただそれだけの理由でこの映画を見た。感想は、正直言って「よくわからなかった」の一言。内容は、大まかに言えば、大戦前後の欧州で、祖国を捨てた移民たちがたどる運命を描いたもので、クリスティーナ・リッチがユダヤ系ロシア移民の役を演じている。この作品がよくわからないものとなっている最大の理由は、話の焦点がはっきりしないところ。迫害されるユダヤ人やジプシーたちをテーマにしているのか、少女の父親探しの旅がテーマなのかはっきりしないし、どのシーンも説明不足のまま次々と進んでいくので、感情移入できない。それに、私たち日本人にはこの時代の欧州がどんな状況であったのか、いまいちピンとこないのもつらいところ。さらに字幕でみなくてはならないというのもこの作品をつまらなくさせている原因だ。この作品の場合、誰が何語を喋っているか、どんな訛りの英語を喋っているかということもポイントだから、それが聞き取れないと物語の理解もいまいちになる。せっかく役者陣がいい演技をしているのにもったいないね。

戦場のピアニスト / The Pianist
[データ] [感想]
(監督)
(原作)
(脚本)

(撮影)
(製作年)
(製作国)

(出演)
ロマン・ポランスキー
ウワディスワフ・シュピルマン
ロナルド・ハーウッド
ロマン・ポランスキー
パヴェル・エデルマン
2002年
フランス/ドイツ/ポーランド/イギリス
エイドリアン・ブロディ

カラー/2h28
 第二次世界大戦中、ナチス占領下のポーランドで、戦場を奇跡的に生き抜いた実在のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンの回想録を基に描いたノンフィクション・ドラマ。2002年カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品。現在米アカデミー賞でも7部門にノミネートされている。おすぎ効果で平日の昼間だというのに劇場は満席。この手の映画は女性の人気が高いのだ。監督のポランスキーは1933年生まれのユダヤ系ポーランド人で、自らゲットーを逃げ出し、戦火のワルシャワを生き抜いた経験の持ち主。味方=善人、敵=悪人という概念にとらわれずに、戦争というものを冷静に淡々と描けるのも、自ら戦争を体験したポランスキーの成せる業だと思う。ピアノ演奏シーンはブロディ本人のものらしいけど、かなりの腕前。上映時間2時間半というのは、ちょっと長い。中盤が冗長なんだよね。周りの人たちは結構泣いていたみたいだけど、それほど泣けるものだったかなぁ。缶切が出てきた時には泣いたけどね。

不思議惑星キン・ザ・ザ / Kin-Dza-Dza
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)

(製作年)
(製作国)
(出演)
ゲオルギー・ダネリア
レヴァス・カブリアゼ
ゲオルギー・ダネリア
1983年
ソ連
スタニスラフ・リュブシン
エフゲニー・レオーノフ

カラー/2h14
 旧ソ連製のSF映画。とにかく凄いもの作ったなぁ、というのが正直な感想。完成当時は批評家からさんざんな言われようだったらしいのだが、その後若者からの圧倒的な支持を受け、現在ではカルト的な人気を博している。日本では1989年に初公開。今回の上映は、「旧ソ連産、奇想天外、空想科学映画集」の特別オールナイトの4本のうちの1本。オールナイトなのに劇場は満席で、補助席まで出ていたのには驚いた。
 内容はトホホなもので、二人の男が突然キン・ザ・ザ星雲の惑星ブリュックに飛ばされてしまい、そこで奇妙な体験をしながら、なんとか地球に戻ろうとするというもの。登場する飛行艇や機械装置が、いちいちチープで笑ってしまう。異星人たちの発する「クー!」という意味不明の言葉や、身分が上の者への奇妙な挨拶など、人をおちょくっているとしか思えない。何も考えずに見れて面白いけど、この内容で2時間超えるのはちょっとつらいなぁ。

UFO少年アブドラジャン / Abdulladzhan. or Dedicated to Steven Spielberg [米] ABDULLADZHAN. ILI POSVYASCHAYESTYA STIVENU SPILBERGU
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)

(製作年)
(製作国)
(出演)
ズリフィカール・ムサコフ
ズリフィカール・ムサコフ
リフシヴォイ・ムハメジャーノフ
1992年
ウズベキスタン
ラジャブ・アダシェフ
トゥイチ・アリボフ
シュフラト・カユモフ

カラー/1h28
 とある村に、突然大爆発とともにUFOが不時着する。村の男が駆けつけると、そこには裸の少年が倒れていた。男は少年にアブドラジャンと名付け、自分の家に連れて帰る。それからというもの、村には次から次へと奇妙なことが起きるのだった・・・。
 ウズベキスタンで作られた一風変わったSF映画。副題に「スティーブン・スピルバーグに捧げる」とあるように、全編にわたってスピルバーグに語りかけるようなナレーションが入っている。しかし、この作品はスピールバーグのそれとはまさに対極にある。ハリウッドの技術を集大成させたスピルバーグの作品と比べると、この作品は明らかにひもで釣られた鍋のようなUFOといい、張りぼてのような小道具といい、ローテク全開である。しかし、そのローテクさがほのぼのムードを醸し出していて、見ている者を愉快な気分にさせてくれる。このほのぼの感がたまらない。

火を噴く惑星 / The Planet of Storms [米] PLANETA BUR
[データ] [感想]
(監督)
(原作)
(脚本)

(撮影)
(製作年)
(製作国)
(出演)
パーヴェル・クルシャンツェフ
アレクサンドル・カザンツェフ
パーヴェル・クルシャンツェフ
アレクサンドル・カザンツェフ
アルカディ・クリモフ
1961年
ソ連
キュナ・イグナトーヴァ
ゲンナディ・ウェルノフ
ウラジミール・エメリヤノフ

カラー/1h13
 米ソ共同の有人金星探査のために、3機の宇宙船が目的地に向かっていた。しかし1機が隕石に衝突し爆発炎上。やむを得ず計画を変更。1機を軌道上に待機させ、1機を金星に着陸させることにする。しかし目的を大きくそれて不時着。金星上ではさらなる危険が乗組員たちを待ち構えていた・・・。
 ガガーリンが人類初の宇宙飛行をした1961年に作られた、金星を舞台にしたソ連製SF映画。イマジネーションに富んだ金星に生息するモンスターや、アメリカ側の乗組員として登場する個性的なキャラクターの惑星探査補助ロボット(ジョン)がいい味を出していて、SF映画ファンの間では、カルト的人気を誇っている。その後、ロジャー・コーマンによってアメリカのテレビ放映用に追加編集され、『金星怪獣の襲撃』というタイトルで公開さた。金星には、お約束の巨大タコ、二足歩行のワニ、恐竜たちがウヨウヨしていて、それらが出てくるたびに劇場は爆笑の渦。どのシーンもツッコミどころ満載で面白い。しばらくしたらまた見てみたい。

妖婆・死棺の呪い / Vii
[データ] [感想]
(監督)

(原作)
(脚本)


(音楽)
(製作年)
(製作国)
(出演)
ゲオルギー・クロパチェフ
コンスタンチン・エルショフ
ニコライ・ゴーゴリ
ゲオルギー・クロパチェフ
アレクサンドル・プトゥシコ
コンスタンチン・エルショフ
K・ハチャトリアン
1967年
ソ連
レオニード・クラヴレフ
ナターリヤ・ワルレイ

カラー/1h18
 この作品は当初テレビで放映されただけだったが、その後ビデオ化され、1985年になって正式に劇場公開された。ロシアの文豪ゴーゴリの怪奇小説「ヴィー」を基に作られた、怪奇と幻想に満ちたソ連製SFXオカルト映画で、1967年に作られたわりには、SFXを駆使した素晴らしい作りになっている。"ヴィー”とは南ロシアの伝説に登場する「地の精霊」であらゆるものを見透すことのできる妖怪の首領のこと。最後に姿を現すのだが、その姿は妙に滑稽だ。全体を漂う幻想的な雰囲気は、SFXのチープさを補って余り有る。
 舞台は中世のロシア、古都キエフ。ひとりの神学生ホマーが故郷へ帰る途中、泊めてもらった屋敷で恐ろしい老婆に出遭う。襲いかかろうとする老婆を殴り倒すと、老婆は美しい娘に姿を変えた。老婆は娘に取り憑いた魔女だったのである。命からがら逃げ帰ってきたホマーは、自分の名前を言い残して死んでいった娘の話を聞かされる。駆けつけてみるとその娘はホマーが殴り倒した娘だった。そしてその娘を供養するために三日三晩の祈祷を始める。ホマーの祈祷を邪魔しようと、夜毎現れる悪霊たち。彼らの怒涛のような攻撃を受けながら、ホマーは四日目の朝を迎える・・・。

白 THE WHITE
[データ] [感想]
(監督)
(製作)
(製作年)
(製作国)
(出演)
平野勝之
V&Rプランニング
1999年
日本
平野勝之

カラー/1h58
 AV監督が作った異色のロードムービー。出演しているのは監督本人。平野監督の実家のある浜松から日本最北端の地「礼文島のスコトン岬」までの約2300qを、ハンディカム片手にたったひとりで自転車で走破した記録。しかも季節は冬。タイトルの『白 THE WHITE』は吹雪荒れ狂う北海道の大地を表している。平野監督はこれ以前にも自分を主役にAV女優を連れたロードムービーを2本撮っている。この作品の良さは、ひとりで撮ったにもかかわらず正確な構図の画面と高い編集能力だ。それだけに途中旭川を過ぎた辺りから残りの1週間が、だんだん単調になっていたのは残念。

鬼が来た! / 鬼子來了 Devils on the Doorstep
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)



(製作年)
(製作国)
(出演)
チアン・ウェン
チアン・ウェン
ユウ・フェンウェイ
シー・チェンチュアン
シュー・ピン
2000年
中国
チアン・ウェン
香川照之

パートカラー/2h20
 2000年カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作。舞台は第二次世界大戦末期、日本軍占領下の中国華北地方。旧正月を直前に控えた百姓マーの家に、突然見知らぬ男がやって来て2つの麻袋を置いていった。恐る恐る麻袋を開けてみると、中には日本兵と通訳の中国人が入っていた。男は5日後に取りにくると言って去っていったが、5日経っても男は現れなかった。
 ユウ・フェンウェイの中編小説「生存」の冒頭の、日本兵と通訳が引き渡されるシーンを参考に、監督のチアン・ウェンが新たな話を創作して脚本を作り上げた。戦争がモチーフとなっているけれど、勧善懲悪の世界に陥らず、死や危険が迫った時、人間はどのように反応し行動するかということに焦点を当てて描いている。モノクロのざらついた画面に、手持ちカメラを多用した切れ味のいいカメラワークが緊張感を生み出している。とにかくこれだけの長尺にもかかわらず、まったくだらだらしていなくて、テンポがあってシャープなのは脚本が素晴らしいからだろう。一般受けするかどうかはわからないけど、すごくいい映画だと思う。

グレイスランド / Finding Graceland
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
デヴィッド・ウィンクラー
ジェイソン・ホーウィッチ
1998年
アメリカ
ジョナサン・シェック
ハーヴェイ・カイテル
ブリジッド・フォンダ

カラー/1h37
 割と評判がいいので、わざわざビデオ屋から借りてきて見たけど、うーん、どうなんでしょうかね。最愛の妻を交通事故で失くした男が、ある日突然、自分のことを「エルビス」と名乗る中年男に出会い、その男を連れて様々な体験をするうちに、過去の過ちを受け入れ人生をやり直そうと決意する。という、良くあるお話なんだけど。結局は妻を亡くした男が、いい女に出会っちゃったけど次に進もうかなどうしようかなという話。まぁ、人間はひとりでは生きていけないということなのだな。エルビスを名乗る中年男を演じたハーヴェイ・カイテルはちょっと無理があったけど、マリリン・モンローのそっくりさんを演じたブリジッド・フォンダは上手かった。あれは本当にフォンダだったのかなぁ。もしかしたら吹き替えなのかもしれない。ところであのプレスリーは本物か偽者か・・・最後まで明かさなかったのは正解かもしれない。どうやら信じる者のみが救われるようだから。

ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲 / Jay & Silent Bob Strike Back
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
ケヴィン・スミス
ケヴィン・スミス
2001年
アメリカ
ジェイソン・ミューズ
ケヴィン・スミス
ベン・アフレック

カラー/1h44
 タイトルは明らかに『スターウォーズ』のパロディ。だから本来ならば「帝国への逆襲」じゃなくて「帝国の逆襲」と訳すべきなんじゃないのかなぁ。意味違ってくるし。オープニングのタイトルの出し方なんかもまさに『スターウォーズ』そのまんまだし。しかし私はなぜこんなものを見てしまったのだろう。予告編に魅せられたのだろうか。やはり誰も推薦しないこんな作品を見に行くべきではなかったのだ。だがこの作品を見に行くことを決めたのは自分自身だ。製作者を非難すべきではないのだ。ストーリーは馬鹿な二人組みジェイとボブが、自分たちを主人公にした映画が無断で作られていると知り、ハリウッドに殴りこむというもの。私は「お馬鹿映画」というのは基本的に大好きなんだけど、ただ「お馬鹿」ではなくて、何か「おおっ、これは!」と思わせるものが欲しい。この作品の場合は、ただ下品なだけなんだよね。まあ、救いはベン・アフレックとマット・デイモンのセルフパロディーかな。

雨に唄えば / Singin' in the Rain
[データ] [感想]
(監督)

(脚本)

(音楽)
(製作年)
(製作国)
(出演)
ジーン・ケリー
スタンリー・ドーネン
アドルフ・グリーン
ベティ・コムデン
レニー・ヘイトン
1952年
アメリカ
ジーン・ケリー
デビー・レイノルズ
ドナルド・オコナー
ジーン・ヘイゲン

カラー/1h42
 MGMミュージカルの最高傑作で、この春アカデミー賞作品賞を受賞した『シカゴ』の日本公開を記念して池袋のシネマ・ロサで特別公開された。今回が日本での最終上映となるということで、見逃すわけにはいかなかった。やはりミュージカルは劇場の大きなスクリーンと大音響で観ないとね。この作品については、有名なジーン・ケリーが雨の中を傘をさして“Singin' in the Rain”を唄うシーンくらいしか知らなかった。映画創世期にサイレントからトーキーへと変わっていく中での映画製作会社や俳優たちの苦労話を中心に、一大ミュージカル作品の製作過程を描いた作品で、映画好きな私はとても興味深く観ることができた。ラブストーリーの中にちりばめたドタバタも良く出来ているし、ミュージカルシーンも今見ても斬新で、踊り子たちのファッションも素晴らしい。ジーン・ケリーとデビー・レイノルズとドナルド・オコナーが「グッドモーニング」を唄うシーンもいい。でも実は私が一番好きなのはオコナーがひとりで踊るシーンなのだ。動きにメリハリがあってユーモラスで芸達者で、壁に駆け上がるシーンなんて最高。ケリーよりも好きかもしれない。実は私はミュージカルには苦手意識があったのだけれど、この作品を観たら、そんな気持ちはすっかりどこかへ吹き飛んでしまった。やっぱり音楽っていいね。

レッド・ドラゴン / Red Dragon
[データ] [感想]
(監督)
(原作)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
ブレット・ラトナー
トマス・ハリス
テッド・タリー
2002年
アメリカ
アンソニー・ホプキンス
エドワード・ノートン
レイフ・ファインズ

カラー/2h05
 実はこの作品とまったく同タイトルのジャッキー・チェン主演のカンフー映画がある。それと関係あるのか無いのかは不明だが、「レッド・ドラゴン」とは麻雀の「中」という牌のことを言うのだそうで、登場するサイコ・キラーもこの言葉に関係している。この作品は『羊たちの沈黙』の序章ということで、原作を読んだ私としては、レクター博士が猟奇殺人に及んだ過程とか、捕まった後のクロフォードやチルトンとの確執みたいなものにもっと言及しているのかと思って期待していたら、そうではなかった。要するに『羊〜』でのクラリスとレクターの関係をグレアムという別のFBI捜査官を使ってやっただけなのだ。違いといえば犯人の面が割れているということくらいだろうか。私は『羊〜』の原作を基にテッド・タリーが序章部分として脚本を書き上げたのだと勘違いしていたが、実は1986年にビデオ作品用にトマス・ハリス自身が『レッド・ドラゴン』というタイトルで原作本を書いていて、今回はそれのリメイクみたいなものらしい。まあ、そういうことを抜きに考えれば、この作品は結構楽しめる。つまり娯楽作品として上手に出来ているということだ。最後までちゃんとハラハラドキドキさせてくれる。この3部作はどれも良く出来ていて、アンソニー・ホプキンスが健在のうちはどんどんシリーズ化してやってもらいたいと思っている。そういえばレクター博士って現在逃亡中なんだよね。どこにいるんだろうね。

ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔 / The Lord of the Rings : The Two Towers
[データ] [感想]
(監督)
(原作)
(脚本)



(製作年)
(製作国)
(出演)
ピーター・ジャクソン
J・R・R・トールキン
ピーター・ジャクソン
フラン・ウォルシュ
フィリッパ・ボウエン
スティーヴン・シンクレア
2002年
アメリカ/ニュージーランド
イライジャ・ウッド
イアン・マッケラン
ヴィゴ・モーテンセン
リヴ・タイラー

カラー/2h59
 トールキンのファンタジー小説「指輪物語」の完全映画化全3部作のうちの第2作目。呪われた指輪を葬るために、旅を続けるホビット族のフロド(イライジャ・ウッド)たち。そのころ指輪を狙う悪の魔法使いサルマン(クリストファー・リー)は人間の国を襲撃。フロドと別れた戦士アラゴルン(ヴィゴ・モーテンセン)たちは、サルマンの軍隊との戦いに乗り出すのだが・・・。
 前作ではあっけなくやられてしまったガンダルフ(イアン・マッケラン)だが、「白のガンダルフ」としてパワーアップして帰ってきた。その辺のくだりがプロローグとして描かれている。今作には「第一部は序章でしかなかった」というコピーが付けられているけれど、私には二部は「ただのつなぎ」にしか見えなかった。一部で見たような壮大なストーリー展開があるわけでもなく、話の焦点も掴みづらい。でもCGは一部より明らかにパワーアップしている。まあ、二部はストーリーよりもCGを堪能したほうがいいのかもしれない。そのためには字幕版より吹き替え版の方をお薦めする。ところでヘルム渓谷での戦闘シーン。最後のおいしいところだけを持っていったガンダルフに、「そんなに強いのなら、もっと早く出てこいよ。お前は黄門様か!」と思わずツッコミを入れてしまった自分。余程、3時間という長さに耐えられなかったのだろう。

《ヤマムラアニメーション図鑑vol.1》
[データ] [感想]
(企画)


(製作年)
(製作国)
ヤマムラアニメーション
スローラーナー
ユーロスペース
1987〜2002年
日本

カラー/1h31
 アニメーション作家、山村浩二による作品集で、アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされた『頭山』を含む、全10作品を上映。ちなみに10作品とは『水棲』、『遠近法の箱』、『カロとピヨブプト〜おうち』、『カロとピヨブプト〜サンドイッチ』、『カロとピヨブプト〜あめのひ』、『キップリングJr.』、『キッズキャッスル』、『バベルの本』、『どっちにする?』、『頭山』。そのうちの半数以上の作品が、私には理解不能。理解できて面白いと思ったのは元ネタのある『頭山』と『バベルの本』のみ。基本的にそれ以外の作品はアニメーションに造詣のない人が見ても面白くないと思う。

裸足の1500マイル / Rabbit-Proof Fence
[データ] [感想]
(監督)
(原作)
(脚本)
(音楽)
(製作年)
(製作国)
(出演)
フィリップ・ノイス
ドリス・ピルキングトン
クリスティーン・オルセン
ピーター・ガブリエル
2002年
オーストラリア
エヴァーリン・サンピ
ローラ・モナガン
ティアナ・サンズベリー
ケネス・ブラナー

カラー/1h34
 19世紀後半から1970年代にかけて「隔離同化政策」をとっていたオーストラリアで起きたアボリジニの悲劇を描いた作品。白人たちは原住民であるアボリジニとの混血が増えるのを恐れて、混血児たちを家族から引き離し、白人社会の教育を受けさせ、白人との交配を重ねることによってアボリジニの血を薄めていこうとした。このような政策がつい最近まで行われていたのだから恐ろしい。しかも、それをアボリジニのためにやっていると言うのだからたちが悪い。最近のアメリカ人のネオコンの人たちといい、ほんとアングロサクソンというのは傲慢な人種だと思う。原題は「うさぎよけフェンス」で、強制的に収容所へ入れられてしまった少女3人が、1500マイル(約2400km)にも及ぶ長い道のりを、うさぎよけフェンスをたどって母の待つ故郷へ帰り着いたという実話がもとになっている。本当は泣けるお話なんだけど、涙より怒りの感情のほうが先に立ってしまった。自分たち以外の文化に全く理解を示さないアングロサクソン。中には進化論さえ信じていない人々もいるという。なんと言っても人間は神様がお創りになったのだから。『千と千尋〜』がアメリカでまったくうけないのも納得できる。

エリザベス / Elizabeth
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(音楽)
(製作年)
(製作国)
(出演)
シェカール・カプール
マイケル・ハースト
デヴィッド・ハーシュフェルダー
1998年
イギリス
ケイト・ブランシェット
ジョセフ・ファインズ
ジェフリー・ラッシュ
クリストファー・エクルストン
ファニー・アルダン
キャシー・バーク

カラー/2h04
 英国の黄金時代を築いたエリザベス1世の数奇な運命を綴った大河ドラマであり、人生を国家に捧げヴァージンクイーンと呼ばれた女王の悲恋の物語。16世紀のイングランドではカトリックとプロテスタントの争いが激化していた。カトリック派のメアリー女王が崩御後、プロテスタントを擁護していたエリザベスが即位すると、エリザベスの周りでは不穏な動きが活発化してきた。そんな中、ローマ法王による謀反計画を知ったエリザベスは対抗権力の粛清を始めるが・・・。
 一大史劇というよりは、ひとりの女性がいかにして石のような心を持ち、絶対君主となっていったか、そして恋を捨て女性として生きることを捨てたかということに焦点が置かれている。その点で、冒頭の初々しい少女時代から、神々しさ全開のラストシーンまで、うまく演じ分けたケイト・ブランシェットはとても良かったと思う。デヴィッド・ハーシュフェルダーの音楽もなかなか良かった。ただ、全体として陰鬱過ぎたのが今ひとつ楽しめない原因になっている。カトリックのローマ法王は、正しい宗教はひとつだけで他はみんな異端であると言った。宗教が違うだけで、どうして殺し合いをしなければならないのか、私にはよく分からない。しかし、この映画の中で起きたことは、決して遠い昔話ではない。

ボウリング・フォー・コロンバイン / Bowling for Columbine
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
マイケル・ムーア
マイケル・ムーア
2002年
カナダ/アメリカ
マイケル・ムーア
チャールトン・ヘストン
マリリン・マンソン

カラー/2h00
 「アホでマヌケなアメリカ白人」の著者でありジャーナリストのマイケル・ムーアが、銃社会アメリカの本質を探るために作ったドキュメンタリー。この作品はカンヌで55周年記念特別賞、さらにアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞している。タイトルは、1999年にアメリカ・コロラド州のコロンバイン高校で起きた銃乱射事件の犯人の少年2人が、事件前にボウリングに興じていたという事実からつけられたもの。マイケル・ムーアがマイク片手に突撃アポなし取材を繰り広げる。その相手は俳優であり全米ライフル協会会長であるチャールトン・ヘストンや、子供たちに悪影響を与えていると喧伝されているハードロック歌手のマリリン・マンソンなど様々。アメリカで銃による死者の数は年間1万人強、日本では39人。日本では簡単に銃を手に入れることができないので単純に比較はできないけれど、アメリカ同様簡単に銃が手に入るカナダでも165人という少なさだ。一体なぜこれほどまでにアメリカは銃犯罪が多いのか。この映画を見て私が思ったのは、アメリカ白人は常に何かの恐怖に怯えているのではないか。それは社会構造から生まれた潜在的な罪の意識から生まれているのではないか。つまり白人たちは明らかに有色人種たちより優遇されていて、それが潜在的な罪悪感を生み、常に自分は他人から妬まれているという意識が恐怖心を生む。結局は自分の身は自分で守るしかないという悲しい観念から銃を持たざるをえない精神構造になっているのではないかと思う。要するに他人が信じられないのだ。つい最近もアメリカで中学生が校長を射殺する事件が起きた。学校では校門で金属探知機による検査が当たり前のようになっている。マスコミは国民に余計な恐怖心を植えつけるのに躍起になっている。国民はますます銃が手放せなくなる。悪循環だ。この国から銃を奪い去ることはもはや不可能なのだ。

ミスター・ルーキー
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)

(製作年)
(製作国)
(出演)
井坂聡
井坂聡
鈴木崇
2002年
日本
長嶋一茂
鶴田真由
橋爪功
駒田徳広

カラー/1h58
 元巨人の長嶋一茂を主演に迎えた、阪神タイガースの一発逆転ムービー。熱狂的なファンを抱えながら不振に喘ぐ阪神タイガース。そんなタイガースに、謎の覆面ピッチャー「ミスター・ルーキー」が突然表れて大活躍をする。しかし、その正体はビール会社に勤めるごく普通のサラリーマンだった、という荒唐無稽な物語。高校時代肩を壊して野球を諦めた主人公が、故障を直してプロのマウンドに立つというのだが、サラリーマンと兼業で先発ローテーション入りは物理的に不可能としても、ストッパーとしてならありえなくもない。そんな「現実味」が野球を愛する中年サラリーマンの心を打つのだろう。話の舞台が「阪神タイガース」というのも「現実味」を増す要因となっている。この手の作品は他球団では絶対成り立たない。関西の阪神タイガースだからこそできた作品なのだ。予定調和なストーリーも関西っぽくて良い。なにより素晴らしいのは、陳腐な物語をすべて吹き飛ばしてしまうほどの迫力のある試合のシーン。本物の球場で本物の応援団を使い、現役の選手やOBを使い、他球団も撮影に協力している。ただひとつ巨人だけが協力しなかったのは残念。まったく度量の狭いオーナーだよね。

小さな中国のお針子 / Balzac et la Petite Tailleuse Chinoise
[データ] [感想]
(監督)
(原作)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
ダイ・シージエ
ダイ・シージエ
ダイ・シージエ
2002年
フランス
ジョウ・シュン
リィウ・イエ
チュン・コン
ツォン・チーチュン

カラー/1h50
 舞台は文化大革命の嵐が吹き荒れる1971年の中国。医者という知識階級の親を持つふたりの青年ルオとマーは、農村での厳しい労働を通して「再教育」を受けるために、奥深い山村に送り込まれる。そんな中、ふたりは仕立て屋の美しい娘のお針子に出会い、恋をする。文明から隔離された原始的な生活の中で、彼らは同じく再教育で送られてきた若者が、大量に西欧の書物を隠し持っていることを知る。ルオは字の読めないお針子にバルザックの小説を語り聞かせる。バルザックに夢中になったお針子は、次第に西洋文学が語る自由に目覚めていく・・・。
 監督はフランスで活躍を続けるダイ・シージエ。青年マーは『山の郵便配達』で一躍脚光を浴びたリィウ・イエ。少女から自我に目覚めた大人の女性を演じたジョウ・シュンは『ふたりの人魚』の主演で日本でもファンが急増している。知識青年が文盲少女に教養を与えるなんて、途中までは『マイ・フェア・レディ』の中国版かと思ったけれど、ちょと違った切り口で展開する。いきなり30年くらい時間を進めてしまうラストの持って行きかたはちょっと強引かな。最後はもう少し丁寧に作って欲しかった。

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン / Catch Me If You Can
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(監督)
(原作)

(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
スティーヴン・スピルバーグ
フランク・W・アバグネイル
スタン・レディング
ジェフ・ナサンソン
2002年
アメリカ
レオナルド・ディカプリオ
トム・ハンクス
クリストファー・ウォーケン

カラー/2h21
 16歳から21歳までの間に400万ドルを稼いだ実在の「天才詐欺師」フランク・W・アバグネイルと、彼を執拗に追い続けたFBI捜査官カール・ハンラティとの追跡劇。主人公アバグネイルをレオナルド・ディカプリオ、執念のFBI捜査官をトム・ハンクス、アバグネイルの父親をクリストファー・ウォーケンが演じている。アバグネイルは16歳の時両親が離婚、そのショックから家出。以後、パイロット、医師、弁護士になりすまし、世界26カ国で偽造小切手で荒稼ぎする。こうも簡単に人を騙せるのかと思うほど、彼の手口は巧妙かつ大胆。甘い言葉で女性を翻弄し、情報を引き出す。鋭い洞察力と明晰な頭脳でピンチを乗り切る。これをレオ様が演じるのだから妙に説得力がある。「ヤンキースが強いのは、みんなピンストライプのユニフォームに目がいってしまうからだ」という彼の持論に激しく納得。騙して集めたスチュワーデスの卵たちに囲まれて空港から脱出するシーンは、観ていてゾクゾクした。しかし、この作品は彼らの単なる追いかけっこを描いているだけではない。離婚によって両親を失い、寂しさを紛らすために詐欺を繰り返す少年の、自分の居所探しの旅がテーマとなっている。まぁ、あまり期待していなかった割には結構楽しめたし、長い上映時間もそれ程気にならなかった。

ヒューマンネイチュア / Human Nature
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
ミシェル・ゴンドリー
チャーリー・カウフマン
2001年
フランス/アメリカ
パトリシア・アークエット
リス・エヴァンス
ティム・ロビンス

カラー/1h34
 人間と動物の違いは一体何なのか?人間は二足歩行をし、道具を使い、感情を持つ。しかし、近年の研究では、猿も道具を使い、ある種の感情を持つことが明らかになっている。それでは一体、根本的な違いは何なのか?この映画には、自分を猿だと思い込んでいる男と、病気で体中に体毛が生えた女と、ネズミにテーブルマナーを教える博士が登場する。そして、その3人がある事件について、過去を回想するという形で話が展開していく。厳格な両親に躾けられたネイサン博士はネズミにテーブルマナーを学ばせるという研究に没頭していた。ある日彼は森で自分を猿だと思い込んでいる裸の男を発見し、パフと名付け、新たな研究材料として人間として再教育しようとする。博士の言うことを聞けば自由にセックスできると思い込んだパフは、必死になって人間界のマナーを習得する。やがて博士はパフを完全な人間に戻すことに成功するが、二人の間で何かが次第に狂い初めていく。
 この作品を見ると、人間だって動物であり、自然の一部なのだということを思い知らされる。人間がいくら教養を身に付けて、偉そうなことを言ったとしても、その根底に流れるものは「食欲」「性欲」「睡眠欲」だ。悲しいけれど、そのような人間のあがきは、つがいを見つけるための鳥のダンスと同じ。表面的にはすごく馬鹿馬鹿しい作品に見えるけど、結構奥は深いと思う

ドリームキャッチャー / Dreamcatcher
[データ] [感想]
(監督)
(原作)
(脚本)

(製作年)
(製作国)
(出演)
ローレンス・カスダン
スティーヴン・キング
ウィリアム・ゴールドマン
ローレンス・カスダン
2003年
アメリカ
モーガン・フリーマン
トーマス・ジェーン
トム・サイズモア
ジェイソン・リー
ダミアン・ルイス
ティモシー・オリファント
ドニー・ウォールバーグ

カラー/2h15
 スティーヴン・キング原作と聞いてすごく期待して見に行ったのに、なんだかな〜。これまでのキング作品の中で、一番の失敗作じゃないかな。公開5週目で打ち切られてしまうのも、分かる様な気がする。まあ原作を読んでいないので、脚本が悪いのか原作が悪いのか判断できないけれど、でもおそらく前者だろうな。正直言って、話がさっぱり分からん。キングの作品だから、話が多少ややこしくなるのは仕方ないけれど、もう少し上手くまとめられなかったものか。私はモーガン・フリーマンが演じた役の意味がさっぱり分からなかった。4人の幼なじみたちのシーンはそれなりに見ていて面白かったけれど、モーガン・フリーマンが出てくるシーンだけ、なんだかすごく眠くなってしまった。そもそも私はモーガン・フリーマンが出演するようなタイプの映画が苦手で、モーガン・フリーマンが登場すると、話がすべてモーガン・フリーマン的になってしまうので、それで余計に眠くなってしまったのかもしれない。とにかく脚本が悪いね。あれだけ長い原作なんだから、余程上手くまとめない限り、すべて盛り込もうとすると訳が分からなくなるのは当たりまえ。もう少し、どこかに焦点を絞るべきだったんじゃないのかな。クレジットではモーガン・フリーマンが先頭に挙げられているけれど、そもそもこの作品は4人の幼なじみが主人公のはず。あまりにも意味不明なので、後で原作を読んで確認するつもり。

裸のマハ / Volaverunt
[データ] [感想]
(監督)
(原作)
(脚本)

(製作年)
(製作国)
(出演)
ビガス・ルナ
アントニオ・ラレッタ
ビガス・ルナ
キュカ・カナルス
1999年
フランス/スペイン
アイタナ・サンチェス=ギヨン
ペネロペ・クルス
ホルヘ・ペルゴリア
ジョルディ・モリャ
ステファニア・サンドレッリ

カラー/1h35
 正直言って、この映画を見ている間、私は眠くて仕方なかった。その理由は、まず話の筋がさっぱり掴めないこと。結局、最後まで良く分からないままだった。この映画は19世紀初頭のマリア・ルイーサが絶大な権力を手にしていた時代のスペインが舞台になっている。スペインの宮廷画家・ゴヤが描いた「裸のマハ」を巡る女性たちの愛憎劇でありサスペンスなのだけれど、とにかくゴヤ、王妃マリア・ルイーサ、総理大臣マヌエル・デ・ドゴイ、アルバ公爵夫人、愛人たちの関係がグチャグチャに入り乱れていて、まずその相関関係を追いかけるだけでも精一杯。しかも日本人の私には西欧人の顔の区別がつかないので、王妃と公爵夫人、ゴヤと総理大臣がごっちゃになる始末。何がなんだかわからないまま話がどんどん進んでいく。時間も激しく前後して、回想シーンなのかそうでないのかも区別がつかない。頭の中で物語を整理するのがやっとで、とてもじゃないけど物語を楽しむまでにはいかなかった。唯一の収穫は「ペネロペ・クルスが意外と貧乳だった」ということくらいかな。そもそもどうして私はこの作品を見ようと思ったのだろう。ペネロペ・クルスのヌードが見たかった訳でもないだろうに。

ハリー・ポッターと賢者の石 / Harry Potter and the Philosopher's Stone
[データ] [感想]
(監督)
(原作)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
クリス・コロンバス
J・K・ローリング
スティーヴン・クローヴス
2001年
アメリカ
ダニエル・ラドクリフ
ルパート・グリント
エマ・ワトソン
リチャード・ハリス

カラー/2h32
 この作品は、まず本で読んだ。本の中身をパラパラめくると、あまりにもスカスカで、とても1900円も出す気にはなれず、後日、古本屋で手に入れた(それでも1700円もした)。結局、読み終わってから1000円で古本屋に売ってしまったけれど、まぁ、特に大人がこぞって読むようなモノではないなと思った。でも。原作を読んでしまった以上、映像としてどうなっているのか、またあれだけの内容のものをどのように脚本化したのか非常に興味があったので、いつかは見てみたいと思っていた。物語の序盤、ハリーが人間の親戚の家に預けられているところを描いたシーンまでは、「やれやれ、この調子で大丈夫なのか?」と心配になったけれど、ダイアゴン横丁に入ってから、話は断然面白くなってきた。やはりこの手の映画は、小説のイメージをいかに損なわないで視覚化していくかが大事だから、その辺はうまく出来ていると思う。あまりにも思い描いていた通りで、ちょっと物足りなかったけれど、私の想像力も捨てたものではないなと思った。でも原作のイメージからあまり逸脱しないことが映画化の条件だったから、平均的な想像力を目指して作り上げたとすると、悲しいけれど私の想像力も平均的だということだ。

ブリジット・ジョーンズの日記 / Bridget Jones's Diary
[データ] [感想]
(監督)
(原作)
(脚本)


(製作年)
(製作国)
(出演)
シャロン・マグアイア
ヘレン・フィールディング
ヘレン・フィールディング
アンドリュー・デイヴィス
リチャード・カーティス
2001年
アメリカ/イギリス
レニー・ゼルウィガー
コリン・ファース
ヒュー・グラント

カラー/1h37
 私はレニー・ゼルウィガーが大好きだ。決して美人ではないけれど(どちらかと言えば不細工)、体当たりで演技をする彼女が大好きだ。でも、実をいうとこの作品の公開中、ブリジットを演じていたのがレニーだということに私は全く気が付かなかった。例のポスターで胸の谷間を見せていた女がまさかレニーだったとは・・・。だって全然イメージ違うんだもん。彼女はこの映画のために体重を6キロも増やして役作りに励んだ。まるで女版デ・ニーロのように。バニーガールの格好をさせられても、デカパンをはかされても、決して文句を言わなかった。ミニスカートでカメラのレンズにお尻を押し付けることも辞さなかった(このシーンだけは吹き替えだと信じたいが・・・)。まさに女優の鑑だ。しかし、そんなレニーの頑張りも、ヒュー・グラント登場のおかげで台無しになった。私はヒュー・グラントが嫌いだ。生理的に受け付けない。数年前に来日した時、女を買ったからというのもあるけれど、それ以前にあのだらしなく垂れ下がった目が嫌いなのだ。だからヒューのせいで☆ひとつ消えた。作品としては、女性(30代独身限定)には受けるかもしれないけれど、男性は面白くないだろうね。だって何と言ってもこれは、「結婚できない女性の言い訳映画」だから。「私はこんなにチャーミングでかわいい女なのに結婚できないのは、タイミングが悪いからなのよ!言い寄ってくる男がいない訳ではないんだから!」という、言い訳がましさプンプンの映画なので、世の殿方は少し引いてしまうかもしれない。

シカゴ / Chicago
[データ] [感想]
(監督)
(原作)

(脚本)
(編集)
(製作年)
(製作国)
(出演)
ロブ・マーシャル
ボブ・フォッシー
フレッド・エッブ
ビル・コンドン
マーティン・ウォルシュ
2002年
アメリカ
レニー・ゼルウィガー
キャサリン・ゼタ=ジョーンズ
リチャード・ギア
クイーン・ラティファ
ジョン・C・ライリー

カラー/1h53
 2003年のアカデミー賞で最多12部門ノミネートされ、作品賞、助演女優賞、美術賞、衣装デザイン賞、音響賞、編集賞を受賞。ミュージカル史上最高の振付&演出家であるボブ・フォッシーの名作の映画化。同時多発テロ以降、明るい話題の無いアメリカにとっては、希望の星的作品となり、その影響がアカデミー賞の受賞結果に見事に顕われている。アカデミー賞の授賞式を見ると、必死に俳優たちが笑顔で取り繕い、盛り上げようとしている姿が痛々しくもあり、印象的だった。まぁ、アカデミー賞なんて、たいした権威があるわけでもなく、ただ単にハリウッドのお祭りみたいなものなんですけどね。そのような愛国的ムードの中で評価された作品なので、完成度はある程度の水準はクリアしているものの、それほど高いわけでもない。でも、さすがにミュージカル部分の完成度は高く、冒頭キャサリン・ゼタ=ジョーンズが歌って踊るシーンには圧倒された。それから、ミュージカルと物語を融合して同時進行させる編集の手法は斬新で素晴らしかったのだけれど、途中から歯切れが悪くなってしまうのは残念。レニー・ゼルウィガーとリチャード・ギアの歌もちょっとねぇ〜。あまりにもゼタ=ジョーンズが良かったものだから、余計に目立つのよね〜。それから、レニーの痩せぶりに仰天。つい先日、『ブリジット・ジョーンズの日記』を見たばかりだったので余計に驚いた。だって『ブリジット〜』では、脇から肉がはみ出ていたのに、今日見たらあばら骨が見えるくらい痩せていたので・・・。職人魂を感じました。

バンディッツ / Bandits
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)

(製作年)
(製作国)
(出演)
カーチャ・フォン・ガルニエル
ウーベ・ヴィルヘルム
カーチャ・フォン・ガルニエル
1997年
ドイツ
カーチャ・リーマン
ヤスミン・タバタバイ
ニコレッテ・クレビッツ
ユッタ・ホフマン

カラー/1h49
 バンドのメンバーが、ビデオを貸してくれたので見た。2001年にブルース・ウィリス主演で公開されたアメリカ映画の「バンディッツ」だと思ったら、全く別物のドイツ映画だった。内容も全く別の話。“bandit”とは「悪漢、無法者」という意味。人から借りたものを扱き下ろすのもなんだが、はっきりいって退屈だった。主人公は刑務所の女囚人4人組。彼女たちは、なぜか刑務所内でロック・バンドを組んでいる。不思議だが、ドイツの刑務所では普通なのだろうか?その名も「バンディッツ」である。ある日、警察のパーティーで演奏することになった彼女たちは(こういうのも不思議だが・・・)、会場に向かう途中、脱走に成功する。追っ手を逃れながら、各地でライブを繰り広げるのだが、たまたまライブハウスのビデオに写り込んだバンディッツの映像を見た警察官が、そのビデオを使って全国に指名手配する。すると、警察の思惑とは裏腹に、そのビデオによって「バンディッツ」は大スターになってしまう。まったく馬鹿げた話だ。学芸会レベルのシナリオと演技で、これはもう笑ってしまうしかない。肝心の「バンディッツ」の演奏が救いとならないのも致命的だ。

モダン・タイムス / Modern Times
[データ] [感想]
(監督)
(原作)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
チャーリー・チャップリン
チャーリー・チャップリン
チャーリー・チャップリン
1938年
アメリカ
チャーリー・チャップリン
ポーレット・ゴダート

カラー/1h27
 チャップリンが大きな歯車の隙間に挟まれて回るシーンで有名な作品。実際に作品を見たことのない人でも、このシーンの写真を見たことのある人は多いはず。工場で働くチャーリー(チャップリン)は、まるで機械の一部になったかのように、スパナを両手にベルトコンベアーから流れる部品のネジを締めていた。次から次へと送られてくる部品と格闘しているうちに、チャーリーは次第に精神に異常をきたしはじめる。やがて工場をクビになったチャーリーは職を求めて街をさまよう。急速に機械文明が発達し、人々は工場で働く歯車のひとつとなり、さらに資本家と労働者の二つの階級の格差が広がり始めたこの時代を、痛烈な風刺を持って描いた傑作。本当の豊かさとは何かを考えさせられる作品。冒頭のスパナを持ったシーン、自動食事機のシーン、デパートでのスケートのシーン、キャバレーのシーンなど、どのシーンをとっても非常に印象的。

キッド / The Kid
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
チャーリー・チャップリン
チャーリー・チャップリン
1921年
アメリカ
チャーリー・チャップリン
ジャッキー・クーガン
エドナ・パーヴィアンス

カラー/52
 ふとしたきっかけで捨て子を拾い育てるハメになった浮浪者チャーリー(チャップリン)が、やがてその子供と本物の親子以上の強い愛と絆で結び付けられるようになるまでを、笑いと涙で描いた傑作。両親の離婚や孤児院での生活など、チャップリン自身の子供時代の悲しい思い出が、そのまま反映されたような印象を持つ。なんといっても子役のジャッキー・クーガンの演技が凄い。まだ5歳だというのに動きがシャープで、ツボを心得た演技をする。チャップリンとの間の取り方も絶妙だ。こういうのは天性のものなのだろう。この作品の魅力の8割方が、子役の魅力といっても過言ではない。それから、終盤でのチャーリーの夢想シーンには心打たれた。登場人物の背中に白い翼が生え、まるで天使のようにフワフワと空を飛んでいる。まるで天国のような情景に、「貧しくても辛くても、希望は捨てない・・・」的なメッセージが読み取れて、ちょっとクサイけど、なんだかいい気分にさせてもらった。

おいしい生活 / Small Time Crooks
[データ] [感想]
(監督)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
ウディ・アレン
ウディ・アレン
2000年
アメリカ
ウディ・アレン
トレイシー・ウルマン
ヒュー・グラント
エレイン・メイ

カラー1/35
 ここしばらく、アレンの映画は見ていなかった。というのも、神経質な男がブツブツ独り言を吐きながら女性たちに慰めてもらうという、アレン特有の世界があまり好きでは無かったからだ。でも久し振りに見たこの作品は、予想に反してとても面白かった。アレン扮するレイは、ある日仲間と銀行強盗を計画する。しかしその方法は銀行の隣に家を借り、そこからトンネルを掘って侵入するという奇抜なもの。さっそく空き家を見つけて、カモフラージュのために妻のフレンチーがクッキー屋を始める。すると店は大繁盛し、レイとフレンチーの運命は意外な方向へと流されていく。久し振りのドタバタ・コメディーで最初から最後まで小気味良く笑わせてくれる。会話のテンポが良くて、前半のレイとフレンチーの掛け合いや、レイと強盗仲間との会話も楽しい。この辺は字幕より会話を聞いたほうが数倍面白い。その点アレンの英語は聞き取り易くて良い。今回はアレン特有の皮肉も無いのかなと思ったら、そうでもなくて、金持ちたちのスノッビズムみたいなものをさりげなく皮肉ったところがあって、それがちょっと自虐的でおかしかった。

奇蹟の輝き / What Dream May Come
[データ] [感想]
(監督)
(原作)
(脚本)
(製作年)
(製作国)
(出演)
ヴィンセント・ウォード
リチャード・マシスン
ロン・バス
1998年
アメリカ
ロビン・ウィリアムズ
アナベラ・シオラ
マックス・フォン・シドー
キューバ・グッディング・Jr

カラー1/54
 第一印象は丹波哲郎の『大霊界』。と言っても、丹波さんの作品を見たことは無いんだけれどね。もしくは、ニューエイジ系の宗教団体のPR映画といった感じか。「死んだらこういう世界が待っていまーす!」というノリの、とにかくキッツイ映画だった。なぜこんな映画にロビン・ウィリアムズが出ているのか不思議。それよりも不思議なのが、かのエクソシストのメリン神父を演じたマックス・フォン・シドーが地獄の案内人役で出演している。仕事選べよー。主人公のクリス(ロビン・ウィリアムズ)とアニー(アナベラ・シオラ)との出会いから始まり、その後結婚して事故で死ぬまでが15分。その後はずーっと死後の世界。天国の描き方が笑っちゃうくらい短絡的で、宗教画のような背景に、やたらアンバーをかけて、人物の後ろには必ず夕日が輝いているといった具合。やたら宗教臭くて、唯心論だか観念論だかわからないものを持ち出してみたり。最後の場面は輪廻思想にみえるけど、キリスト教は死んだら天国か地獄へ行っておしまいじゃなかったのか?原作があるというので読んでみたいけど、ちょとパワーがいるなぁ。とにかくロビン・ウィリアムズの演技だけでもっているような映画だった。